童話「みにくいアヒルの子」のあらすじと考察~お母さんアヒルの言葉の真相は

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「みにくいアヒルの子」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

みにくいアヒルの子のあらすじ

いなかのお日様が明るくさしている中に、掘割に囲まれた一軒の古いお屋敷がありました。

そこの葉が茂っているところに、一羽のアヒルのお母さんが、巣の中に座っていました。

今、アヒルの子をかえそうとしているのです。

そして、卵が一つ、また一つと割れて、ピヨピヨ鳴きだしました。

小さい子たちは出てきて、お母さんは周りの世界を見せてあげました。

「世の中ってずいぶん大きいんだなぁ!」

ひなたちはそう言いました。

「おや、まだ一番大きい卵が残っているよ。なんて長くかかるんだろう。」

お母さんはまた座り込みました。

その時、年寄りのアヒルがお見舞いに来て、

「どれ、その割れてない卵を見せてごらん。

これは七面鳥の卵だよ。こいつは水を怖がるんだからね。

こんなもんはこのままにして、他の子どもたちに、泳ぎを教えることだよ。」

「でも、もう少し座って様子を見ていましょう。」

しばらくすると、大きな卵は割れて、ヒヨコが出てきました。

見ると、体の大きい、みにくい子でした。

お母さんは、

「まあ、すごく大きなヒヨコだわ。ひょっとしたら、七面鳥のヒナかもしれないよ。

すぐ分かることだわ、水の中に入れてみましょう。」

次の日、アヒルの子のお母さんは掘割に入ると、アヒルの子たちは後から飛び込みました。

すると、あのみにくい灰色の子も、一緒に泳いでいました。

お母さんアヒルは、

「そうだわ、七面鳥なんかじゃないわ。」

それからみんなは、鳥飼い場に来ました。

来てみると、二軒の家族が、ウナギの頭の奪い合いをしていました。

でも結局、猫に横取りされてしまいました。

「ごらん、あれが世の中というものよ!

さあ、今度は脚を使うんですよ。歩いてごらん。

そして、あそこにいるお年寄りのアヒルさんの前に行って、おじぎをするんですよ。

なんていったって、ここにいるみんなの中で、一番偉い人なんだからね。」

お母さんがそう言うと、子供たちは、言われた通りにしました。

ところが、他のアヒルたちがとりまいて、

「また仲間がやってきたみたいだ。

チッ、なんだあのアヒルの子は、あんなのはごめんだよ!」

すると一羽のアヒルが、その子の首すじにかみつきました。

お母さんアヒルは、

「ほっておいてちょうだい。この子は、何もしないじゃないの。」

「うん、だけどあいつ、大きくてみにくいからさ。

だから、つっついてやるんだ。」

すると、あの偉い年寄りのアヒルが、

「お母さんの連れてきた子供は、みんなきりょう良しじゃ。

だが、その子は別だけど。その子は失敗だよ!」

お母さんは、

「奥様、そんなことはありません。

この子は性格の良い子で、泳ぎも上手です。

大きくなったら、きれいになるでしょうし、小さくなるかもしれません。

なんせ、卵の中に長くいすぎたものですから。

それに、この子は男の子で、きっと強くなって、立派に生きていきますわ。」

「とにかく、他の子たちはかわいいよ。」

そう言われて、みんなは気持ちよく思いました。

しかし、みばえのよくないアヒルの子だけはかわいそうに、ニワトリからも、かみつかれたり、ばかにされてしまいました。

かわいそうに、このアヒルの子は自分がみにくいばかりに、情けなく思いました。

しかし、だんだん悪くなるばかりで、兄さんや姉さんからも意地悪されて、

ついにお母さんまで、

「どこか遠くへ行ってくれたらいいのに。」

と言われるようになってしまいました。

とうとう、アヒルの子は逃げ出して、ずんずん先へ走って行きました。

やがて、野ガモのいる沼へ来て、ここで一晩寝ることにしました。

朝になると、野ガモたちがこのアヒルの子を見つけて、

「君はいったい、何者だい?」

アヒルの子は、ていねいにあいさつしました。

「君ってみっともないんだね、でもどうでもいいや、僕たちの家族の誰かと結婚しなければ。」

アヒルの子は、結婚だなんて思ってなかったのに。

芦の中に寝させてもらって、沼の水を飲ませてもらえればそれで良かったのに。

そこにまる二日いると、オスのガンが二羽飛んできて、

「おい、君!君はなんてみにくいんだ。でも気に入った!

どうだい、一緒に渡り鳥にならないか?

この近くの別の沼に、可愛いお嬢さんのガンが、二、三羽いるんだよ。

君もそこに行ったら、幸運をつかむかもしれないよ。」

バーン、バーン!

その時、空で音がしました。

そのとたん、二羽のガンは落ちて死んでしまいました。

水は血で赤く染まりました。

バーン、バーン!

また音がすると、ガンの群れが、芦の中から飛び立ちました。

これは鉄砲の音で、猟が始まったのです。

可愛そうに、アヒルは恐ろしく思いました。

びっくりして頭を隠そうとして後ろを向いた時、目の前に大きな猟犬が立っていました。

しかしアヒルの子はそのままにして、向こうへ行ってしまいました。

「ああよかった。僕があんまりみにくいから、犬までかみつかないんだ。」

猟が終わって静かになった頃、アヒルの子は沼を抜け出しました。

それから夕方になって、一軒のみすぼらしい家にたどり着きました。

勝手に中に入ると、一人のおばあさんが、猫とニワトリと一緒に住んでいました。

おばあさんはこの猫を「息子ちゃん」と呼び、この猫は背中を丸めたり、のどをごろごろ鳴らすことができました。

ニワトリはおばあさんから「短脚のクックちゃん」と呼ばれ、卵を産めるので、可愛がられていました。

朝になると、アヒルの子は見つかってしまいました。

猫とニワトリが騒ぎ出したので、おばあさんは、

「どうしたっていうんだね?」

辺りを見回すと、おばあさんは目がよく見えないので、アヒルの子を、どこかから迷い込んできた太ったアヒルだと思いました。

「こりゃとんだ拾いもんだ。これからはアヒルの卵も食べられる。オスじゃないといいけどな。まぁ飼ってみるか。」

こうしてアヒルの子は、三週間ここにいました。

ですが、もちろん卵は産みません。

卵を産むことものどをごろごろ鳴らすこともできないので、黙っていろと言われました。

アヒルの子は、隅っこでくよくよしていました。

そのうち、お日様のもとで水の上を泳ぎたいと、不思議な気持ちになりました。

それをニワトリの奥さんに打ち明けると、

「お前さん、何を言い出すの?何にもすることがないから、そんなばかげた考えをおこすんだわ。」

それからアヒルの子は自分のことを理解してもらえず、冷たくされました。

こうして、アヒルの子は家を出ていきました。

水の上を泳いだり、水の底へもぐったりしました。

けれども、姿がみにくいので、どの動物からも相手にされませんでした。

そのうち、秋になって寒くなってきました。

木の葉は黄色くなり、やがて茶色になりました。

かわいそうに、アヒルの子もいい目にあいませんでした。

そんなある夕方、アヒルの子が見たこともないような、美しい大きな鳥の群れが、飛び立ちました。

それらの鳥は真っ白で、長い首をしていました。

これは白鳥だったのです。

白鳥たちは大きな翼を広げ、暖かい国へと飛んでいくのでした。

みにくいアヒルの子は、なんとも不思議な気持ちになりました。

アヒルの子は、あの鳥がなんという鳥なのか知らなかったのですが、慕わしく思いました。

あんな美しい姿になりたいなんて、どうして望むことができましょう。

せめてアヒルたちの仲間に入れてもらえたら、と本当にかわいそうなアヒルの子です。

いよいよ冬になって、池の水が凍ってしまい、アヒルの子は氷の中に凍り付いてしまいました。

次の日の朝、一人の百姓がアヒルの子を見つけると、氷を砕いて、家に持って帰りました。

これで、アヒルの子は生き返りました。

お百姓の子どもは、一緒に遊ぼうとしました。

しかしアヒルの子はまたいじめられると思って、ミルクの壺へ思わず飛び込むと、部屋中にミルクが飛びました。

これを見ておかみさんは大声を上げて、打ちました。

それにびっくりしてアヒルの子はバターの入っているたる、小麦粉の桶とへと飛び込んで、

おかみさんはアヒルの子に打ってかかり、子供たちはアヒルの子をつかまえようとし、部屋中大騒ぎです。

アヒルの子はなんとか家から逃げ出し、雪の中でじっとしていました。

そしてこの冬にアヒルの子に起こった苦しいことを残らず話すのは、あまりにも悲しいことではないでしょうか。

やがてお日様が輝き始めました。春になったのです。

その時、アヒルの子は翼を羽ばたいてみると、前よりも大きく打って、空に飛びあがりました。

そして、とある大きな庭に来ていました。

とその時、前の茂みから、三羽の美しい真っ白な白鳥が出てきました。

そして、水の上を泳いでいきました。

アヒルの子は不思議な悲しい気持ちになって、

「あの美しい鳥のところに飛んでいこう。

こんなみにくい姿の僕が近づいて行ったら、殺されてしまうかもしれない。

けれど、構うもんか。」

アヒルの子は、白鳥たちのほうへ泳いでいきました。

それを見て、白鳥たちはすうっとこちらへ来ました。

「さあ、僕を殺してください!」

アヒルの子は頭をたらして、死を待っていました。

ところが、水に何が映っていたでしょう。

それは、自分自身の姿でしたが、それはあのみにくい姿ではなく、一羽の立派な白鳥でした。

白鳥の卵からかえったのなら、生まれた場所が違えど、たいしたことではありません。

今までたえてきた悲しみや苦しみを思うと、今の自分は心から嬉しく思いました。

そして、白鳥たちはまわりに寄って来て、くちばしで羽をなでてくれ、受け入れてくれました。

その時、庭に小さな子供たちが入って来て、えさを投げてくれました。

そして、

「あそこに新しい白鳥がいるよ!」

「ああ、本当だ、新しい白鳥だわ。」

みんなは手を叩いて踊り、人々は

「新しい白鳥が一番きれいだ!若くて美しい!」

ここにいた白鳥たちは、新しい白鳥に頭を下げました。

新しい白鳥は、恥ずかしくなってしまいましたが、あまりにも幸福でした。

けれども、心が素直なので、高ぶるようなことはしませんでした。

今までばかにされていたのに、今ではみんなから、一番美しいと言われるまでになったのです。

「僕がみにくいアヒルの子だった時は、こんなことは夢にも思わなかった!」

 

みにくいアヒルの子の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、主人公のアヒルの子ですが、この子は性格的な問題は全くなく、外見だけが問題でした。

ここで気になるのは、このアヒルの子は男の子だということです。

女の子なら、外見が劣っているのは致命的なことですが、男の子の場合はそこまででもありません。

男の子なのに、外見で劣等感を抱えていたのは、作者のアンデルセンが女性的な感性を持っていたことの表れだと考えられます。

また、お母さんアヒルは、みにくいアヒルの子がいじめられている時、強く反発していました。

これは、母親として、子供を守ろうというとても強い意思が感じられます。

ところがそう思っていたら、お母さんアヒルはしまいには、

「どこか遠くへ行ってくれたらいいのに。」

と、見捨てるようなことを言いました。

これはなぜなのか考えてみたのですが、理由は二つあると考えられます。

まず一つは、想像できる通り、周りのアヒルたちからいじめられて、それに流されてしまった事です。

母親とはいえ、みにくいアヒルの子を守り切れなくなってしまったのでしょう。

もう一つは、これ以上、この子がいじめられるのを見ていられなかったからと考えられます。

ここにいてもいじめられてしまって不幸なだけだから、旅立ってくれれば、幸せを見つけられるかもしれない、

という思いから、このような言葉をかけたのだと考えられます。

つまり、みにくいアヒルの子を応援する気持ちと、遠くへ行ってもこの子なら強いから大丈夫、という信頼があったと考えられます。

旅に出てから、まず野ガモに出会いました。

ここでは、自分たちの誰かと結婚しなければ、という条件をつけられました。

これは、自分たちは利害関係に関わりたくないよ、という心理が考えられます。

人間で言えば、例えば、貧しい人たちはかわいそうだと思うけど、募金はしないよ、というタイプです。

人間にもこのタイプは多いですね。

続いて、出てきたオスのガンは、やんちゃな少年のようなタイプだと考えられます。

すぐに女の子に手を出すタイプですが、このタイプはもし仲間になると、弱いものをいじめるタイプです。

そういう意味で、ガンは猟師に撃ち落とされて、仲間にならずに正解だったでしょう。

その後、みにくいアヒルの子は白鳥を見るシーンがありましたが、この鳥に憧れていました。

でもそれは遠い存在で、まるで平民の男が、お姫様を好きになるが手がとても届かない、

そんな心境で見ていたと考えられます。

それから、池が凍って、百姓がアヒルの子を家に連れて帰るところがありました。

ここの子どもたちは、アヒルの子と遊ぼうとしていたところを見ると、百姓は良い人だと考えられます。

ところが、アヒルの子はどこへ行ってもいじめられていたので、またいじめられると思って、暴れてしまいます。

あっちこっち飛び回って、大慌てでつかまえようとする百姓一家は、この物語で唯一微笑ましいシーンと言えます。

そして最後は、白鳥になるというハッピーエンドに終わりました。

アヒルの子はずっと辛い思いをしてきましたが、耐えて生き延びていれば良いことがあるという教訓があります。

 

みにくいアヒルの子の感想

この童話は、アヒルの子が大きな劣等感を抱いていて、それ故にいじめられてしまいました。

そしてみんなからみにくい、みにくいと言われてしまうのは、読んでいる側としてもかわいそうに感じられました。

そして同情したくなるのは、このアヒルの子の性格がいいってことなんですよね。

素直で、白鳥になっても調子に乗ったりせず、自分の立場をわきまえていて、高望みなんて全くしていませんでした。

そういう謙虚な姿勢こそ、読者をひきつけるんでしょうね。

最後、子供たちが「新しい白鳥だ!」と、えさを投げ込んでくれたのは、読んでいてにっこりしてしまうシーンでした。

ハッピーエンドになって、こっちまで幸せになる、そんな童話でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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