こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話よりキャベツろば(KHM122)のあらすじと考察、そして感想をお話していきます。
キャベツろばのあらすじ
むかし昔、あるところに若いかりゅうどがありました。
かりゅうどが森に行くと、ばあさんがやってきて、
「こんにちは、かりゅうどさん。私はお腹はぺこぺこ、のどはからからさ。なにか施しをくれないかね。」
そう言われるとかりゅうどは気の毒になって、分相応に施しをしました。
「かりゅうどさん、お前さんは感心な人だから、いいものをあげよう。
ずんずん歩いていくと、ある木のところに出るがね、そこに鳥が9羽とまっていて、1枚の合羽をとりっこしてる。
それを見たら、鳥を鉄砲で撃つのだよ。合羽はお前さんのものにするといい。
合羽を肩に羽織って願えば、どこでも好きなとこへ行ける。
死んだ鳥は心臓をえぐり出して、丸ごと鵜のみにすれば、毎朝枕の下に金貨を一つ拾えるのだよ。」
かりゅうどは神通力を持ったこの女の人にお礼を言って、100歩ほど歩きました。
すると頭の上の木の枝で、鳥が1枚の布を取り合って、ケンカをしています。
「ははぁ、これだな、ばあさんの言ってたのは。」
と言うと、鉄砲で鳥を撃ちました。
すると鳥が1羽だけ死んで落ちてきて、合羽も落ちてきました。
かりゅうどはばあさんに言われた通り、その鳥の心臓を鵜のみにして、合羽はうちへ持って帰りました。
あくる朝、枕の下を見ると、本当に金貨がありました。次の日も、その次の日も。
それからかりゅうどは、旅に出ました。
ある日森を通り抜けると、原っぱに、大きな御殿が見えました。
その御殿には魔女の婆さんがいて、娘に、
「これからここに来る人がいる。その人はね、お腹の中に、ある鳥の心臓を持っていて、それのおかげで毎朝枕の下に金貨が1枚ずつあるのさ。」
どうしてそうなっているか娘に訳を話し、お前はこうするといいのだよと言い聞かせて、
「お前、言う通りにしなきゃ、ひどい目に遭うよ」
と、脅しました。
かりゅうどがやってきて、娘を見ると、美しい人に目をつけたもので、この御殿に泊まりたくなりました。
かりゅうどは御殿では親切にされ、手厚くもてなされます。
さらに娘とすっかり仲良くなって、娘のしてくれと言うことはどんなことでも喜んでするようになりました。
これでばあさんが、何かの煎薬を調合して火にかけました。
しばらく煮詰めると、杯に入れて、娘に渡し、かりゅうどに出しました。
「ねえ、あなた、あたしの健康を祝って、これを飲んでね」
と娘に言われて飲んでしまうと、かりゅうどは鳥の心臓を吐き出しました。
娘はそれを内緒でとりのけて、ばあさんに言われたので自分で嫌々ながら飲み込みました。
この次の日から、かりゅうどは金貨を拾えず、娘の枕の下の金貨はばあさんが取りに来ました。
「今度は願掛けの合羽もふんだくらなきゃならんな」
とばあさんが言うと、娘は反対しましたが、ばあさんは聞きません。
そして、娘にこうこう、こういうふうにするんだぞと教えて、言うことを聞かないとひどい目にあわせるぞ、と脅しました。
あるとき娘は、窓から遠くを眺めて、
「向こうにざくろ石山があって、そこにはすばらしい宝石ができるの。あたし行きたいけど、そのこと考えると悲しくなるの。
鳥でもない限り、あそこには行けないわ。」
と言うと、かりゅうどは娘をかかえて、向こうのざくろ石山に行きたいと合羽を着て願掛けしました。
するとふたりはその山の上にいて、それぞれ、美しい値打ちのある宝石を拾い集めました。
ところがかりゅうどには目が重くなる魔法をばあさんにかけられていて、腰を下ろして眠ってしまいました。
それを見ると娘は、合羽を奪って羽織って、ざくろ石や宝石を持ってうちへ帰ってしまいました。
かりゅうどが目を覚ますと、騙されたことに気づきました。
ところがこのざくろ石山というのは、ばけものみたいな大入道のすみかで、さっそく大入道が3人やってきました。
かりゅうどは寝たふりをしていました。大入道たちは最初踏み殺そうとしましたが、やめて、
「殺すのは骨折り損だ、生かしといてやれ。山のてっぺんまで登れば、雲がどっかへひっつらって行っちまうだろ。」
と言うと、大入道達は行ってしまいました。
かりゅうどはこの話を逃さず聞いていて、山のてっぺんに登り、雲にさらっていってもらいました。
雲はやがて下に降りてきて、大きな野菜畑のところに降り立ちました。
かりゅうどはお腹がぺこぺこだったので、その畑からキャベツを食べることにしました。
キャベツを2、3口食べると、なんだか変な感じがしました。
気が付くと、肢がが4本生えて、でぶでぶした頭になって、長い耳が2本くっついているのです。
かりゅうどは、自分がろばになってしまったことに気づいて、肝をつぶしました。
でもお腹がぺこぺこだったのと、ろばになった今、キャベツがとても美味しいので、いつまでも食べ続けました。
そのうち、種類の違うキャベツを食べてみると、また体に変な感じがして、元の人間の姿に戻ってました。
「このキャベツ、わたしの宝物を取り返して、あいつらを懲らしめるのに役立つぞ。」
と考えて、ロバになるキャベツを一つ、人間に戻るキャベツを袋に入れると、あの女のいる御殿を探しに出ました。
2、3日歩いて御殿を見つけると、変装をして、泊めてくださいと頼みました。
魔女が
「どなたかの?ご商売は?」と聞くと、
「わたしは王様の使いで、天下一の尊いキャベツを探し出すよう言われ、とうとう探し出してここに持っています。
お日様がおそろしく暑いので、もともと傷みやすいキャベツがしなびそうで、これではこの先、持っていけるかどうか分かりませんよ。」
この魔女のばあさんは値段の高いキャベツと聞くと、
「ばばあにも、その珍しいキャベツを試させてくれ。」
と言いました。
「あげますよ。玉は2つ持ってきたから、おばばさんに一つあげる。」
そう言って、食べるとロバになるキャベツを渡しました。
魔女はそれで料理をこしらえましたが、お膳に乗るまで待ち切れず、2、3枚つまんで食べました。
すると魔女は雌のロバに化けていて、中庭へかけこみました。
そこへ、女中が台所へ来て、できたてのサラダを食卓へ運ぼうとしましたが、途中つまみ食いしました。
すると女中も雌ろばになって、中庭へ駆け出しました。
かりゅうどは美しい娘といましたが、誰もキャベツのサラダを持ってきません。
かりゅうどが見に行くと、ろばが2匹中庭をかけずり回ってるのを見て、
「これでよしと。この2人はなるようになったのだ」
と言い、サラダを美しい娘のところに持っていきました。
この娘がキャベツを食べると、やっぱりろばになりました。
ここでかりゅうどは正体を現して、
「おまえがわたしを騙したお礼をもらう時が来たぞ」
と言い、この3匹のろばを連れて、粉ひき場へ行きました。
「しょうもないのが3匹いるのだが、お前さんがこいつらを引き取って、おいらの頼む通りに扱ってくれたら、ほしいだ礼をするよ。」
「で、どんな飼い方をしたらいいんだ?」
と粉ひきが言うと、
ばばあろば(魔女だったロバ)は、毎日3べんひっぱたいて、食べ物は1度だけ。
女中だったロバは、ひっぱたくのは1ぺんで、食べ物は3回。
娘だったいちばん若いのは、1ぺんもひっぱたかず、食べ物は3べん。
と言いました。
かりゅうどは、娘がなぐられるのは我慢できなかったのです。
4、5日経つと、「ばばあろばはなぐられてばかりで食べ物は1度しかもらわなかったから、死んでしまった。」
と粉ひきが言いに来ました。
「それから、あとの2匹は1日3回食べてるが、いかにもなさけない様子だから長いことはない。」
これを聞くとかりゅうどはかわいそうになって、2匹を連れ戻しました。
そして2匹に、人間に戻る方のキャベツを食べさせ、元の姿にしてやりました。
この美しい娘は、
「とんでもなく悪いことをしたことをお許しください。母が無理強いして、あのようなことをしてしまいました。
わたしは、あなたのことをお慕いしています。あのようなことは、私の心にないことでございます。
あなたの合羽と、鳥の心臓はお返しします。」
これを聞くと、かりゅうどは機嫌を直して、
「いいから、心臓はお前がもっておいで。どうせ、お前を家内にするつもりなのだから。」
それから結婚式を挙げて、二人は死ぬまで楽しく暮らしました。
キャベツろばの考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず最初、かりゅうどはお腹の空いているおばあさんを助けました。
グリム童話の主人公で、好きな人と結婚するなどハッピーエンドになる話では、主人公は性格が良いことが多いのですが、この童話でもそのパターンでしたね。
そしてちょっとした手助けをすることで、すごく大きな得をできました。
物語の途中で、願掛けをすればすぐにそこに行ける合羽を盗られてしまいましたが、この場所はざくろ石山です。
この山は美しい宝石が取れると同時に、大入道という恐ろしい者のすみかでもあります。
悪者や恐ろしい者は宝物をたくさん持っていることが多いですが、この物語のこの場面でも当てはまりましたね。
さらに、この童話に出てきた魔女も、立派な御殿に住んでいるのでお金持ちです。
また物語の最後のほうで、粉ひきにろばを3匹渡して、美しい娘だったろばだけはひっぱたかないように言いつけました。
これは娘のろばがなぐられるのが我慢ならなかったから、とありますが、
この娘が好きなら、そもそもこの娘だけキャベツを食べさせなければ良かったはずです。
でもキャベツを食べさせたのは、やっぱり悪いことをしたんだと思い知らせたかったからでしょう。
罰としてろばに変えてしまったものの、いざとなったら、やっぱりかわいそうになってしまった。
鳥の心臓と合羽をだまし取られたのに、そういうところが優しいかりゅうどですね。
キャベツろばの感想
この童話のメインイベントは、願掛けをすれば移動できる合羽と、鳥の心臓を盗んだ魔女をこらしめることでした。
その復讐の方法がキャベツでろばに変えるということだったのは、単純ながらかなり強烈ですね。
しかも粉ひき場に連れてって、そこで第三者にいじめさせるというのは、子供っぽい発想もある感じがしました。
主人公は優しいのですが、悪党に対しては徹底的に対抗するというのは、RPGでもよくありそうな展開だと感じました。
この童話はそこまで有名ではないですが、読めば面白いので、お勧めです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、Eternal Operettaのブログでした!
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