こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、「鉄のストーブ」（KHM127）のあらすじ、考察、感想をお話していきますね。
鉄のストーブのあらすじ
どこかの王子が、魔女に呪いをかけられて、森の中の大きな鉄のストーブに閉じ込められたことがあります。
この中で、王子は長い歳月を過ごしました。
あるとき、一人の王女がこの森に来て、道に迷ってしまい、お父様の国に帰ることができず、９日の間歩き回って、このストーブの前にたどりつきました。
するとストーブの中から、
「わたしがあなたを、おうちに帰れるようにしてあげる。あなたが、小刀を持ってここに戻ってきて、この鉄をけずって穴をあけてくれるなら。
わたしは、あなたよりずっと身分の良い王子。あなたをお嫁さんにもらいます。」
という声がしました。
ストーブに結婚を申し込まれて、奇妙でしたが、王女は国に帰りたくって仕方なかったので、その約束をしました。
すると王子は、人をつけてやり、２時間後、王女を国に送り届けてやりました。
王女が帰ってくると、お城は大喜びです。
でも王女は落ち込んでいて、王様に森の中のストーブのことを話しました。
そこで王様は、美しい粉ひきの娘を身代わりにやることにしました。
粉ひきの娘はストーブのところに行って小刀で削りましたが、２４時間経っても全く削れませんでした。
王子は偽物の王女だと気づいて、本物の王女をおよこし、と言いました。
王様は今度は、豚飼いの娘を使いに出しました。
ところが、今度も王子にばれてしまいます。
さらに、
「私がお姫様に約束したことは、どうやったって逃れられない。
もしお姫様が自分で来ないなら、国中のものが、がらがら崩れ落ちて、重なり合う石は、ただ一つもなくなるよって言ってくれ」
王女は、これを聞くと泣き出しました。
でも、こうなっては嫌でも行くしかありません。
王女はお父様に別れを告げると、ストーブのところに行き、小刀で削り出しました。
２時間くらい経つと、小さな穴が空き、その穴からのぞくと、それはそれは美しい若い男の人が見えました。
さらに、その人は黄金や宝石にくるまっていたので、王女はすっかり気に入り、そのまま王子を助け出しました。
「あなたは私のもの、私はあなたのもの。あなたは私のお嫁さんで、私を救ってくれた人。」
王子はそう言うと、自分の国へ連れて行こうとしましたが、王女は、もう一度お父様のところに行かせてくださいと言いました。
王子は、行っても、三語以上口を聞いてはいけない、三語だけしゃべったら、戻らなければいけない、と言います。
王女はうちへ帰りましたが、三語以上口をきいてしまいます。
そのとたん、鉄のストーブは王子ごとなくなり、ガラスの山を越え、さわれば切れる剣の野を越え、遠くへ行ってしまいました。
王女は森へ引き返しましたが、鉄のストーブは見つかりません。
９日探しましたが見つからず、もうお腹もペコペコです。
そして日が暮れて真夜中が近づいたとき、遠くに小さな灯が見えました。
助かったと思ってそこへ行くと、ちっぽけな古い家があり、周りの草はぼうぼう、薪が積み上がっていました。
それでも、王女はトントンと戸を叩くと、中から小さなひきがえるが出てきて、戸を開けてくれました。
それから王女は自分の話をして、王子を見つけるまでは、どこまでも旅をするつもりでいることを話しました。
それを言うと婆さんガエルが、でかい箱を持ってくるように言いました。
その後、王女に食べるものと飲み物を出して、今日のところは寝床で寝かせました。
次の日、婆さんガエルは王女に針を三本渡し、
「あなたはこれから、ガラスの高い山を越えなければならず、触れば切れる刀の３本ある上を通らなければならず、
大きな川を渡らなければなりません。これを乗り越えれば、会いたい人に会えるでしょう」
と言い、車犂（くるますき）の車の輪を一つと、胡桃（クルミ）を３つ、渡しました。
それを持って王女は旅に出ました。
ガラスの山のところに来ると、三本の針を、足の前に刺したり後ろに刺したりして、足場を作りながら越えました。
次に、触っただけで切れる三本の刀のあるところに来ました。
ここでは、持っているすきの車の輪の上に立って、ごろごろ転がしながら通り越えました。
最後に来たのは大きな川で、この川を渡ると、立派なお城に入りました。
王女はこのお城に、例の王子がいることを知っていました。
そこでまずは安い給料で、台所のはしためにやとってもらいます。
ですが、この時すでに王子は、もう別の女の人と一緒にいて、この人をお嫁さんにするつもりでした。
なぜなら、あの時の王女はとっくに死んでいると思っていたからです。
日が暮れて、王女は婆さんガエルからもらったクルミを食べようと思って一つを割ると、素敵な王女の衣装が入っていました。
このことが偽の花嫁の耳に入ると、偽の花嫁は欲しくってたまらず、
「これは女中なんかの着るもんじゃないわ」
といって、それをお金で買い取ろうとしました。
すると王女は、
「これは売りものにはしません。ですが、一晩だけ王子の部屋に自分を居させてくれれば、衣装を差し上げます」
と言い、偽の花嫁もこれを許しました。
その後、偽の花嫁が王子にこのことを話すと、王子も承知しました。
ですがこの偽の花嫁は、眠り薬を入れた葡萄酒を１杯あげたのです。
王子と王女が一緒に部屋に入ると、眠り薬のせいで王子は眠ってしまい、王女はどうしても起こすことができません。
王女は夜通し泣き続けました。そして、
「わたしは、あなたを、あの恐ろしい森から、鉄のストーブから救い出しました。
あなたをお探しました。ガラスの山を越え、触れば切れる三本の刀の上を通り、大きな川を渡ってきました。
それなのに、あなたは、私の言うことをお聞きくださいませんのね」
と言い続けました。
王子の家来たちは、部屋の外で王女が夜通し泣き続け、こう言っていたことを王子に報告しました。
次の日、王女は仕事の終わった晩、２つ目のクルミを開けます。
すると、前のよりももっと立派な衣装が入っていました。
またしても偽の花嫁の耳にそのことが入り、前の晩と同じように、王子と一緒に王子の部屋に入ります。
が、今晩も眠り薬を飲まされており、王子は眠り込んでしまって起きません。
王女は泣きながら、昨日と同じことを言い、王子の家来たちはまた王子に報告しました。
３日目の晩に、王女は３つ目のクルミを割ります。
すると、前の日よりももっと美しい、純金のかざりのついた衣装が入っていました。
王女はもう一度、偽の花嫁と衣装を渡す約束をして、夜、王子の部屋に入りました。
今度は、王子も用心して、眠り薬に手をつけませんでした。
王女が泣きながら、
「あなたは、私の大切な宝物なのですよ。私は、恐ろしい森の中から、鉄のストーブの中から、あなたを救ったのですよ。」
と言い出すと、王子は
「お前がほんものだ。お前は私のもので、私はお前のものだよ。」
と言いました。
こうなると、その夜のうちに王子は王女を連れて、大きな川を渡り、三本の刀の野を越え、ガラスの山を越えました。
この後、いつぞやの小さな古い家にたどり着くと、そこは立派な御殿になっていて、ひきがえる達は魔法が解けて、それは王様の子供たちばかりでした。
そのまま二人の婚礼があって、この御殿にいましたし、その後父親の国を２つ手に入れて、仲良く暮らしました。
鉄のストーブの考察
ここから、鉄のストーブの考察に入ります。
まず、物語の最初、いきなり王子が鉄のストーブに閉じ込められているところから始まりました。
でも気になるのは、なぜそんな呪いをかけられたのか、ということです。
通常、魔女が呪いをかけるには何らかの理由があるものです。
例えば、魔女が独占欲があって少女を鳥かごに閉じ込めたり、太らせて食べようと、ろうやに入れたりします。
でもこの童話には、そんな記述は全くないですよね。
これは、鉄のストーブに閉じ込められた原因はどうでもよくて、その王子の状態が重要なのでは、と思われます。
また、王女は９日間、森の中を迷っていました。
ここで出てくる９という数字はちょっと異例で、グリム童話では３と７が多く、続いて１２という数字が多いです。
この物語は、グリム童話の中でははっきりとした場面の展開が多く、他の童話とはちょっと違うと言えそうです。
続いて、王女は王子を助けた後、まずは一度父親のところに行かせてほしいと言い、３語以上口をきいてしまいましたね。
このタイミングで一度帰らせてほしいというのは、親離れがしきれていないからというのがあります。
ただその後、王子を探して、ガラスの山、三本の刀、大きな川を越えて、城のはしためとして働くことを経験しました。
この冒険を通して、未熟だった王女が成長していくさまが書かれていると言えます。
鉄のストーブの感想
この童話を読んで思わされるのは、グリム童話の中でもかなり素敵な話だ、ということです。
一度は離れ離れになってしまった王女と王子が、再び巡り合っています。
しかもその間には、まず王子が鉄のストーブの中から救い出されていますし、
王女はいなくなった王子を探し求めて、様々な困難を乗り越えていきます。
そして偽の花嫁がいるというのも、ドラマチックだなと感じます。
グリム童話はハッピーエンドな話ばかりですが、王女の頑張りが報われるというのも、いいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした！
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