童話「柳の木の下で」のあらすじと考察~1人の幼馴染に執着した男の末路

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「柳の木の下で」あらすじと考察をお話しています。

 

柳の木の下でのあらすじ

キエーエの町はずれに、隣同士の小さいクヌートとヨハンネがいました。

一方の家の庭にはニワトコの木が、もう一方の家の庭には古い柳の木が立っていました。

柳の木は川岸に立っていましたが、幼い二人はこの柳の木の下で遊ぶのが好きでした。

両方の貧しい両親は、よく一緒にいて、家族ぐるみの付き合いがありました。

キエーエの町には大きな市場広場があるのですが、この中に蜂蜜菓子のお菓子屋さんがあって、

このお菓子屋さんは市のある間、クヌートの家に泊まっていました。

だから、蜂蜜菓子の小さいのがもらえるのです。

それだけではなく、この蜂蜜菓子屋のおじさんは、二人の子供にお話をしてくれました。

私たちもそれを聞きましょう。

「あるお菓子屋の店台の上に、蜂蜜菓子が二つあったんだ。

一つは帽子をかぶった若者の形で、もう一つは頭に金箔をつけた娘さんだ。

若者は苦い扁桃が左側にあったが、これはこの人の心臓だ。

娘さんのほうは全部蜂蜜菓子だよ。

二人は見本として並んでいたんだけど、ずっと一緒にいたから、お互い好きになってのう。

けれども、どっちもそれを口に出さないんだ。

『この人は男なんだから、先に口に出さないと。』

娘さんはこう考えたんじゃ。

若者のほうは頭の中で、もっと激しいことを考えていたんだ。

それから二人は何日も経っていくうちに、ひからびてきた。

すると娘さんは、

『今までこの人と一緒にいただけで、満足だわ!』

と考え、その時、体が二つに割れてしまったんじゃ。

若者は、

『もし僕の気持ちを知っていたら、もっと長生きしたのになぁ』

と考えたんじゃ。」

「これでおしまい。ほら、これがその二人なんだよ。」

こう言って、お菓子屋のおじさんは、ヨハンネに若者のお菓子を、クヌートには割れた娘さんを渡しました。

でも二人は、この話が気になって、これを食べる気にはなりませんでした。

次の日、二人は他の子供たちに、この話をして一対の蜂蜜菓子を見せました。

みんなはこの話を面白く思いましたが、一人の意地悪な子が、いきなり割れた娘さんを食べてしまいました。

これを見て、二人は泣きだしました。

そしてもう片方の若者を残しておくのをかわいそうに思い、二人はそれも食べてしまいました。

それからも二人はニワトコの茂みや柳の木の下で一緒に遊びました。

ヨハンネは歌を歌いましたが、それはきれいな声を持っていました。

クヌートは、良い声には恵まれませんでした。

こんなふうに楽しい日々が続きましたが、ある時お隣同士が別れることになり、それは終わりました。

ヨハンネのお母さんが死んで、お父さんはコペンハーゲンで再婚することになったのです。

お隣同士は別れましたが、手紙のやり取りをしようと約束しました。

一方、クヌートは靴屋に弟子入りしました。

クヌートはどんなにコペンハーゲンに行ってヨハンネに会いたかったことでしょう。

けれども行きはしませんでした。

クリスマスの時に、ヨハンネのお父さんから手紙が来ました。

それによると、コペンハーゲンでの暮らしはうまくいっていること。

ヨハンネは声が良いので、オペラ劇場に出ることになり、お金を少しもらってきたこと。

そしてヨハンネが、自分の筆で、「どうぞクヌートさんによろしく」と書いてありました。

みんなはこれを読んで、嬉しくなって泣いてしまいました。

特にクヌートは、今でも向こうが自分のことを思ってくれていることが分かったのです。

いずれ僕のお嫁さんになってくれることがはっきりしたように思ったのでした。

そのうち、クヌートは一人前の職人になって、コペンハーゲンに行くことになりました。

この時ヨハンネは十七歳、クヌートは十九になっていました。

コペンハーゲンに着くと、新しい親方の家を訪ねました。

次の日曜日には、クヌートはヨハンネの家を訪れました。

ヨハンネのお父さんが迎えてくれて、何不足ない暮らしぶりをしていました。

そして父親は、ヨハンネの部屋を案内しました。

その部屋はとてもきれいな部屋でしたが、クヌートが目に入れたのはヨハンネだけだったのです。

すっかり年頃の娘になっていて、ずっと美しくなっていました。

キエーエの町には、こんな美しい娘はいません。

ヨハンネは、最初知らない人が入ってきたかのように、クヌートを見ていました。

ですが次の瞬間、すぐ飛んで行ってキスするところでした。

実際にそうしませんでしたが、もう少しでするところでした。

そして二人は、クヌートの両親のことやニワトコや柳の木のこと、蜂蜜菓子のことなどいろんなことを話しました。

ヨハンネはニワトコの木と柳の木のことを、ニワトコおばさん柳のおじさんと呼んでいました。

蜂蜜菓子の話では、いかにも楽しげに笑っていました。

この日はクヌートはこの家に泊まり、楽しい夜を過ごしました。

そして、次の日曜日にもここに来ることになりました。

クヌートは親方のところで仕事をしながら、

「日曜日には僕たちは会えるんだ。

その時、僕のかわいい妻になってほしいということを言おう。

一生懸命に働くぞ!そして蜂蜜菓子が教えてくれたように、はっきり言うんだ。」

と考えていました。

ところが日曜日にクヌートが行くと、みんなこれから出かけなければならない、とのことでした。

ヨハンネはクヌートに、水曜日に自分の出る歌劇があるから、見に来てください、と切符を一枚渡しました。

クヌートはもちろん、水曜日にヨハンネの出ている劇場を見に行きました。

人々は拍手を送り、クヌートもばんざいをしました。

王様まで、ヨハンネに笑顔を向けました。

この時クヌートは、どんなに自分を小さく感じたでしょう。

でも自分はヨハンネを愛しているし、ヨハンネも自分のことが好きなんだ、と勇気を持ちました。

クヌートは日曜日に、またヨハンネのところに出かけました。

しかしヨハンネは、

「あなたにお話したいことがあるの。

それは、この金曜日に、わたしは芸の勉強をするために、フランスへ旅立つことになりましたの。」

クヌートは、心臓が張り裂けそうになり、どれほど深い悲しみに打たれていたかは、周りにも明らかでした。

ヨハンネは、

「ほんとうに、心のまっすぐな誠実な方ね。」

クヌートはここで、自分の妻になってくれないか打ち明けました。

しかしヨハンネの顔はだんだん青ざめ、悲しくなって、

「クヌートさん!お互い不幸にならないようにしましょうね。

私はいつまでも、あなたの妹です。でもそれ以上はいけないわ。」

そして、柔らかい手でクヌートのひたいをなでました。

「神様は、私たちがお祈りすれば、きっと強

別れ際に、ヨハンネはクヌートの手を取って、泣きながら、

「お別れの時です、妹に手をお与えください。昔の幼な友達のお兄様!」

これだけでも、クヌートにとっては救いになりました。

ヨハンネはフランスに船出し、クヌートはくよくよしながらコペンハーゲンに留まりました。

春になって、クヌートは一刻も早くここを離れて、遠くの世界に行きたくなりました。

しかしフランスだけは嫌でした。

そこでクヌートはドイツのニュールンベルクへ行き、そこで親切な親方のところに住むことになりました。

しかしここにはニワトコの木があり、春になると花を咲かせました。

これを見るとクヌートは、キエーエの庭にいるような気持ちになり、我慢できなくなりました。

そこで、別の親方のところに移りました。

しかしここは、ニワトコの木がない代わりに、川のそばに柳の木が生えているところでした。

つまりクヌートは、ニワトコおばさんのところから、柳のおじさんのところへ引っ越したのです。

クヌートはやっぱり耐えられなくなって、さすらいの旅に出ました。

ヨハンネのことは誰にも話しませんでした。

そして、あの蜂蜜菓子の若者がなぜ、苦い扁桃を持っていたかが分かりました。

クヌートは、自分に苦い味を持っていたからです。

一方ヨハンネは、全て甘い味でした。

アルプスの連山やライン川を通り、北の国も訪れ、そしてやっとたどり着いた場所が、ミラノでした。

ここで親方を見つけ、そこに住まわしてもらうことにしました。

クヌートの一番の楽しみは、大理石の大聖堂の屋上にのぼることでした。

クヌートには、ここはまるでふるさとの雪で作られたものかのように思われました。

ここから眺める景色は、にぎやかな町とロンバルディアの平野が広がり、高い雪山がそびえていました。

ここで、故郷のキエーエ教会を思い出しましたが、故郷への憧れは感じませんでした。

今では、ここで土になるつもりでいたのです。

この町に来て1年、国を出てから3年になったある日のこと、親方と一緒に、この町の大オペラ座に行きました。

そこで劇を見たのですが、コペンハーゲンの劇場よりずっと豪華でした。

けれども、あそこにはヨハンネがいました。

ここには、あっ、魔法じゃないでしょうか、ここにもヨハンネが、金と絹の衣裳に包まれ、金の冠をつけて立っていました。

そして舞台の前に出てきて、ヨハンネだけができるあの笑顔を浮かべました。

彼女はクヌートの方を見ていました。

哀れはクヌートは思わず、「ヨハンネ!」と叫びました。

しかしその声は、音楽によってかき消されました。

隣にいた親方は、

「そうだよ、たしか名前はヨハンネだったね。」

これは夢ではありませんでした。

劇を見に来た人々は、ヨハンネのために歓声を上げ、花束を舞台に投げました。

ヨハンネはアンコールで呼び出され、引っ込んだり呼び出されたりしていました。

往来では人が集まっていて、ヨハンネを乗せた馬車が、ヨハンネの泊まっている、明るく立派な家に着きました。

クヌートはそれを喜びながら見ていて、やがてヨハンネが出てきました。

彼女は微笑みを浮かべて、周りにお礼を述べました。

クヌートはヨハンネの顔を見て、ヨハンネもクヌートの顔を見ました。

しかしヨハンネは、それがクヌートだということには気づかないようでした。

その時、胸に星章をつけた一人の紳士が、ヨハンネの手を取りました。

どうやら、町の人によると、二人は婚約の間柄だそうです。

クヌートは親方の家に帰ると、故郷へ、ニワトコと柳の木のところに帰りたくなりました。

そうです、わずか一時間のうちに、人間は一生を生き抜くことができるのです。

みんなはそれを止めようとしましたが、クヌートは旅立たずにはいられませんでした。

途中、小さな村の宿に泊まりました。

しかし、ある朝一人の手回しオルガン弾きがやってきて、故郷のデンマークの歌を始めました。

これで、ここにもいられなくなりました。

それからクヌートは、何日も歩き続けました。

でも、誰にも自分の憧れと苦悩のことは話しませんでした。

日が暮れる頃、クヌートは柳の木を見つけ、この下に腰を下ろしました。

これには故郷の面影があり、デンマークを思わせるものがありました。

ここで眠くなり、目を閉じましたが、柳の木が抱いてくれている感覚になりました。

そして、子供のころに遊んだ、キエーエの柳の木のところに運んでくれました。

するとそこに、ヨハンネが立っていて、頭には金の冠をかぶって、クヌートを見て、

「おかえりなさい!」と言いました。

見るとそこに、妙な形をしたものが二つ、子供のころに見たものでしたが、それはずっと人間らしくなっていました。

それは他でもありません、あの蜂蜜菓子の若者と娘でした。

「ありがとうございます!」

二人はクヌートに言いました。

「あなたは私たちに、思っていることは言わなければいけない、思っているだけではだめだ、と教えてくださいました。

おかげさまで、私たちは結ばれ、婚約したのです。」

こうして二人は、手をとってキエーエの教会に向かっていきました。

その後に、クヌートとヨハンネが、同じく手を取って歩いていきました。

教会では、オルガンが鳴り響く中、二組の男女が進みました。

そして、蜂蜜菓子の新郎新婦は、クヌートとヨハンネのために脇に寄りました。

ヨハンネは顔をクヌートの顔の上に傾け、その目からは、氷のように冷たい涙がこぼれました。

冷たい涙は、クヌートの熱いほおの上に落ちました。

そのとたん!クヌートは目を覚ましました。

気付くと自分は、冬の夕暮れに、知らない国の柳の木の下にいました。

そして冷たいあられが、ぱらぱらと顔に当たりました。

「ああ、今のは人生で一番楽しい時だった。

神様、どうかもう一度、今の夢を見させてください。」

こう言って目をつむり、再び夢を見ました。

明け方、村の人がここを通ると、一人の若者がうずくまっていました。

この男はもう凍え死んでいました。柳の木の下で。

 

柳の木の下での考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、この話の最初の方で、男女の蜂蜜菓子が出てきました。

これは、クヌートとヨハンネのことを表していたのですが、若い男のほうは苦い扁桃を持っていたのは、

もちろんクヌートが苦い恋を経験したからです。

一方、娘の蜂蜜菓子は、甘い部分だけでできていました。

ヨハンネのほうは順調に恋が進んでたからです。

ですが、蜂蜜菓子が二つに割れたのは、娘のほうです。

ヨハンネのほうは恋が順調だったのに、ヨハンネを表していた娘の蜂蜜菓子が割れたのは、ここで生まれ変わったからだと考えられます。

ヨハンネは、クヌートとの恋を捨てて、別の男性と結婚するという、別の道を選択しました。

つまり、生まれ変わったことを示します。

一方でクヌートを表す若者の蜂蜜菓子が割れなかったのは、死ぬまでヨハンネへの恋を貫き通したからです。

ヨハンネがコペンハーゲンへ行ったあと、二人がここで再開する場面がありました。

この場面では、ヨハンネはクヌートを好きだったということがうかがえます。

ヨハンネは飛んで行って、キスしようとしてしまうほどだったという記述があるからです。

その後、ヨハンネはさらなる芸を学びに、フランスへ行くことになりました。

クヌートはそこで、「行かないでほしい、自分のお嫁さんになってほしい」と打ち明けました。

この時のヨハンネの言葉から、クヌートとの恋を実らせるより、自分の夢を叶える決意がうかがえます。

たしかにクヌートと別れるのは惜しいが、自分の決めたことだ、という強い信念がうかがえます。

そしてこれこそが、彼女の強さだと考えられます。

「私はいつまでも、あなたの妹だ」という言葉からは、

「血縁関係のように強く結ばれているんだよ」というメッセージと共に、

「あなたの恋人には決してなれない」というメッセージが込められています。

ただし、最後にヨハンネとクヌートが会った時、ヨハンネはクヌートだと気づきませんでした。

この時点で、ヨハンネの中では完全にクヌートは過去の人になってしまったことが読み取れます。

それは、自分は大スターになって、ミラノで婚約者も見つかり、幸せをつかんでいるので当然のことです。

ところがクヌートは、ヨハンネが大スターになっているのに、幼なじみというだけでまだ結婚できると思っていました。

この時点で、クヌートとヨハンネでは身分が全く違うのに、過去の恋人をずっと引きずってしまうのは、

クヌートの男としての弱さがものすごく出ています。

それからクヌートが柳の木の下で夢を見るシーンでは、

夢の中でヨハンネが、冷たい涙を流して、クヌートの熱いほおにこぼれました。

この涙が冷たかったのは、クヌートが寝ている時、あられがほおに当たっていたからだと考えられます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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