童話「妖精の丘」のあらすじと考察~これが妖精たちなの!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「妖精の丘」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

妖精の丘のあらすじ

二、三びきのトカゲが、トカゲの言葉で話していました。

「あの古い妖精の丘で、ゴロゴロ、ガタガタ、何をしてるんだろう?」

「あの中で、何かあるらしいよ。

夜明けまで、風通しをよくしているし、妖精の娘たちはダンスの稽古をしているみたい。」

「そうですよ、知り合いのミミズから聞いたんですがね、

このミミズは、目が見えないのですがね、かんがいいから、分かるんですよ。

なんでも妖精の丘では、大変偉いお客さんを待ってるんだって。

鬼火たちが松明行列をして、丘の中の金や銀は磨かれていて、月の光の中にあるそうですよ。」

「そのお客さんってのは誰なんだろう?」

「何かが始まる、ほら、ぶんぶん、がやがや言ってるよ。」

その時、妖精の丘が開いて、年取った妖精の女が出てきました。

この妖精は背中はありませんが、服装はちゃんとしていて、妖精の王の女中頭でした。

それにしても足が速く、ちょこちょこと、沼の幽霊烏のところへ行きました。

「今晩、あなたがたを妖精の丘にお招きするわ。

そこで、他のお客さん達を案内してくださいな。

たいへん偉いお客さんがおいでになるの。

この魔物たちは相当勢力があるそうだから、お年寄りの妖精の王様も、自分の勢力を見せようってわけなの。」

幽霊烏は、

「誰が招かれるんですか?」

妖精の女中頭は、

「大舞踏会へは、だれだって出られますよ。

でも、大宴会は、身分の高い方だけなの。

幽霊ではだめだわ。まず、人魚たちは招待しなくちゃ。

それから、年寄りの魔物や、川の精、小鬼たち、それから、墓場の豚に、地獄の馬、お寺の怪物もね。」

こうして、幽霊烏は、お客様を呼びに行きました。

妖精の丘では、妖精の娘たちのダンスが始まっていました。

大広間がきれいに飾り付けられ、床は月の光で洗い、壁には魔女の油をぬりました。

台所には、串にささった蛙や、子供の指を詰めた蛇の皮、毒キノコのサラダなど、たくさんありました。

飲み物は、沼の女の作ったビールに、墓穴でできた硝酸ブドウ酒。

デザートは、錆びた釘と、教会の窓ガラスです。

年取った妖精の王は、黄金の冠を石筆の粉で磨かせました。

この石筆は高級品で、手に入れるのは妖精の王でも簡単ではありません。

王様の一番末の娘が、

「ねえお父さん、えらいお客さまって、どういう方なのですか?」

「実は、うちの二人が見合いをすることになったんじゃ。

北のノルウェーという国のな、年寄りの山の主の小人が、息子を二人連れて、嫁探しに来るんだ。

この小人の老人は、岩山の城と、お金をたくさん持っている。

この小人の老人は、きっすいのノルウェー人で、話の面白い人じゃよ。

二人の息子は生意気なやつらしいが、年を取ればおとなしくなるだろう。」

その時、鬼火が二つ、ぴょんぴょん跳ねながらやって来て、

「お客様のお着き!お客様のお着き!」

妖精の王は、

「わしの冠を取ってくれ。わしを月の光の中に立たせてくれ。」

そこへ、年寄りの山の主が着きました。

かんむりをかぶり、熊の皮をまとい、そり靴をはいていました。

息子2人も一緒です。

弟のほうが、

「こんなのが丘?こんなのはノルウェーじゃ、穴って言うんだ!」

年寄りの山の主は、

「これ、穴は入るもので、山は登るものでねえか!お前には目がないのか。」

そして、妖精の丘の中へ入って行きました。

集められたお客様たちはみんな、テーブルマナーを守っていましたが、ノルウェーの若者二人だけは、テーブルに足を乗せていました。

「足をどけなさい!」

小人の山の主はそう言い、二人は足をどけましたが、すぐにではありませんでした。

今度は、モミのどんぐりで、隣の女性客をくすぐり、長靴をぬいであぐらをかき、それを女性客に渡したりしていました。

けれども年寄りの山の主は違い、様々な面白い話をしました。

本当に面白い話で、話は目に見え、耳に聞こえるようでした。

だしぬけに、この年寄りの山の主は、年寄りの女中頭に、おじさんがするような乱暴なキスをしました。

そのうち、妖精の娘たちのダンスが始まりました。

最初は簡単なもので、次は曲芸ダンスです。

これは、いわゆるぬけがらダンスというもので、だんだんごちゃごちゃになりました。

年寄りの山の主は、

「えらい脚の軽わざだ。踊ったりする以外には、何ができるのかね?」

妖精の王は、

「おいおい、お見せしましょう。」

そして、一番下の娘を呼びました。

この娘は透き通った体をしていて、姉妹の中で一番きれいでした。

この娘は白い木の切れを口にくわえると、姿を消しました。

これがこの娘の芸なのです。

ところが年寄りの山の主は、これが好きになれませんでした。

二番目に呼ばれた娘は、自分の影のように、自分自身と並んで歩きました。

これも、小人たちにはできない技でした。

三番目の娘は、ハンの木の切り株と蛍で、お酒を造りました。

「こういう娘は、いい女房になるぞ。」

四番目の娘は、大きなハープを持ってきました。

これを弾くと、みんなは娘の言いなりになりました。

「これは、危険な女だわい。」

ところが二人の息子は、いつの間にかどこかへ行っていました。

もうあきてしまったのです。

「で、次の娘さんは、何が得意なのかね?」

「私はノルウェーの人を愛することを学びました。」

すると一番下の娘が、年寄りの山の主に、

「姉さんがああ言うのは、ノルウェーの歌に、この世が滅びても、ノルウェーの岩山は残るというのを聞いたからなのよ。

自分が死ぬのが怖いから、ノルウェーに行きたがってるんです。」

こうささやきました。

「なるほど!だが一番おしまいのは、何ができるんだね?」

妖精の王は、

「七番目の前に、六番目の娘です。」

ところが、六番目の娘は前に出てきません。

「私は本当のことしか言えませんもの。誰も私のことなんか、かまってくれません。」

そこで、七番目の娘が出てきました。

この娘は、お話がたくさんできました。

年寄りの山の主は、

「ここにわしの五本の指があるだろ。この一本一本の話をしてみなされ。」

そこで妖精の娘は老人の手首をにぎると、老人は笑い出しました。

娘の話が金の指輪をはめて、婚約をするつもりだった薬指のところまで来ると、老人は、

「その手をしっかりにぎっていてくだされ。わしはお前をお嫁さんに決めた!」

妖精の娘が、まだ薬指と小指の話が残っていると言うと、

「それは冬になったら聞かせてくださいよ。

それから、モミの木の話や、シラカバの話、森の精の贈り物の話などもな。

わしの国では誰もまだ話ができないから、きっと話してくれよ。

ところで息子二人はどこへ行った?」

この時息子二人は、松明行列をしている鬼火たちを、吹き消して回っていました。

「何してるんだ、わしはお前らのために、おっかさんを見つけたんだぞ。

今度はお前たちがお嫁さんを見つけるんだ。」

けれども息子たちは、お嫁さんなんか欲しくない、と言いました。

そして杯を飲むと、上着を脱いで、テーブルの上に横になると、ぐうぐう寝てしまいました。

年寄りの山の主は、若い花嫁さんと踊って、花嫁と長靴の取り替えっこをしました。

指輪の交換よりも、このほうが上品だったのです。

その時、年取った妖精の女が、

「おや、ニワトリが鳴いてるよ。

さあ、お日様に当たらないように、窓を閉めなきゃ。」

こうして、妖精の丘は閉まってしまいました。

丘の外では、相変わらずトカゲが走り回っていました。

トカゲは、

「わしは、あのノルウェー人の小人のじいさんが気に入ったよ。」

「わたしは息子のほうが好きでした。」

ミミズはそう言いましたが、ミミズは目が見えませんでした。

 

妖精の丘の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、この童話では妖精が出てきましたが、これは何者なのか。

ここで出てくる妖精は、絵本に出てくるようなかわいい妖精ではなく、恐ろしい妖精だと考えられます。

その証拠に、まずこの妖精の丘に招かれた客は、年寄りの魔物や、墓場の豚、地獄の馬など、恐ろしいものばかりです。

さらに、出てきた料理も、蛙の串刺しや毒キノコのサラダ、硝酸ブドウ酒など、地獄を想像するものばかりです。

また、偉いお客さんが来ると、妖精の丘は開きました。

これは、地獄の門が開いたのだと考えられます。

そして、幽霊は身分が低く、それ以外の恐ろしいものは身分が高いって記述がありましたが、

ここで、偉いお客さんである年寄りの山の主とその息子二人は、それだけ恐ろしい存在だと考えられます。

その宴会の途中、妖精の娘がダンスをするシーンがありました。

恐ろしいといっても妖精は妖精で、やっぱりダンスだけはするってことですね。

また、ここから話は意外な展開になりました。

息子二人が嫁をもらいに来たかと思いきや、年寄りの山の主が妖精の王の娘をお嫁にしました。

しかも、話の上手な娘に指の話を順番にさせ、結婚を象徴する薬指に来たところで結婚を申し込みました。

そして薬指には金の指輪がはまっていたということですから、

初めからこの流れを準備していたことになります。

また、お話が上手なのを理由にこの娘を選びましたが、

その理由は、ノルウェーの他の人にも面白い話を聞かせてあげられるということです。

この老人はお話も上手だったということですから、いかに話のうまさにこだわりがあったかがうかがえます。

この老人は、人をお話で楽しませることが生きがいだとも考えられます。

そしてこの後、息子二人は結婚を嫌がったのですが、それでも息子に花嫁を選ばせるように強く言わなかったのは、

自分は幸せをつかんだ今、息子の結婚はどうでもよくなってしまったのだと考えられます。

そして最後、夜が明けて朝になったら丘を閉じたのは、妖精は表の世界では生きられないことを示しています。

 

妖精の丘の感想

この童話は、正直、登場人物にはあまり好感を持てませんでした。

年寄りの小人だったり、恐ろしい妖精だったり、態度の悪い息子だったり。

なんだか、タイトルのわりにかわいらしさがなく、残念に思ってしまうような話でした。

ただし、この妖精たちの宴会自体は楽しそうだったので、

それが面白おかしくなっていれば、好きだったかもしれません。

(あくまで個人的な感想ですが)

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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