こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、「十二人兄弟」(KHM9)のあらすじと考察、感想をお話していきます。
十二人兄弟のあらすじ
むかし昔、あるところに王様とお妃さまがありました。
二人には子供が十二人ありましたが、この子らは男の子ばかりでした。
ある日王様はお妃さまに、
「13番目の子がもしも女の子だったら、今いる12人の男の子を死なせて、女の子に財産をあげて、この王国がその子一人のものになるようにしよう。」
と言い、お棺を12用意し、錠をおろした部屋に持ち込みました。
ところがおかあさまの方は、一日中悲しんでいたので、一番小さい子供のベンジャミンが、声をかけてきました。
お母様は最初は話しませんでしたが、やいやいうるさく言うので、12のお棺をこの子に見せ、
「ベンジャミンは、かあさんの大事なぼうや。この棺はね、お前と、11人のお兄さんのためのものなの。
お母さんが女の子を産むと、あなたたちはみんな殺されて、この中に入れられるの。」
「お母さま、泣かないでね。僕たち、どこかへ行って、きっとなんとかしますからね。」
するとお母様は、
「11人のお兄さんたちと一緒に、森へお入りなさい。それから、木の上から誰かがこのお城の方を見ているのですよ。
かあさんが白い旗を上げたら、男の子を産んだってこと。でももし女の子を産んだら、赤い旗を出します。
そしたら、できるだけ早く逃げてちょうだい。かあさんは毎晩、神様があなたたちを守ってくださいますように、お祈りをすることよ。」
それから子供たちはみんなお城を出て、森へ入りました。
一人ずつ順繰りに見張りをしながら、11日経って、順番がベンジャミンに回ってきたとき、旗が上がるのが見えました。
その旗は血のようなまっ赤な色でした。
お兄様がたはこれを聞くと腹を立てて、
「僕たちは、女の子一人のせいで死ななきゃならない。ようし、こっちだって、そのいしゅがえしをしてやる!
女の子を見つけ出し次第、そいつの血を流してやるんだ。」
それからすぐ、森の真ん中の、一番暗いところに、魔法のかかっている小さな空き家を一軒見つけました。
12人はここを家にして、ベンジャミンはうちの仕事をして、お兄さんたちは狩りに行くことにしました。
こうして10年という年月を一緒に過ごしました。
一方、あの日に生まれたお姫様は、気立てが良く、きりょうが美しく、額に黄金の星が一つありました。
あるとき洗濯をするとき、男物のじゅばん(下着)が12枚あることに気が付きました。
「この12枚のじゅばんは誰のものなの?お父様には小さすぎるわねぇ。」
するとお妃さまが、
「これはね、あなたの12人のお兄様がたのものなのよ。」
「どこにいらっしゃるの?12人のお兄様がいるなんて、一度もうかがったことがなくってよ。」
それからお母様は、12のお棺を見せて、あったことを残らず話しました。
「かあさま、お泣きにならないでね。あたし、お兄様がたを探しに行くことよ。」
それからお姫様は、12枚のじゅばんを持って旅に出て、まっすぐに例の森へ入り、魔法のかかっている小さな家に着きました。
中へ入ると男の子が一人いて、
「きみ、どこから来たの?どこへ行くの?」
と尋ねました。お姫様のような衣裳を着て、額に星がついてるのを見てびっくりしました。
「あたしは王女で、12人のお兄様がたを探しているの。どこまでも行ってお兄様がたを見つけるつもり。」
そして12枚のじゅばんを見せると、ベンジャミンはこれが自分の妹だと知って、
「ぼくはベンジャミンだよ。お前の一番小さなお兄さんだよ。」
二人は喜んでいましたが、女の子に出会ったら見つけ次第に殺してやるって約束をしていることを話しました。
それからベンジャミンは、お姫様を家の中の樽の下に隠しました。
夜になって、お兄様がたが狩りから帰ってきて、ご飯を食べているとき、ベンジャミンは話があると言い、
「一番最初に会う女の子だけは殺すのをよす」ということをお兄様がたに約束させました。
それから、
「僕たちの妹が来た」と言って、樽を持ちあげました。
するとお兄様がたは大喜びで、心からお姫様をかわいいと思いました。
それから妹とベンジャミンは家の仕事をしたり料理もして、11人のお兄さんたちは、狩りへ行く、という生活を続け、不自由なく暮らしました。
ところでこの魔法のうちには小さな庭があって、百合のような草花が12本生えていました。
お姫様はお兄さまがたにあげたくて、その花を12本とも折りました。
ところが、妹がその花を折ったとたんに、お兄様がたは12羽の鴉にばけて、どこかへ飛んで行ってしまい、その家も消えてしまいました。
かわいそうにお姫様は独りぼっちになってしまいました。
あたりを見回すとおばあさんが立っていて、
「お前、何をしたのだね?あの十二本の白い花を、なぜあのままにしておかなかったのだね?あれは、お前のお兄さんたちだった。
もうこれで、鴉になったきりだよ。」
「なんとかして、お兄様がたを救い出せないこと?」
「助ける道はたった一つあるんだけど、難しくってね。
お前は、七年の間口をきいてはいけないし、笑ってもいけない。
もしたった一言でも口をきこうもんなら、それで、水の泡になっちまう。そればかりか、兄さんたちは殺されてしまうのだよ。」
これを聞いてお姫様は決心し、高い木の枝に腰かけて糸をつむいでいましたが、口もきかず、笑いもしませんでした。
ある日、どこかの王様がこの森で狩りをしていました。
王様に、木の上に黄金の星のついている美しい王女が見えました。
王様は王女の美しさにうっとりとして、自分の連れ合いになる気はないかと声をかけました。
王女は返事をしませんでしたが、少しうなずきました。
王様は王女を連れ帰ると、ご婚礼の式をあげましたが、花嫁様は口をきかず、笑いもしませんでした。
王様とお妃は何年かの間楽しく暮らしましたが、王様のお母様は腹黒い女で、王様に向かって
「あなたのお連れは、身分のいやしいこじき娘です。内緒でどんな悪事をやってるか分からないし、笑わないなんて、心のやましい人ですよ」
と言いました。
王様はこれを本当にしませんでしたが、としよりが何度も繰り返し、いろんな悪い仕業をお妃にかずけたので、
王様はとうとう言い負かされ、お妃を死刑にすることにしました。
いよいよ、広庭でお妃が柱に縛り付けられて、火がお妃を包みだしたとき、ちょうど7年の年月が過ぎました。
そうすると、ばさばさと12羽の鴉が飛んできて、地面に降りてきました。
降り立つと同時に、お妃の12人のお兄様がたになっていました。
お兄様がたは火を消して、妹の体を自由にしてみんなで抱き合いました。
お妃はそれから、今まで口をきかなく、笑わなかったわけを王様に話し、王様もお妃になんの罪もないことを知って、喜びました。
それからはみんな一緒で、死ぬまで仲良く暮らしました。
一方悪人の継母は裁判にかけられ、煮えくり返った油や毒蛇の詰め込んである樽の中へ押し込まれ、死にました。
十二人兄弟の考察
それでは、ここからこの童話の考察に入ります。
この物語の冒頭で、王様が「もし次に生まれる子供が女の子だったら、この子に国をつがせて、十二人の兄たちは殺してしまおう」
という話をしていました。
普通に考えたらあり得ない話ですが、王様にとっては、12人の息子に対してたった1人の娘で価値のつり合いが取れていたということでしょう。
むしろ12人の息子なんかより、1人の娘のほうが良かったってことです。
この王様はそれだけ女の子が欲しいってことだと考えられます。
そして母親は12人の息子たちを大事にしているという記述がありますが、王様には、そういった記述が一切ありません。
王様にとっては、12人の息子を生贄にしてでも女の子が大事ということでしょう。
またこの物語では、王女はお兄さんたちを元通りにするため、7年間の沈黙を受け入れました。
そして気になるのは、グリム童話で沈黙を試練に与えられるのは、女の子ばかりなのです。
たしかに男の子でもしゃべっちゃいけないという時もありますが、せいぜい3日、一週間程度です。
女の子は長い年月、沈黙を試練に与えられます。
これは、キリスト教の新約聖書から来ていると考えられます。
女は教会では黙っていなければいけないという記述があるようです。
おそらくそこから、この童話でも、7年間の沈黙を言い渡されたと考えられます。
十二人兄弟の感想
この童話のポイントは、やはり一人のお姫様が12人のお兄さんと天秤にかけられたとき、一人のお姫様のほうが価値が高かったということです。
「紅一点」という言葉がありますが、その言葉もちょっとちらつきましたね。
やはり大人数の中一人だけ違う性別だと、それだけ価値が高くなるってことだろうなって感じました。
また、お兄さんたちを助けるために7年間口をきいてはいけないし、笑ってもいけないという難題は、普通に考えたら相当難しいです。
ですがそれだけ兄さんたちを愛していたし、はりつけにされて足元から火が来ようとしていた時もその約束を守ろうとしていたのは、
ものすごく名高いですよね。
結果、そのタイミングで7年の年月が過ぎて、お兄さんたちが助けに来たという結末は、ハラハラドキドキでした。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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