童話「イーダちゃんの花」のあらすじと考察~メルヘンチックだけど、花はやっぱり・・

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「イーダちゃんの花」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

イーダちゃんの花のあらすじ

「あたしの花が、すっかり死んでしまったわ。

ゆうべはきれいだったのよ。でも今は、こんなにしおれて、頭をぐったりさせてしまったわ。どうしてなの?」

イーダは、ソファーに座っている学生さんに話しかけました。

イーダは、この学生さんが大好きでした。

「イーダちゃん、この花たちはね、ゆうべ舞踏会に行ってたんだよ。だから、頭をぐったりさせてるんだよ。」

「花はダンスなんかできないわ。」

「ところが、できるんだ。夜になって、僕たちがみんな寝てしまうと、花たちは面白そうに飛び回るんだ。」

「一番きれいなお花は、どこで踊るの?」

「イーダちゃんは、町の外にある、大きなお城に行ったことがあるよね。

あそこにたくさん花の咲いている庭があるよね。あそこだよ、あそこで舞踏会をやっているのさ。」

「あたし、昨日お母さんとあの庭に行ったけど、花なんか一つもなかったわ。どこへ行ったんだろう。」

「みんな、お城の中に入ってんだよ。お城の中に誰もいなくなると、花たちはお城の中に駆け込んで遊ぶんだよ。

一番美しい二つの薔薇の花が、玉座に座って、王様とお妃になるの。

赤いケイトウが、両側にならんでおじぎをするよ。

それから綺麗な花がどんどん入って来て、舞踏会の始まりだ!」

「でも、お城の中で踊ったりして、誰にも何も言われないの?」

「それは、その場を見た人がいないからさ。夜に誰かが来ると、花たちは長いカーテンの後ろに隠れてしまうんだ。

『ここは花の匂いがぷんぷんするぞ』と言うだけで、何も見えないんだ。」

「まあ、おかしい!あたしにも花は見えないのかしら?」

「見えるよ。あそこへ行ったら、窓からのぞいてごらん。

僕が今日のぞいたら、スイセンがソファーに横になっていたよ。」

「植物園の花も行くの?」

「もちろんさ!けれども、植物園の花は、まだ一度もお城へ行ったことがないかもしれないね。

舞踏会があることを知らないのかもよ。

だから、イーダちゃんに良いこと教えてあげる。

今度植物の先生のお庭に行ったら、どれか一つの花に、舞踏会のことを話してごらん。

そうすると、その花が、他の花たちにしゃべって、みんな飛んで行ってしまうよ。」

「でも、お花はお話ができないんじゃない?」

「おしゃべりはできないけど、お互い身振りで分かるんだ。

風が吹くと、花がうなずいたり、葉が動いたりするよね。あれが、花たちのお話なんだよ。」

「植物の先生にもそれが分かるの?」

「分かるさ。ある朝、先生がお庭に出ると、イラクサが、赤いカーネーションに、葉をゆらしていたんだって。

イラクサは、『君はなんて可愛い花なんだ、好きになったよ』って。

ところが先生はそれが嫌いだから、イラクサの葉をぶったんだ。

すると、急に先生の手がヒリヒリして、それから先生は、イラクサに触れないようにしたんだ。」

「まあ、面白いわね!」

小さいイーダは笑いました。

「そんなこと、子供に教えるな。」

とその時、気むずかし屋の役人が口をはさみました。

この役人は、この学生が嫌いなのです。

けれどもイーダは、学生がしてくれた話が面白く感じました。

イーダは花たばを抱えて、おもちゃたちのいるところに行きました。

お人形のベッドには、お人形のソフィーが寝ていましたが、イーダはソフィーに、

「ソフィーちゃん、今夜は我慢して、引き出しの中で寝てちょうだいね。

花が病気なの、だからお前のベッドで寝かせてやりたいのよ。」

人形は不平そうでしたが、何も言いませんでした。

そして小さいイーダは、花たちを人形のベッドに寝かせてやりました。

その晩はずっと、学生のお話のことを思い出していました。

寝る前、窓のカーテンの後ろのヒヤシンスやチューリップを見て、イーダは小さい声で、

「あなたたち、今夜舞踏会に行くんでしょう。あたし、知ってるわよ。」

けれども花たちは何も言いません。

 

イーダは眠ってしまいその夜中、目が覚めました。

「あたしの花は今ごろ、ソフィーちゃんのベッドで寝てるかしら。」

身体を起こして少し開いているドアの方を見ると、向こうにおもちゃやお花が置いてあります。

それから、中で誰かがピアノを弾いているようでした。

「きっと今、花たちがダンスしてるんだわ、ああ、見たいわ!」

とうとうイーダは、ドアの隙間から中をのぞきました。

イーダの見た光景は、なんと面白いものでした。

その部屋には、ランプは一つもないのに大変明るかったのです。

ヒヤシンスとチューリップが二列に並んで、窓の花は一つもなく、空っぽの植木鉢があるだけです。

床の上には花が可愛らしくそろって、ぐるぐる踊っていました。

ピアノに向かっているのは、大きな黄色いユリでした。

このユリは、小さいイーダがこの夏見たユリに違いありません。

誰も、小さいイーダがいるのに気づきません。

それから、お人形のベッドのところにいる病気の花も出てきました。

もう病気らしい様子はなく、お友達のところに降りてきて、嬉しそうにしていました。

その時、テーブルから謝肉祭のむちが飛び降りてきました。

これも、花の仲間のつもりのようです。

その頭には蝋人形が、あの気むずかしい役人そっくりの帽子をかぶって座っています。

この蝋人形が、大きく長くなって、紙の花の上でぐるぐる回りながら、

「そんなこと子供に教えるやつがあるか。そんなでたらめを!」

とどなりました。これはあの役人そっくりです。

ところが、紙の花がその脚をぶつと、小さくなって、もとの蝋人形になってしまいました。

その様子のおかしいこと、小さいイーダも笑い出してしまいました。

その時、引き出しの中からソフィーが立ち上がって、あたりを見渡しました。

「まあ、舞踏会じゃないの。どうして誰も教えてくれなかったの。」

煙出し人形が、

「わしと一緒に踊らんかね。」

「ふん、お前さんと踊るもんですか。」

こう言って後ろを向いて、ソフィーは引き出しの上に腰を下ろして、誰か花が踊りを申し込まないかなぁと考えていました。

けれど誰も来ません。

そこでソフィーは、床に飛び降りました。

その時大きな音を出したので、花たちが集まって来て、けがはしてないか聞いてきました。

どの花も親切なのです。

ソフィーはどこもけがをしていませんでした。

イーダの花たちは、ベッドに寝かせてもらったお礼を言って、お月様の光差す部屋の真ん中で、一緒にダンスをしました。

すると、他の花も集まって来て、ソフィーを囲んで輪を作りました。

ソフィーはとっても嬉しくなって、

「良かったら、もっと私のベッドで寝ていいよ。私、引き出しの中でもいいわ。」

と言いました。

しかし花たちは、

「ご親切にありがとう。けれども、私たち、明日になれば、死んでしまうの。

どうぞ、イーダちゃんに、お庭のカナリヤの墓のところに埋めてくれるよう言ってくださいな。」

「いいえ、死んではいけないわ。」

ソフィーは言いました。

その時、あのお城から来たのでしょう、二つの美しい薔薇を筆頭に、とても可愛らしい花たちが入ってきました。

そしてみんなそろってダンスをする様子は、とても可愛らしい光景でした。

ついにおしまいには、花たちはおやすみなさい、と挨拶をかわしました。

そこでイーダも、自分の寝床に入って、眠りました。

そして、今見てきたことを夢に見ました。

次の朝、イーダは起きると、カーテンの後ろには花たちが寝ていましたが、昨日よりもしおれていました。

ソフィーも、引き出しの中に寝ていましたが、まだ眠たそうにしていました。

「お前、あたしに何か言うことない?」

イーダは聞きましたがソフィーは何も言いません。

「いけない子ね。みんな、お前と一緒にダンスをしてくれたじゃないの。」

それから、綺麗な鳥の絵が描いてある紙箱に、死んだ花を入れました。

さて、いとこが二人、石弓を持ってきました。

それをイーダに見せて、イーダも死んだ花のことを話しました。

庭のすみに穴を掘って死んだ花を箱ごと埋めると、いとこ二人がお墓の上で石弓をひきました。

 

イーダちゃんの花の考察

それではここから、この童話の考察を始めていきます。

この話で出てくるイーダちゃんは、アンデルセンの知人の娘、

そして学生はアンデルセン自身がモデルになっています。

実際にアンデルセンが知人の娘に聞かせた話をもとに、この童話は書かれたと言われています。

この童話は、イーダちゃんや学生、気むずかしい役人が出てくるという現実世界に、

お花が舞踏会を開くというメルヘンの世界が入り込んだ童話です。

なんともアンデルセンらしい童話ですね。

また、ここで出てくるお人形のソフィーは、かなり子供っぽさがうかがえます。

まず、イーダちゃんにベッドを譲れと言われたときは、ふてくされた顔をしていました。

夜の舞踏会の最中も、誰も教えてくれなくてふてくされていました。

ところが床に飛び降りて、花たちが自分のことをよくしてくれると、急に機嫌がよくなりましたね。

そして、あんなに嫌がっていたのに花にもっとベッドを譲ろうとしました。

自分に見返りがあると分かると態度が変わるのは、子供がおやつをもらったら機嫌が良くなるみたいに感じられます。

 

イーダちゃんの花の感想

この童話を読んで、子供のころメルヘンの世界を想像していたのを思い出しました。

子供のころは、魔法が使えたらとか、別世界に行けたらとか、お姫様のお城に行けたらいいなとか考えていました。

まるでこの童話は、「子供のころの気持ちを思い出しましたか?」と言っているみたいですね。

お花やおもちゃが夜に踊り出すのは、子供にとってはワクワクするようなものでないでしょうか。

実は僕も恥ずかしながらこの年齢でワクワクしたところもありますが、

そういう感性の豊かさがあるからこそ、アーティスト活動ができているのではないかと考えています。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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