童話「しっかり者のすずの兵隊」のあらすじと考察~せっかく恋が実ったのに

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より「すずの兵隊」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

しっかり者のすずの兵隊のあらすじ

ある時、25人のすずの兵隊さんがいました。

みんな、一本のすずのさじからできたので、兄弟だったのです。

この25人のすずの兵隊さんは、可愛い坊ちゃんの誕生日のお祝いに贈られました。

この兵隊さんはどれもこれも同じ格好をしていましたが、ただ一人だけ、足が一本しかなかったのです。

なぜならこの兵隊さんは、最後に型に流し込まれて、その時はもうすずが足りなくなっていたからです。

でもその兵隊さんは、一本足でも他の兵隊さん達と同じように立っているのでした。

この一本足の兵隊さんこそ、不思議なお話があるのです。

 

兵隊さんの並んでいるテーブルの上には、他にもいろいろなおもちゃがありました。

その中でも目立つのは、紙でできた美しいお城です。

お城の中には広間があって、庭には池のつもりの鏡、池には蝋細工の白鳥が何羽もいます。

そしてその中でも一番かわいらしいのは、お城の入り口に立っている小さな娘さんでした。

この娘さんも紙でできていましたが、スカートをはき、青いリボンをひらひらさせていて、

そのリボンの真ん中には金モールの飾りがついていました。

この娘さんは踊り子なので、片足を高く上げていました。

そのためすずの兵隊さんは、上げた足が見えなく、この娘さんも片足しかないと思い込んでいました。

兵隊さんは、

「あの娘さんは、僕のお嫁さんにちょうどいいぞ。

けどあの人はお城に住んでいて身分もいいのに、僕の家はたった一つ箱があるだけで、しかも25人で同居してるからなぁ。

せめてお友達になりたいなぁ。」

兵隊さんはテーブルの上の嗅タバコの箱の後ろに横になりました。

これで、お城の可愛い娘さんがよく見えるのです。

夜になって家の人は寝床に入り、おもちゃの遊ぶ時間になりました。

くるみ割りはとんぼ返りをするし、石筆は石盤の上を踊り、カナリヤまでおしゃべりを始めました。

ですが一本足のすずの兵隊さんは、可愛らしい踊り子の娘を見たまま、立っていました。

踊り子の娘も、両手をいっぱいに広げ、片足で立ったままです。

その時、時計が十二時を打ちました。

そのとたん、嗅タバコの箱が空き、そこには黒鬼が立っていました。

これはびっくり箱だったのです。

小鬼は、

「おい!すずの兵隊!そんなにじろじろ見るもんじゃないぞ。」

けれどもすずの兵隊さんは無視していると、

「よし、明日の朝まで待ってろ!」

次の朝、子供たちが起きてくると、一本足の兵隊さんは窓際に立たされました。

すると、小鬼のしわざか、すき間風のしわざか、兵隊さんは下の往来に落ちてしまいました。

坊ちゃんは女中とすぐに降りてきて探しましたが、見つかりませんでした。

兵隊さんが声を出せば分かったでしょうが、軍服を着てる手前、声を出すのはみっともないと思いました。

そのうち雨が降ってきて、しばらくすると雨は上がりました。

そこへ町のわんぱく小僧が二人やってきて、

「やあ、ごらんよ。すずの兵隊だ、ボートに乗せてやろうよ。」

それから紙のボートに乗せられ、みぞに流されました。

ところが、さっきの雨のせいでみぞの中は波がひどいです。

けれどもすずの兵隊さんは、顔色一つ変えず、鉄砲をかついで前を向いていました。

突然、ボートはどぶ板の下に入り、暗くなりました。

「一体僕は、どこに行くんだろう。」

「そうだ、こうなったのもみんなあの小鬼のせいだ。せめて、あの可愛らしい娘さんがボートに乗っていたらなぁ。」

その時、ドブネズミが顔を出して、

「おい、通行券を持っているか、見せろ!」

しかし相変わらずボートは流れていくので、

「おーい、そいつを捕まえてくれ!通行税も払わないんだよう!」

けれども流れは速くなるばかりで、ついに、どっと掘割へと落ちてしまいました。

私たち人間にしてみれば、流されて大きな滝から落ちたようなものです。

それから水がボートの中に入って来て、どんどん沈んで、すずの兵隊さんの頭の上まで水につかってしまいました。

その時兵隊さんは、もう二度と会えない、あのきれいな踊り子のことを思い出しました。

すると、

「さよなら、さよなら、兵隊さん。あなたは死なねばならないの。」

という歌が聞こえてきました。

その時、兵隊さんは水の中に落ちて、大きな魚に飲み込まれました。

その中は暗く、魚は泳いでいきました。

そのうち暴れ回ったかと思うと、動かなくなって、そうかと思うと、パッと明るい光が差し込んできました。

「まあ、すずの兵隊さんだわ。」

そう言う声がしました。

つまり、この魚は漁師に獲られて市場に出されて、お客さんに買われてここの台所に来たのでした。

そして今、女中が包丁で魚を切ったところだったのです。

それからみんなは、すずの兵隊さんをテーブルの上に置きました。

すると、不思議なことがあるものです。

すずの兵隊さんは、もとの部屋に戻ってきたのです。

そこには同じ子供、同じおもちゃ、そしてあの可愛らしい踊り子の娘さんもいます。

踊り子の娘さんは相変わらず片方の足で立って、もう片方の足を上げていました。

娘さんもしっかり者です。

これを見て、すずの兵隊さんは、もう少しですずの涙をこぼすところでした。

ですがそんなことは、男らしくありません。

兵隊さんはただじっと踊り子を見つめています。

踊り子の方も、兵隊さんを見ていました。

ですが、二人は何も言いません。

その時、小さい子供の1人が、いきなりすずの兵隊さんを、ストーブの中に投げ込んでしまいました。

そんなことをされる理由はないのに。

きっとこれも、あの小鬼のしわざに違いありません。

すずの兵隊さんは、熱くなってきました。

ところがそれが火のせいなのか、胸の中の愛のせいなのか分かりませんでした。

そして兵隊さんは、可愛らしい娘さんを見つめ、娘さんも兵隊さんを見ていました。

兵隊さんの体は熔けていきますが、それでも鉄砲をかついだまま、しっかり立っていました。

ですがその時、風が吹いてきて、娘さんをさらいます。

そのままひらひらとストーブの兵隊さんのところに飛んできました。

そして、燃え上がって消えてしまいました。

すずの兵隊さんもすっかり熔けて、小さな塊になってしまいました。

次の朝、女中がストーブの中をかきだすと、ハートの形をしたすずの塊がありました。

踊り子の方は金モールの飾りだけが残っていましたが、真っ黒に焦げていました。

 

しっかり者のすずの兵隊の考察

それでは、この童話の考察を始めます。

まずこの童話は、アンデルセンが人形という無生物のものに、生きている感じを与えた最初の作品です。

そしてこれは悲しい恋の物語ですが、

アンデルセン自身、16歳年下の女性と結婚を切望したにも関わらず、叶わなかった時の恋心が描かれていると言われています。

主人公のすずの兵隊は、25人兄弟でしたが、最後に作られたということで、25人兄弟の末っ子だと考えられます。

そしてこの兵隊は、足が片方ありませんでした。

ここで考えてみると、兵隊はもともと戦争に行く人ですよね。

戦争に行くのに片足がないというのは、致命的なハンデです。

そのハンデをうめようと、舟の上でもストーブの中でも鉄砲を構えていたり、窓から落ちた時も大声を出さず、

男らしさを持っていたことが読み取れます。

ちなみに、アンデルセンは、ハンデを背負った主人公を書くのが得意で、

みにくいアヒルの子や人魚姫もハンデを持った話ですね。

すずの兵隊は、片足を上げているだけの踊り子の娘も一本足だと思い込んでいました。

これは、自分は片足しかないことから、同情を無意識のうちに求めて、そう思い込んでしまったと考えられます。

びっくり箱の小鬼は、そんなすずの兵隊を、

「じろじろ見るもんじゃないぞ」

と言っていましたが、これはびっくり箱の黒鬼も踊り子の娘を狙っている、恋のライバルとしての嫉妬心があると考えられます。

黒鬼はたまに箱が開いた時しか見られないのに、すずの兵隊はずっと見ていられるからでしょう。

また、どぶ川の中であの娘の幻聴が聞こえてきました。

この幻聴でさえも娘から見捨てられていたので、踊り子の娘からは完全に恋愛対象外だったことが考えられます。

また、最初テーブルの上にいるときも兵隊さんの方は見ていませんでしたね。

ところが、すずの兵隊が再びテーブルの上に戻ってきた時は、お互い見つめ合っていました。

これは明らかに、踊り子の娘が好意を抱くようになっています。

なぜかというと、すずの兵隊は窓から外に落ち、どぶ川を通り、魚にのまれ、家に戻ってくるという、生死をさまよう旅をしてきました。

それでもちゃんと戻ってきたので、すずの兵隊は成長し、生まれ変わったと言えます。

成長して生まれ変わったから、踊り子の娘に認められたと考えられます。

ですが最後、ストーブに放り込まれるシーンがありましたね。

せっかく両想いになれたのに、あっけなく燃やされてしまうのは、恋の儚さがよく描かれています。

これはアンデルセンが恋が実らなかった気持ちがよく表れていますね。

また、ストーブの中でよく燃えるのは、二人の恋心を示していると考えられます。

 

しっかり者のすずの兵隊の感想

この童話を読んで思ったのはやっぱり、恋が実ったのに、すぐに死んでしまったっていう悲しさですね。

思えばすずの兵隊は、ハンデを背負い、波乱ばかりの旅をして、びっくり箱の小鬼にも嫌がらせをされていました。

そんなに辛い思いをしてきて、ご褒美に踊り子の娘と両想いになれたのに、最後の楽しい時はあっという間でしたね。

こうなったのも、男の子がストーブの中に投げ込んだからですが、この男の子もやんちゃだなーと思います。

男の子にとって、片足がないという不完全なおもちゃは、しょせんいらないおもちゃだったんだろうなって感じます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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