こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より「ラプンツェル(野ぢしゃ)」(KHM12)のあらすじと考察、感想までお話しています。
ラプンツェルのあらすじ
むかし昔、あるところに夫婦がありました。
二人は長いこと子供を欲しがっていましたが、やっとのことで二人の望みが叶うことになりました。
二人の家の裏側には、美しいいろいろの花や野菜が生えている、立派な畑がありました。
ですがそこは高い塀で囲まれてる上に、恐れられている魔法使いの女のもので、近づくものはいませんでした。
ある日のこと、おかみさんは畑に生えている見事な野ぢしゃ(ラプンツェル)を見て、どうしても食べたくなりました。
その食べたい気持ちは日に日に大きくなりますが、手に入れられないことは十分分かっていました。
おかみさんはそうしているうちにすっかりやせて、顔は青く、見る影もなくなったので、亭主は、
「お前、どうしたんだ?」
「ああ、うちの裏に生えている野ぢしゃがどうしても食べたい、食べられなきゃ死んでしまうわよ。」
これを聞くとご亭主は、女房を死なせるくらいなら、どうなろうと取ってきてやれ、と考えました。
ご亭主は魔法使いの畑に行き、急いで野ぢしゃを取って来て、おかみさんに食べさせました。
その野ぢしゃの美味しいこと、おかみさんは次の日も食べたくなりました。
次の日もご亭主は畑に行きましたが、目の前に魔法使いの女が立っていました。
「よくこんなことができたね。人の野ぢしゃを盗むなんて。こっぴどい目にあわせてくれる。」
「これはこれは!ご勘弁願います。
女房が、あなた様の野ぢしゃを見て、執念たらありゃしません、食べられなきゃ死ぬと申しましたので、はい。」
すると魔法使いの女は怒りを鎮めて、
「それなら、お前の欲しいだけ野ぢしゃをくれてやる。だがね、条件があるよ。
おかみさんが子供を産んだら、その子をあたしによこさなきゃいけない。
子供は、幸せにしてやる。」
ご亭主は、怖くなって約束してしまいました。
それからおかみさんが子供を産むと、すぐに魔法使いの女が姿を現し、
子供にラプンツェル(野ぢしゃ)という名をつけて、連れて行ってしまいました。
その後、ラプンツェルはこの世で一番美しい子供になりました。
十二歳になると、魔法使いの女はラプンツェルを塔に閉じ込めました。
その塔は森の中にあって、てっぺんに小さな窓が一つあるだけで、はしごもなければ出入りの扉もありません。
それで、魔法使いの女が中に入る時は、
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」
と呼びかけます。
そうすると、ラプンツェルは黄金色のきらきら光る長い髪の毛をほぐして、下にたらすのです。
髪の毛は二十エレン(十二メートルほど)あって、魔法使いはそれを登って来るのでした。
それから何年か経ったこと。
この国の王子が、塔のそばを通りかかったことがあります。
そこへラプンツェルの歌声が聞こえてきました。
ラプンツェルは独りぼっちの寂しさのあまり、声を響かせていたのです。
王子は女に会おうと塔に入ろうとしましたが、入口はどこにもありません。
それからというもの、王子はその歌声に惚れて、毎日毎日森へ歌を聞きに行きました。
そんなある日、魔法使いの女がラプンツェルの髪をのぼって塔に入るのを目にしました。
「なあんだ、これが梯子になっていたのか。それなら一つやってみよう。」
その次の日、暗くなってきたころに王子は塔のところで、
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」
すると髪の毛がぶらさがってきたので、王子は上にのぼって行きました。
ラプンツェルはまだ一度も男を見たことがないので、初めぎょっとしました。
ですが王子はやさしく話しはじめ、ラプンツェルの歌に惚れて、ここまで来たことを話しました。
ラプンツェルはもう怖くなくなって、この王子が若く美しいのを見て、
「この人はゴテルおばさんよりもかわいがってくれるだろう」
と考え、王子に結婚を申し込まれても、よろしゅうございますと言いました。
「あたくしね、あなたのところに参りたいのですけど、どうやって下へ降りましょう。
あなた、ここへいらっしゃるたびに絹の紐を一本ずつ持ってきてね。
それではしごを編んで、はしごができたら下へ降りて、あなたのお馬に乗せてもらうわ。」
魔法使いのばあさんはこのことに気づかなかったのですが、あるときラプンツェルは、
「ねえ、ゴテルおばあさん、おばあさんを引っ張り上げるのは、王子様よりもよっぽど重いわ。
王子様はすぐにあたしのところに来るのに。」
「なんだって、この罰当たりな!お前は世間から離したと思ってたのに。よくも人を騙したな。」
ばあさんは腹立ちまぎれに、ラプンツェルの三つ編みの長いおさげの髪の毛をはさみで切り落としました。
それからばあさんは、ラプンツェルを容赦なくどこかの荒れ野に連れ込みました。
ここでラプンツェルは、悲しみながら一人で哀れな生活をしなければなりませんでした。
ラプンツェルを追い出すと、魔法使いの女は切り落としたおさげ髪を塔のてっぺんの窓の鈎(かぎ)へ結びつけました。
その夜王子が来て、
「ラプンツェル、ラプンツェル、お前の髪をさげておくれ。」
と言うと、ばあさんはその髪の毛をぶら下げました。
王子がのぼると、上にいたのはかわいいラプンツェルではなく魔法使いの女で、
「おやおや。お前、かわいい奥さんを見に来たのだろ。
だがね、あの鳥はもう巣の中にいないよ。猫がさらっていったのさ。
猫はお前さんの目玉もほじくり出すかもしれないよ。
ラプンツェルにはもう二度と会えないのさ。」
王子は悲しくなって、わけがわからなくなって、塔から飛び降りました。
それでも命は助かりましたが、落ちたのはからたちのいばらの中で、刺で目玉をつぶされました。
こんなわけで王子は失明して森の中をさまよいましたが、食べ物は木の根や草の根、山ぶどうや草イチゴのようなものばかりです。
いとしいラプンツェルを失くし、泣くしかありませんでした。
こうやって何年かとぼとぼ歩いていたある日。
とうとう、ラプンツェルが、自分の産んだ男の子と女の子と一緒に、細々と暮らしている荒野へたどり着きました。
王子は人の声を聞いて、それがなんだか聞き覚えのある声だったので、その声のする方へ歩いていきました。
王子が来ると、ラプンツェルは王子の襟首をつかんで泣きました。
その涙が2滴、王子の目をぬらすと、目は両方とも元通り、見えるようになりました。
王子はラプンツェルを国へ連れて行き、そのまま長いこと、幸せに暮らしました。
ラプンツェル(野ぢしゃ)の考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず魔女は、ラプンツェルを塔に閉じ込めました。
ラプンツェルはこの世で一番美しかったわけですが、これを閉じ込めたというのは、
美しいものを束縛したいという魔女の欲望によるものです。
魔女が美しいものを束縛したがるのは、童話ヨリンデとヨリンゲルにもありました。
途中、魔女が怒ってラプンツェルの長い髪を切ってしまったシーンがありました。
これは後で、魔女が王子を騙す時に髪を使ったので役に立ちました。
ですがこのためだけでなく、魔女が髪を切り落としたのは、罪を認識させる意味合いがあります。
髪は女の命と言いますが、それを切ったのは、魔女はそれだけ屈辱を与えたかったと考えられます。
荒野に放りだすだけでは怒りを抑えられなかったのでしょう。
あと気になるのは、ラプンツェルがいつの間にか男の子と女の子を産んでいたことです。
父親は誰かについては書かれていませんでしたが、他に登場人物もいないので王子と考えて良さそうです。
ちなみにラプンツェルの類話で、ペルシネットという物語があります。
この物語では、ラプンツェルと同じ立場にあたるペルシネットが身籠ったなどと、性的な記述があります。
しかしラプンツェルではそのような記述が一切なかったです。
グリム童話では、性的な描写はあまりないんですね。
ラプンツェル(野ぢしゃ)の感想
この童話では、ラプンツェルも王子もかわいそうでしたね。
もとはといえばラプンツェルが魔女を引き上げるとき、
「ばあさんは重い」なんて言ってしまった事が不幸の始まりでした。
それがなければ、二人はそのまま抜け出して、王子の国で幸せに暮らしていたはずです。
ラプンツェルは髪を切られて荒野に放り出されるし、王子は失明するし、これも魔女のせいです。
最後はハッピーエンドになりましたが、悪者のこの魔女は最後ひどい目にあうことはありませんでしたね。
グリム童話のパターンだと、悪者はひどい目にあうことが多いのですが、今回もひどい目にあってほしかったです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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