童話「雪白と薔薇紅」のあらすじと考察~恩知らずな奴の末路

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より、「雪白と薔薇紅」(KHM161)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

雪白と薔薇紅のあらすじ

貧乏な寡婦(やもめ)がいました。

やもめは小さな小屋に暮らしていますが、庭には小さい薔薇の木が2本生えていて、一本は白、一本は紅い花が咲きました。

それから二人の子持ちで、一人は雪白(ゆきじろ)、もう一人は薔薇紅(ばらあか)という名前で、このかわいらしい薔薇の木のようでした。

子供たちはまことに信心深く、性格が良く、いつもまめに働いていました。

少し違うところは、雪白のほうが静かでおとなしく、

薔薇紅は草原を飛び回って花を探したり蝶々を捕まえるのが好きで、雪白は家にいるほうが好きでした。

子供たちは大の仲良しで、よく二人ぎりで森の中をかけ回って、動物たちもなれなれしく集まってきます。

雪白と薔薇紅は、お母さんの小さい家をいつも綺麗に掃除しておきます。

夏は薔薇紅が掃除の番になって、冬は雪白が担当します。

日が暮れて、雪がちらちら降ってくると、お母さんが

「雪白や、かんぬきを差しておいで。」

それから、三人ともかまどに寄り添って座ります。

お母さんは本を読んで聞かせ、女の子二人はそれを聞きながら、糸をつむいでいます。

みんなのそばには子羊が一匹、床に寝転んでいて、後ろには白い小鳩が一羽、止まり木に止まっています。

ある晩のこと、三人が仲良くしているところへ、入れてもらいたいかのように、戸を叩くものがありました。

「薔薇紅や、戸をあけておいで。宿をたずねてきた旅の方に違いない。」

とお母さんが言いました。

どんな人が来たのかと思ったら、人ではなく熊でした。

ぼてぼてした大きな黒い頭を戸の中へ入れると、

薔薇紅はきゃあと言って飛びのきました、子羊はメェーと鳴き、小鳩はバサバサ飛び、雪白は寝台の後ろに隠れました。

ところがこの熊は口をきいて、

「怖がらないでください、どうもしやしませんよ。寒くって寒くって、ちょっと火にあたらせてください。」

お母さんは、火のそばへ案内しました。

それから、雪白と薔薇紅を呼び、二人はそばに来ました。

子羊と小鳩も寄って来て、熊を怖がるものはありませんでした。

熊は自分の毛皮にくっついている雪をはらって欲しいと言うと、子供たちは箒ではらいました。

それからすっかり仲良しになって、手で毛皮をむしったり、足を背中にのっけてパン粉をこねるようなまねをしたり、いたずらをしました。

熊はいいようにおもちゃになっていましたが、いたずらがすぎたときだけ、

「生かしておくれ、子供たち、雪白や、薔薇紅や、お前のむこをころす」

と呼びかけました。

夜明けになると、熊を外へ出してやり、熊は雪の上を歩いて森へ帰って行きました。

その日から毎晩やってきて仲良くするのですが、春が近づいて外がいちめん緑になると、雪白に、

「私はおいとましなきゃいけない。夏の間はここに来るわけにはいかないのだよ。」

「いったいどこへ行くのよ、くまちゃん。」

「森の中へ入って、大事な宝物を一寸法師の悪党に取られないようにするんだよ。

一寸法師のやつらは地面の下にいて、冬の間は地面が凍っていて出て来れなかったのさ。

でも春になると、やつらは上に出てくるのさ。」

雪白はかんぬきを外すと、熊は出ていきましたが、その時にくぎにひっかかって、体の皮が少しむけました。

その時、毛皮の奥で何かが金色に光ったように見えました。

 

それからしばらくして子供たちが森へ行くと、地面に倒れた大きな木のまわりを、

ぴょこぴょこ踊り跳ねているのがありました。

それはしなびたおじいさんの顔をしていて、長い長い白いひげを生やした一寸法師でした。

その長いひげが木の裂け目に挟まって、取れないでいるのでした。

一寸法師は女の子たちをにらみつけながら、

「なんだって、そんなとこにつっ立ってるんだ、俺様に手を貸すこともできないのか。」

「なによ、どうしたのよ、小人のおじさんてば。」

そう薔薇紅が聞くと、

「なんだ、なんでも聞きたがる、わからずやめ。」

そう言うと、自分がこうなってしまったわけを話しました。

子供たちは一生懸命手伝いましたがどうにもできず、雪白は、かわいいはさみを出して、ひげの先をちょん切りました。

一寸法師は体が自由になると、金貨のつまっている袋をひっつかみ、

「無礼な奴らめ、よくも俺様の大事なひげを切ったな、こっぴどい目にあわしてやる!」

そう言って、ぶつぶつ言いながらすたすた行ってしまいました。

それからまたしばらくして、雪白と薔薇紅が、魚を釣りに行ったことがあります。

小川の近くに行くと、ぴょんぴょんはねて、まるで川の中へ飛び込もうとしているのが目につきました。

近づいてみるとそれはいつかの一寸法師で、

「きさまら、このいまいましい魚のやつが、おれを水ん中へひきずりこもうとしてるのが見えねえのか。」

一寸法師はここで釣りをしていたのですが、風がひげと釣り糸をからませたところへ運悪く大きな魚がかかり、

魚のほうが力があって、一寸法師を自分の方へ引き寄せてるのでした。

女の子二人は、一寸法師をおさえつけて、釣り糸からひげを引き離そうとしましたが、絡み合っていてダメでした。

そこで、またいつかのはさみでひげをちょん切りました。

一寸法師はこれを見て、

「このひきがえるめら!前に俺様のおひげを取ったのに、それでもまだ足りねえで今度も切って、

うちのやつに顔向けられないようにしやがったな。」

と怒鳴りつけました。

それから、真珠の入っている袋を取ってくると、とある石の後ろへ消えてしまいました。

それから間もなく、二人が町へ行く途中、あっちこっちに大きな岩が散らばっている荒野を通っていました。

その時、大きな鳥が一羽、とある岩の近くへさっと舞い下がりました。

すると世にも哀れな叫び声が聞こえてきて、駆けつけてみると、今のわしが、例のおなじみの一寸法師をさらっていこうとしています。

二人はもともと優しい性格ですから、すぐに小人をしっかり押さえて、あっちへこっちへ、わしと引っ張りっこしているうちに、

わしはとうとう、獲物をあきらめて逃げていきました。

一寸法師は正気に戻ると、

「きさまたち、もっと丁寧に俺様を助けることができなかったのか。

よくもこんなぼろぼろに引っ張りやがったな、俺のおめしものをよお。

なんてえろくでなしの、とんちきだ!」

それから、宝石の入っている袋をとって、自分の洞穴へ入って行きました。

女の子たちは、この一寸法師の恩知らずには慣れているので、何とも思わずに町へ行きました。

帰り道にこの荒れ野を通ると、一寸法師がいて、宝石の入った袋を地面に開けていました。

子供たちがこの綺麗な宝石を見ていると、

「なんだって、そんなところで、口開けて見てるんだ!」

と、一寸法師がわめきました。

とそこへ、大きなうなり声が聞こえて、黒熊が一匹、森の中からかけてきました。

一寸法師は跳びあがりましたが、すぐ近くまで来ていて、もう自分のかくれがへ逃げ込む時間はありません。

一寸法師は悲鳴を上げて、

「これはこれは、お熊さま。ごかんべんください。

あたしの宝物を、残らず差し上げます。見てください、ここに見事な宝石がございます。

あたくしのようなちっぽけなのなんか、あなた様にはなんの足しになりません。

それより、この二人組のバカたれ娘をひっつらってください。」

熊は、一寸法師の言うことは無視して、この悪者をぽかりと殴りつけました。それきり動きません。

女の子たちはすぐに逃げましたが、後ろから熊が、

「雪白や、薔薇紅や、大丈夫だ、一緒に行こう。」

と呼びかけました。

その声が分かったので、二人は立ち止まりました。

そして熊が二人のところに来ると、

いきなり熊の皮が脱げ落ちて、そこには美しい男の人が立っていて、着ているものは金糸織のものでした。

「わたしは、王様の子だよ。

わたしの宝物を盗んだ、罰当たりなあの一寸法師に呪われて、あれが死ぬまで熊になっていた。

一寸法師め、今度こそ罰が当たったさ。」

雪白はこの王子と結婚し、薔薇紅は王子の弟と結婚しました。

それから一寸法師の洞穴にあったお宝を手に入れて、年取ったお母さんも何不足なく暮らしました。

薔薇の木2本はお母さんが持っていて、毎年、白と紅のそれはそれは美しい花が咲きました。

 

雪白と薔薇紅の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まずこの物語の主人公、雪白と薔薇紅の性格ですが、

二人は信心深くて優しいなど共通点が多く、雪白は物静かでインドア派、薔薇紅は活発でアウトドア派でした。

もともと白は、純粋さ、潔白さを表していて、赤は情熱を表す色です。

この二人の登場人物にはぴったりの色です。

ところで、ここで出てくる熊には、気になるセリフがありました。

「生かしておくれ、子供たち、雪白や、薔薇紅や、お前のむこをころす」

このセリフは、熊と仲良くなった後、二人のいたずらが過ぎた時に言ったセリフです。

「お前のむこを殺す」ということですが、物語の最後でこの二人の婿になったのは、熊だった王子とその弟です。

それを殺すとはどういうことかですが、最初はあの一寸法師のことかと考えられます。

一寸法師は熊が殺したものなので納得がいきますが、そうすると「お前の婿」というのがかみあいません。

ですが、一寸法師を殺すことによって、元の王子に戻る、つまり熊がいなくなりますよね。

この熊はゆくゆくは雪白のむこになるので、「一寸法師を殺してのちの婿である熊を消す」というのを、

「むこを殺す」と表現したと考えられます。

そしていたずらが過ぎた時にだけ言ったのは、雪白と薔薇紅からいたずらされすぎて頭にきて、ついつい本性が出てしまったと考えられます。

また、途中に出てくる一寸法師は、金貨、真珠、宝石の袋を持っていました。

これは熊が持っていたものだと考えられますが、そうすると一寸法師は熊を出し抜いて宝物を奪ったことになります。

そしてこの一寸法師は地下に住んでいるという設定は、天国は上で地獄は下にあることから、

悪者は地面の下の世界に住んでいることの一例だと考えられます。

 

雪白と薔薇紅の感想

この物語では、最初寡婦が登場して、夫を亡くしているということですが、

二人の子供がいますし、子羊や小鳩が家にいるので、なんだかんだ楽しく暮らしている様子がうかがえますね。

なので思ったよりもこのお母さんは不幸ではない感じがします。

この話で一寸法師は、本当に悪者でしたね。

助けてもらっておいて、恩知らずな言動を吐くというのは、読んでいてイライラしたところがあります。

もっとも、現実世界でもこういう人がいるので、そういう人とは関わり合いになりたくないですよね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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