童話「雪だるま」のあらすじと考察~どうでもいい存在は誰?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「雪だるま」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

雪だるまのあらすじ

「僕の体がミシミシいってるぞ、素晴らしい寒さだ。」

雪だるまはそう言って、

「あのぎらぎら光っているやつは、どこへ行くんだろう。

まばたきはしないぞ、このかけらをくっつけているからな。」

ぎらぎらしてるやつとは、お日様のことです。

そのお日様がちょうど沈む時でした。

そしてそのかけらとは、雪だるまが目にしていた、三角の2枚のかけらで、口は古いくま手でした。

この雪だるまは、男の子たちのばんざいと共に、この世に生まれたのです。

お日様が沈んで、大きな満月が、昇ってきました。

「また別の方角から出てきたな。」

雪だるまは、お日様がまた出てきたのだと思っていました。

「あれは、どうやって動いているんだろ、僕も動きたいなあ。

そうすれば、あの男の子たちみたいに、氷の上を滑れるんだが。」

その時、「ワン!ワン!」と、年取った番犬が吠えて、

「お前さんは、何も知らないんだね。まあ、さっき作られたばかりだからな。

今見てるのは、お月様だよ。さっき行ったのは、お日様さ。

お日様は、また明日やってきて、堀の中へ滑り込むやり方を教えるよ。

おや、そのうち天気が変わるな。」

雪だるまは、

「言ってることはさっぱり分からないけど、どうも面白くないな。

さっきぎらぎらして沈んでいった、たしかお日様ってやつは、あれは僕の友達じゃないな。

そんな気がする。」

「ワン!ワン!」番犬は吠えて、自分の小屋に入って眠ってしまいました。

やがて、本当に天気が変わってきました。

明け方になって、霧が出てきて、お日様が出るころ、冷たい風が吹いてきて、本格的な寒さになりました。

ところが、お日様が出ると、美しい光景が広がっていました。

木もやぶも霜で覆われ、白い林になり、枝は白い花がついているようでした。

シラカバにお日様が差すと、ダイヤモンドがきらきら光っているようでした。

「まあ、なんて美しいんでしょう。」

若い娘と若い男が、二人で庭に出てきて、雪だるまのそばに立ち止まると、その光景を眺めていました。

「こんな美しい光景は、夏では見られませんわ。」

娘がそう言うと、

「ここにいるこいつだって、そうですよ。」

青年は、雪だるまを指さしました。

娘は雪だるまを見てにっこりし、雪の上を歩いていきました。

「あの二人は誰なの?君は前からいるから、知っているだろう?」

雪だるまは番犬に聞くと、番犬は、

「もちろん。あの二人は、恋人同士だよ。これから犬小屋に行って、一緒に骨をかじろうってんだよ。」

雪だるまは、

「君と僕の仲のようなものなのかね?」

番犬は、

「お屋敷の方だよ。昨日生まれたばかりじゃ、知らないよな。

わしは年を取ってるし、知恵もつけている。

このお屋敷の人なら、誰だって知ってるんだ。

今ではこんな寒いところで、鎖につながれてしまっているが、それより前のことだって知っているんだ。

ワン!ワン!」

「それなら、話してくださいよ。」

雪だるまがそう言うと、番犬は、

「ワン!ワン!あの頃はわしも、子犬だったよ。小さくてかわいい犬だって。

お屋敷の中のいい椅子の上に寝たり、ご主人様のひざの上にいたよ。

ところが、そのうちわしは、大きくなりすぎたんだね。

わしは管理人にもらわれて、地下室に降りてきたんだ。

お前さんが立っている場所から、中が見えるだろう、ここだよ。

ここでは食事は前よりもたくさんもらえたし、クッションは自分のだし、ストーブだってあったんだ。

このストーブってのは、世界一いいものなんだ。今でもストーブの夢を見るよ。ワン、ワン!」

雪だるまは、

「ストーブってそんなにきれいなの?僕に似てるのかな?」

「お前さんとは正反対だよ。真っ黒で、首が長くて、しんちゅうでできているんだ。

口から火を吐くから、暖かくて、そのそばにごろりと横になると、気持ちいいんだ!

お前さんも、そこから窓越しに見られると思うよ。」

雪だるまがのぞいてみると、本当に、ストーブが見えて、炎が光っていました。

その時、雪だるまは変な気持ちになりました。そして番犬に、

「どうして君は、彼女のところから出てきたんだね。

どうしてそんないいところを出たんだね?」

雪だるまは、ストーブが女の人だと思ったのです。

番犬は、

「そうさせられてしまったのさ。

実は、一番下の坊ちゃんの足にかみついたんだ。わしがかじっていた骨をけとばしたんだからね。

ところがそうしたら、悪者はわしになって、こうして鎖につながれてしまったんだ。

そのせいで、声もしゃがれてしまった。ワン!ワン!もうおしまいさ。」

雪だるまはもう、犬の言うことなんて聞いていなく、ストーブのほうを見ていました。

「僕の体がミシミシいうなあ。あの中へ入っていけないだろうか。

これは僕の唯一の願いなんだが。

よし、なんとしても入るぞ。絶対に彼女に寄り添うんだ。たとえ窓を壊してでも。」

番犬は、

「お前さんは、あすこへは行けないんだよ。もし行ったら、お前さんは溶けてしまうよ。」

雪だるまは、

「もう溶けているようなものだ。僕の胸ははりさけそうなんだ。」

雪だるまは、一日中ストーブの方を見ていました。

あたりが暗くなって、ストーブが炎を吐くと、そのたびに雪だるまの白い顔はほてっていました。

そして雪だるまは、一晩中、楽しい空想にふけって、立ち続けていました。

明け方、地下室の窓に氷がはりつめて、そのせいでストーブが見えなくなってしまいました。

あたりは厳しい寒さで、雪だるまが喜びそうな寒さなのに、雪だるまは少しも嬉しそうでなく、ストーブを恋い慕ってました。

番犬は、

「雪だるまには、まったく困った病気だよ。わしも昔はこれに苦しんだ。

ワン!ワン!おや、天気が変わるぞ。」

すると、本当に天気が変わって、急に暖かくなってきました。

雪だるまは、だんだんやせてきました。

もう何も言いません。これが本性というものです。

ある朝、とうとう雪だるまはくずれてしまいました。

雪だるまのあった場所に、ほうきの柄のようなものが立っていました。

子供たちは、これを心にして、雪だるまを作っていたのです。

番犬は、

「なるほど、あいつはこれで憧れていたのか。

雪だるまの中には、ストーブの火かき棒が入っていたからだ。

それが、体の中で動いていたんだ。けれどそれもおしまいだ。ワン!ワン!」

こうして、冬も過ぎました。

番犬が、

「ワン!ワン!すんだ、すんだ!」

そしてお屋敷では女の子たちが、

「青い芽を出せ、クルマバソウ。

柳は手袋をお脱ぎ。

カッコウもヒバリも来い。

二月は終わり、もう春だ。

一緒に歌おう、カッコウ!

お日様、ずっと照ってくれ。」

と歌っていました。

その後誰も、雪だるまのことを思い出すものはいませんでした。

 

雪だるまの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

この童話全体から読み取れることは、「人は思っているほど、自分のことを思ってくれない」ということです。

この童話のメインの登場人物は、雪だるまと番犬でした。

この番犬は、もともとはこの屋敷の人にかわいがられていましたが、

大きくなった時に主人から管理人の手に渡り、今では鎖につながれてしまいました。

この犬は、ご主人にかわいがられていたかったと考えられますが、主人は、この犬が思うほど思ってくれていませんでした。

そして、雪だるまに話をして、「今では声もしゃがれて、もうおしまいさ。」と言ったのに、

雪だるまはそんなことは聞いていなく、自分のことでいっぱいでしたね。

一方、雪だるまは雪だるまで、最後は溶けてしまいました。

そして、「その雪だるまのことを思い出すものはいませんでした」っていう終わり方です。

やはり、人は思っているほど、自分のことをかんがえてくれないってことの表われだと考えられます。

それから、雪だるまは最後に崩れ落ち、その中にはストーブの火かき棒が入っていました。

そして雪だるまは、不思議とストーブに憧れていましたね。

このことから、「共通点に引き寄せられる」っていうことが読み取れます。

ストーブと雪だるまでは、完全に相反するもので、一緒にはいられないものです。

ところが、雪だるまはストーブに引き寄せられ、しかもストーブのことを勝手に女性だと思っていました。

これは明らかに、無意識のうちにストーブを恋人に見ていたということです。

人間の世界でも、相反する者どうしなのに、共通点が何かあると、犬猿の中でも、なぜか一緒にいることがありますよね。

これはやはり、無意識のうちに何かに引き寄せられるってことでしょう。

 

雪だるまの感想

この童話は、ちょっと寂しい感じの童話でした。

冬の、雪の降るある日の屋敷の庭が舞台でしたが、雪だるまも犬も、取るに足らない存在です。

なんか、いてもいなくてもどっちでもいいよねって存在な感じがして、寂しい感じです。

そして雪だるまはいなくなって、誰も気にする者はいなく、この犬も仮にいなくなっても、

「ああ、死んだのね」で終わりそうな感じでした。

あと、子犬の時は主人にかわいがってくれたのに、老犬になったら相手にされないっていうのは、

人間の世界でも、子供はちやほやされるのに、老人は誰にも相手されないのと同じだなって感じました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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