童話「おやゆび姫」のあらすじと考察~最後に出てくるマーヤって誰?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「おやゆび姫」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

おやゆび姫のあらすじ

むかし昔、あるところに1人の女の人が住んでいました。

あるとき、魔法使いのおばあさんのところに行って、

「可愛い赤ちゃんが欲しいのですが、どこからもらってきたらいいか、教えてください。」

「ああいいとも。さあ、この大麦の粒を一つあげよう。

これを鉢にまきなされ。なにか出てくるだろうよ。」

「ありがとうございます。」

魔法使いに十二シリングを渡してうちに帰りました。

その麦の粒を鉢に植えると、すぐにチューリップそっくりの大きな花が生えてきました。

そしてつぼみが開くと、花の真ん中に、小さな女の子がちょこんと座っていました。

本当に可愛らしい子でしたが、体は親指ほどしかありません。

それでこの子は、おやゆび姫と名付けられました。

おやゆび姫は、クルミのからをゆりかごにもらい、スミレの花びらが敷布団、バラの花びらが掛布団です。

夜はその中で寝て、昼はテーブルの上で遊びました。

そしておやゆび姫は歌も歌いましたが、それはきれいで可愛らしい声でした。

ある晩のこと、おやゆび姫が寝ている隙に、一匹のみにくいヒキガエルが入って来て、

「これはせがれの嫁にいいぞ。」

そして、おやゆび姫の寝ているクルミの殻ごと抱えて、広い大きな川へと連れて行ってしまいました。

そして川の中にある、スイレンの葉の上に乗せました。

 

おやゆび姫は次の朝目を覚ますと、自分のいる場所を知り、おいおい泣き出しました。

さらってきたあのヒキガエルは、息子のみにくいヒキガエルを連れて、

「これが私のせがれで、あなたの婿です。下の泥沼の中で、楽しく暮らしましょう。」

「͡コアックス、コアックス!」

息子はこれしか言えません。

そして、二人の住まいに運び込むために、美しいクルミの寝床をかついで行ってしまいました。

おやゆび姫は、あんな汚いヒキガエルのうちに住んで、結婚するのは嫌だったので、泣いてしまいました。

ところが、この話を聞いていた魚が、おやゆび姫をかわいそうに思って、

おやゆび姫の乗っている葉っぱの茎をかみ切ってくれました。

すると葉っぱは、おやゆび姫を乗せたまま、川を流れていきました。

いろいろな場所を通り過ぎていくとき、小鳥たちは、

「なんて綺麗な、可愛い女の子でしょう。」

と歌いました。

それからきれいな白い蝶が、おやゆび姫を好きになって葉の上に止まりました。

おやゆび姫は、リボンを使って、蝶と、乗っている葉っぱを結び付けました。

そうすると、葉っぱはもっと速く進んでいき、おやゆび姫は楽しい気分になりました。

その時、一匹のコガネムシが飛んできて、おやゆび姫を連れ去ってしまいました。

おやゆび姫は木の上に連れて来られましたが、葉に結びつけられたままの蝶のことを思うと、悲しくなりました。

あのまま離れられなければ、飢え死にしてしまうでしょう。

木の上にいると、他のコガネムシが集まって来て、

「まあ、この子ったら、足が二本しかなくて、みすぼらしいわねえ。」

「それに、触角もないわよ。なんてみっともないんでしょう。」

コガネムシたちは口をそろえて言いましたが、やっぱりおやゆび姫はきれいだったのです。

そう言われると、おやゆび姫を連れてきたコガネムシは、手元に置きたくなくなりました。

そしてみんなで、

「どこへでも行くがいい!」

と、ヒナギクの上に置き去りにしました。

夏中、あわれなおやゆび姫は、一人ぼっちで、大きな森の中で暮らしました。

花の蜜を食べ、葉の上にたまるつゆを飲んでいました。

そうしているうちに夏、秋と過ぎ、いよいよ冬がやってきました。

楽しい歌を聞かせてくれた小鳥たちもどこかに飛んで行ってしまい、木や花も枯れ、

住んでいた大きなクローバーの葉も、黄色い茎だけになってしまいました。

おやゆび姫は寒さにふるえました。

かわいそうに、このままでは凍え死んでしまいます。

おやゆび姫は歩いていくと、野ネズミの家の前に出ました。

この家は、切り株の下にある、小さな穴です。

おやゆび姫は入口に立って、大麦の粒を少しください、と言いました。

もうこの二日間、何も食べていなかったのです。

「おやおや、可愛そうに。さあ、暖かい部屋にお入り。一緒に食べようね。

この冬は、ここにいていいよ。ただ、私の部屋を綺麗にするのと、お話を聞かせておくれ。」

この野ネズミは、親切なおばあさんでした。

おやゆび姫が楽しい日々を送っているある日、

「近いうちにお隣さんが来るのよ。お隣さんは私よりも暮らしがいいのよ。

あの人のお嫁になれば、暮らしにはもう困らないよ。」

けれどもおやゆび姫は、結婚なんてまっぴらです。

なぜなら、お隣さんというのはモグラだったからです。

やがてモグラは、黒いビロードの毛皮を着て、お客に来ました。

モグラはお金持ちで学問もありましたが、お日様と綺麗な花が大嫌いで、よくその悪口を言いました。

おやゆび姫は歌を歌わされ、「コガネムシさん、飛んで来い」と、「坊さん、畑に出てみたら」を歌いました。

モグラはそのいい声に感心して、おやゆび姫を好きになりました。

それからモグラは、自分の家からこの家まで、土の下に長い廊下を作りました。

モグラと野ネズミとおやゆび姫がそこを歩いていると、途中、一羽のツバメが死んでいました。

かわいそうに、きっと寒さで凍えて死んだのです。

おやゆび姫は、心からかわいそうに思いました。

夏の間中、あんなにきれいに歌を歌ってくれていたのに。

それなのにモグラは、足で小鳥をけとばして、

「もうこいつは、ピーピー鳴きもせんわ。あわれなやつだ。

ピーピー鳴くしか能がないから、冬には飢え死にするのさ。」

野ネズミは、

「本当に、そのとおりですよ。」

おやゆび姫は、何も言いませんでした。

二人がいなくなった後、しゃがんでキスをしてやりました。

「夏の間、きれいな歌を歌ってくれたのは、この小鳥なんだわ。

私を喜ばせてくれたのに。」

おやゆび姫は枯草で毛布を編んで、死んだ小鳥にかけてやりました。

「さようなら、きれいな小鳥さん!

夏にあなたが歌ってくれた歌は、本当に面白かったわ。ありがとう。」

そう言って、顔を小鳥の胸に乗せました。

すると、小鳥の心臓はどきどきいっていたのです。

小鳥は死んだのではなく、気を失って倒れていたのです。

ツバメは秋になると暖かい国へ飛んでいきますが、みんなから遅れた鳥は、凍えて地面に落ちてしまうのです。

おやゆび姫に比べてこのツバメは大きな鳥でしたが、おやゆび姫は温めてあげました。

ツバメは起き上がると、

「可愛い小さなお嬢さん、ありがとうございます。

もうすぐ力がついて、暖かいお日様の光の中へ、飛んでいけるでしょう。」

「まあ、外は寒くて、雪が降っているのよ。この暖かいお床にいらしてね。介抱してあげますから。」

春が来ると、ツバメはおやゆび姫に別れを告げました。

ツバメは、一緒に行きませんか、僕の背中に乗れば、ずっと向こうの緑の森へ連れてってあげます、と言いました。

けれどもおやゆび姫は、自分が行ってしまうと、野ネズミのおばあさんが悲しむと思って、断りました。

「では、さようなら、さようなら、親切なかわいいお嬢さん!」

そう言って、ツバメはお日様の中へ飛んでいきました。

見送ったおやゆび姫の目には、涙が浮かんできました。このツバメが好きになっていたからです。

「キーヴィット!キーヴィット!」

ツバメはそう歌いながら飛んで行ってしまいました。

それからのおやゆび姫は、お日様の下に出ることは許されず、悲しい日々を送りました。

野ネズミは、

「さあ、夏のうちにお嫁入りの衣裳をぬうのですよ。」

お隣さんのモグラが、いよいよおやゆび姫と結婚しようとしてきたのです。

おやゆび姫は糸をつむがなければならず、モグラがやってきて、

「夏が過ぎたら、おやゆび姫と結婚式を挙げたいものだ。」

と言いました。

おやゆび姫は、そんなの少しも嬉しくありません。

こんなモグラなんか、好きではないですもの。

毎朝、お日様がのぼる時と、毎晩お日様が沈む時、おやゆび姫はそっと外に出ていました。

そして、外の世界が美しく思い、あのなつかしいツバメにもう一度会いたいと思っていました。

秋になって、結婚の準備ができました。

でもおやゆび姫は泣きだして、あんなモグラのお嫁さんになるのは嫌です、と言いました。

「ばかなこと言うな。あの人は立派なお婿さんじゃないか。神様にお礼でも言いな。」

野ネズミはそう言いました。

こうして、ご婚礼の式になりました。

いよいよ、モグラと一緒に地下で暮らさなければなりません。

そうなったら、もう二度とお日様の下には出られません。

可愛そうにおやゆび姫は、いよいよお日様に、

「さようなら、明るいお日様!」

こう言いながら、手を上げました。

それからおやゆび姫は小さな赤い花を抱きしめて、

「もしあのツバメさんを見かけたら、私からよろしくと言ってね。」

その時、

「キーヴィット、キーヴィット!」

と、いつかの小さなツバメがちょうどそこへ飛んできました。

ツバメはおやゆび姫を見て喜びました。

おやゆび姫はツバメに、モグラと結婚しなければならないこと、これからは地面の下で暮らさなければいけないことを話し、

話しているうちに涙が出てきました。

ツバメはこれを聞いて、

「今僕は、暖かい国へ飛んでいくところです。あなたも一緒に行きませんか。僕の背中に乗ってください。

可愛いおやゆび姫さん、あなたは暗い地面の下で倒れていた僕を助けてくれたのです。」

「ええ、一緒に連れてって!」

そしておやゆび姫はツバメの背に乗ると、飛んでいきました。

 

暖かい国へ来ると、ここのお日様はずっと明るく、空はずっと高く見えました。

景色は美しくなり、青い湖、美しい緑の木々と、真っ白な大理石の宮殿が見えてきました。

その柱の上に、このツバメの巣があるのです。

「これが僕の家です。あの下の方に咲いている、きれいな花のどれかに連れてってあげましょう。

そこで楽しく暮らしてください。」

「まあ、素敵ね。」

ツバメは、きれいな白い花の大きく開いた花びらの一つに、おやゆび姫を下ろしました。

そこにはなんと!その花の中に、小さい人がいました。

頭には金の冠をつけ、肩から美しい羽を生やしていました。

おやゆび姫くらいの大きさで、この人は花の天使です。

周りの花にもそういう小さい男の人や女の人が住んでいて、この天使は王子様でした。

「まあ、なんて美しい方でしょう。」

おやゆび姫はそう言うと、

王子もおやゆび姫が美しいのでとても喜びました。

そして、

「僕のお嫁さんになりませんか、そしたら、花の女王様にしてあげましょう。」

「はい。」

この王子は、あのヒキガエルやモグラと比べ物にならないくらい、美しい方でした。

そして大きな白いハエの、美しい翼をもらって背中へつけると、おやゆび姫は飛べるようになりました。

小さいツバメも、巣の中からおやゆび姫のために歌を歌いました。

けれどもおやゆび姫が大好きで、別れるのが辛かったので心の中では悲しんでいました。

花の天使は、

「これからは君はおやゆび姫ではない。変な名前だもの、僕たちは君をマーヤと呼ぶことにしよう。」

 

「さようなら、さようなら!」

小さいツバメはそう言って、デンマークへ戻ってきました。

ここのとある家の窓の上に、小さい巣がありました。

そこにはおとぎ話のおじさんが住んでいて、このおじさんにツバメは、

「キーヴィット、キーヴィット!」

と歌って聞かせてあげました。

このおかげで、このお話はすっかり広がりました。

 

おやゆび姫の考察

それではここから、この童話の考察を始めていきます。

まず、おやゆび姫は非常に小さい女の子でした。

一寸法師やおやゆび小僧など、他の童話にも小さい主人公はいるのですが、他の童話では男の子です。

男の子だと、体の小ささが逆に利点になって、うまく旅をしていきますよね。

ところがおやゆび姫の場合は女の子なので、自分から人生を切り拓けず、他の生き物にいいようにされてしまいます。

そしてヒキガエルやコガネムシにいいようにされた後は、森の中で一人過ごします。

ここで、自分で寝床を作ったり食べ物を取ってきたりと、初めて自分から動くようになりました。

ここは、相手に流されるだけだったおやゆび姫が成長し始めたということです。

そして野ネズミの家では、食べ物をもらう代わりに、掃除をしたり、お話を聞かせてあげましたね。

ここで初めて、何かを得るために、対価として働くということをしました。

おやゆび姫はどんどん成長しているということが言えます。

そしてその成長のきっかけをくれたのは、野ネズミですね。

また、ツバメを助けるシーンは、おやゆび姫が一番自主性を持っていたところです。

そしてツバメを思いやるところを見ると、本当に優しくて、女性的なのがうかがえます。

それから、モグラは嫌いだと思いながらも、一回目はツバメの背に乗らなかったのは、

モグラと結婚すればお金には困らなくなる、という葛藤もあったと考えられます。

これは、人間としての魅力は低くても、お金持ちな男に若い女性が惹かれるのに似ています。

女性として、結婚後の生活を大事にするのは当然と言えば当然ですね。

ですがその後、結婚すれば一切地上に出られないとなると、

おやゆび姫はツバメに乗せてもらうことを選びました。

大事なのは、おやゆび姫がこの未来を選択したということです。

おやゆび姫は相手に流されてばかりだったのに、こうやって自分で未来を選べるようになったのは、大きな変化です。

それから、おやゆび姫の結婚相手の候補を振り返ってみると、

ヒキガエル、コガネムシ、モグラと来て、ツバメ、王子となりました。

ヒキガエルやコガネムシは、ただ醜いだけでした。

モグラはお金はたくさん持っていましたが、中身は最低でしたね。

ツバメはおやゆび姫も大好きでしたが、体の大きさや住む世界が違いました。

そして最後に出てくる王子は、美しく、住む世界も同じで、最もおやゆび姫にふさわしいと言えます。

 

おやゆび姫の感想

この童話は、僕にとってはかなり思い出深い童話です。

昔僕が小さい時、父親が絵本を読んでくれて、その中でもよく読んでくれたのが、このおやゆび姫でした。

ところで、この童話の中で一番の見どころは、おやゆび姫とツバメのやりとりでした。

ツバメのことを心配そうに介抱してあげるおやゆび姫は、優しさにあふれていて、心動かされるシーンでした。

そして、おやゆび姫は野ネズミの家に残る決断をしたとき、ツバメを惜しみながら見送るところも、感動してしまいます。

また、おやゆび姫がツバメの背中に乗っているシーンは、イラストを見るととても愛らしいと感じましたね。

個人的には、ソシャゲで有名なパズドラに登場するおやゆび姫(キャラ名:四葉の王女・おやゆび姫)が好きです。

そしてなんと今回のおやゆび姫、かわいいイラストと音楽・ストーリー通りの歌詞を使って、MVにしました↓

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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