童話「鉄のハンス」のあらすじと考察~何がハンスを呪った!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「鉄のハンス」(KHM136)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

鉄のハンスのあらすじ

むかし昔、あるところに王様がありました。

王様はお城の近くに森を持っているのですが、この森に入った狩人は誰一人戻ってこないのです。

戻ってこない人を探しに行った狩人も、誰一人戻ってこないのです。

ある時、よその国から一人の狩人がやって来て、命がけのこの森へ入ることにします。

狩人は自分の犬を連れて森へ入りました。

この犬は森の中で鹿の足跡を見つけて、それを追いかけて行こうとしました。

しかしそこには深い沼のところで、腕が一本水の中から出てきたかと思うと、犬をつかんで引きずり込んでしまいました。

狩人はこれを見て、男を三人連れてきます。

そして三人の男は手おけで沼を掘り返すと、沼の底には山男がいました。

山男は、からだじゅうさびた鉄のような赤茶けた色をして、髪の毛はひざまでたれているのです。

男三人は、この山男を縄でしばって、お城へ連れて行きました。

そして山男は、鉄のかごに入れられて広庭に置かれ、かごの戸には鍵がかけられました。

ところで、王様には八歳になる王子がいました。

この王子が庭で遊んでいる時、おもちゃにしていた黄金のまりが、山男のかごの中に落ちました。

そこで、山男に言われるまま、王子は山男の鉄かごのかぎを開けてしまいました。

山男はかごの外に出ると、急ぎ足で行ってしまったので、男の子が

「だめだよう、行っちゃいけない、行っちゃうと、僕がぶたれるよう。」

と大声で呼びかけました。

すると山男は戻って来て、男の子を抱き上げると、肩車して早足で森の中に入って行きました。

しばらくして、王様はからっぽのかごを見つけました。

それから男の子を探しましたがどこを探しても見つからず、王様の御殿は悲しみに包まれました。

一方山男は森の中に着くと、

「もう、お父さんにもお母さんにも会えないのだよ。

だが、お前は私を自由にしてくれたのだから、私のところにおいてあげる。

私は世界中の誰よりも宝を持っているし、お前は幸せになれる。」

次の日の朝になると、山男は男の子を泉に連れて行って、

「これ、この通り、黄金の泉は透き通っている。

お前はこの中に何一つ落とさないように、気をつけているのだよ。

何かが落ちれば、泉はけがれる。私は毎晩、言いつけを守っているか見に来るからね。」

男の子は泉のふちに座って何も落とさないように気をつけていました。

しかしある時、指が痛くってたまらなくて、思わず指を泉に突っ込んでしまいます。

指はすぐに出しましたが、色は黄金色になって、どうやっても取れません。

日が暮れると、鉄のハンスが帰って来て、男の子をじっと見ながら

「泉がどうかしたかね?」

「どうもしません、どうもしません。」

「お前、指を泉に突っ込んだな。今回は見逃してやるが、二度と物を入れるなよ。」

次の日も、泉のそばに座って番をしました。

また指が痛くなって、その指で頭をなでたら、運の悪いことに髪の毛が一本泉の中に落ちてしまいました。

その毛はすぐに取り出しましたが、すっかり黄金色に染まっています。

それから鉄のハンスが帰ってきましたが、ハンスはちゃんと分かっています。

「もういっぺんだけ大目に見てやるが、三度目にやったら泉はけがれてしまう。

そうなったら、もうここにはいられないよ。」

三日目には、男の子は泉に映る自分の顔を見ていました。

ですがそうしているうちにだんだん前かがみになり、その時、長い髪の毛が肩から滑って、水の中にばっさり入りました。

男の子はすぐに立ち上がりましたが、髪の毛はきらきら、金色に光り輝いています。

男の子はハンカチを出すと頭へ巻き付けて隠しましたが、山男はちゃんと分かっていて、

「その布をとってごらん。」

金色の髪の毛が出てくると、

「お前はもうここにはいられない、世間に出なさい。

だがな、お前に悪気がなく、わたしはお前をかわいく思っているから、お前に一つしてやろう。

お前に困ったことがあったら、森へ行って、『鉄のハンス』と言ってごらん。

お前に力を貸してやる。私の権力は大きいぞ。」

こう言われて王子は森を立ち去ると、どこかの都のお城にたどり着きました。

そしてそこで、お料理番の人がこの子を使うことになりました。

あるとき、この男の子は王様のところに食事を持って行くことがありました。

王子は金色の髪の毛を見せたくなかったので、帽子をかぶって行くと、

「王の食事のところでは、帽子を取らなくてはならない。」

「帽子は取れません。頭にたちの悪いできものがありますので。」

すると王様はお料理番を呼び出し、なんでこんなこぞうを使うんだ、こんな奴はすぐに放り出してしまえ、と言いました。

けれども料理番はかわいそうに思って、この子を園丁の下働きにしました。

夏のある日のこと、男の子はたった一人で庭で仕事をしているとき、あんまり暑いので帽子を取って休んでいました。

お日様が男の子の髪の毛を照らすと、髪の毛はきらきら光って、その光線がお姫様の部屋に差し込みました。

お姫様は何がどうしたのか見ようと思って、

「こぞうや、花束を持ってきておくれ」

と言いました。

花を持ってお姫様の部屋に行くと、お姫様は

「帽子をお取りなさい。あたしの前で帽子をかぶっていてはいけないよ。」

と言うと、男の子はお断りしました。

しかしお姫様は帽子を取ったので、黄金色の髪の毛がさらさらと肩に垂れ下がって、きらきら輝いていました。

男の子が逃げ出そうとした時、お姫様は腕をつかんで、ドゥカーテン金貨を一つやりました。

次の日もその次の日も、お姫様は帽子を取ろうとしました。

しかし今度は、男の子が両手でしっかり帽子をおさえて、取れませんでした。

それから間もなく、お国中が戦争になりました。敵は強く、大軍を持っています。

これを聞くと男の子は、自分も戦争に行く、馬を一頭くださいと言いました。

ところがこの男の子にあてがわれた馬は、脚が一本折れて、不自由に歩く馬だけでした。

そこで男の子はこの馬に乗って例の森のはずれまで行き、大声で鉄のハンスを呼びました。

「なにが欲しいのだい?」

「強い千里の馬が欲しいんだ、戦に行くのだよ。」

「やるとも、やるとも。お前がねだらないものまでやるぞ。」

こう言うと、山男は立派な馬を一頭と、鉄の鎧と剣を持った戦人を大勢用意しました。

青年はここで馬を乗り換え、戦場に向かいました。

戦場では王様の兵隊はほとんど死んでしまって、残ったも者ももう少しで退却するところでした。

そこへ青年が軍勢を引き連れてくると、嵐のように敵に襲い掛かって、一人残らず討ち取ってしまいました。

若者はそのまま王様のところへは行かず、鉄のハンスのところに行って、後から三本足の馬に乗り換えて帰っていきました。

王様はお城に帰ると、お姫様が出てきて戦の勝利を喜びました。

すると王様は、

「勝利を得られたのは、軍勢を率いて加勢してくれたどこかのお侍のおかげじゃ。」

と言いました。

ですがそのお侍のことは誰にも分かりません。

お姫様は園丁に、こぞうはどうしたか聞くと、園丁は

「たった今しがた、三本足の馬に乗って戻って参りましたよ。

みんながお前、戦のあいだどこに転がって寝ていたか聞きましたら、

わしだって働いた、わしがいなかったら、とんでもないことになっていた、なぞと申していて、

おかしいって、みんなに笑われてましたよ。」

と話しました。

それから王様は、「これから三日の間祝宴をもよおして、その時お姫様が黄金のリンゴを投げる」というお布告を出しました。

王様はあの侍が出てくるかもしれない、と考えたからです。

このお布告が出ると、青年は森へ行って、鉄のハンスを呼びました。

「なにをしてほしいのだ?」

「王様のお姫様のリンゴを、僕が取りたいんだ。」

「それなら、お前に紅い具足もやるし、立派な栗毛の馬にも乗るがいい。」

その日が来ると、青年はお侍たちの中に入りましたが、誰もその顔が分かりません。

お姫様は黄金のリンゴを投げると、青年がそのリンゴを取ってしまって、誰の手にも入らず、飛ぶように去って行きました。

二日目には、鉄のハンスは青年を白装束のお侍にして、白馬に乗せました。

この日も、お姫様の投げた黄金のリンゴをつかむと、どこかへ行ってしまいました。

王様はお腹立ちで、

「けしからんやつじゃ、きゃつめ、わしの前に出させて、名乗らせてやるわ。」

そう言って、その侍がリンゴを取ってまた逃げ出すことがあれば、

その後を追って、リンゴを返さなければそやつを斬れと言いました。

三日目の青年の服装は、黒装束と黒馬です。

青年はまたリンゴを取りましたが、逃げようとしたところに王様の家来が追っかけてきました。

そしてそのうちの1人がすぐそこまで来ていて、剣で青年の足をケガさせました。

それでも青年は逃げたのですが、その拍子にかぶとが落ちて、金色の髪の毛がみんなに見えました。

ご家来たちはその一部始終を、王様に報告しました。

次の日、お姫様は園丁に下働きのこぞうのことを聞いてみました。

「あれは本当に奇妙な奴でございます。

なんでも、私の子どもたちに、自分の取ってきた黄金のリンゴを三つ、見せびらかしていました。」

王様は園丁のこぞうを呼び出しましたが、やっぱり帽子をかぶっています。

それならと、お姫様はその帽子をいきなり取りました。

そうすると、金色の髪の毛が肩の上に垂れて、それは美しいものでした。

「毎日、違う色の装束で祝宴の場に来て、黄金のリンゴを取った侍はお前だったか。」

「さようでございます。リンゴはここにございます。

王様の戦に加勢し、勝利を上げた侍も、わたくしでございます。」

「そのような手柄を立てられるなら、お前は園丁の下働きなどではないはず。言うてみよ、お前の父親は誰じゃ?」

「私の父は、強い国王で、お金もたくさん持っております。」

「わしはお前に礼をせねばならん、お前の望むものはなんだ?」

「お姫様を、わたくしにくださいませ。」

これを聞くとお姫様は笑い出して、

「それならば、わけないこと。わたくしはあなたの金の髪を見て、ただの園丁の下働きでないことは、分かっていましたわ。」

そう言って、青年にキスをしました。

ご婚礼にはお父様もお母様も来て、大変喜びました。

二度と王子に会えないと思っていたからです。

こうしてみんながご婚礼のお祝いの席についているとき、音楽がいきなり止まって、出入り口の戸が開きました。

そして一人の王さまが、大勢のご家来を連れて入ってきました。

王様は王子のところに行くと、王子を抱きました。そして、

「わしは鉄のハンスじゃ。呪いによって山男の姿にされていたが、お前はわしを救い出してくれた。

わしの持っている財宝は、みなお前のものじゃ。」

と言いました。

 

鉄のハンスの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

この童話は話が長く、登場した時は八歳だった王子がどんどん成長していく様子がそのまま書かれています。

登場時は、王子は黄金のまりで遊ぶくらい、子供でした。

それが鉄のハンスに連れていかれて泉の番をしました。

ですがこの時は、自分の犯した過ちを正直に言おうとせずに隠したので、まだまだ子供っぽさが目立ちます。

それからお城に行き、ここでお料理番の下っ端、園丁の下働きとして、生まれて初めて働くことになります。

ここから大人になっていくのですが、この時は王様やお姫様の前で自分の帽子を取らなかったです。

金色の髪を隠したかったとはいえ礼儀を知らないところを見ると、まだ未熟です。

ところがその後戦争になった時、自ら戦に行くと言い出しました。

さらにこの時この童話の本文では、「こぞう」という表現から「青年」という表現に変わっています。

このタイミングで、王子は大人になっと考えて良さそうです。

またお姫様は、金色の髪を見て、主人公はただの園丁の下働きではないと知っていたと言っていました。

この根拠は金色の髪だけでしたが、金色の髪はキラキラしていて、身分の高いものの象徴だったということが分かります。

続いて、鉄のハンスについて。

鉄のハンスは、もともとは王様ですが呪いをかけられて醜い山男の姿になっていました。

しかも、森へ入った者を沼に引きずり込むという悪さまでしていました。

こんな悪さをしていたのに、鉄のハンスが王子の味方をしたのは、

王子が鉄のハンスを鉄かごから解放して、その時に改心したと考えられます。

また、どういうトリガーで鉄のハンスの呪いが解けたかは書かれていませんでした。

しかし、泉に物を入れると黄金色になることと、お姫様が投げた黄金色のリンゴが関係ありそうです。

これは予測になってしまいますが、お姫様の投げた黄金のリンゴを、王子が3つ手に入れた時に呪いが解けたのではないでしょうか。

実は黄金のリンゴはこの泉に落ちたことがあったから黄金色になっていた。

そして、その黄金のリンゴを取りかえしたから、鉄のハンスの呪いが解けたとか、考えられそうです。

 

鉄のハンスの感想

それでは長くなりましたが、最後にこの童話の感想です。

鉄のハンスは、最初は身なりの汚い悪者ってイメージで読んでいました。

沼に人を引きずり込んでいましたし、山男って悪者にぴったりのイメージですよね。

ところが読み進めて行くと、まさかこの人物がこの物語の助力者だったって、意外な展開でした。

しかも、主人公の王子をかわいがって、4度も助けてくれたんですよね。

また、お姫様の執念も強かったですね。

この園丁の下働きはただ者ではないと思って、金色の髪を確かめようとしていました。

それも何度も帽子を取るもんだから、お姫様は絶対この時点で王子のことを気に入ってましたよね。

まるで、好きな男の子のことをもっと知ろうと近づく女の子みたいで、かわいかったです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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