童話「三羽の小鳥」のあらすじと考察~変なおばあさんの扱いがカギ!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「三羽の小鳥」(KHM96)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

三羽の小鳥のあらすじ

千年よりもっと昔のこと、この国に身分の低い王様ばかりがいた頃、その中に、コイテル山に住んでいるのがいました。

あるとき、かりゅうどたちをお共に狩りに出ると、山の下に少女が三人いました。

一番年上の少女が、王様を指さして他の2人に言います。

「ねえ、あたし、この人と結婚できないなら、誰もいらないわ。」

すると二番目の少女が、王様の右側を歩いている人を指さして、

「ねえ、あたし、この人と結婚できないなら、誰もいらないわ。」

それから三番目の少女が、王様の左側を歩いている人を指さして、

「ねえ、あたし、この人と結婚できないなら、誰もいらないわ。」

王様は、この少女と結婚することにしました。

また、王様の右側と左側にいる人は2人の大臣で、それぞれの少女と結婚しました。

姉妹は三人とも美しいのですが、特に王様と結婚した少女の髪は、亜麻のような色でした。

妹二人は子供ができません。

やがて王様が旅に出てから、お妃は男の子を産みました。

その男の子は、真っ赤な星形が額についていて、とても美しい子でした。

ところが妹二人は、この男の子を川へ放り込んでやろうと相談したものです。

その川はウェーゼル河だと思われますが、川へ放り込むと、川の中から小鳥が一羽出てきて、歌を歌いました。

「死への旅路に出はしたが

かさねてご沙汰あるまで

百合むらに。

元気なぼっちゃん、それはお前かね」

これを聞くと、二人は怖くなって逃げだしました。

王様が旅から戻ると、二人は王様に、お妃は犬の子を産んだと言いました。

王様は、

「神様のなさることは、それでよろしいのだ。」

 

ところがこの男の子は運よく、川岸に住んでいる漁師の夫婦に拾われました。

この夫婦は子供が無かったので、この男の子を育てました。

一年経って、王様が留守の時に、お妃はまた男の子を産みました。

しかしその子も、悪い妹二人が奪い取って、川の中に放り込みました。

すると前と同じような小鳥が川から出てきて、例の歌を歌いました。

王様が戻ってくると、妹たちは王様に、お妃はまた犬の子を産んだと言いました。

王様はまた

「神様のなさることは、それでよろしいのだ」

と言い、この子もあの時の漁師の夫婦が見つけて育てました。

王様がまた旅に出ると、お妃は今度は女の子を産みました。

けれどもこの子も、妹たちにやっぱり川へ放り込まれました。

そうすると、また同じような小鳥が出てきて、

「死への旅路に出はしたが

かさねてご沙汰あるまで

百合むらに。

元気なおじょうちゃん、それはお前かね」

と歌いました。

妹たちは王様に、お妃は猫の子を産んだと言いました。

それを聞くと王様は腹を立てて、お妃を牢屋に放り込みました。

 

それから何年も経って、子供たちは大きくなりました。

漁夫は、自分が魚を取りに行ったとき、お前を川から引きあげたのだと子供に話して聞かせました。

そうすると一番上の男の子は、これからお父さんを探しに行くと言い、旅に出ました。

何日も歩いたあと、大きな川の前に来ました。

川の岸では、おばあさんが魚を獲っていました。

「おばあさん、こんにちは!」

「ありがとよ」

「おばあさんがおさかなを捕まえるまでは、ずいぶん時間がかかるでしょう。」

「そんなこと言って、おまえさんだってお父さんを見つけるまで、ずいぶん時間がかかるだろ。

お前、この川をどうやって越えるつもりだい?」

「そんなこと、僕には分からないよ。」

すると、おばあさんは男の子をおぶって、向こう岸に渡してくれました。

それから長いことお父さんを探しましたが、見つかりませんでした。

一年経ってから、二番目の子も兄さんを探しに行きましたが、例の川岸に着いた後、同じようなことになりました。

これで、うちに残っているのは娘が一人です。

娘は兄さんたちを探しに旅に出ると、やっぱり大きな川のそばに来て、おばあさんに

「おばあさん、こんにちは。」

「ありがとよ」

「お魚がうまく獲れるといいね」

この言葉を聞くと、おばあさんは気をよくして、娘をおぶって川を渡った上に、木の枝のむちを一本渡して、

「お前はいい子だ。この路をどこまでも行くんだよ。

大きな黒犬のそばを通るが、無視をしなければいけない。

その次には、大きな御殿のところに出るから、しきいの上にこのむちを落として、御殿を通り抜けるんだよ。

そこには古井戸から大きな木が生えていて、そこには鳥かごがかけてあって、鳥が一羽入っている。

それから、井戸の水を一杯汲んで、今度は来た道を戻るのさ。

しきいのところに来たら、落としておいたむちを拾って、それで犬を一発ぶつのさ。

それが済んだら、私のところへ帰っておいで。」

女の子が行くと、何もかもがおばあさんの言う通りで、帰り道でお兄さん二人にも会いました。

それから黒犬が寝そべっているところへ、むちで犬をぶちました。

すると犬は美しい王子の姿になりました。

川の岸へ戻ってくると、おばあさんはたいへん喜びました。

そしてみんなをおぶって川を渡ると、どこかへ行ってしまいました。

おばあさんも、これで魔法が解けたのです。

それからみんなで、漁夫の家に帰りました。あの鳥は、壁にかけておきました。

ところが二番目の息子は、うちにじっとしていられず、狩りに出ました。

すると王様に出くわし、

「お前などに、誰がここで狩りをしてよいと言ったのだ。」

「どなたのお許しもありません。」

「お前は、どこの者か。」

「わたしは、漁夫のせがれです。」

「あの漁夫なら、子供はいないはずだ。」

「では、わたしの家へおいでください。」

王様は漁夫の家をたずね、漁夫はこのわけを全てお話しました。

そうすると、壁にかかっている鳥も歌い出しました。

「おかあさまは一人、牢屋にはいり。

もしもし、王様、とうといかた、

こちらは、あなたの立派なお子さまがた、

わるい妹二人が、

お子さまがたの命をとろうと、

川の底に沈めたのを、

りょうしが救いあげました。」

これを聞いて、びっくりしました。

王様は、鳥と漁夫と、子供三人を御殿へ連れて、牢屋からお妃を出しました。

お妃は病みほうけて、ひどいありさまでしたが、お姫様があの井戸から汲んできた水を飲ませると、元気が出ました。

それから悪者の妹二人は、焼き殺され、お姫様は王子をおむこさんにしました。

 

三羽の小鳥の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まずこの童話での悪者は、妹二人ですね。

3人の兄弟姉妹はグリム童話でよく出てきますが、たいていの場合、悪者なのは上2人で、末っ子がひどい目にあわされます。

ですがこの物語では、一番上のお姉さんがひどい目に遭わされました。

これは、一番偉い王様と結婚するのは一番上の娘だという設定を強調したくて、ここでは妹二人を悪者の役にしたと考えられます。

そして気になるのは、この童話のタイトルにもなっている、三羽の小鳥のことです。

悪者の妹二人が、子供三人を川に投げ込んだ時、小鳥がそれぞれ出てきて、歌を歌いましたね。

ですが、物語の後半で、女の子がお兄さん二人を探しに行って、古井戸の木にかかっている鳥は、三羽ではなく一羽でした。

そしてこの鳥も、王様とお妃を助けるべく、最後に歌を歌いました。

しかしこの鳥は、小鳥ではなく、鳥という表現でした。

ここでは三羽ではなく一羽しかいなくて、鳥という表現を使っている。さらに同じように歌を歌ったことから、

この鳥は、三羽の小鳥の親鳥だと推測されます。

また、男の子2人と女の子1人がたどりついた川におばあさんがいて、

おばあさんは、女の子には木のむちを与えて、良いことを教えてくれましたね。

これは、男の子は「それじゃあ魚なんか獲るのにすごく時間がかかるよ」って言ったのに対し、

女の子だけは「うまく獲れるといいね」って優しくしたからです。

ここで、おばあさんは助力者ですが、優しくしてくれたお礼に、良いことを教えてくれるなど、助けてくれるのはアリがちなパターンです。

御殿の中でどうすればよいのかを知っていたのは、このおばあさんはもともと御殿の人間だと考えられます。

この御殿は、おそらく魔法をかけられていて、悪者が住み着いていると考えられます。

そこで御殿に着いた時にしきいに木の枝のむちを置いてから進みましたが、これは魔よけのような役割をしているはずです。

そして兄妹が帰ってくるとおばあさんの魔法が解けたというのは、

御殿から鳥を持ち出したことにより御殿にかかっていた魔法が解け、さらに自分の役目を果たしたから、解放されたと考えられます。

また、お妃が井戸の水を飲んで元気を取り戻しましたが、井戸の中から木が生えていることを考えれば、

それだけこの井戸の水に強い力が宿っていることがうかがえますね。

 

三羽の小鳥の感想

この童話の中で特に気になったのは、おばあさんが女の子だけに木の枝のむちを与えて、良いことを教えてくれたことです。

男の子二人はおばあさんに冷たくしましたが、女の子は優しくしました。

この選択肢が今後の展開の分かれ目になったところを見ていると、なんだかRPGの世界みたいだなって思って読んでいました。

また、三羽の小鳥の役目が最初は少ないように感じていましたが、最後に鳥が、子供たちのことや妹たちの悪事を暴きましたね。

こういうところで重要な役割を果たしてくれると、面白いものですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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