童話「狼と七匹の子やぎ」のあらすじと考察~人間はこんなもんですよ

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

今回は、グリム童話より、「狼と七匹の子やぎ」(KHM5)のあらすじと考察、感想をお話していきます。

 

狼と七匹の子やぎのあらすじ

むかし昔、あるところに山羊のお母さんがいました。

おかあさんやぎは7匹の子持ちで、それはそれは可愛がっていました。

ある日お母さんは、森へ食べ物を取りに行こうと思って、

「みんな、母さんはこれから森に行くけど、狼に気をつけるんだよ。

狼がもしうちへ入ってきたら、お前たちをみな、頭からまるかじりにしてしまいますよ。

それから狼はなりをちがえてくるけど、声はしゃがれているし、足は真っ黒だからね。」

そう言い残し、うちを出ていきました。

いくらもしないうちに、入口を叩く音がして、

「あけておくれ、ぼうや。かあさんですよ。」

と声がしました。でもその声はしゃがれていたので、

「あけてやらないよ、お母さんは、綺麗なかわいい声だよ。お前の声は、しゃがれた声だ。お前は狼だい。」

そうすると狼は、どこかのお店に行って、大きな白墨を買って食べて声をよくしました。

それからまた子やぎのところに行って、戸を叩いて、

「あけておくれ、ぼうや。かあさんですよ。」

けれども狼は真っ黒な前足をしていたので、

「あけてやらないよ、おかあさんは、お前のような真っ黒な足じゃない。お前は狼だい。」

そうすると狼は今度はパンを焼く人のところにかけつけて、

「けつまづいて足を痛めた。パンをこねたのを足につけてくれ。」

と言ってつけてもらうと今度は粉ひきのところに行って、

「おれの足へ、白い粉をかけてくれ。」

と言いました。

粉ひきは、狼のやつは誰かを騙すつもりだと思って断りましたが、

「きさま、言うことを聞かないときさまを食っちまうぞ。」

と言ったので、怖くなって狼の足を白くしてやりました。

まあこんなものですね、人間と言うのは。

 

それから山羊のうちの戸を叩いて、

「あけておくれ、ぼうや。かあさんですよ。」

と言いました。

狼の足が白かったので、子やぎ達は本当だと思って戸を開けました。

ところが入ってきたのは狼で、子やぎ達は急いで隠れました。

1匹は机の下、2匹目は寝床の中、3匹目は置きストーブの中、4匹目は台所、5匹目は置き戸棚の中、6匹目は洗濯だらいの中、7匹目はかべ時計の振り子の箱の中。

でも狼は次々と見つけ出し、大きな口の中へ鵜呑みしてしまいます。

ただ、時計の中にいた一番小さな子だけは、見つかりませんでした。

狼はお腹がいっぱいになると、外の草原へ出て、寝っ転がって寝てしまいました。

それからお母さんやぎが帰ってくると、お母さんやぎの目に映ったのは、荒らされた家の中でした。

子供を探しましたが、どこにも見つかりません。

子供たちの名前を順番に呼んでみても返事がなく、おしまいに末っ子の名前を呼んでみたら、

「おかあさん、ぼくお時計の中に入っているよう。」

お母さんは、末っ子を外に出すと、狼が来て、他の子はみんな食べられてしまったということを聞きました。

お母さんがどれだけ泣いたことでしょう。

やっとのことで外へ出て、草原にいくと、狼が寝っ転がって、大きないびきをかいていました。

お母さんやぎが狼を見ていると、お腹がもくもく動いているのが目につきました。

「おや!かわいそうに。狼に食べられた子供たちがまだ生きているかもしれない。」

そう考えて、子やぎに、はさみと針と糸を持ってこさせました。

お母さんが狼の腹をはさみで切ると、子やぎが次々と、6匹とも飛び出してきました。

しかもみんな生きているばかりか、狼が子やぎをまるごと飲み込んでいたので、どれもこれもけが一つしてませんでした。

子やぎ達はお母さんに抱きついて、嬉しがりました。

「さ、そこいらへ行ってごろた石を探しておいで。狼のお腹へ、寝てる間に詰め込んでやりましょう。」

お母さんの言われた通りに石を集めてくると、お腹に石を詰めて、元通り縫い合わせました。

が、その間、狼は気づかず眠っていました。

それから狼がやっと起き上がると、お腹の石のせいでのどがカラカラだったので、泉へ水を飲みに行きました。

泉で水を飲もうとしたとき、身を乗り出すと、お腹の石っころが狼を水の中に引っぱり込んで、

狼はむごたらしくおぼれて死んでしまいました。

七匹の子やぎがこれを見てかけ出してきて、

「狼が死んだ、狼が死んだ」

子やぎ達は嬉しそうに、泉の周りをおどりました。

 

狼と七匹の子やぎの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まずこの物語の冒頭の部分で気になるところがあります。

それは、この7匹の子やぎには母親しかおらず、父親がいないということです。

なぜ父親のヤギが出てこないのかなと考えたのですが、これは親の愛情をより表現するためだと考えられます。

子供への愛情は、母親の方が強い傾向にあります。

例えば人間では母親の出産後、子供の世話をしたくなる脳内物質が分泌されますが、父親の方には分泌されません。

この童話では、父親を登場させないことによって、母親の子やぎへの愛情をより強くしている感じがします。

狼は子やぎを騙すため、白墨を食べたり、白い粉を足にかけてもらいました。

この時に粉ひきは最初ためらいましたが、狼に脅されると、言うことを聞いてしまいます。

ここで童話の中に「人間なんてこんなもんですよ」という記述がありましたが、

グリムがわざわざこんなことを書いたのは、グリムが当時私生活で、人間に幻滅していたこともありそうです。

童話集として本を出版するときに、出版者ともめごとがあったことも関係しているかもしれません。

また、この話の中で7匹目の子やぎだけは助かりましたね。

全部狼に食べさせる展開にしても良かったのに、あえてこの展開を選んだのは、

「末っ子の子だけは情けをかけたくなった」という心理が働いた可能性もありそうです。

ただいずれにせよ、童話では主人公に試練が多く用意されていて、この童話でも末っ子にとって、兄弟がみんな食べられてしまいました。

 

狼と七匹の子やぎの感想

この童話はグリム童話の中でも有名で、僕が小さい頃から絵本で読んでいた物語の一つです。

当時は子供ながら、かわいい子やぎが怖い狼に食べられちゃって、ざまあみろなんて考えたりもしていました。

でもそう言いながら、最後にみんな助かると、良かったなってホッとしていたのを覚えています。

子供のころはこういう残酷なことを考えたりしましたが、今ではその類のものを実写で見ると、逆にトラウマになりそうです。

昔は絵本で読んでいましたが、こういった残酷な話・過激な話も、子供用に読みやすくされていて、絵本って本当にすごいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

さて、ここではマッチ売りの少女などの童話がモチーフになっている、かわいくてメルヘンチックな音楽を6曲プレゼントしています。

ブログ主が創った、童話の物語が歌詞になって展開していく、美しい声の女性ボーカルとファンタジーなメロディーが特徴の音楽です。

この童話の音楽6曲を無料で受け取るは、こちらをご覧ください。

というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

<関連記事>

童話「ジャックと豆の木」のあらすじと考察~ジャックは悪者なのか!?

童話「空飛ぶトランク」のあらすじと考察~ダメな奴が調子に乗ると・・・

童話「三匹の子豚」のあらすじと考察~狼が子豚にビビる!?

童話「おやゆびこぞう」のあらすじと考察~からかわれた男たちが取った行動は

童話「おやゆび姫」のあらすじと考察~最後に出てくるマーヤって誰?

童話「怪鳥グライフ」のあらすじと考察~川に沈められるのは意外なアイツ?

童話「ラプンツェル(野ぢしゃ)」のあらすじと考察~長い髪を切られた女はどうなる

童話「蜜蜂の女王」のあらすじと考察~こんな平和な結末はめずらしい

童話「子供たちが屠殺ごっこをした話」のあらすじと考察~ひたすら死ぬのは誰?

童話「水の魔女」のあらすじと考察~迫りくる恐怖と逃げ惑う小鳥たち

※童話一覧へ