童話「蛙の王さま」のあらすじと考察~なんていやらしい蛙なんだ!

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「蛙の王さま」(KHM1)あらすじと考察、感想までお話しています。

 

蛙の王さまのあらすじ

むかし昔、一人の王さまがいました。

王様のお姫様がたはどれもこれも美しい方でしたが、一番末のお姫様は、特に美しい方でした。

ある日、お姫様は森の中の泉のそばでまり遊びをしていました。

ところが、遊んでいるうちに黄金のまりは、ころころと泉の中に落ちてしまいました。

泉の中をのぞきましたが、深いのなんの、まりは影も形もありません。

お姫様は泣きだしました。するとそこへ、

「どうしたの、お姫様。そんなに泣いたら、石でさえもかわいそうに思うでしょう。」

という声がしました。

その声は誰の声かと、あたりを見回すと、いたのはぼてぼてした、いやらしい頭をした一匹の蛙でした。

「なんだ、お前なの。あたしの大事な黄金のまりが、泉の中に落ちて、泣いているのよ。」

すると蛙は、

「もしもわたくしがお姫様の大事なものを拾い上げたら、何をくださいますか。」

「蛙さんの欲しいものならなんでも。」

「わたくしをお友達にして、お姫様のかわいらしいお膳に座らせていただいて、

食べ物は、お姫様のかわいらしい黄金のお皿で食べさせていただいて、

飲み物は、お姫様のかわいらしいお盃で飲ませていただいて、

お姫様のかわいらしい寝床で寝かせてください。

この約束をしていただければ、黄金のまりを拾ってきましょう。」

「ああ、いいとも。そのとおりにしてあげることよ。」

お姫様は口ではこう言いましたが、お腹の中で、

「蛙のおばかさんが何をいうことやら。どっちみち、人間の仲間入りなんかできやしないわ。」

と考えていました。

それから蛙は、泉にもぐってまりを拾って、草の中に放り出しました。

お姫様はまりを見るとすっかり嬉しくなって、それを拾い上げるなり、跳んでいってしまいました。

「待ってえ、待ってえ、連れてってよう、お姫様みたいに走れない。」

けれどもお姫様はそんな声は耳にも入れず、うちに帰ると、蛙のことなんかすぐ忘れてしまいました。

かえるは仕方なく、泉の中に入りました。

ところが次の日、王様やご家来たちと食卓についていると、戸をたたく音がして、

「王様の一番末のお姫様、ここを開けてえ!」

お姫様は誰がいるのか見てやろうと思って、戸を開けました。

ところが、あの蛙がいるのが分かると、すぐに戸を閉めました。

王様はお姫様が心配になっているのを見て、

「何が怖い?戸の外に大入道でもいるというのかい?」

「いえ、大入道なんかではなく、汚い、いやらしい蛙なの。」

「姫にどんな御用があるの?」

お姫様は昨日あったことを王様に話しました。すると、大きな声が聞こえてきました。

「一番末のお姫さま、あけてくださいな、昨日の約束はどうしたの?

泉の水のそばで、あたしに何といいました?

一番末のお姫様、あけてくださいな。」

それを聞いて王様は、

「約束したことは、どんなことでも守らなければいけません。さあ、開けておやり。」

お姫様が仕方なく入口の戸を開けると、蛙がぴょこんと入って来て、お姫様の椅子のところに来ました。

「椅子の上に、お姫様のそばに上げてくださいな。」

お姫様はぐずぐずしていると、王様に「早く上げてやれ」と言われ、蛙を上にあげました。

蛙はそのまま食卓に座って、

「二人で一緒に食べられるように、お姫様の黄金のお皿を、もっとわたくしのほうへ近づけてくださいな。」

お姫様は蛙の言う通りにしましたが、進んでそうしたのではないことは、誰にでも明らかでした。

蛙は嬉しそうに食べましたが、お姫様はなかなか喉を通りません。

そのうち蛙が、

「おなかがいっぱいになったから、寝たくなりました。

お姫様のお部屋へ連れてって、お姫様のお布団にいれてくださいな。

二人で寝ることにしましょう。」

お姫様は泣きだしました。

こんな蛙なんて触るのも嫌なのに、お姫様の清らかな寝床で寝ようだなんて言い出しましたから。

すると王様は怒って、

「誰にしろ、困っているところを助けてもらったものを、後になって相手にしないことは許さん。」

お姫様は蛙を指でつまんで、寝室の隅に置きました。

しかしお姫様が寝床に入ると、蛙はぴちゃりとはいだしてきて、

「だるくってしょうがない、あたしも上にあげて寝かせてくださいな。

でなきゃ、お父様に言いつけるからね。」

これを聞くと、お姫様は怒って、蛙を拾い上げるなり、力任せに壁にたたきつけました。

「さあ、これで楽になった。いやらしいかえるったらありゃしない。」

ところがその蛙を見ると、蛙ではなく、美しい目をした王子になっていました。

この王子は王様のお気に召して、お姫様と仲良しになり、おむこさまになりました。

王子はお姫様に、自分は魔女に魔法をかけられて、自分をあの泉から救い出せるのはお姫様しかいなかったこと、

そして明日は二人そろってお国に帰るつもりだと言いました。

次の日の朝、白馬の馬車が一台、お城に来ました。

馬は真っ白な羽を頭につけ、黄金の鎖でつながれていて、馬車の後ろには若いご家来が乗っていました。

これが、忠臣ハインリヒです。

忠臣ハインリヒは、王子が蛙にされてしまった時に、すっかりしょげて胸のまわりに鉄のたがを三本はめてもらっていました。

これは、悲しみのあまり胸が破裂するといけないからです。

この馬車は二人をお連れするためのものでしたが、二人を連れて行くと、忠臣ハインリヒは嬉しくてたまりません。

こうして歩いていると、王子の後ろで、なにかが破裂したような、ぱちーんという音がしました。

王子は声をかけます。

「ハインリヒ、馬車が壊れる。」

「王子様、馬車ではございません。

これは、私のむねのたが、

王子様が泉の中にいて、

王子様が蛙だったころ、

苦しい痛みをおさえていたむねのたが」

もう一度、また一度、ぱちーんという音がしました。

王子はそのたび、馬車が壊れるのではないかと思いました。

けれどもそれは、王子が救い出されて、楽しい日々を送ることになったので、

胸のたががはち切れて、忠臣ハインリヒの胸からとびちる音でした。

 

蛙の王さまの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

この蛙は、さんざんお姫様を苦しめました。

お姫様の隣に座られて、一緒にご飯を食べるハメになり、一緒に寝室に行き、もう少しで一緒に寝るハメになるところでした。

お姫様は寝室に連れて行くところまでは我慢していましたが、

最後、布団に入れてほしいってなった時に、お姫様は我慢できなくなりました。

お姫様が我慢できなかったのは、一緒に寝るという、性的なことを想像させる場面です。

グリム童話では、性行為を思わせるような場面は少ししかありません。

そしてここでも、性行為に関わるようなことを要求してきた時点で、お姫様の怒りは爆発しました。

ということは、グリム兄弟は性行為に関することを書くのは、消極的だったと考えられます。

また、蛙が王子の姿に戻る、つまり呪いを解く方法は、お姫様によって壁に強くたたきつけられることでしたね。

これくらい強いことをされないと、呪いが解けないくらい強い呪いだったということになります。

そして最後、忠臣ハインリヒの鉄のたががぱちーんとはじけるシーンがありました。

この鉄のたがはもともと、悲しみのあまり胸が破裂しないように取り付けられたものです。

ここでは、忠臣ハインリヒの胸ではなく、その「胸のたが」だけが破裂しました。

これは、王子が蛙から戻ったことで、これからの楽しい日々の解放を表している、と考えられます。

 

蛙の王さまの感想

この童話でインパクトが強いのは、やはりいやらしい蛙ですね。

この童話を読んだ人は、最初は「この蛙め」って思いながら読んだ人も多いのではないでしょうか(特に女性)。

たしかに黄金のまりは拾ってもらいましたが、なんといってもこの蛙は図々しいです。

最終的には王子の姿に戻りましたが、王子の姿に戻るためにあえてお姫様を怒らせたのではなく、

欲望のままにお姫様に近づいたようにも見えました。

そして王様がやたらと蛙の味方をしていたので、お姫様も父上に裏切られた!とか考えていそうですね。

そう考えると、この時点でのお姫様は気の毒でした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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