童話「羊飼いの娘と煙突掃除屋さん」のあらすじと考察~頑固おやじを黙らせた意外な方法

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「羊飼いの娘と煙突掃除屋さん」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

羊飼いの娘と煙突掃除屋さんのあらすじ

皆さんは、うずまき模様と葉飾りが浮き彫りになった、それはそれは古い、木のたんすをご存知でしょうか。

そのたんすが、居間にありました。

このたんすの真ん中に1人の男の形が彫ってあります。

それは苦笑いというのでしょうか、変な顔つきをしていて、ヤギの脚を持ち、額には角をはやし、長いあごひげを生やしていました。

部屋の子どもたちはこの人を、ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹と呼んでいました。

なんとも重苦しい名前です。

この人はここにそうしていて、いつも鏡の下の棚の方を見ていました。

というのも、そこには陶器でできたかわいらしい小さな羊飼いの娘が立っていたからです。

娘の靴は金がぬってあり、着物には赤いバラの花が縫われていて、金の帽子をかぶり、羊飼いの杖を持っていました。

本当にきれいな娘です。

そのすぐそばに、煙突掃除屋さんが立っていました。

こちらは、炭のように真っ黒です。

けれども同じように陶器でできていて、かわいらしく、きれいでした。

煙突掃除屋さんははしごを持って、かわいらしく立っていました。

顔は娘のように白く、赤みがありましたが、これは本当は間違いで、黒くてもよかったのです。

煙突掃除屋さんと羊飼いの娘は初めから近くに立っていて、この場所ですぐ婚約していました。

どちらも若いし、どちらも陶器だし、同じように砕けやすかったので、この二人はぴったりです。

この二人のそばにもう一つ、大きさが三倍もある、中国人の人形が立っていました。

これも陶器でできていて、頭をこっくりこっくりうなずかせることができました。

そして自分で、小さい羊飼いの娘のおじいさんだと勝手に言って、この娘の後見人だと主張していました。

そんなわけで、ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹が羊飼いの娘をお嫁にもらいたいと言ってきた時は、頭をこっくりうなずかせました。

「さあ、お前はヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹と結婚できるんじゃ。

あの人はたんすの中に、たくさん銀の食器を持っておられる。」

「わたしは、あんな暗いたんすの中に入るのは嫌です。

あの人は、あの中に陶器の女の人を11人も入れてるではないですか。」

「では、お前は12番目の奥さんになればいい。

今夜、結婚式を挙げるのじゃ。これはわしが中国人だというように確実なことだぞ。」

そう言って、眠ってしまいました。

小さい羊飼いの娘は、泣きながら大好きな煙突掃除屋さんのほうを見て、

「ねえお願い、あたしを連れて、広い世の中へ出て行って!」

「君の言うとおりにするよ!今すぐ行こう。」

煙突掃除屋さんは娘をなぐさめて、まず二人はうまい具合に床に降りることができました。

ところが古いたんすの方を見ると、大変な騒ぎになっていました。

ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹が年寄りの中国人に向かって、

「二人が逃げるぞ!」

と叫びました。

二人は怖くなって、急いで引き出しの中に飛び込みました。

そこには全部揃っていないトランプが3、4組と、小さな人形芝居の舞台がありました。

そして芝居が始まりました。

芝居の流れは、一緒になることが許されない二人のことです。

羊飼いの娘は、自分のことのような気がして泣きだしました。

「あたし、とても見ていられないわ。」

床の上に降りてたなを見上げると、年取った中国人が目を覚まして、体を震わしていました。

「年寄りの中国人が追いかけてくるわ。」

羊飼いの娘は、ひざをついてがっかりしてしまいました。

「そうだ、いいことがある。

向こうの香料壺の中に入ろう。寝床はあるし、あいつが来たら目に塩を投げてやろう。」

「そんなことをしたって、だめだわ。

年寄りの中国人は香料壺と婚約したことがあるのよ。

そういう仲になると、いつまでも少しは愛情が残るのよ。

やっぱり広い世の中に出ていくしかないわ。」

「じゃあ君は、僕と一緒に世の中に出る勇気があるの?

世の中が大きいことや、もうここには戻ってこれないこと、考えてみたかい?」

「ええ、考えたわ!」

すると煙突掃除屋さんは、

「僕の行く道は煙突の中なんだよ。

君は本当に、暖炉の中から、煙突を登って行く勇気はあるかい?

そうすると、しめたもんだ。僕たちはてっぺんについて、広い世の中に出るんだよ。」

こう言って、娘の手をひいて暖炉の入り口に来ました。

「真っ暗だわね。」

娘はそう言いましたが、煙突掃除屋さんと一緒に、煙突の中に入りました。

「ほら上をごらん、お星さまがあんなにきれいだよ。」

空に星が輝いていて、二人の行く道を照らしていました。

二人は登って行きましたが、それは険しい道でした。

煙突掃除屋さんは娘を押し上げたり支えたり、足をかける場所を教えました。

そしてとうとう、二人は煙突のてっぺんに到着しました。

二人はそのふちに座りました。

くたびれていたので無理もありません。

二人の上には大空が広がり、町が広がっていました。

そして、周り中、遠くのほうまで世の中が広がっていました。

しかし世の中がこんなに広いと思っていなかったので、娘は泣き出してしまいました。

「これはあんまりだわ。

世の中って、大きすぎるわ。ああ、もう一度、あの棚の上に帰りたくなったわ。

あたしは、あなたの言うことを聞いて広い世界に出てきたんですもの。

もし本当にあたしが好きなら、もう一度連れ帰ってください。」

煙突掃除屋さんは、年取った中国人のこと、ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹のことを話しました。

けれども娘は泣きながらキスをして頼んだので、言うことを聞かないわけにはいきませんでした。

こうして二人はまた、煙突を降りて、暖炉の中に着きました。

そこで二人は部屋の中の様子をうかがってみました。

部屋の中は、しんと静まっています。

のぞいてみると、たいへん!床の上に、年寄りの中国人が倒れていました。

二人を追いかけようとして、たなから落ちて、三つに砕けてしまっていました。

ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹は、じっと何かを考え込んでいました。

「まあ、おじいさんが壊れているわ。もとはと言えば、私たちのせいよ。

どうしましょう、わたし、おめおめと生きていられないわ。」

こう言って、娘は悲しみました。

「かすがいでとめれば大丈夫だよ。

背中は、にかわ(接合剤)でくっつけて、首にかすがいを打ってやれば、大丈夫だよ。

また嫌なこと言ってくるだろうけど。」

「そう思う?」

娘はそう言いました。

そして、二人はまた元の場所に帰ってきました。

煙突掃除屋さんは、

「こんなことなら、あんな骨を折ることしなくても良かったのになあ。」

羊飼いの娘は、

「おじいさんにかすがいを打ってあげたいわ。」

それから、かすがいが打たれ、家の人たちが背中をにかわでくっつけました。

首のところにもかすがいが打ちこまれたので、新しいものみたいになりましたが、

その代わり、もう頭をこっくりすることができなくなりました。

ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹が、

「あんたは砕けてから、とても高慢になったね。

そんなに恐ろしいことには見えんが。

羊飼いの娘さんはもらっていいのかい、それともいけないのかい?」

煙突掃除屋さんと羊飼いの娘はドキドキしながら年寄りの中国人を見ました。

うん、とうなずかないか気になって仕方がなかったのです。

ところがこの人は、うなずくことができませんでした。

それに、自分の首にかすがいが打ってあることを言うのはもっと嫌でした。

こうして、二人の陶器の人形は、ずっと一緒にいました。

そして、おじいさんの首のかすがいをほめながら、壊れるまで愛し合っていました。

 

羊飼いの娘と煙突掃除屋さんの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、この童話の最初に出てきた、ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹。

たんすに彫られていたこの男の姿は、ヤギの脚をして、角を生やし、長いあごひげを伸ばし、変な顔つきをしていました。

この姿と名前から、非常にごつく、威圧感を受ける印象です。

しかしそれだけでなく、ヤギの脚で角を生やしているというこの姿は、悪魔と考えられます。

さらに、このヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹は、たんすの中に陶器の女を11人も入れていました。

これは、11人の女をさらって監禁していると考えられ、その行動からも悪魔だと言えます。

そして、羊飼いの娘がこんな人と結婚するのを嫌がるのは、当然のことです。

それから、羊飼いの娘はかわいらしくてきれいな人形でした。

それに対し、煙突掃除屋さんもかわいらしくきれいでしたが、欠点がありました。

それは、本当は体中真っ黒なはずなのに、間違いで顔は娘のように白く、赤みがかかっていました。

これは、女性らしさの象徴です。

煙突掃除屋なら、体は黒いほうがふさわしいはずですが、黒くなかったことから、煙突掃除屋としては未熟であるといえます。

そして未熟さと、男性さが足りていなかったことから、煙突の上の世界に出た時、困ったことが起こったのです。

それは、二人でいざ煙突の上の世界に行ったら、羊飼いの娘が帰りたいと言い出しました。

ここで煙突掃除屋さんは説得しようとしましたが、彼女を説得できなかったのは、

男性さが足りなく、彼女を引っ張って行くことができなかったこと。

そして、煙突掃除屋として未熟だったので、広い世界に出たときに働いて十分彼女を養うことができないからです。

それから、年寄りの中国人は、勝手に羊飼いの娘のおじいさんだと言っていましたが、

これは現実世界でいえば、頑固おやじと言えます。

その頑固さがゆえに、結婚相手はそれなりの身分とお金を持っている人でなければならないと考えたのです。

そして、威圧感があって悪魔なのにも関わらず、ヤギ脚総司令官兼副司令官兼軍曹がふさわしいと考えていたのです。

 

羊飼いの娘と煙突掃除屋さんの感想

この童話で面白かったのは、うるさかった年寄りの中国人が最後だまったことでした。

しかもなぜだまったかというと、かすがいで首を固定されて、うんと言えなくなったからって。

この年寄りが改心したわけではないのに、黙るようになったってちょっと笑えますよね。

また、引き出しの中に飛び込んだら、偶然居合わせた人形芝居の舞台。

この劇のテーマが、結ばれない二人って、このタイミングでこの芝居は残酷すぎます。

このおもちゃも狙ってやっていたとしたら、ちょっと悪趣味ですよね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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