童話「シンデレラ(灰かぶり)」のあらすじと考察~かぼちゃの馬車はなくなったのか!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より、「シンデレラ(灰かぶり)」(KHM21)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

シンデレラ(灰かぶり)のあらすじ

お金持ちの男がいましたが、その妻が病気になりました。

いよいよ死ぬときになると、歳のいかない一人娘を呼び出して、

「お前はいい子だからね。

いつでも神様を大事にして、気立てを良くしているのよ。

そうすれば神様はお前を助けてくれるし、母さんも、天国から見下ろしているよ。」

こう言うと、お母さんはこの世を去りました。

娘は毎日、お母さんのお墓の前で泣いてばかりいました。

それから、神様を大事にして、気立てをよくしていました。

それからしばらくすると、男は別の妻を迎えました。

その女は二人の娘を連れ子にしていましたが、美しいのは顔ばかりで、心はそれはそれは汚く、真っ黒でした。

その時から、まま子にとって辛い日々が始まったのです。

まず三人は、まま娘から綺麗な着物をはぎとって、ねずみ色の古い汚い服を着せ、木の靴をあてがいました。

それからまま娘は、朝から晩まで辛い仕事をさせられました。

日の出前に起きて、水を運んだり、火をたいたり、食事の準備をしたり、洗濯などをしなければなりませんでした。

さらに姉妹たちにいじめられたり、悪口を言われます。

それから、エンドウ豆やひら豆を灰の中にぶちまけられ、それを拾わなければなりませんでした。

しかも寝床には入れず、かまどのそばの灰の中で寝なければなりませんでした。

こんなわけでこの娘はごみだらけ灰だらけで、この娘はシンデレラ(灰かぶり)と呼ばれました。

あるとき、お父さんが大きな市場に行くとき、姉妹二人と、シンデレラに何がおみやげに欲しいか聞きました。

「綺麗な着物」

「真珠や宝石」

そしてシンデレラは、

「お父さんの帽子に一番先にぶつかった木の小枝。」

お父さんは、市場に行って、それぞれの望むものを持って帰ってきました。

シンデレラはお礼を言って、お母さんのお墓に行くと、小枝をお墓にさして、泣いていました。

やがてその枝は大きくなって、立派な木になりました。

シンデレラは毎日3回泣きながらお祈りをしましたが、そのたびに白い小鳥がやってきて、

なんでも欲しいものを投げ落としてくれるのです。

ところで、この国の王さまが饗宴(ごちそう)を開くことがありました。

これは三日間続き、お国中のお嫁入り前の美しい女たちが全員招かれるのですが、

これは王子が花嫁を探し出すためでした。

例のまま姉妹二人は、自分たちもそのお席へ出れるとなるとうきうきしながらシンデレラを呼びつけて、

「あたしたちの髪をすいて、靴を磨いて、とめがねをしめてね。ごちそうに呼ばれて、お城へ行くのよ。」

シンデレラは言う通りにしましたが、泣きました。自分も行きたかったからです。

そこで、自分も行かせてくださいとまま母にお願いしました。

「お前、汚いくせにごちそうの席に行こうって言うのかい?

ひら豆を皿一杯、灰の中にぶちまけてある。それを2時間で元通り皿に戻したら、行かせてあげる。」

娘は外へ出て、

「家はとちゃん、山はとちゃん、小鳥ちゃん、みんな来て、拾うのを手伝ってちょうだいな。」

そう言うと、鳥たちが一斉に集まってきて、灰のまわりに降りました。

そしてコツ、コツ、コツと、豆を拾って皿に入れ、1時間で仕事を片付けました。

娘はその皿をまま母のところに持って行きました。

ニコニコして、自分も一緒に行けると思っていました。

ところが、

「だめよ。お前は着物がないし、ダンスができない。笑われるだけさ。」

すると娘は泣きだしたので、まま母は、

「二皿のひら豆を、1時間で灰の中から拾い出せたら、お前も連れてってあげる。」

まま母は、こんなことできっこないと思っていたのです。

そうしたら、娘はもう一度鳥たちに手伝ってもらって、1時間でこの仕事を終えました。

娘はにこにこして、今度こそ自分もごちそうの席に行けるだろうと思っていました。

ところがまま母は、こう言うのです。

「何をしたって、お前は行けないんだよ。

お前には着物もないし、お前が来たら、あたしたちはとんだ恥をかくんだよ。」

こう言うと、まま母は姉妹と三人で行ってしまいました。

うちに誰もいなくなると、シンデレラはお墓の木の下に行って、

「はしばみちゃん、黄金や白銀、あたしに落としてちょうだいな。」

そう言うと、いつもの鳥が、黄金と白銀の糸で織った着物と、

絹糸と白銀の糸で刺繍されたおざしきぐつを投げ落としてくれました。

それから娘は、大急ぎでその着物を着て、ごちそうの席に行きました。

姉妹にもまま母にもシンデレラが分からず、どこかの王女様だと思っていました。

シンデレラは、それほど美しく見えたのです。

王子はシンデレラのところへ行って、手を取って、舞踏(ダンス)を踊りました。

他にシンデレラと踊りたい者が来ると、

「これは僕の踊り相手だよ。」

と言うのでした。

そのままずっとシンデレラと踊っていると日が暮れて、うちへ帰ると言いました。

すると王子が、

「僕も一緒に行く。」

王子はこの美しい娘はどこの娘だが知りたかったのです。

けれども娘は王子を振り切って、鳩小屋に飛び込みました。

そこへシンデレラの父親が出てきたので、王子は

「よその娘がここに飛び込んだと思うのだが」

と言うと、父親は

「それはシンデレラじゃないだろうか」

と考えました。

それから斧で鳩小屋を真っ二つに割ると、中には誰もいません。

そしてみんながうちに帰ってきた時には、シンデレラはいつものように汚い着物を着て家にいました。

次の日、ごちそうがまた始まって、お父さんとお母さんと、まま子の姉妹が出かけると、

シンデレラは、

「はしばみちゃん、黄金や白銀、あたしに落としてちょうだいな。」

そう言うと、いつもの小鳥が、前の日よりも立派な着物を投げ落としました。

この着物を着てごちそうの席に行くと、そこに居たものは美しさに見とれました。

王子はシンデレラが来るのを待ち構えていて、すぐにダンスを始めました。

そのうちに日が暮れて、シンデレラが帰ろうとすると、王子はどの家に入るか見るつもりでした。

ところがシンデレラは跳ぶようにして、家の後ろの畑に入りました。

そこには1本の梨の木があって、さっと登ってしまうと、王子はどこに行ったのか分からなくなりました。

待ってるうちに父親が来たので、

「どこかの娘に、逃げられてしまった。この梨の木に登ったと思うのだが。」

(そいつはシンデレラではないかな。)

父親はこう考えながら、斧で梨の木を伐り倒しましたが、誰もいません。

そしてみんなが家に入ると、シンデレラはいつも通り、灰の中で寝転んでいました。

三日目にも、お父さんやお母さん、姉妹が出かけるのを待って、またお墓へ行って、

「はしばみちゃん、黄金や白銀、あたしに落としてちょうだいな。」

そうすると、いつもの鳥が着物を落としましたが、

今度のは世の中の誰も手に入れたことがないような美しく光り輝いていたもので、おざしき靴は金でできていました。

この日も王子は、シンデレラと踊りました。

そして日が暮れてきて、シンデレラは立ち去ろうとしました。

この日も王子はシンデレラを追いかけますが、追いつけません。

ところがこの日は王子は策を考えていて、階段一面にべたべたしたチャンをぬっておきました。

シンデレラがそこを通ると、おざしき靴の左の方がぺったりくっつき、そこに置き去りになりました。

王子はその靴を持ち上げると、小さくてあざやかで、どこまでも金色でした。

次の日、王子は靴を持って、父親のところにやってきました。

「僕が結婚するのは、この黄金の靴がぴったり合うものに限る。」

これを聞いて、姉妹二人は喜びました。

まずは姉むすめが、靴をはいてみました。

が、つま先が大きいので足が入りません。

するとお母さんは、

「足の指なんか切ってしまいなさい。お妃になれさえすれば、歩かなくたって済むからね。」

そして包丁を持ってくると、つま先を切り落として、痛いのを我慢して無理やり靴をはきました。

王子はこの姉が自分のお嫁さんだと思って、馬に乗せて一緒に行ってしまいました。

ところが、例のお墓のところを通ると、はしばみの木にかわいい家鳩が2羽とまっていて、

「ちょいと、後ろを見てごらん、靴は血だらけさ、

靴が小さすぎるのさ、本当のお嫁は、うちのなか」

と、言いました。

こう言われると、王子は本当の嫁ではないことに気づいて、うちへ戻ると、

もう一人の娘にこの靴をはいてもらうことにしました。

それで、今度は妹むすめが靴をはきました。

つま先はうまく入ったのですが、今度はかかとが大きすぎるのです。

するとお母さんが、

「かかとを切りなさい。お妃になれさえすれば、歩かなくたって済むからね。」

娘はかかとのはじっこを切り落として、痛みを我慢しながらはきました。

それから王子は、この娘を馬に乗せて一緒に行きました。

二人がはしばみの木のところを通ると、かわいい家鳩が二羽とまっていて、

「ちょいと、後ろを見てごらん、靴は血だらけさ、

靴が小さすぎるのさ、本当のお嫁は、うちのなか」

王子は本当の嫁ではないと気づくと、うちへ戻って、

「これも、本当の嫁ではない。」

「お前がたに、ほかに娘はないかね。」

すると父親が、

「ございません。

「もっとも、前の家内の残しました、発育の足りぬむさくるしい娘がもう一人いますが、

これはとてもお嫁に行けるものではありません。」

王子がその娘を連れてきてほしいと言うと、母親は

「まあ、とんでもない。あれはむさくるしいにもほどがあります。

とても、お目がかなうものではございません。」

けれども、王子は会いたいと剛情をはったので、シンデレラは呼び出されました。

娘は、まず手と顔を洗ってから王子の前に行きます。

それから黄金の靴をはくと、靴はぴったり合いました。

それから王子は娘を見ると、これが舞踏の相手だとはっきり分かったので、

「これが本当の嫁だぞ」

と言いました。

まま母と二人の姉妹はびっくりして、怒りだしました。

ですが王子はそんなことに構わず、シンデレラを馬に乗せ、行ってしまいました。

二人がはしばみの木のそばを通ると、二羽の家鳩が、

「ちょいと後ろをみてごらん、靴に血はついてない、

靴はぴったりだもの、本当のお嫁を連れて行く。」

鳩たちはこう言って、シンデレラの左右の肩に一羽ずつとまりました。

そして、いよいよ王子とのご婚礼の式です。

そこへあの姉妹の二人がやってきて、シンデレラの福を分けてもらうつもりでいました。

王子とシンデレラが教会へ行く時になると、姉と妹が、付き添って歩きました。

すると、二羽の鳩が、二人の姉妹から目玉を一つずつつつき出しました。

式が済んで、教会から出てくると、二羽の鳩が、姉妹のもう一方の目をつつき出しました。

こうして、二人の姉妹は、シンデレラに意地悪をし、替え玉になろうとしたから、

罰があたって、一生めくらで過ごしました。

 

シンデレラ(灰かぶり)の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、まま母とまま姉妹が来てからのこと。

シンデレラは、家の仕事をなんでも押し付けられていました。

ここで気になるのは、シンデレラのやらなければいけないことが事細かに書かれていたことです。

シンデレラの仕事は、水をくみ、火をたき、食事を作り、洗濯をすることでした。

さらに、朝は日が昇る前に起きなければならなく、寝るときは灰の中で寝なければいけません。

そして灰の中に豆をぶちまけられ、それを拾うのもシンデレラの仕事です。

と、このようにやらなければいけないことや、まま母たちからの仕打ちが事細かに書かれています。

これは、グリム兄弟が、女の働くことの美徳を強く持っていたことが関係してきそうです。

そしてその労働の報酬として、シンデレラは輝く着物と靴、王子との結婚を得られました。

このように、グリム童話の女主人公は労働をちゃんとした者にはそれ相応の報酬を用意しています。

ホレおばさんなどでもそうでしたね)

一方、意地悪なまま姉妹二人は、最後目をついばまれ、一生めくらになりました。

これは、グリム童話のいつも通りの悪者に対する仕打ちですね。

グリム兄弟は悪に対しては徹底的に罰を与えています。

そして、この童話ではいつもお決まりの、ハッピーエンドの言葉がなかったことも注目です。

普通、

「王子様と結婚して一生楽しく暮らしました」

「それからお金に困ることなく、生涯面白おかしく暮らしました」

などといった記述があるのですが、この童話にはありませんでした。

これは、二人の姉妹がよっぽど悪者だったから、彼女への最後の仕打ちを強調しようという意図があるように思えます。

わざとハッピーエンドの記述を書かないことによって、仕打ちのインパクトを強調したと考えられます。

また、父親はいったいなんだったんでしょうか。

父親は実の娘のシンデレラを守ってやることはなく、

むしろ王子が靴を持ってきて会わせてほしいと言った時に、

むさくるしい娘だと言っていたくらいです。

でも、父親はまま母と姉妹二人におさえつけられて、手助けができなかったと考えられます。

しかも、グリム童話全体として、女の子の父親って影が薄い場合が多いんですね。

 

シンデレラ(灰かぶり)の感想

この童話を読んだ率直な感想は、辛い毎日でも耐えていれば、そのうち良いことがあるんだなってことです。

シンデレラは性格が良くて美しい、まさにヒロインにふさわしい女の子です。

困難を乗り越えた先に王子と結婚するって、多くの人が憧れるような人生ストーリーですよね。

僕も完全にこの世界に入ってしまっていました。

あと、グリムのは一般的に有名なシンデレラの話とは少し違います。

かぼちゃの馬車がなかったり、靴がガラスの靴でなかったり。

ちなみに類話の、ペロー童話のサンドリヨンは、より絵本のシンデレラに近いです。

サンドリヨンもシンデレラも、「灰まみれ」の意味ですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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