こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より「強盗のおむこさん」（KHM４０）のあらすじと考察、感想までお話しています。
強盗のおむこさんのあらすじ
むかし昔、あるところに粉ひきがいました。
その粉ひきには美しい娘があって、娘をお嫁に欲しいという人にやることにしました。
少しして、娘をお嫁に欲しいという人が来て、この人はお金持ちらしく見えて、悪そうな人でなかったので、娘をやることにしました。
しかし娘は、この相手の人がなんとなく、ぞっとするのでした。
ある時その人が、
「あなたは私のいいなずけだが、一度も私の家へ来ませんね。
今度の日曜日は、ぜひ私のところへ来るのですよ。
私の家は村のはずれの暗い森の中にあって、道が分かるように、灰をまいておきますよ。」
約束の日曜日になって、出かけようとしたとき、胸騒ぎがしました。
そこで娘は、エンドウ豆とひら豆をたくさん持っていくことにしました。
森の道には灰がまいてありましたが、娘はエンドウ豆を放りながら進みました。
そして家に着きましたが、いかにも薄気味悪いところです。
すると
「かえんなよ、かえんなよ、若いよめご、お前は人殺しのいえにいる」
と声がしました。それは、かごに入れられ壁にかかっている鳥の声でした。
「かえんなよ、かえんなよ、若いよめご、お前は人殺しのいえにいる」
もう一度言いました。
娘は家へ入ると、家じゅう探しましたが、誰もいません。
おしまいに地下室に行くと、石のように年を取った婆さんが一人いました。
「おばあさん、あたしのおむこさんはどこにいること？」
「やれやれ、かわいそうに。えらいところへ入り込んだもんだねぇ。
お前さんは、人殺しのかくれがにいるのだよ。
ごらん、わたしは言いつけられて、こうやって大釜へ水を入れて火をかけている。
みんながお前さんをつかまえたら、細かく切って、ぐつぐつ煮て、食べてしまうんだよ。
なにしろ、みんな人食い鬼だからねぇ。」
こう言ってから、ばあさんは娘を樽の後ろに連れて行きました。ここにいれば、見つかりません。
「静かにして動いてはいけないよ。夜になって強盗どもが寝ちまったら、二人で逃げ出すことにしよう。私はね、長いこといい機会を待っていたのさ。」
娘が隠れたとたん、悪者たちがどやどや帰ってきました。
悪者どもは別の年頃の娘を一人ひきずってきて、その女がわあわあ泣くのを耳にも入れず、女にお酒を飲ませました。
一杯は白く、一杯は赤く、一杯は黄色でしたが、それを飲むと、女の心臓は破裂しました。
そうすると悪者どもは女の美しい体を細かく刻み、塩をふりかけます。
樽の後ろの娘はぶるぶる震えていました。
自分もああなるところだったと思ったのだから無理はありません。
一人の男は、殺された女の指に黄金の指輪がはまっているのを見ましたが、それが抜けず、なたでその指をちょん切りました。
すると指はぽーんと跳ね上がり、樽を飛び越して娘のひざへ落ちました。
強盗はその指を探しましたが、見つかりません。
「お前、あの樽の後ろは探してみたのかい？」
すると婆さんが、
「早く来て食べなよ。探すのは明日にしな。指は逃げて行きゃしないよ。」
そうすると強盗どもはご飯を食べ始めました。
みんなのお酒には婆さんが眠り薬を入れていたので、どれもこれもいびきをかいて寝てしまいました。
いびきが聞こえると、娘は出てきて、ばあさんと一緒に家を飛び出しました。
まいてあった灰は風で吹き飛ばされましたが、エンドウ豆とひら豆は芽が出て伸びて、道を教えてくれました。
二人は夜通し歩いて、もとの家にたどり着きました。
そして、自分の身にふりかかったことを、父親に話しました。
ご婚礼の式の日になると、親族や知り合いを呼んで、ごちそうの席でめいめい、なにか話すことになりました。
花嫁が黙り込んでいると、おむこさんが、
「どうしたの、あんた何も知らないの？何か話してくれたまえ。」
するとお嫁さんは、
「では、あたくしの夢の話をしましょう。
あたくしは、ひとりぼっちでどこかの森を通って、やっとのことでどこかの家に着きました。
その家には誰もいませんでしたが、壁にかかっているかごに鳥が一羽いて、
「かえんなよ、かえんなよ、わかいよめご、お前は人殺しのいえにいる」
って鳴きましたの。
それから家の中を歩き回っても誰もいなくて、おしまいに地下室へ降りると、石みたいに年をとったおばあさんがいたのよ。
あたくし、おばあさんにわたしのお婿さんはどこって聞いたの。
おばあさんは、やれやれ、かわいそうに。お前は人殺しのすみかへはいりこんだのだよ。
お婿さんはここにはいるがね、お前を細かく切って殺すよ、それからお前をぐつぐつ煮て、食べちまうよって、お返事したの。
ねえあなた、あたくし夢を見たばかりなのよ。
それからおばあさんは、あたくしを樽のうしろへ隠してくれました。
隠れたとたん強盗たちが帰って来て、年頃の娘さんを一人ひきずってきて、
白と、赤と、黄色の３つのお酒を飲ませたと思ったら、娘さんの心臓は破裂してしまったのよ。
ねえ、あなた、あたくし夢を見てばかりなのよ。
それから強盗たちは娘さんの美しい体を細かく切って、塩をふりかけたの。
そうしたら、一人の強盗が、娘さんの薬指に指輪がはまってるのを見て、抜けないもんだから、なたでその指をちょん切ったの。
そうしたら指はぽーんとはねて、樽の後ろのあたくしのひざへ落っこちましたの。
ね、そらこれが、その指輪のはまってる指なのよ。」
こう言いながら、娘はその指を取り出して、そこにいる人達に見せました。
強盗はこれを聞いて真っ白になっていましたが、いきなり逃げだそうとしました。
けれどもお客様がたがおさえつけて、官憲（おかみ）の手へ渡しました。
これで、この強盗もその仲間も、今まで悪いことをした罰として、処刑されました。
強盗のおむこさんの考察
それでは、ここからこの童話の考察に入ります。
主人公の娘は、最初から結婚相手に違和感を持っていましたね。
お父さんはお金持ちに見えて悪そうな人ではないと思って娘の結婚相手にしましたが、
娘はこの婿には何か悪いものを感じていました。
相手を見ただけでどんな人だかだいたい分かってしまう人は世の中にいますが、この娘はそれだけ繊細な心を持っていたと考えられます。
それだけ繊細な心を持っているのに、強盗の家で樽の後ろに隠れていて、指輪のはまった指が飛んできた時はどんな心境だったか。
この童話の本文には、その時の娘の心境は一切書かれていませんでしたが、おそらく声をあげて叫びそうになっていたと考えられます。
特に、この娘は繊細だと考えられるので、普通の女よりもそれはひどいものだったでしょう。
物語の最後では、強盗のおむこさんとの婚礼の時、夢を見たと言ってその時に飛んできた指を見せました。
ですがこの娘の話では、目の前にいる婿が犯人だとは一切言っていなかったですよね。
それなのに、そこにいるお客さん達が、この婿が悪者だと気づきました。
ってことは、娘が強盗の家から帰って来て父親に話した後、父親が親族や知り合いに話していたことになります。
ということは、この婚礼は、結婚式ではなく、強盗を捕まえるためのトラップにすり替わっていたと考えられます。
強盗のおむこさんの感想
この童話では、残酷なシーンがありましたね。
グリム童話では、善人が残酷な死に方をするシーンはそんなにたくさんないのですが、
強盗達に連れてこられた若い娘は、わあわあ泣きながら殺されて、食べられてしまいました。
これが絵本になっていたらと思うとゾッとします。
また最後、主人公の娘が夢に見たと言って、強盗のおむこさんの家であったことを話しましたが、
直接言わず、間接的に白状してこの悪者を追い詰めるのもいいですね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした！
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