童話「もみの木」のあらすじと考察~ああ、もうおしまいだ!

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「もみの木」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

もみの木のあらすじ

森の中に、可愛らしいモミの木が一本立っていました。

そこはとても良い場所で、お日様はよく当たり、すがすがしい空気がありました。

周りにはもっと大きな木の仲間がたくさん生えていました。

ところが小さなモミの木は、ただ大きくなりたい、ということばかり考えていました。

そのため、暖かいお日様やすがすがしい空気なんか、気にしてませんでした。

次の年、モミの木は長い新芽一つ分だけ大きくなりました。

その次の年は、もっと長い新芽分大きくなりました。

「ああ、僕も他の木みたいにもっと大きかったらなぁ。」

モミの木は、お日様を見ても、鳥を見ても、流れていく雲を見ても、少しも楽しいと思いませんでした。

やがて冬になりました。

そしてこの小さな木の上をウサギが飛び越えていきました。

「ああ、本当にしゃくだ!」

けれども三度目の冬になると、この木も大きくなって、ウサギは飛び越えられなくなりました。

「ああ、大きくなるんだ、こんな楽しいことはない。」

モミの木はそう考えました。

秋になると、きこりは、大きな木を2、3本切り倒しました。

今はすっかり大きくなった若いモミの木は、それを見て怖くなりました。

大きな立派な木がものすごい音を立てて倒れたからです。

そしてそれらの木は枝を切り落とされて車に積まれ、森の外へと運ばれて行きました。

春になって、モミの木はツバメやコウノトリに聞いてみました。

「あの木たちがどこへ連れていかれたか、知りませんか?」

するとコウノトリは、

「僕が飛んでくる時、新しい船をたくさん見たけど、その船には立派な柱が立っていたっけ。

それがそうだったんだ。立派にそびえていたよ。」

「ああ、僕も海を越えていけるくらい大きければなぁ。で、海ってどんなものですか?」

「それを説明したら長くなるよ。」

コウノトリはそう言って、行ってしまいました。

「お前は若いんだ、お前は若さを楽しむといいよ。」

その時、お日様がそう言いました。

また、風はモミの木にキスをし、露はその上に涙をこぼしました。

けれどモミの木は、その意味が分かりませんでした。

クリスマスが近くなると、ずいぶん若い木が切り倒されました。

切られた木は、美しい木ばかりでした。

そして車に積まれ、森の外へと運ばれて行きました。

「僕より大きくないのに、枝をつけたまま、みんなどこへ行くんだろう?」

「僕たち知ってるよ!町で、窓からのぞいたら、光り輝いていて立派だったよ。

あったかい部屋の中できれいなもので飾られていたよ。

金色のリンゴや、蜂蜜のお菓子、おもちゃ、たくさんのろうそくでね。」

スズメたちがそう言いました。

「僕も、そういう嬉しい道を行くようになるのかな?」

モミの木は嬉しそうにそう言い、

「そのほうが海の上を行くよりずっといいや!クリスマスだったらいいなあ。

あったかい部屋で、きれいに、立派になれたらなぁ。

それから、もっといいことが来るんだ!なんだろう、この気持ち、たまらない!」

すると空気とお日様が、

「私たちがいるじゃないか。ここで、お前の若さを楽しみなさい!」

しかし、モミの木はそれを聞いて嬉しく思いませんでした。

そのまま大きくなって、人々からは「美しい木だ!」と言われました。

そして、クリスマス近くに、とうとう切り倒されました。

斧で切られた痛みがひどく、幸せだなんて言えません。

それに、生まれ故郷を離れなければならないことを悲しく思いました。

これで、お友達にも、周りの茂みや花にも、鳥たちにも二度と会えないだろう、と思いました。

旅立ちは、少しも楽しくありませんでした。

その後モミの木は、大きな広間に運ばれました。

どうやらお金持ちの家の中のようです。

お嬢さんと召使が、飾り付けを始めました。

キャンディーのつまった袋、金色に塗ったリンゴやクルミ、人形、そしてろうそくまでとりつけられました。

そしててっぺんには、金箔をはった大きな立派な星が取り付けられました。

「さあ、いよいよ今夜ね。明るく輝くわよ。」

モミの木は、

「ああそうか!夜だったらいいのになぁ。早くろうそくに火がつかないかなあ。

でも、森の木たちが来て、僕を見てくれるのかな?スズメが来てくれるかなあ?」

そう思うと、木の皮が痛み出しました。

これは、人間でいえば頭が痛くなるのと同じことなのです。

いよいよ、ろうそくに火がともされました。

なんという輝き、華やかさでしょう。

それから、入口の扉が開いて、子供たちが飛び込んできました。

大人たちはその後ろから、ゆっくり入ってきました。

子供たちは歓声をあげて木の周りを踊りました。

「この子たちは何をしようとしているのだろう?」

すると、木についているものを何でも、もぎ取ってよろしいというお許しが出ました。

そのとたん、子供たちはいっせいに、わっと押し寄せたからたまりません。

子供たちは、おもちゃを持って踊りました。

もう誰も、木の方を見るものはありません。

子供たちは今度は、

「お話!お話!」と言って、一人の小柄な太った人をモミの木のところに引っ張ってきました。

「わしは一つしかお話をしないよ。『イヴェセ・アヴェゼ』のお話が聞きたいかい、それども、『ずんぐりむっくりさん』が聞きたいかい?」

結局、ずんぐりむっくりさんの話を始めました。

これは、階段から転げ落ちたのに、王様になってお姫様をもらった話でした。

モミの木はこれを聞いて、

「ずんぐりむっくりさんは、階段から落ちたのに、お姫様をもらったんだ、世の中ってそういうものなんだ!

僕もひょっとしたら、お姫様をもらうかもしれないぞ。」

こうしてモミの木は、次の日もまた飾ってもらえると思って、楽しみにしていました。

次の朝になると、下男と下女が来ました。

「さあ、また飾り付けが始まるぞ!」

モミの木はそう思いました。

ところがそうはならず、屋根裏部屋の日が差さない、薄暗いところに持って行かれました。

「こんなところで、何をさせようってんだろ?何を聞かそうっていうんだろう。」

しかしそのまま、上がってくる者はいなく、時が流れていきました。

「外は今、冬なんだ!だから僕を、春までかくまってくれているんだ。

なんて親切な人なんだろう。ただ、ここが暗く、寂しいところでなければいいんだが。

森の中にいたときは良かったなぁ。」

その時、二匹のハツカネズミが出てきました。

「寒いけど、ここは居心地がいいね、お年寄りのモミの木さん!」

「僕は年寄りじゃないよ。」

「あなたはどこからいらしたの?」

ハツカネズミがそう聞くと、モミの木は、森の中にいた、小さい時の話をしてやりました。

ハツカネズミたちは、こんな話今まで聞いたことがなかったので、一生懸命聞いていました。

「まあ、あなたはいろんなことをご覧になって、ずいぶん幸せなのですね!」

「僕が?」

モミの木はそう言って、結局あのころが本当に楽しい時だったことに気づきました。

それから、クリスマスイブのことを話しました。

「まあ、あなたはなんて幸せなんでしょう、お年寄りのモミの木さん!」

「だから年寄りじゃないったら。僕はこの冬森から来たばかりなんだ。元気いっぱいの年頃だよ。」

「本当にお話がお上手ね。」

次の晩は、ほかの4匹を連れて、モミの木のところに話を聞きに来ました。

モミの木は話しながら、

「あの頃は楽しかったな。またあの楽しい時が来るかもしれない。

ずんぐりむっくりさんも、お姫様をもらったじゃないか。もしかしたら僕も、お姫様をもらえるかもしれないんだ。」

そして、モミの木は森の中に生えていた、小さなシラカバの木を思い出しました。

これは、モミの木にとってお姫様だったのです。

それから、ずんぐりむっくりさんの話も聞かせました。

そして日曜日には、二匹のドブネズミも来ました。

けれどもドブネズミは、こんな話はちっとも面白くないと言いました。

また、ハツカネズミたちも、前ほど面白くないと感じていたのです。

そして、ドブネズミもハツカネズミたちも、ここに来なくなってしまいました。

モミの木はため息をついて、

「あのハツカネズミたちが、僕の話を聞いてくれたのは嬉しかったなあ。

だが、それは過ぎてしまった。

ここから出たら、また楽しい気持ちになるとしよう。」

しかしある朝のこと、人々が屋根裏部屋に入って来て、モミの木が引っ張り出されました。

そして、手荒に床に投げ出され、その部屋から出されました。

「さあ、いよいよ新生活が始まるんだ。」

モミの木はそう考えると、外の中庭にいました。

そして、モミの木は自分自身をながめることをせず、周りのものに見とれていました。

バラやボダイジュの花が咲き、ツバメが飛び回って歌っていました。

しかし、それはモミの木のことを歌っているのではありませんでした。

「さあ、これからうんと生きるんだ!」

しかし、ああ、枝はひからびて、黄色くなっていました。

気が付くと、モミの木はイラクサや雑草の生えているところに横たわっていました。

さて、そこに子供が二、三人遊んでいました。

クリスマスの時、木の周りを踊って、喜んでいた子供たちです。

すると、その中の一番小さな子が、てっぺんにつけたままだった金の星をちぎってしまいました。

「こんな汚いクリスマスツリーに、まだこんなものがあったよ。」

こう言って、その子は枝を踏みつけると、枝がポキポキ鳴りました。

モミの木は、この庭に咲き乱れている美しい花を見て、自分の姿を考えると、

屋根裏部屋の中にいたほうがましに思えました。

そして、森の中で過ごした若い時や、クリスマスイブのこと。

それから、ずんぐりむっくりさんの話が面白かったこと、ハツカネズミのことを思い出していました。

「おしまいだ、おしまいだ。楽しめるときに楽しんでおけばよかった。おしまいだ!」

そこに下男がやってきて、モミの木を細かく割って、薪たばにしました。

それからモミの木は、大きなかまの下で、あかあかと燃え上がりました。

そして、深いため息をつきました。

ポン、ポン、と薪が燃える音を聞きつけて、子供たちが火の前に座りました。

モミの木は、過去の楽しかったことを思い出していましたが、そうしているうちに燃えきってしまいました。

子供たちは、また遊びだしました。一番小さい子は、あの金の星を胸につけていました。

これは、モミの木が一番幸せだった晩につけていたものでしたが、それもおしまいになりました。

モミの木ももうおしまい。

そして、この話もおしまい。

何もかも、おしまい。

お話というのは、みんなこうなるものですよ。

 

もみの木の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、この童話全体としては、モミの木の一生でしたが、これは人間の一生を暗示していると考えられます。

森の中でのびのびと生きている時は、子供で、親元にいる時。

クリスマスツリーとして、最高の輝きを放っている時は、親元を離れ就職し、独り立ちして若くちやほやされている時。

暗い屋根裏部屋でハツカネズミたちに話をしている時は、おじさんが会社の部下に面白い昔話をしている時。

中庭の雑草の中に放り出されて木が汚くなって、誰からも相手にされてない時は、老人になって誰も見てくれなくなった時。

そして最後、薪にされて燃やされる時は、死んで火葬される姿。

というように、若い頃は華やかだけど、歳をとれば誰も見てくれないよっていうのが感じられます。

森の中にいるときは、空気やお日様、鳥たちが話しかけてくれました。

「お前は若さを楽しむといいよ。」

と言われていましたが、そのときはモミの木はまともに聞いていませんでしたが、その本当の意味は、死ぬ前になって分かりましたね。

結局人間も、若い時の良さは年取ってからでないと分からないんですよね。

また、屋根裏部屋にいるときは、ハツカネズミたちから、「お年寄りのモミの木さん」と言われたのに対し、

自分は年寄りじゃないよって言っていました。

これは、モミの木は実際に年寄りだったはずですが、自分ではいつまでも若いと考えていたからです。

それから、クリスマスの夜に聞いたずんぐりむっくりさんの話。

この話は、階段から転げ落ちてしまったのに、最終的にはお姫様をもらう話でした。

この話を聞いてモミの木は世の中そんなものなんだって信じていました。

階段から転げ落ちるというのは、モミの木に例えると年を取って衰えていく姿と考えられます。

そしてお姫様は、森の中に生えていた小さなシラカバです。

しかし結局、モミの木は年を取っただけでお姫様はもらえませんでした。

これは、お話の中では理想的な展開になりやすいが、現実はなかなかそうはならず、厳しいよってことを示していると考えられます。

また、このモミの木は最後まで、クリスマスの夜の金色の星だけはつけていました。

これが、モミの木にとって唯一の輝きでした。

ところが最後、男の子がこれをちぎって取ってしまいました。

これは、モミの木の輝きは完全に失われてしまったことを示しています。

そしてその後男の子は自分の胸にこの星をつけましたが、

これは次に輝いていくのはこの男の子で、世代はバトンタッチされたことを示していると考えられます。

 

もみの木の感想

この話は、モミの木の思考が子供っぽくて、読んでて微笑ましいところがありました。

「ああ、僕も他の木みたいにもっと大きかったらなぁ。」

とか、感情がモロに出る記述は、面白かったです。

それから、この話はいろいろと考えさせられるところがありました。

その時にある幸せを大事にしないと、後から幸せだったと気づいても、もう遅いってこととか。

モミの木は憧れの対象がたくさんありましたが、人間もいろんなものに憧れますよね。

そして、実際に憧れているものが実現するのは一部だってことを考えると、現実は厳しいものです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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