童話「ジャックと豆の木」のあらすじと考察~ジャックは悪者なのか!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、イギリス民話より、「ジャックと豆の木」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

ジャックと豆の木のあらすじ

むかし昔、ジャックという名前の一人息子をかかえた貧乏なやもめのお母さんがいました。

親子はミルキー・ホワイトという名前の牝牛を持っていて、この牛の出すミルクを売って生活していました。

ところが急にミルクを出さなくなってしまい、ジャックはこの牛を売ってくることにしました。

ジャックが出かけると、すぐに妙な格好の老人が出てきて、

「おはよう、ジャック。」

「おはようございます。」

ジャックはそう言うと、このじいさんは何でおれの名前を知っているんだろう、と思いました。

「ところでジャック、どこに行くんだね?」

「市場に、この牛を売りに行くんだよ。」

「なるほど、ところでここに、豆がある。

お前さんのその牛と、この豆をとっかえてやってもいい。」

ジャックは、

「冗談はよしてよ。そんな豆とこの牛だなんて。」

「ははは、どうやらこれがどういう豆か知らんようだな。

こいつを蒔いて一晩たつと、朝には天まで伸びているんだ。」

「本当かい?嘘に決まってるよ。」

「いや、本当だよ。もし嘘だったら、牛を返してやってもいい。」

そこでジャックは、自分の牛とこの豆を交換しました。

家に帰ると、母親が、

「もう帰ってきたんかい。

ミルキー・ホワイトを連れてないところを見ると、売ったんだね。

いくらで売れた?」

ジャックは、

「母さんには当たんないだろうね。」

「当ててみるよ。よくやったね!五ポンドかい?十ポンド?それとも十五かい?」

「当たりっこないって。この豆と交換したんだよ。

魔法の豆で、こいつは・・・」

母親は、

「なんだって!お前はそんな阿呆だったのかい!

ミルキーホワイトはよくミルクが出るのに、肉にしたって上等なのに、ろくでもない豆つぶととっかえるだなんて!

晩ご飯はなしだよ!こんなもの窓から放ってやる。」

ジャックはこの日、申し訳ないと思いながらも、夕食を抜きにされた悲しさでいっぱいでした。

それでもジャックはこの日は寝ました。

次の日、ジャックは目を覚まして窓を見ると、母親が放り投げた豆つぶが、大きな木になって、天まで届いていました。

あのじいさんの言っていたことは本当だったのです。

ジャックはこの豆の木を登り、天まで来ました。

そこでは道が続いていて、歩いていくとうんと大きな家が建っていて、入口にはうんと大きな女がいました。

ジャックは、

「おはようございます。朝ごはんを少し分けてください。何も食べていないんです。」

そのうんと大きな女は、

「なに?朝ごはんが欲しいって?

ここをさっさと出て行かないと、お前が朝ごはんになっちまうよ。

うちの亭主は人食い鬼で、男の子をあぶってトーストにのっけたのが好物なんだよ。

もうすぐうちの人が帰って来るよ。」

それでもジャックは、朝ごはんをもらうことにしました。

この人食い鬼のおかみさんは親切な人で、ジャックを台所に連れて行くと、チーズとパン、ミルクをくれました。

ところがジャックが半分も食べないうちに、ずしん!ずしん!と誰かが来る足音で家じゅうがゆれました。

人食い鬼のおかみさんが、

「大変、さあ、早くこの中に隠れて。」

ジャックをかまどの中へ押し込んだところへ、人食い鬼が来ました。

人食い鬼はとても大きな人でした。

持って来た仔牛を三頭、テーブルの上へ投げ出すと、

「おい女房、こいつを朝飯にあぶってくれ。ん?この臭いはなんだ?

取って食うぞ、取って食うぞ。

イギリス人の臭いがするぞ。

生きていようが死んでいようが

骨を粉にしてパンにしてくれるわ。」

おかみさんは、

「バカなこと言わんでよ。それは昨日うまいうまいって食べたあの男の子のかすが、まだ臭ってんだよ。」

さて、人食い鬼は朝ごはんを食べると、金貨の入った袋を二つ取り出し、どんと座り込んで金貨を数え始めました。

そして、そのうちこっくりこっくりと、いびきをかき始めて寝てしまいました。

この隙にジャックはかまどからはい出し、人食い鬼のそばの金貨の袋を一つかかえて、豆の木のところへ走って行きました。

そして豆の木を降りて、金貨を母親に見せました。

親子はしばらくはその金貨で暮らしていましたが、やがてそれも尽きてしまいました。

そこでジャックはもう一度、豆の木をのぼって人食い鬼の家に行きました。

そしてあのうんと大きな女に、

「おはようございます。何か食べるものをいただけませんか。」

その女は、

「とっとと行ってしまいなさい。

でないと、うちの人がお前を食っちまうよ。

お前さん、前に来たことある子だね。

ちょうどあの日に、金貨の袋が一つなくなったんだよ。」

ジャックは、

「それは変な話だね。そのことで教えてあげることがあるけど、

腹ペコで、何か食べないと口も利けないよ。」

そう言われると、おかみさんはその話が気になり、ジャックを家に入れて食べ物をあげました。

ジャックが食べ始めたところで、ずしん!ずしん!とあの大男の足音が聞こえ、

かみさんはまたジャックをかまどの中に隠しました。

何もかも、前と同じことが起こりました。

そして朝ごはんを食べると、

「おい女房、金の卵を産むめんどりを連れて来い。」

人食い鬼がこのめんどりに、「生め!」と言うと、めんどりは金の卵を産みました。

やがて人食い鬼は、いびきをかいて寝はじめました。

そこでジャックはかまどから出ると、金の卵を産むめんどりを抱えて、逃げ出しました。

ところが今度は、めんどりが「コッコ」と鳴いたので、人食い鬼は目を覚まし、

家を出たジャックの耳に、

「やい、女房、おれのめんどりをどうした?」

という声が聞こえてきました。

ジャックは急いで豆の木のところまで行き、降りました。

母親に不思議なめんどりを見せ、「生め!」と言うと、そのたびに金の卵を産みました。

さて、ジャックはそれでも満足できず、ある朝、また豆の木の上の世界へ行きました。

人食い鬼の家のそばに行くと、人食い鬼のかみさんが出てくるのを見て、

今度は人食い鬼の家に忍び込み、大きな銅釜の中に隠れました。

すると、ずしん!ずしん!と足音が聞こえて、人食い鬼が入ってきました。

「臭うぞ、臭うぞ、イギリス人の臭いがするぞ。」

するとおかみさんが、

「そうかい。あんたの金貨と金の卵を産むめんどりを盗んでいった悪ガキが、きっとかまどに隠れているに違いないよ。」

二人はかまどを探しましたが、いないので、さっき食べた男の子の臭いだろうと思いました。

そこで人食い鬼は朝ごはんを食べ始め、その間も人食い鬼はあちこち探しました。

しかし幸いなことに、大きな銅釜のことだけは考えつきませんでした。

朝食が済むと、

「おい、おれの黄金の竪琴を持ってこい。」

かみさんが竪琴を持ってきて、人食い鬼が「歌え!」と言うと、黄金の竪琴は美しい音色を立てました。

そして竪琴が歌っているうち、人食い鬼はいびきをかいて寝てしまいました。

そこでジャックは大釜から出てきて、人食い鬼のところに忍び寄り、黄金の竪琴をつかむと、戸口へ駆け出しました。

ところが竪琴が大きな声で、「だんなさま!だんなさま!」と騒ぎ出したので、

人食い鬼は目を覚まし、竪琴を抱えたジャックを見つけてしまいました。

ジャックは走って逃げ、人食い鬼もジャックを追いかけてきました。

もう少しで捕まるところでしたが、ジャックは豆の木のところに着きました。

ジャックは豆の木を降り始めると、人食い鬼はジャックを見失ってしまいました。

しかしジャックが豆の木を降りていくのを見ると、人食い鬼も豆の木を降り始めました。

ジャックは地上に降りると、

「母さん、母さん!斧を持ってきてくれ!」

母親が斧を持ってくると、ジャックは斧で豆の木を真っ二つに切ってしまいました。

そして豆の木はぶっつりと切れ、人食い鬼もろとも上から落ちてきました。

人食い鬼は地上に落ち、脳天を割ってしまいました。

ジャックは黄金の竪琴を見世物にしたり、金の卵を売って、二人はお金持ちになりました。

それからジャックはお姫様と結婚して、幸せに暮らしました。

 

ジャックと豆の木の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず物語の最初で、ジャックは不思議なじいさんに出会い、ここで牛と豆を交換しました。

この時、ジャックの名前をなぜか知っていましたが、このじいさんは普通の人間でなく、

神様か、それに関係する人物だと考えてよさそうです。

また、ジャックはこの豆について、話を聞いて嘘に決まっていると思いましたが、

「もし嘘だったら、この牛を返してあげるよ」という言葉をすっかり信用して、取引しました。

ですが普通に考えれば、その場はそこで終わりですから、嘘だった場合、バックレられる可能性は高いです。

でもジャックはそんなことは考えずに、この不思議なじいさんと取引をしました。

これは、ジャックが若さゆえにじいさんを信用してしまったことが一つ。

そして、不思議な豆つぶの効果がそれほど魅力的に感じられたからだと考えられます。

大事な牛を、豆つぶなんかと交換したら、お母さんに叱られることはジャックも容易に想像できます。

しかしそれでも欲しいと思ったのですから、よっぽど魅力を感じていたと考えられます。

それから、天に住んでいた人食い鬼は、男の子を食べていたから悪者です。

そしてこの悪者は、金貨や金の卵を産むめんどり、黄金の竪琴など、宝物をたくさん持っていました。

童話では、悪者が宝物をたくさん持っているという設定は、よくあるパターンです。

例えば、ヨリンデとヨリンゲル青ひげ青いランプなどはこのパターンの童話です。

あと、ジャックは人食い鬼の家から、金貨や黄金の竪琴などを盗み出しました。

これだけを見ると、ジャックは悪いことをしているようにも思えます。

ジャックの家は貧乏で、現実の世界でも貧乏な人ほど犯罪に走る傾向がありますから、

ジャックは悪者なのかという議論があります。

でもジャックは、悪者の人食い鬼からしか盗みを働きませんでした。

それにその後は、普通に暮らしていて、最後はお姫様にも認められるような少年だったので、

ジャックは悪い少年というわけではなさそうです。

男の子ですし、冒険をしてみたいという気持ちが強かったのでしょう。

そういう意味では、この童話の主人公が男の子なのは、すごくふさわしいです。

また、ジャックは勇敢で、頭も回る少年だと考えられます。

3回目に人食い鬼の家に行った時、人食い鬼の宝を持ち出したという自分の行いがばれていると感づいていたのでしょう。

まず、おかみさんに声をかけないようにしました。

そして、かまどに隠れたら見つかると瞬時に判断して、別のところに隠れました。

さらに、おそろしい人食い鬼を見ていながら、3回もこの家に行ったのだから、

たいへん勇敢な少年であることは間違いないです。

 

ジャックと豆の木の感想

この童話では、ジャックが人食い鬼の家で隠れている時、少しハラハラする話でした。

「人間臭いぞ、人間臭いぞ」と人食い鬼が言っていたので、

子供なんかは特に、見つかりはしないかとハラハラする話ではないでしょうか。

あと、人食い鬼は宝をたくさん持っていて、出てきた金貨の袋は2つだけでしたが、

他にも金貨の袋はたくさんあったのか、それともそれだけしかなかったのか、気になるところでした。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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