こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より「恋人ローランド」(KHM56)のあらすじと考察、感想までお話しています。
恋人ローランドのあらすじ
むかし昔、あるところに1人の女がいました。
その女は魔法使いで、実の娘とまま娘の2人の娘がありました。
実の娘は妹のほうで顔もみにくく、性格も悪い少女でしたが、まま娘のほうは姉の方できりょうが良く、美しい娘でした。
この女は実の娘をかわいがり、まま娘を憎んでいました。
実の娘は、まま娘の持っているきれいな前掛けが欲しくなり、それをこの女に言うと、
「今夜、姉ちゃんが寝たら、母さんが姉ちゃんの首をちょんぎってやるよ。お前はおとこの後ろの方にいて、ねえちゃんを前の方に押し出しておくんだよ。」
ですがまま娘は、この会話を聞いていました。
まま娘はいよいよ寝るときになると、妹がぐうぐう寝てしまった後、妹を前の方へ押し出して、自分は奥の方に入りました。
夜中になると、ばあさんがそうっとやってきて、斧で勢いよく打ち下ろし、自分の実の子の首をちょん切ってしまいました。
ばあさんが立ち去ってから、まま娘は寝床から出て、ローランドという自分の恋人の家に行きました。
「聞いてちょうだい、ローランドさん。あたしたちね、急いで逃げなきゃならないことよ。
まま母がね、あたしを殺すつもりで、自分の子の方をやっちゃったのよ。
夜が明けて、自分のしたことに気がつこうもんなら、あたしたち、助かりっこないわよ。」
するとローランドは、逃げる前に、お母さんから魔法の杖を取ってくるよう言いました。
娘は、魔法の杖を取ってきて、そのついでに、死人の首から、血を三滴たらします。
一たらしは寝床の前、一たらしは台所、あとの一たらしは階段です。
それが済むと、二人は逃げ出しました。
あくる朝、ばあさんは娘を呼んで前掛けをやろうとしましたが、出てきません。
「お前、どこだい?」
「ここよ、階段で掃除してるわ」
と、血の一滴が返事しました。
ばあさんが来ても娘はいないので、もう一度
「お前、どこにいるんだね?」
「ここよ、台所よ。体を洗っているとこ。」
と、血の二滴めが返事しました。
台所に来てもやっぱりいないので、
「お前、どこにいるんだね?」
「いやね、ここよ、ふとんの中で寝ているわよ」
と、三滴目の血が返事をしました。
ばあさんが部屋に入り、寝台のところまで来ると、実の子が、血を流して死んでいました。
しかもその首は、自分の手で切ったものです。
ばあさんは気違いのようになって、窓へ飛んでいくと、どんな遠方でも見える自分の目で、まま娘とローランドが逃げていくのを見ました。
「いくら遠くへ逃げて行ったって、このばばあから逃げられるものではないぞ。」
ばあさんは一里靴をはきました。
これは一歩で一里歩けるので、すぐに追いついてしまいます。
ここで娘は、ばあさんが歩いてくるのを見て、取ってきた魔法の杖を使って、
恋人ローランドを湖に、自分を湖に浮かぶカモに化けました。
ばあさんはカモをおびき寄せようとしましたが、カモはその手にのらず、ばあさんは日が暮れてから帰って行きました。
ばあさんが行ってしまうと、二人は元の姿に戻って夜が明けるまで歩きました。
次の日、娘はからたちの真ん中に咲く美しい花に、恋人ローランドを胡弓弾きに化けさせました。
そこへ魔法使いの婆さんがやってくると、
「のう、楽人さん。この綺麗な花をとってもいいかな?」
「いいですとも。私の音楽に合わせて、一つ踊ってもらいますかな。」
ばあさんは、その花が憎い娘だと知っているものですから、藪の中へ入って花を折ろうとしたとき、楽人が胡弓を弾きました。
そのとたんにばあさんは嫌でも踊らなければならず、からたちがばあさんの着物を引き裂き、刺で刺して傷だらけになりました。
それでもばあさんは踊りをやめられず、とうとう死んでしまいました。
ローランドが、
「こうなると、私は父のところに行って、婚礼の支度をしてくるよ。」
「それならあたしは、ここで待ってるよ。その間、誰にも分からない普通の赤い石になってるよ。」
ローランドは出かけて行き、娘は赤い石になって野原で恋人を待っていました。
ですがローランドはうちへ帰ると、別の女のわなにかかって、せんの娘のことを忘れさせられてしまいました。
娘は長いこと赤い石になって待ってましたが、いつまで経っても戻ってこないので、苦しくなって一輪の花に化けました。
これで、誰かが踏み倒してくれるだろうと考えたのです。
けれどもこの通りにはなりませんでした。
この野原には羊飼いが一人いて、この花が目に入ると、いかにも美しかったので、それを取って、手箱の中にしまいました。
この時から、羊飼いの家には不思議なことが起こりました。
朝にはお部屋の掃除が済んでいて、かまどの火はたいてあって、水はくんであります。
羊飼いがうちへ帰ってきた時には、食卓にごちそうができているのです。
家の中に人間は見かけませんし、こんな小さな家に隠れられる場所もありません。
羊飼いはこの親切を嬉しく思いましたが、しまいには気味が悪くなり、神通力をもつ女のところへ行きました。
神通力の女は、
「それは魔法だよ。朝、うんと早起きしてね、部屋の中で手を伸ばすものがあるか見てごらん。
何か見えたら、白い布をかぶせるんだよ。そうすりゃあ、魔法の力が食い止められるのさ。」
羊飼いは朝早く起きて、手箱から花が出てくるのが見えました。
羊飼いが白い布をパッとかけると、そのとたんに美しい娘が目の前に立っていました。
娘は花であったことと、これまでこの家でしてきたことを白状し、自分の今までの運命を話しました。
羊飼いは娘が気に入ったので結婚を申し込みましたが、娘は「いや」と返事をしました。
ローランドのことを思っているのですから無理はありません。
いよいよ、ローランドのご婚礼の日が来ました。
この国では、嫁入り前の娘は全員そこへ顔を出して、花婿花嫁のお祝いに歌を歌うしきたりがありました。
ローランドを思っている娘がそこへ出たら、この話を聞いてすっかり気を落として、
自分がその席へ行ったら心臓が破裂するかもしれないと思い、行くのは嫌だと言いましたが、行くしかありませんでした。
けれども、歌を歌う時になると自分は引っ込んでしまったので、まだ歌ってないのは自分だけになりました。
ところがそこで娘が歌い出すと、ローランドは
「あの声は覚えているぞ。あれが本物の嫁だ。他の人はいやだ。」
と、大きな声を上げました。
忘れていたことが、急にローランドの心に思い出されたのです。
それで娘は、ローランドとご婚礼の式を挙げて、悲しみが終わり、喜びが始まることになりました。
恋人ローランドの考察
それでは、ここからこの童話の考察に入ります。
まず、この童話では悪い女が2人登場します。
そのうちの1人は継母ですが、この童話でもその意地悪っぷりを完全に出してくれました。
継母な上に、悪い魔女と言うことで、子供がこの童話を読んでも、決して自分の母親と照らし合わせないような人物でしたね。
特に子供を殺そうとしているので、過激な役割を避けるために、実の母親ではなく、継母の魔女にしたと考えられます。
そしてもう一人の悪い女は、ローランドの記憶を奪った人物です。
不思議なことに、この人物については一言も記述がありませんでした。
ローランドの結婚式になってもこの女について一切出てこないとなると、この偽物の花嫁はいないのと一緒だと考えられます。
実際にはこの女は、からたちのいばらに引き裂かれて死んだ魔女のばあさんの亡霊のようなものだと考えられます。
その化身として、ローランドの記憶を奪う女になっただけでしょう。
また、物語の最初に三滴の血が時間稼ぎをしてくれました。
血というのは、神様のおぼしめしを表したものと考えられ、それが主人公たちを守ってくれたのでしょう。
それと、娘が花になって羊飼いの家で家事をやっていたシーンがありました。
ここで、娘が働き者になって仕事をしていたのは、それだけこの娘がしっかり者で、性格が良いことが読み取れます。
恋人ローランドの感想
この童話で一番恐ろしかったのは、魔女のばあさんが、娘が寝ているところを斧で首を吹き飛ばしたところです。
実際にはみにくくて性格の悪い妹が死んだのですが、この風景をまま娘の立場になって頭の中で想像すると、怖いところがありました。
また、結局ローランドの記憶を奪った女がほとんど出てこなかったので、
結局こいつは誰だよってなりました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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