こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、「青いランプ」(KHM116)のあらすじと考察、感想までお話しています。
青いランプのあらすじ
むかし昔、あるところに兵隊さんがありました。
長年の間、王様にご奉公してきましたが、戦争は済んで、体を痛めてこれまでのご奉公ができなくなると、王様は
「国に帰れ。お前はもう用なしだ。金は、もうもらえんぞ。」
と言いました。
兵隊さんは途方に暮れて、くよくよしながら森へ入って行きました。
日が暮れて、魔法使いの女が住んでいる家に着きます。
そこで一晩泊めて、食べ物を分けてほしいと言うと、
「じょうだんじゃない、誰が迷子の兵隊なんかに、食べ物をくれてやるの?
だがね、明日お前が、うちの畑を掘り返してくれるなら、お前をうちへおいてあげるよ。」
兵隊さんは承知して、次の日は精一杯働きましたが、仕事は終わりませんでした。
「分かってるよ。どうせ今日はもうできないさ。
もう一晩おいてあげるから、そのお礼に明日、馬力一台分の薪を割っておくれ。」
兵隊さんは一日中薪を割っていました。日が暮れると、魔女はもう一晩泊めてやると言い、
「明日は簡単な仕事さ。うちの裏に空の古井戸があるんだが、そんなかへあたしの青いあかりが落ちてしまった。
それをひろいあげてもらいたいんだよ。」
次の日、ばあさんは兵隊さんをかごに入れて井戸の中へ降ろしました。
兵隊さんは青いあかりを見つけて、引き上げてもらいます。
上近くまで来ると、ばあさんは手を伸ばして青いあかりを取ろうとしましたが、兵隊さんはばあさんの腹黒い考えに気づいて、
「だめだ、あかりは、おれが地面に立つまで渡さないよ。」
と言うと、魔女はランプごと兵隊さんを井戸の中へ落としました。
兵隊さんは、井戸の中でポケットからタバコがまだ残っているパイプを取り出し、
「これでこの世のお別れの楽しみをしてやれ」
と、青いあかりで火をつけて、煙を吸いました。
ところがこの煙の中から、小さな、真っ黒な小人が出てきて、
「だんなさん、なにご用?」
「きさま、なにか用とは?」
「あたくしは、旦那さんのお望み事は、どんなことでもいたしますよ。」
「ようしきた、それなら、俺をこの井戸から出しておくれ。」
すると、小人は兵隊さんを連れて地面の下の道を通っていきましたが、この途中、青いあかりと、かくしてあった魔女の宝物も取って行きました。
地上へ出ると、兵隊さんは、
「今度は、あの魔法使いのばあさんを捕まえて、裁判官のところへ連れていけ。」
まもなく、あのばあさんが山猫の背中へ乗って、わあわあ騒ぎながら通り過ぎました。それから小人が戻ってきて、
「かたがつきました。魔法使いのばあさんは、首吊り台にぶら下がってます。」
それから、兵隊はうちに帰ることにしました。
「だんなさんが、この青いあかりでパイプに火をつけりゃ、それでよろしい。
すぐ、だんなさんの前にいきますよ。」
兵隊さんは、自分の出てきた都へ帰りました。
それから上等の宿屋に泊まり込んで、立派な着物に着替え、部屋を飾りつけました。
それから兵隊さんは真っ黒な小人を呼び出して、
「おれは王様に忠義をつくした。だが王様はおれを追い出して、ひもじい思いをさせた。今その仕返しをしてやるぞ。」
「夜遅く、王様のお姫様が寝ているところを、寝てるままここへ連れてきてくれ。」
小人は、
「あっしにはそんなことわけないですがね、ばれようもんなら、とんでもない目にあいますぜ。」
と言いましたが、十二時になると、小人が王女を連れてきました。
「どんなもんだい、来たな。さあ、仕事にかかれ。部屋の掃除をしなよ。」
掃除をさせると、お姫様を自分が座っているところへ呼びつけ、両足をお姫様に向けて、
「靴をぬがせろ。」
そう言って、脱がせかけられた靴をポンとお姫様の顔へ蹴りつけました。
お姫様はその靴を拾って磨き上げ、言いつけられたことをやらなければなりませんでした。
そして朝、鶏が鳴くのを合図に、小人は王女を城へ連れてって、元の寝床に寝かせました。
あくる朝お姫様は、お父様に不思議な夢を見たと報告します。
「わたくしがね、往来をかつがれていって、兵隊のいるお部屋へ連れ込まれましたの。
お部屋の掃除をしたり、靴を磨いたり、まるで女中の仕事をしなければなりませんでしたの。
これは夢なのですが、本当にそんなお仕事をしたかのように、すっかり疲れてしまいましたわ。」
「それは、本当のことだったかもしれんぞ。
そしたら、袋にエンドウ豆をいっぱい入れてな、袋に小さな穴を開けておきなさい。
次にお前がさらっていかれるとき、その豆がこぼれて、往来に跡が残るわけだ。」
王様がこの話をしたとき、小人はこれを聞いていました。
この晩、小人がお姫様をさらう時、豆は往来にこぼれました。
ですが小人がいろんなところを通って、どこもかしこもエンドウ豆をまき散らしていたので、せっかくの豆も道しるべになりません。
そしてお姫様は、また女中の仕事をさせられました。
あくる朝、ご家来たちはエンドウ豆の道を探しに行きましたが、どの往来にも子供がいて、
「ゆうべはエンドウ豆の雨が降ったぞう」と豆をひろっていたので、お話になりません。
王様はそれから、
「別のことを考えなきゃならん。お前が寝床へ入る時、靴を履いたまま寝なさい。
それから、帰ってくる前に、その家に靴を片っぽ隠しておくのだよ。わしがきっと、見つけてやる。」
小人はまた、王様の話を聞いていました。
兵隊さんが小人に、今日もお姫様をかついで来いと言うと、小人は、
「こういうことをされたら、こっちも手が出せない。もしお姫様の靴がここで見つかったら、だんなさんはひどい目にあいますよ。」
ですが兵隊さんは、言うことを聞きません。
それでお姫様はこの日も女中の仕事をしましたが、うちへ帰る前に、靴を片っぽ、寝台の下に隠しました。
あくる朝、王様は国中のお姫様の靴を探させました。
靴は兵隊さんのところで見つかり、兵隊さんは牢屋へ入れられました。
しかしこの時、青いあかりを持ってくるのを忘れてしまったのです。持っていたのはドゥカーテン金貨一枚きりです。
ここへ、窓の外を兵隊の仲間が通るのが見えたので、金貨を渡して、兵隊さんの家から青いあかりを持ってきてもらいました。
そして小人を呼び出すと、小人は
「心配することなんかないですよ。どこへ連れてかれても、なるようにならせておきなさい。ただ青いあかりだけは、忘れないように。」
その次の日、兵隊さんは死刑になることになりました。
いよいよ連れて行かれるとき、王様に一つお願いしました。
「どのようなことか。」
「途中で、もう一服したいのですが。」
「三ぶくだけ吸ってよい。だが、わしがお前の命を許すとは思うなよ。」
そうすると兵隊さんは、パイプを出して、青いあかりで火をつけました。
すると小人が小さな棍棒を持って出てきて、
「だんなさん、なんのご用?」
「そこにいるけしからん裁判官と、こいつの手下どもを叩きのめせ。そしておれをひどい目に遭わせた王様もな。」
こう言われると、あっちこっち素早く飛び跳ね、次々に棍棒で殴り倒していきました。
王様は怖くなって、どうか堪忍してくださいと身を投げ伏しました。
そして死にたくなかったので、兵隊さんに国をやり、お姫様をお嫁にしてやりました。
青いランプの考察
それでは、この童話の考察に入ります。
兵隊さんは、最初魔法使いのばあさんの家に行きましたが、この魔女は最初、畑の仕事をさせ、次に薪を割らせて、
最後に井戸から青いあかりを取って来いと言いました。
ですが、知っての通りこの青いランプさえあれば、兵隊さんに畑仕事や薪割をさせなくったって、小人にやらせることができます。
いきなり青いランプを取りに行かせてもいいのになぜ、わざわざその仕事を兵隊さんにやらせたのか。
それは、兵隊さんに意地悪して、こきつかってやろうと思ったからと考えられます。
3日目に井戸の中へ突き落すほど、この魔女は悪いやつです。
兵隊さんを殺す前に、利用するだけ利用してやれ(こきつかってやれ)、と考えて、わざわざ畑仕事と薪割をやらせたのだと考えられます。
また、青いあかりから出てきたのは小人でしたが、この小人の色は真っ黒でした。
この童話では小人は兵隊さんを助けてくれましたが、本当は大きな魔力を持っていて、
悪いこともいくらでもできるということから、真っ黒な色をしていたと考えられます。
そして青いあかりで煙を出すと、その中から出てくるという設定も、
アラジンの魔法のランプを連想させ、魔力を持った者としてふさわしい登場の仕方です。
またこの兵隊さんは、王様に仕返しをすることを考えます。
しかし兵隊さんは、王様に直接仕返しをするのではなく、お姫様を狙います。
なぜ王様に直接仕返しをしなかったかですが、まず王様には知恵があります。
お姫様の話を聞き、お姫様を夜中に働かせている犯人を捕まえる方法を考えてしまうような人です。
王様に直接嫌がらせをすると、すぐにばれてしまうと考えたのでしょう。
さらに、お姫様という、王様にとって一番大事な人に嫌がらせをすることによって、
王様に精神的ダメージを与えられる、ということもあったと考えられます。
青いランプの感想
この物語は、兵隊さんがもちろん主人公ですが、
兵隊さんが働けなくなったら容赦なく捨てた王様か、お姫様に嫌がらせをした兵隊さんか、
どちらが悪いかというと、どっちもどっちな気がします。
普通は童話では主人公は応援したくなるような人なのですが、
この場合はあまり感心しませんね。
一番かわいそうなのは、関係ないのに女中の仕事をさせられ、その後死刑の判決が出た兵隊さんと結婚させられたお姫様です。
こうなってみると、青いランプから出てきた小人が真っ黒だったのも、納得がいく気がしました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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