こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、アンデルセン童話より、「パンをふんだ娘」のあらすじと考察、感想までお話しています。
パンをふんだ娘のあらすじ
この娘は貧しい家の子でした。
そして高慢でみえぼうで、悪い性質もありました。
この娘が大きくなるにつれて、性格はますます悪くなるばかりでした。
けれども、美しい娘になりました。
しかしこれがかえって良くなく、もし美しくなければ、別の良い娘になったかもしれません。
お母さんは、
「お前は今に、人からさんざんしかられますよ。
小さい時、私の前掛けをよく踏みつけたけど、大きくなったら、私の心を踏みつけないか心配だよ。」
ところが、本当にそうなってしまいました。
娘は、上品な家庭に奉公に行きました。
ご主人夫婦はこの娘をかわいがってくれましたが、高慢な心もいっそう強くなりました。
一年経って、ご主人夫婦は、
「インゲルや、一度お母さんに会いに行っておいで。」
そこで娘は出かけましたが、自分がどんなにきれいになったかを、みんなに見せるためでした。
村に来ると、村の人が集まってしゃべっていましたが、その中に、森で集めたたきぎを背負った母親がいました。
インゲルは、こんなきれいな自分が、むさくるしい人をお母さんに持つなんて恥ずかしく思いました。
そして顔をそむけて、少しも悪いと思いませんでした。
それからまた半年が経った日、インゲルはまたお母さんたちに会いに行くことになりました。
そしてご主人の奥様から、白パンをお土産に持っていきなさいと言われました。
インゲルは、一番いい着物を着て、新しい靴を履いて行きました。
途中、細い道が沼地の中を通っているところに来ました。
するとインゲルは、靴を汚さないように通ろうと、パンを泥の中に投げ込んで、そのパンを踏みました。
ところが、片足をパンに乗せて、もう片方の足を上げた時です。
パンが娘と一緒に沈み、そのまま深く深く沼に沈んでしまいました。
これがそのお話です。
インゲルは、沼の底でお酒を造っている沼女のところに沈んでいきました。
ここはひどいところで、臭いがきつく、じめじめしたヒキガエルや、ぶよぶよした蛇がたくさんいるところでした。
沼女は家にいました。そしてこの日は、悪魔と悪魔のおばあさんが来ていました。
このおばあさんは、人間をそこなわせることができます。
おばあさんはインゲルを見て、
「こりゃ、素質のありそうな娘じゃ。
この娘を持って帰りたいね。わしの孫の子の家の廊下に立てる立像にできるぞ。」
こうしておばあさんは、インゲルを地獄へ連れて行くことにしました。
その廊下は、どこまでも続いていました。
そこにはやせ衰えた人間が並んでいて、みんな恵みの門が開くのを待っているのです。
けれども今までどんなに長い間待ったか分からず、人々の魂には、不安、苦しみがたえませんでした。
インゲルも立像にされて、苦しみを味わいました。
それはまるで、足の下についているパンに、縛り付けられているかのようでした。
「これも、足を汚さないようにしたためだわ。まあ、みんな私の方を見ているわ。」
インゲルは、自分は顔が綺麗で、いい着物を着ているから見られていると思って、目をぐりぐり回しました。
首は、回そうにもこわばって動きません。
ところが、きれいだなんてとんでもなく、ここに来るまでで汚くなっていたのです。
着物は泥まみれ、ヘビが髪にからみついてぶら下がっていました。
しかし一番苦しかったのは、おなかがひどくすいていることでした。
身体が硬直してしまっているので、足にくっついているパンを食べることもできません。
おまけに、ハエが目の上をはいまわりました。
この苦しみは、いつまでも続きました。
その時、熱い涙が一粒、頭の上に落ちてきました。
この子のお母さんが、涙を流していたのです。
お母さんは心から悲しんで、
「インゲルや、高慢は身を滅ぼすのですよ。それが不幸の元です。
どんなにお母さんに悲しい思いをさせたでしょう。」
この世の人たちは、みんなインゲルの罪を知っていました。
パンを踏んだために、沼に沈んだのを知っていたのです。
お母さんは、
「お母さんの思っていた通りだよ。」
それを聞いてインゲルは、
「私は生まれて来なければ良かった。」
と思いました。
親切な、ご主人夫婦の声も聞こえてきました。
「あの子は罪深い子だね。神様のたまものを足で踏んだんだからね。
恵の門も開かれないだろうよ。」
インゲルは、
「ご主人様たちも、もっと私をしつけてくれればよかったのに。」
そして、インゲルは自分が歌われているのまで聞こえてきました。
「心のおごった女の子。靴を汚さぬとて、パンを踏む。」
インゲルは、
「あれだけのことで、こんなことまで言われなければならないの。
他の人だって、罰せられなければならない人がたくさんいるのに。」
そしてインゲルは、人間を恨んで腹を立て、心はかたくなになってしまいました。
今度は人々が子供に、インゲルが悪い子だったことを話しました。
子供たちは、
「そんなに悪い子なら、苦しんでも仕方がないわね。」
ところが一人の女の子は、インゲルの話を聞くと泣き出して、
「もう二度と、この世へ戻ってこれないの?
ごめんなさいと謝っても?」
「でも、あの子はごめんなさいなんて言わないでしょう。」
「インゲルが、ごめんなさいと言うといいのにね!」
女の子は、心から悲しんでいました。
インゲルの心に、これはしみわたりました。
「かわいそうなインゲル!」なんて言われたのは、これが初めてです。
小さな女の子が、自分のために泣いてくれたのです。
こうして上の世界では月日が流れましたが、下の世界ではなにも変わりませんでした。
やがて、
「インゲルや、どんなにお母さんを悲しませたか。やっぱり、私の言ったとおりだったね。」
お母さんの最期の声でした。
ある時、インゲルのことを思って、泣いてくれた小さい女の子がおばあさんになって、ちょうど亡くなる時。
「神様、わたくしもあなたのお恵みのたまものを無駄にしたことはございませんでしたか。
高慢になっていたことはございませんでしたか。
それでも、私を沈めることなく、天に引き上げてくださいます。」
こうして、おばあさんは亡くなりました。
天国でおばあさんは子供になって、インゲルのためにここでも涙を流しました。
インゲルはこの愛によって、心を動かされました。
神様の天使の1人が、インゲルのために泣いてくれたのですから。
インゲルは、この世の行いを思い出して、自分を哀れむ気持ちでいっぱいになりました。
しかしこれでは、恵の門が開かれるはずはありません。
その時、一筋の強い光がここに差し込んできました。
するとインゲルの石のようになっていた体が消え、一羽の小鳥が、人間の世界に飛び立っていきました。
地上に来ても小鳥は、すべての生き物に恥じる気持ちから、身を隠していました。
やがて落ち着きが出てきて、外へ出ると、本当に素晴らしい景色でした。
小鳥は美しい姿をしていて、いろいろな思いを歌にしたかったのですが、声は出ませんでした。
感謝の歌を声に出すには、良い行いが実行されなければなりません。
クリスマスには、お百姓さんたちがカラス麦の束を用意しました。
これは、空の小鳥たちにも、おいしいごちそうを食べさせるためでした。
クリスマスの朝、ここに小鳥たちが集まってきました。
この時、「ピーピー」という声と共に、一羽の小鳥が隠れ場から飛びたちました。
この鳥に、よい行いをしようという考えが目覚めたのです。
神様は、この小鳥がどういう鳥か分かっていました。
この冬は厳しい寒さで、鳥や森の動物たちにとっては、食べ物があまりない季節です。
この小鳥は街の通りで麦のつぶを探し、休憩所では、パンくずを見つけました。
でもそれは自分では少ししか食べず、他のスズメたちに食べさせました。
それから、親切な人が小鳥たちのために窓際に置いたパンくずを見つけると、自分は少ししか食べず、他の小鳥たちにやりました。
冬の間中、こうしてこの小鳥はパンくずを見つけては、他の鳥に分けてやりました。
そしてそのパンくずの量は、インゲルが踏んだ、あのパンと同じくらいになりました。
この時、灰色の翼が真っ白になって、大きく広がりました。
「あそこにカモメが一羽、海を越えて飛んでいくよ。」
子供たちが、白い鳥を見て言いました。
その鳥は、太陽の光の中へ飛んでいきました。
太陽の光でこの鳥がどうなったかは見えませんでしたが、人々の話では、まっすぐ太陽の光の中へ飛んでいったそうです。
パンをふんだ娘の考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
この童話の教訓は分かりやすく、「食べ物を粗末にするな」ということが第一です。
それ以外には、「素直になって罪を認めれば許される」「良い行いをしていれば、いいことがある」
ということが考えられます。
この童話全体を通して、インゲルが改心していく様子が示されています。
ただ、改心するには大きな苦痛が伴うということです。
インゲルは高慢で、自分の母親が恥ずかしいとか考えたり、パンを粗末にするほどの娘でした。
インゲルの家はもともと貧しかったので、食べ物の大切さは嫌と言うほど分かっているはずです。
ところが、パンを無駄にしてしまったのは、ご主人夫婦のところで良い思いをして、調子に乗りすぎてしまったと考えられます。
そしてその高慢さはいつまでも続き、地獄に落ちて、人にさんざん悪口を言われても、なかなか反省しません。
やっと反省したかと思えば、インゲルには自分を哀れむ気持ちばかりでした。
ところが、一人の女の子がインゲルのことを悲しんでいました。
この女の子が涙を流してくれたことによって、インゲルは改心できたのですが、
ここで、「自分のことを理解してくれる人」がいると、改心できることが読み取れます。
現実世界でも、悪いことをした子を責めるのではなく、相手の気持ちに寄り添うと、心を開く子供はたくさんいますよね。
ここでは、相手の気持ちに寄り添うことの大切さを訴えているように考えられます。
あと、この小鳥が他の鳥のために、良いことをし始めたのはクリスマスの日でした。
わざわざクリスマスの日を選んだのは、作者のアンデルセンがキリストと関わりがあったからです。
といっても、アンデルセンはキリスト教を学問として学んだわけではないようです。
アンデルセンは、もともとユダヤ人学校に行っていたのですが、そこが閉校になり、
キリスト教会が経営する学校に行くことになりました。
そこで、そこの学校には宗教画が飾られていて、それはまるで命が吹き込まれているようだった、
と、興味を示していたということです。
パンをふんだ娘の感想
この童話は、パンを粗末にした娘が、苦しい思いをすることによって、改心する話でした。
個人的には、分かりやすいいろんな教訓がつまっていて、良い話だったなって思います。
あと、生意気な娘がひどい目にあって、さんざん苦しい思いをした後に、改心するっていうのは、
読んでいて気分がいい童話でした。
この童話が書かれた時代では、食料に余裕がない時代でしたが、現代社会では食料があふれかえっている時代で、
神様のたまものを捨てまくっているっていうのは、日本人全体で考えていかなければならない問題ですよね。
温暖化の影響で今後食糧不足になって、ばちがあたらないといいですが。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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