童話「野ばら姫(眠り姫)」のあらすじと考察~聖なる女はどんな呪いをかけたか

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「野ばら姫(眠り姫)」(KHM50)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

野ばら姫(眠り姫)のあらすじ

むかし昔、王様とお妃がありました。

「なんとかして、子供が一人欲しいものだが。」

と毎日言っていましたが、いつまで経っても子供はできません。

ところがあるとき、お妃のところに蛙が一匹出てきて、

「お妃さまの願いは、叶うことになります。お姫様がお生まれになるでしょう。」

その後、蛙の言ったことは本当になって、お妃は女の子を産みました。

お姫様はそれはそれは美しく、王様はお祝いの宴会を開くことにしました。

そこには親戚や友達、神通力を持った女たちまで招きました。

神通力を持った女は、国に13人いるのですが、その女たちの食事に使う金の皿は12枚しかありません。

なので、13人のうち一人だけは呼ばれるわけにはいきませんでした。

お祝いの席ではごちそうが楽しまれましたが、それが済むと、神通力を持った女たちは、赤ん坊のお姫様に贈り物をしました。

一人は美徳、一人は美しさ、一人は富、といった具合に贈りました。

こうやって11人がそれぞれ贈り物をしたとき、いきなり13人目の女が入ってきました。

この女は、自分だけがお祝いに呼ばれなかったので、仕返しをするつもりで来て、挨拶もせずに、

「お姫様は、15歳になるとつむに刺されて、死ぬことだよ。」

そしてそれだけ言うと、他に何も言わずに大広間を出て行ってしまいました。

みんなが恐ろしく思っているところに、12人目の女が現れました。

この女はまだ自分の贈り物をしていなかったのですが、この不吉な呪いを解くわけにはいきません。

その力をやわらげることしかできなかったので、

「お姫様は、死ぬのではない。百年の間、死んだように眠り続ける。」

と言いました。

王様は、お国中のつむを一つ残らず焼いてしまえと命令しました。

一方のお姫様は、神通力の女たちの授けてくれたものが、その通りになりました。

美しくて親切で、物分かりが良く、お姫様を見た者はみなかわいがりました。

そしてお姫様が15歳になった日のこと、王様とお妃は留守で、たった一人お城で留守番をしました。

お姫様はお城の中を歩き回って、最後に古い塔に行きました。

その塔の中では、つむを手にしたおばあさんが、麻をつむいでいます。

「おばあさん、何してるの?」

「糸をとっております。」

「それなあに、面白そうにぐるぐる跳ねまわってるもの。」

お姫様はこう言って、つむに触りました。

そのとたん、15年前のあの呪いの言葉が本当になって、つむで指をついてしまいました。

そうなると、お姫様はそこにあった寝台の上に倒れ、ぐうぐう寝てしまいました。

すると、この深い眠りは、お城中に広がりました。

王様とお妃はその時ちょうど帰って来て、広間で寝てしまいました。

ご家来たちも、その場で寝てしまいます。

それから馬はうまやの中で、犬は庭で、鳩は屋根の上で、ハエは壁で寝てしまいました。

これだけではありません、かまどの火は止まって眠り、焼き肉もジュージューいわなくなりました。

お料理番は、下働きが何かしくじったので、髪の毛を引っ張ってるところで眠りました。

風も止まり、お城の木の葉っぱも全く動かなくなりました。

そしてお城の周りには野ばらが生垣のようになって、どんどん大きくなり、とうとうお城を包んでしまいました。

こうしてお城は野ばらに囲まれ、何も見えなくなってしまいました。

ここで眠っている野ばら姫の噂は、お国中に広がりました。

野ばら姫とは、眠っているお姫様につけられた名前です。

この話を聞いたいろんな国の王子たちは、時々やってきて、野ばらを通り抜けてお城に入ろうとします。

ですが、野ばらは王子が入ってくると、お互い抱き合って、王子を閉じ込めてしまうので、

王子は抜け出せずむごい死に方をするのです。

そして百年経った頃、一人の王子がこの国に来て、どこかのお爺さんから野ばら姫とお城の話を聞きました。

そしてたくさんの王子がこの野ばらにのまれて死んだという話もしたのですが、

「わたしは怖くない。一つ、美しい野ばら姫に会って来る。」

善人のおじいさんは一生懸命止めましたが、王子は聞きません。

ところが、この時ちょうど百年の年月が経ったので、野ばら姫が目を覚ます日がきたのです。

王子が野ばらの生垣に近寄った時には、刺は大きな花になって、ひとりでに入口を開けました。

それで王子は、傷ひとつ負うことなく中に入り、王子が中に入ると、開いた口はまたふさがりました。

広い庭には馬や犬がごろごろ転がって寝ており、屋根の上では、鳩が寝ていました。

それから城の中では、ハエが壁にとまって寝ていて、台所では、今でも下働きにつかみかかっているところでした。

お城の奥に入って行くと、広間にはご家来がごろごろ寝ていますし、玉座の近くに、王様とお妃が横になっていました。

それからさらに奥に入り、とうとうあの塔に着きました。

ここでは野ばら姫が横になっています。

王子は姫を見ると、あまりにも美しいので、そのまま身をかがめて、姫にキスをしました。

王子のくちびるが姫の体にさわったとたん、野ばら姫はぱっちり目を開けました。

そして、眠りからさめて王子をながめ、二人で塔を出ます。

そうすると、王様、お妃、ご家来と目を覚まして、みんなお互いを見ました。

広い庭にいた馬が起き上がってブルブルと言えば、犬は飛び起きて尻尾をふり、屋根の上の鳩は翼を広げて飛んでいき、

壁にとまっていたハエは動き出し、かまどの火は燃えだし、焼き肉はまたジュージューいい出し、

お料理番はこぞうをはり飛ばしたのでこぞうはギャーと言いました。

それから、王子と野ばら姫のご婚礼の式がとりあげられ、二人はその後幸せに暮らしました。

 

野ばら姫(眠り姫)の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、野ばら姫は呪いをかけられる時、なぜ死に方が「つむにさされる」ということだったのか。

これは、つむは、神通力を持った女や魔女にとって、重要な標識だからです。

神通力を持った女と関わりが深かったので、つむが姫を殺す道具になったと考えられます。

それから、野ばら姫に呪いをかけた神通力を持つ女ですが、いつものグリム童話のパターンと違って、

罰を一切受けませんでした。

グリム兄弟は悪いことをした登場人物には徹底的に罰を与えるものです。

焼けた靴を履いて踊らなければいけませんでした(白雪姫)とか、鳥が姉妹の目玉を一つづつ突っつきだしました(シンデレラ)とか。

ですが今回はそのような罰が一切ありませんでした。

これは、グリムの罰は必ず罪の後に来るということが関係していると考えられます。

他の童話で悪者が罰を受けるのは、必ず主人公がひどい目にあってからのことです。

ですが今回は、野ばら姫がひどい目にあうのは、呪いをかけた15年後のことでしたね。

そしてその呪いの瞬間、お城の者が全員眠ってしまい、起きたのは100年後でした。

100年後には呪いをかけた女がいなくなっていたので、罰を受けなかったのが一つ。

もう一つは、罰を与える役目でありそうな王様も、お姫様がひどい目にあったのと同時に眠ってしまった事。

これで、呪いをかけた女に罰を与えることができなくなった。

だから、この女は罰を受けなくて済んだと考えられます。

それともう一つ、金のお皿はなぜ12枚しかなかったのか。

本当は13枚にしておけばよかったのですが、これはおそらく、13という数字が不吉だからと考えられます。

キリスト教では13という数字は不吉の象徴だったので、この童話に出てくる王様も、この数字を避けたと考えられます。

ちなみに、野ばら姫は絵本では眠り姫と同じ話ですね。

 

野ばら姫(眠り姫)の感想

この童話は、たしかに祝宴に呼ばれなかった13人目の神通力を持った女はかわいそうでしたね。

かわいそうはかわいそうなのですが、まったくとんでもない奴でした。

野ばら姫に呪いをかけた時、女を押さえ込んでしまえばよかったのに、

そのまま帰らせてしまったのは、あまりに突然のことだったから、周りはあっけにとらわれていたんでしょうね。

あと、塔にいたおばあさんはなんだったんだろうって不思議です。

つむは残らず燃やしたはずなのに、このばあさんはなぜ塔にいたのか、そして何者なのか、謎でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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