童話「おやゆびこぞう」のあらすじと考察~からかわれた男たちが取った行動は

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「おやゆびこぞう」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

おやゆびこぞうのあらすじ

貧乏な百姓がありました。おかみさんは、座って糸をつむいでいました。

百姓が、

「うちみたいに、子供が一人もいないってのは寂しいもんだね。よそのうちは、わいわいいって、にぎやかなものだよ。」

するとおかみさんは、

「そうねえ、たった一人でいいの。いくら小さくてもいいから、おやゆびくらいでもいい。

二人してかわいがってあげるのにねえ。」

ところがおかみさんは具合が変わって、七カ月後、子供を一人産みました。

その子供は、体は健康なのですが、大きさは、おや指くらいしかありませんでした。

「これは私たちの望んだとおりだ、かわいがってやりましょう。」

この子はおやゆびこぞうという名前をつけました。

二人はこの子を育てましたが、体はちっとも大きくなりません。

それでも、知恵のあるすばしこい子供になりました。

ある日のこと、百姓は森へ木を切りに行くしたくをして、

「誰かが後から車を持ってきてくれればなぁ。」

と独り言を言いました。

するとおやゆびこぞうが、

「なあんだ、車ならきっと僕が持っていきますよ。」

「どうしてそんなことができる?お前みたいなちびっこじゃあ、馬の手綱なんか取れないよ。」

するとおやゆびこぞうは、馬の耳ん中に座って、馬に道を教えると言ったので、父親も頼むことにしました。

時間が経って、母親はおやゆび小僧を馬の耳の中に入れると、おやゆび小僧は

「イヨー、イヨー、ホット!ハール!(右へ左へ)」とかけ声をして、馬を歩かせました。

まるで親方が手綱を取ってるように、道を間違わずに森へ向かって進んでいくのです。

そこへ知らない男が2人やってきて、

「おかしいぞう!車がきてよう、馬に声をかけているが、馬方が見えないぞ。」

「これはただごとじゃないぞ、追いかけて、車の止まるのを見てやれ。」

そのまま車は、木を伐り出されているところへ来ました。

おやゆび小僧は父親に、

「それ、僕、ちゃんと車を持ってきたでしょ、さあ降ろしてよ。」

すると父親は、馬の耳からおやゆび小僧を出して、一本の藁しべに座らせました。

知らない男二人はこれを見て、

「なあ、この豆ぞうを大きな都会に持っていって見世物にすれば、儲かるんじゃないか?」

そう話し合って、百姓のところに行くと、この小僧を売ってくださいと言いました。

「だめですよ。これは、わしの大事な大事な子で、世界中のお金を積まれても、売れません。」

ところがおやゆび小僧はこれを聞いていて、

「父さん、いいから僕を手放してください。きっと戻ってきますよ。」

そこで父親はお金をたくさん受け取って、二人の男に売り渡しました。

おやゆび小僧は二人の帽子のふちに座って、父親に別れを告げて行きました。

しばらく歩いていくとおやゆび小僧は、用をたしたいと言って、下に降ろしてもらいました。

おやゆび小僧は畑のところに置かれましたが、あっちこっち飛び跳ねたあと野ネズミの穴を見つけ、その中へもぐりこみ、

「ごきげんよう、みなさん、遠慮はいらない、僕に構わずお帰んなさい。」

小僧はこう言って、嘲笑いました。

二人がかけつけてきてネズミの穴を掘ろうとしましたが、無駄でした。

おやゆび小僧はどんどんもぐりこむし、辺りは真っ暗になったので、

二人はぷんぷん怒りながら、空の財布を持って帰りました。

二人が行ってしまったあと、おやゆび小僧は地面の中からはい出てきました。

するととある男2人が通りかかって、

「あの金持ちの坊主から銭をまき上げるには、どうしたらよかろうなあ。」

おやゆび小僧は、

「そんなことなら、僕にいい知恵があるぞう。」

と大きな声を出しました。

「なんだ?」

「誰かがなんか言ったぜ。」

それから地べたを探すと、こぞうを見つけました。

「なんてちびっこいんだ、どうやって俺たちの手伝いをするんだ?」

おやゆび小僧は、

「僕が鉄の棒の間から坊主の部屋に入って、おじさんたちの欲しいものを出してやるのさ。」

泥棒達は、おやゆび小僧を連れて坊さんのうちに来ました。

おやゆび小僧は部屋の中に入りましたが、大きな声を出して、

「ここにあるもの、みんなほしいのかあ」

とわめきました。

泥棒達はあわてて、

「小さい声にしてくれよ、家の人が起きるといけない。」

けれどもこぞうは、

「なにがほしいんだあ、ここにあるもの、みんなほしいのかよう。」

と、わあわあ言い出しました。

これで、となりの部屋の料理番の女が聞きつけました。

泥棒たちは少し逃げましたが、思い直して、

「ちびっこめ、俺たちをからかってんだな。」

二人は戻ってきましたが、

「そうれ、なんでもくれてやるぞう。遠慮なく手を中へ突っ込んでくれえ。」

こぞうはもう一度大きな声を出しました。

これで女中がかけつけてくると、泥棒たちは逃げ出しました。

おやゆび小僧は納屋に隠れ、女中は何もいないのを見てまた寝床へ入りました。

おやゆび小僧は、納屋の中で乾草(ほしくさ)のなかで朝まで寝て、それから両親のところへ帰るつもりでした。

ところが、とんでもない目にあうことになりました。

まったく、世の中には辛いこと、難儀なことがたくさんあるものですね。

夜明けに、女中が起きて、牛に餌をやりにいきました。

やってきたのは納屋で、ここで乾草を手に取ると、牛に食べさせました。

ところがよりによって、この乾草の中にはおやゆび小僧がいたものです。

気が付いた時はこぞうは乾草と一緒に、牛の口の中にいたのです。

こぞうは乾草と一緒に噛み潰されないようにするのが精いっぱいで、やがて胃袋の中に落ちないわけにはいきませんでした。

この中は暗く、こぞうはとても気に入りません。

それに困ったのは、あたらしい乾草がどんどん入って来て、いるところが狭くなることでした。

とうとうこぞうは、

「もう新しい乾草をよこしちゃいけない、もう新しい乾草をよこしちゃいけない」

と声をはりあげました。

女中はこれを聞いてびっくりして、

「たいへん、たいへん。だんなさま、うちの牝牛が口をききましたよ。」

坊さんはこれを聞くと、牛小屋に行ってみました。

そうするとまたおやゆび小僧が同じことを言ったので、悪魔が牛にとりついたと考え、牝牛を殺すよう言いつけました。

それで牝牛はつぶされて、こぞうのいた胃袋は、牛のうんこの山に放り出されました。

おやゆび小僧は、胃袋から出るのに苦労しましたが、やっと頭を出したところで、また新たな災難が訪れました。

お腹の減っている狼が来て、牛の胃袋を鵜のみにしてしまったのです。

おやゆび小僧は勇気を失わず、狼のやつ話がわかるかもしれないぞ、と考えて、

「狼さん、僕、君の素敵な食べ物のあるところを知ってるぜ。」

「どこで取れるんだ?」

「こうこうこういう家さ。うちは下水溝から入んなきゃいけないんだけど、お菓子でも、豚の腸詰めでも、いくらでもあるよ。」

おやゆび小僧は、自分の家のことを教えてやり、狼は夜中に下水溝から入り、好きなだけ食べ物を食べました。

狼はお腹いっぱい食べてから逃げ出そうとしましたが、お腹がふくれて下水溝が通れません。

こぞうはこれを当てにしていて、ここで思いっきり暴れたり、わめいたりしました。

「静かにしないか、きさま、うちのものを起こしちまう。」

狼がそう言いましたが、こぞうは

「何言ってるんだ、君は腹いっぱい食べたじゃないか、僕だって、ふざけるさ。」

こぞうはそのまま精一杯声を出していると、父親と母親がとうとう目を覚まして出てきました。

すると狼が見えたので、亭主は斧を、おかみさんは大鎌を持ち出してきました。

亭主が、

「おれが、きゃつを一つくらわして、まだくたばらなければ、お前がきゃつのどてっ腹かっさいてくれ。」

するとおやゆび小僧が、

「とうさん、僕ここにいる。狼のお腹ん中だよう。」

と大きな声を出すと、大事なおやゆび小僧が帰ってきたと父親は嬉しくなりました。

それから亭主が狼の頭めがけて一つくらわせたので、狼は死にました。

そして狼の中からおやゆび小僧を引っ張り出して、

「やれやれ、お前のこと、父さんも母さんもどんなに心配したことか。」

「父さん、僕、そこいらじゅうずいぶん歩き回ったんだよ。」

「お前、いったいどんなとこへ行ってきたんだ?」

「お話にならないや、野ネズミの穴だの、牛のお腹ん中だの、狼の腹ん中だの、いろんなところへ入ってね、

やっと父さんや母さんのおうちにいられることになったの。」

「今度はもう世界中のお宝を積まれたって、二度とお前を売ることはできないよ。」

お父さんとお母さんはかわいいかわいいおやゆび小僧を抱きしめてキスして、

食べ物と飲み物、台無しになった着物の替えをやりました。

 

おやゆびこぞうの考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まずおやゆびこぞうの性格は、これを読んでいる限りいたずら好きで、勇敢です。

まず、おやゆびこぞうを買い取った二人の男に対してからかいました。

野ネズミの穴に入って、「ほら、こっちだよ」と言わんばかりに遊んでいました。

それから、坊さんの家に泥棒に入ると言った二人の男もからかいましたね。

協力すると言いながら、大声を出して二人を困らせました。

おやゆびこぞうは、ちびっこだからいたずらをしたのでしょう。

子供っぽくていたずら好きですが、勇敢な面も持ち合わせていましたね。

牛の腹の中でも、狼の腹の中でも、しょげかえったりすることはありませんでした。

そればかりか、自分が外に出るために知恵を働かせて、親元のところに帰ったので、

賢くて、勇気がある性格です。

しかも、人間や狼を騙せるほどの賢さがありますね。

グリム童話では、物語が進むにつれて主人公が成長するパターンが多いのですが、

この童話は最初っから知恵と勇気があって、大冒険をする話でしたね。

 

おやゆびこぞうの感想

この童話は、おやゆびこぞうが男たちをからかっているのが面白かったです。

おやゆびこぞうが小さいがゆえに、捕まえることができず、好き放題言われているのはなかなか面白かったです。

からかわれているのに、何も反撃できずに、男たちがとぼとぼと帰っていくのはおやゆびこぞうの圧倒的強さがうかがえますね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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