童話「ナイチンゲール」のあらすじと考察~本物VS偽物の闘いは・・・

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「ナイチンゲール」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

ナイチンゲールのあらすじ

中国の皇帝の御殿には、美しい庭がありましたが、その庭の広いこと、庭師でさえ、お庭の果てが分からないくらいでした。

その庭の奥には森がありましたが、この森に、一羽のナイチンゲールが住んでいました。

その歌声の美しいことといったら、このナイチンゲールの歌声を聞くと、人々はみな、

「いや、何と言っても、これが一番素晴らしい。」

と言うのでした。

学者たちは、中国の都や、御殿や、お庭、それからこのナイチンゲールのことを本に書くと、世界中に広がり、皇帝の手にも入りました。

皇帝はその本を読んで、嬉しく思いましたが、

「しかしながら、ナイチンゲールこそ一番である。」

と書いてあるのを見ると、

「これはなんのことじゃ?

ナイチンゲールがこの国に、しかもこの庭の中に住んでいるなんて、聞いたことがないぞ。」

と言いました。

そこで、侍従を呼んで、なぜナイチンゲールのことを今まで教えなかったのか、聞きました。

「おそれながら、私も今まで聞きませんでした。」

「今晩にも、そのものを連れてきて、わしの前で歌わせてみよ。」

「そのような噂を今まで聞いたことはございませんが、必ず、そのものを探し出してみせます。」

ところが、侍従は御殿中の人々に聞いてまわっても、誰もナイチンゲールのことは知りませんでした。

そこで、陛下にはナイチンゲールは作りごとだと言うと、

「だが、わしの読んだ本は、日本のえらい天子様より送られてきたものじゃ。嘘ではないはず。

今晩にもここへ連れてまいれ!」

「チンペー!」

侍従はそう言って、またも御殿中を駆けました。

そしてついに、台所で働いている貧しい小娘から、ナイチンゲールのことを聞きだしました。

そして小娘の案内で、ナイチンゲールが歌を歌っている森へと向かいました。

やがて、ナイチンゲールが歌い始めました。

「ほら、あれでございます。あそこにおります。」

こう言いながら、枝に止まっている、小さな灰色の鳥を指さしました。

「なんと!あんなもんだとは思わなかった。つまらない姿をしているのう。」

侍従はそう言うと、小娘は、

「ナイチンゲールさん、皇帝様が、あなたの歌を聞きたいとおっしゃるのよ。」

「それは光栄でございます。」

ナイチンゲールはそう言って、歌い始めました。

「おお、ガラスの鈴のようじゃな。

わしたちが今まで聞いて来なかったのは、不思議なものじゃな。

あれなら宮中でも、上手くやってくれるな。」

そして、ナイチンゲールは喜んで、皇帝の前で歌いに行くことになりました。

皇帝のいる大広間で、ナイチンゲールがそれは美しい声で歌い始めました。

皇帝の目には涙が浮かんできて、ほほを伝ってこぼれました。

皇帝は心の底から感動して、自分の金のスリッパをナイチンゲールの首にかけるように言いました。

ところがナイチンゲールは、

「わたしは陛下の目に涙が浮かんだのを見て、それこそが私にとって、最高の宝でございます。

もうご褒美は十分でございます。」

そして、家来や女中までが満足して、ナイチンゲールは大成功でした。

ナイチンゲールは鳥かごをもらい、宮中にいることになりました。

また町中は、この珍しい鳥のうわさで持ちきりになりました。

ある日のこと、皇帝のところに届け物が来ました。

その届け物の上には、「ナイチンゲール」と書いてありました。

中を開けてみると、入っていたのは小さな美術品でした。

それは作り物のナイチンゲールで、体中にダイヤモンドやサファイアがついています。

ねじを巻くと、この細工物の鳥は、本物も歌う歌の一つを歌い始めました。

そして、

「日本のナイチンゲールの皇帝も、中国のナイチンゲールの皇帝に比べると、見劣りがいたします。」

と書かれていました。

「これは見事なものだ。」

「では、一緒に歌わせてみよう。さぞ面白いことになるぞ。」

こうして、二羽の鳥は一緒に歌いました。

ところが、それは上手くいきませんでした。

本物のナイチンゲールは好きなように歌うのに、作り物はワルツばかり歌うのです。

そこで今度は、細工物の鳥だけが歌うことになりました。

これも大成功を収めて、同じ曲を33回も歌いました。

ここで皇帝が、今度は生きているナイチンゲールにも、少しは歌わせるように言いました。

ところが、生きているナイチンゲールはいつの間にかどこかへ行ってしまいました。

「いったい、どこに行ったんだ?」

皇帝はそう言いましたが、

「でも、我々には一番の鳥があるんだ。」

と言いました。

そして楽長は、本物のナイチンゲールよりもこの細工物の鳥の方が、優っていると言いました。

なぜなら、美しいダイヤモンドで飾られているだけでなく、体の中にしかけがあって、

細工物の鳥なら、次にどんな歌が出てくるかが分かるからです。

みんなは「同感!同感!」と言いました。

そして細工物の鳥の歌は人民に広がり、本物のナイチンゲールは国を追われてしまいました。

細工物の鳥は皇帝の寝床のそばに場所をもらい、金や宝石を贈り物にもらい、一番の位の称号までもらいました。

ところが1年経ったある晩のこと、皇帝が寝床に入って、細工物の鳥が美しい声で歌っている時のことです。

突然、鳥の中でプスッという音がして、「ブルルルル」と、歯車が空回りして、音楽が止まってしまいました。

皇帝はすぐ、侍医を呼びましたが、何にもなりません。

次に時計づくりを呼び、こちらは少しは治しましたが、一年に一度しか歌わせてはならないと言いました。

これには周りの人は悲しみましたが、楽長はこのことを人民には内緒にしておきました。

それから五年後、さらに悲しいことが起こりました。

人々はみな、皇帝が好きだったのですが、その皇帝が病気になり、もう長くはないと言われたのです。

皇帝は大きな立派なベッドの中で、青ざめて横になっていました。

宮中の人は、もう亡くなったと思って、新しい皇帝に挨拶をするために、行ってしまいました。

召使たちも、そのことをしゃべりに出ていき、若い女官たちはコーヒーの会に参加していました。

ところが、皇帝はまだ亡くなっていませんでした。

ですがお気の毒に、皇帝は息をするのもやっとです。

目を開けると、死神が胸の上に乗っていました。

この死神は、頭に皇帝の冠をかぶり、片手に皇帝の剣を、もう片方の手には皇帝の美しい旗を持っていました。

それから、周りのビロードのカーテンのひだの間から、変な顔がいくつものぞいていました。

みにくい顔もあれば、優しい顔もありました。

これらは、皇帝が今まで行ってきたよい行いと悪い行いだったのです。

そしてそれらが皇帝をじっと見て、

「あなたはこれに覚えがありますか?」

と、その顔たちが次々にささやき、いろいろなことを話しました。

「そんなことは知らんぞ!」

皇帝はそう言って、

「音楽だ!大きな太鼓を叩け!この者たちの言うことが聞こえないように。」

けれども、その顔たちは相変わらずしゃべり続けました。

「音楽だ、音楽だ!これ、可愛い金の鳥よ、歌ってくれ。お前には金も宝石もやった。どうか歌ってくれ。」

けれども、この鳥はねじを巻かなければ歌わず、誰もねじを巻くものはいません。

死神は皇帝を見つめ、あたりは気味悪くひっそりと静まり返っていました。

その時、窓から美しい歌声が聞こえてきました。

あの生きている小さなナイチンゲールです。

この鳥が歌うにつれ、怪しいものは薄れていきました。

皇帝の衰え切った体に、いきいきと血がめぐりはじめました。

しかも死神までが、もっと続けろ、もっと歌えと言いました。

「はい、では、その金の剣と、美しい旗と、皇帝の冠をくださいますか。」

そこで死神は、これらを渡しました。

ナイチンゲールは歌い続け、ついに死神は窓から出て行ってしまいました。

皇帝は、

「ありがとう、ありがとう。わしはお前をこの国から追い出した。

それなのに、お前は歌ってくれて、怪しいものどもと死神を、追い払ってくれた。

わしはお前に、どんなほうびを取らせたら良いかの?」

するとナイチンゲールは、

「ごほうびはもう、いただきました。

わたくしが初めて歌を聞かせたとき、陛下の目に涙を見ました。わたくしはそのことを決して忘れません。

あれこそ、わたくしの心を喜ばす宝石です。

でも今はおやすみくださいませ。何か一つ、歌いましょう。」

そして歌い始めると、皇帝は眠りました。

やがて太陽が出てきて、皇帝はすっかり元気になって、目覚めました。

お供の人は、もう亡くなったと思って、誰も来ません。

皇帝はナイチンゲールに、

「いつまでも、わしのそばにいておくれ。

気が向いた時だけ歌ってくれ。こんな細工物の鳥、こなごなに砕いてやるわ。」

ナイチンゲールは、

「そんなことをしてはいけません。

あの鳥も、やれることをやってきたのです。

わたくしはここには住めませんが、わたくしの好きな時に、参らせていただきます。

そしてその時は、歌をお聞かせしましょう。

わたくしは、民衆のことと、陛下の周りの悪いこと、良いことについても歌いましょう。

ただ一つだけお願いがあります。

陛下に何もかも申し上げる小鳥がいることを、誰にも内緒にしておきますように。」

こう言って、ナイチンゲールは飛んでいきました。

ご家来たちが、亡くなったと思っている皇帝をおがみに入ってきました。

するとみんなは立ちすくみました。

その時皇帝は、「おはよう!」と言いました。

 

ナイチンゲールの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まずこの童話全体で教訓として言いたかったことは、

・本当に素晴らしいものを見極めよ

・他のものに気を取られてると、大切な人がいなくなってしまう

・金や宝石よりも尊い宝がある

・一見つまらないと思うものにも、価値がある

といったことが考えられます。

皇帝たちは、作り物のナイチンゲールを、こちらの予想通りに歌えるという理由だけで評価しました。

そして本物のナイチンゲールは、作り物にばかり目を向ける皇帝たちに嫌気がさして、どこかへ行ってしまいました。

本当は作り物なんかより、生きているナイチンゲールのほうが価値があるのに、それに気づかず、

作り物ばかりちやほやしてしまったのは、良くなかったですね。

そしてその結果、大切なものは遠くへ行ってしまい、作り物は壊れてしまいました。

1年経って壊れてしまったのは、作り物はしょせん作り物だということを表しています。

また、このナイチンゲールは内面も素晴らしく、皇帝から金や宝石は欲しがらず、

皇帝が感動してくれたのが最高の宝だと言いました。

これは、生きているナイチンゲールは美しい歌声を持っているだけでなく、心も美しい何よりの証拠です。

現実世界にも、「気持ちだけで十分」という言葉がありますが、まさにこれを示していますね。

それから、侍従は、最初ナイチンゲールを、その外見からつまらないものだと判断しましたね。

ところが、このナイチンゲールは宮中の人間が認めるほど価値のあるものでした。

一見価値がないと思われるものでも、すごく価値があることがあるのは、骨董品などでも同じですよね。

あと、この童話で出てくる皇帝は、あまり家来たちから慕われていなかったと考えられます。

なぜなら、まず皇帝が死神にとりつかれて死にそうになった時、みにくい顔や優しい顔などが出てきて、

皇帝の今までしてきた良いこと、悪いことをぐちぐちと言ってきました。

そして、皇帝はそれを嫌がっていたのがポイントで、嫌がっていたということは、

悪いことの方が多くしてきたと考えられます。

それから、皇帝が亡くなりそうな時、もう亡くなったものだと思って、家来は誰も来ませんでした。

悪いことをたくさんしてきて、最期の時に家来が来なかったのは、

この皇帝がいかに慕われていなかったかを示しています。

でもナイチンゲールだけは違って、皇帝を慕っていました。

そして世の中の様子のことを歌ってあげましょうと言ったのは、

この皇帝がよい政治をして、もっと民衆から慕われるように、という思いが込められていると考えられます。

 

ナイチンゲールの感想

この童話でツッコみたくなったのは、死神です。

死神は死ぬ運命の人間を冥界に連れて行く役目を持っているはずですが、

この死神はナイチンゲールの歌に聞き惚れて、もともと住んでいた場所に帰ってしまいます。

で、死神、それでいいのかよって思ってしまいました。

この理論でいえば、このナイチンゲールさえ自分のところにおいておけば、ずっと死なずに済みます。

しかも病気まで治ってしまうのですから、不老不死を得ることができてしまいます。

これは反則レベルですが、この童話のナイチンゲールは、死神を凌駕する力を持ってるってことですね。

うーん、ナイチンゲールすごすぎます・・・。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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