こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operattaです。
ここでは、グリム童話より「うまい商売」(KHM7)のあらすじと考察、感想までお話していきます。
うまい商売のあらすじ
どこやらのお百姓が、自分の牝牛を七ターレルで売り飛ばしました。
帰りには池のそばを通りましたが、蛙たちの「アク、アク、アク」という鳴き声が聞こえてきました。
「あーん、何言うんだ、七だぞ、おらの売った代金は。八なもんか。」
お百姓は池のところまで来ましたが、蛙たちは
「アク、アク、アク」と言うばかりです。
「それなら、お前たちの前で勘定してやろう。」
お百姓は七ターレル勘定しました。
けれども蛙たちはそれには無頓着で、「アク、アク、アク」と言うばかりです。
「なんだと、それなら、お前たち自分で勘定してみろ」
そう言うと、お金を池に放り込みました。お百姓は蛙が勘定して返してくれるのを待っていました。
ですが蛙たちは「アク、アク、アク」と言うばかりで、お金も返ってこず、日が暮れてきたので帰ることにしました。
「あんだ、お前たち、ぎゃあぎゃあ言うばかりで、七ターレルの勘定すらできやしねぇ、おら、いつまでもここにいると思うか。」
そう言って立ち去りましたが、後ろから「アク、アク、アク」という声がまだ聞こえて、すっかり機嫌を悪くしました。
そのうち、お百姓は牝牛をつぶして、その後いくらになるか計算してみました。
この肉を売れば牝牛2頭分くらいのお金になりそうですが、その肉を持って町へ行くと、
大きな犬が「ワス、ワス、ワス」と吠えていました。
「ようし、お前この肉が欲しいから、ワス、ワスと吠えてるんだな。お前にくれてもいいのだが、おらの儲けが無くては困るだがの。
お前、肉を渡したらそこにいるやつにもうけあうか?」
「ワス、ワス」と大きな犬が言いました。
「ようし、それならおめえに任せるだ。おめえの奉公先もよく知っとる。ええか、三日経ったら代金をもらうぞ。」
そう言うと、百姓は肉を置いて帰りました。
すると犬どもが群がってきて、「ワス、ワス」と吠えたてました。
三日経つとお百姓は、今夜は銭が入る、と楽しみにしていました。
ですが誰も銭を持ってこず、町の肉屋へ行って、代金を払ってもらおうとします。
肉屋は冗談だと思ってましたが、
「冗談なんかじゃねぇ、あのでかい犬が、おらの肉をお前んとこに持ってったでねぇか。」
お百姓がそう言うと、肉屋はかんかんに怒りました。
お百姓は面白くなさそうになって、それから王様のお城へ行きました。
王様とお姫様の前で、どういう目に遭ったか聞かれると、
「あんとも!蛙と犬どもめが、てまえのものをとったでがす。
それから、その代金を取に行ったら、肉屋のやつがてまえをどやしつけたのでがす。」
と言って、あったことを詳しく話しました。
それを聞くとお姫様がげらげら笑いだして、
「お前が正しいとはいえない。だが私の娘をお前にやる。
娘は今まで一度も笑ったことがなかったのだから、果報のお礼にやろう。」
ところがお百姓は、
「おら、お姫様なぞいりません。おらのうちにはおっかあが一人いて、ただでさえそれでいっぱいいっぱいなんです。」
王様はそれを聞くと腹を立てて、
「お前は礼儀を知らん奴だ」
「王様、牛からとれるのは牛肉だけでがす。他のものをとろうったってそうはいきません。」
「待てよ。お前には別のほうびをつかわす。三日経ったらやってこい。五百だけつかわすぞ。」
お百姓が出てくると、番兵がほうびをもらったか聞いてきたので、五百もらったと言いました。
すると番兵が分けてくれと言ってきたので、
「お前には二百くれてやる。三日経ったら、王様のところへ行ってちょうだいしなよ。」
そこにはユダヤ人も近くにいました。お百姓のところに来て、
「ありがたいことでございますね、さあ、両替をして小銭に取り替えてあげましょう。ターレルの銀貨じゃ、しょうがないでしょう。」
するとお百姓は、
「お前には三百やる。今すぐ小銭でくんな。三日経ったら、王様のところでもらえるから。」
ユダヤ人は2つぶんの価値しかない、しょうもないグロッシェン通貨を3つ渡しました。
三日経って王様のところに行くと、
「ものども、こいつの上着を脱がせろ、五百だけつかわすぞ。」
するとお百姓は、
「その五百なら、もうてまえの分ではありません。二百は、番兵にくれてやりました。三百は、ユダヤ人が両替してくれました。」
そうやっているうちに、例の番兵とユダヤ人が入ってきて、自分たちの分け前をくれと言いました。
すると、その数だけポカポカ殴られ、番兵はこれに慣れていたのでじっとしていましたが、ユダヤ人の方は、
「いたい、これが約束のターレルの銀貨かい。」って、ひーひーわめきました。
王様はお百姓のしたことがおかしくって、かんしゃくもなくなって、
「お前は自分のほうびをもらいもしないうちになくしてしまったから、埋め合わせをしてやろう。
わしのくらへ入って、欲しいだけお金を持ち出すが良い。」
お百姓は、かくしの中へはいるだけお金を詰め込み、お料理屋へ行って、勘定を始めました。そして、
「王様のやつ、やっぱりおらをだまくらしやがった。こんなに銭をくれるもんだから、銭がなんぼあるか分からんじゃないか。」
とぶつぶつ文句を言いました。この言葉を後からつけたユダヤ人がこっそり聞いて、王様に言いつけてやりました。
これでお百姓が罰を受けて、自分はほうびをもらえると思ったからです。
お百姓の愚痴が耳に入ると王様は怒り出して、ユダヤ人にお百姓を連れてこさせることにしました。
お百姓は行くことにしますが、
お金をたくさん持っている自分がこんな古い着物を着てはいけない、と言い出します。
ユダヤ人は、着物を変えさせないと連れていけないことが分かっていましたし、
王様のところに行かなければ、自分はお礼をもらえず、お百姓は罰を受けないで済む、と考えました。
そこでユダヤ人は、
「あっしがちょっとのあいだ、綺麗な着物を貸してあげる。」
と言って、お百姓に綺麗な着物を貸しました。
王様のところに着くと、王様はユダヤ人から聞いた悪口を並べ立てて、けしからんとお百姓を叱りました。
ここでお百姓が、
「これはこれは!ユダヤ人のやつの申すことは、みんな嘘でございます。私がきゃつの着物を着とるだなんて、ありもしないことをぬかします。」
「なんだと!その着物があっしのでないって?それは、お前さんが王様の前に出られるよう、あっしが貸してやったものではないか。」
ユダヤ人がそう言うのを聞いて、
「わしか、百姓か、どちらかをユダヤ人が騙したに違いない。」
そう言って、ユダヤ人をポカポカ殴らせました。
お百姓は良い着物を着て、お金をたくさん持ってうちへ帰りました。
「今度こそ、うまくやったぞ。」
これがお百姓の言いぐさでした。
うまい商売の考察
この物語は、主人公が悪者をやっつけるタイプの話ではなく、喜劇です。
そのため、うまいこと他人を出し抜くことができる人が得をして、欲張ろうとした人が損をする結末になります。
ここではお百姓が得をしてユダヤ人が損をすることになりましたが、グリム童話ではユダヤ人がひどい目に遭う話がいくつかあります。
これは宗教的な観点から、ユダヤ人を損な役目にあてたかったのかもしれませんね。
さて、最初の方に蛙の「アク、アク、アク」が数字の8に聞こえたとありますが、これはドイツ語のアハトゥ(数字の8の意味)から来ているようです。
また、犬の「ワス、ワス」という声では、ワスというのはドイツ語で「少し」という意味があるようです。
この物語を見たとき、ここで、お百姓は天然なのか知恵者なのか、疑問が残ります。
物語の最初では、蛙に八じゃない、七ターレルだと怒鳴ったり、犬に肉をやりさえすれば、勝手に肉屋に届けてくれてお金を持ってきてくれるもんだと思い込んでいました。
これは明らかに、間が抜けていますよね。
でもその後、王様から「五百だけつかわすぞ」と言われたとき、門番とユダヤ人を騙して、ポカポカ殴られるのを回避しました。
その後は大金が手に入ったのに、いくらもらったか分からないと文句を言います。
そうかと思えば、最後はユダヤ人を陥れて、着物と大金を手に入れます。
そして最後に、「上手くやったぞ」と言っています。
最後の「今度こそ、上手くやったぞ」というセリフから、お百姓に知恵があったかのようにも見えますが、
やっぱり途中間抜けなことをしているので、綺麗な着物と大金を手に入れたという結果だけ見てそういったと考えられます。
なので、結局このお百姓はど天然なんですよね。
物語を面白くするために、大いにボケてくれたと考えられます。
うまい商売の感想
この童話の一番のポイントは、「3日後にまた来い、五百だけつかわすぞ」という王様とお百姓のやり取りです。
お姫様を笑わせたお礼に五百だけつかわすぞ、と言われれば、普通の人なら五百とはお金の単位だと思ってしまうでしょう。
しかもそれを受け取る前に他人にやってしまって、受け取った門番とユダヤ人は、
まさかそれがポカポカ殴られるのが二百分、三百分だなんて、夢にも思わなかったはずです。
お金をもらう権利を受け取ったと思ったら、とんだとばっちりだった、なんてすごく面白いですよね。
しかもユダヤ人は、その後も着物のことでお百姓に出し抜かれて、王様もユダヤ人が嘘つきだと勘違いしてしまいました。
そして最後に、お百姓がお金と綺麗な着物を手に入れて、このやり取りがこの童話のタイトルにもなってるうまい商売だなんて、笑えますね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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