こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より「千びき皮」(KHM65)のあらすじと考察、感想までお話しています。
千びき皮のあらすじ
むかし昔、あるところに王様がありました。
王様には黄金色の髪の毛を持ったお妃があって、とても美しく、世界中を探しても比べ物になる女はいないほどでした。
しかし人は分からないもので、お妃は病気になり、お床についてしまいました。
いよいよ死ぬ気がしたので、お妃は
「私の亡くなった後で、別のお妃をお迎えするなら、
わたくしと同じくらい美しく、わたくしのような黄金色の髪を持った人でなければなりません。
約束してくれますか?」
これを言われると、王様は約束し、お妃は目を閉じておかくれになりました。
王様はその後長いことくよくよしていましたが、もう一度結婚することを考えました。
お使いの者が、遠くの方までお妃と同じ美しさの女を探しに行きました。
ですがそんな人は、世界中を探しても見つからず、見つかったとしても、せんのお妃のような黄金色の髪を持っていませんでした。
お使いの者は手をつくし、お国へ帰ってきました。
ところで、王様にはお姫様があって、その美しいことは亡くなったお母様にそっくりで、黄金色の髪までおそろいでした。
このお姫様が大きくなってからのある時、
お姫様が亡くなったお妃にそっくりなのに気が付くと、王様は自分の娘であるお姫様と結婚すると言い出しました。
御相談役は、これを聞くとぎょっとして、
「父親が自分の娘をめとるのは、神の禁じること。罪を犯していいことはない。
この国が滅びるくらいの災いが起きるだろう。」
と言って止めました。
お姫様はそれ以上に恐れおののいたのですが、父親にその考えを捨ててもらうのはできないことではないと考え、
「お父様のお望みをかなえて差しあげる前に、是非とも三重ねの衣裳をいただきたいと存じます。
一つは、お日様のように黄金の光を放つもの、一つは、お月様のように白銀の光を放つもの、
一つはお星さまのように輝くもの。この三重ねがほしゅうございます。
そして、千とおりの毛皮でこしらえた外套(がいとう)も。」
お姫様は、こんなものを手に入れることはできやしない、これで王様はお考えをお捨てになると考えました。
けれども、王様の命令で、腕のよい職人によってこれを全て仕上げました。
それをお姫様の前に広げて、明日は婚礼だ、と言いました。
王女は、こうなったらお父様の考えを変えられないと悟って、逃げ出すことにしました。
夜中にお姫様は、黄金の指輪と、小さな小さな黄金の糸くり車と、小さな黄金の糸まきを手に取り、
お日様とお月様とお星さまの衣裳はクルミのからの中へしまって、千種類の皮で作った外套をはおり、顔と両手をすすで真っ黒にしました。
それから出かけて夜通し歩いて、大きな森の中の木のほらの中で眠ってしまいました。
お姫様は真昼間になっても寝続けていましたが、この森を持っている王様に見つかりました。
お姫様は毛皮をはおり、顔も真っ黒なので動物のような姿をしていましたが、一緒に王様のお城に行き、台所で使われることになりました。
お姫様には小さな物置部屋をあてがって、
「毛皮こぞう!これがお前の部屋だ、ここで寝るがいい。」
それからお姫様は台所で、たきぎや水を運んだり、火をかきたてたり、灰をかいたり、下等な仕事は何でもやりました。
千びき皮は長い間、惨めに生活をしていました。
やれやれ、情けないことだ、お前は美しい王女なのに。これからどうなっていくことやら。
こうしているうち、ある時お城でお祝い事がありました。
娘がお料理番に、ちょっとだけ上に行って見てきてもいいかと聞きます。
すると料理番は、三十分だけ行っていいと言ってくれました。
千びき皮は自分のお部屋に入ると、毛ごろもを脱ぎ捨て、顔と手のすすを洗い落とし、
くるみのからの中からお日様のように輝く衣裳を取り出すと、
それを着てごちそうの場所へ上がって行きました。
周りは誰一人その人を知るものはなく、どこかの王女様だと思っていました。
王様は、「こんな美しい女はまだ一度も見たことが無いぞ」と考えながら、この少女を踊りの相手に選びます。
舞踏(ダンス)が済むと、少女はいつの間にかいなくなっていました。
少女は部屋に戻ると、衣裳を脱ぎ、手と顔を黒くして、毛皮をはおり、もとの千びき皮の姿になりました。
台所に行くと、料理番が、
「王様の召し上がるスープをこしらえてくれ。俺も、上をちょいとのぞいてくる。
だがな、スープの中に髪の毛を落としちゃあいけないよ。」
お料理番が行くと、千びき皮はパン入りのスープをこしらえました。
そしてこの中に、持ってきた黄金の指輪を入れておいたのです。
舞踏(ダンス)のあと、王様はこのスープを食べましたが、それはそれは美味しかったのです。
スープの皿を空にすると、黄金の指輪が一つ転がっています。
お料理番が王様に呼び出され、誰がこのスープを作ったか聞かれました。
それで千びき皮が作ったことが分かると、王様は千びき皮に、
「お前は何者か?」
「わたくしは、父親も母親もなくした不幸せな子供でございます。」
「スープの中に入っておった指輪は、どこから手に入れたのか?」
しかし千びき皮は、
「指輪とやら、わたくし、まるで存じません。」
これでは王様は何一つ知ることができず、千びき皮を下がらせました。
しばらく経つと、またお祝いのごちそうがありました。
千びき皮はお料理番に許しをもらい、この前と同じようにごちそうの場所に行きました。
この時はお月様のように白銀の衣裳を着ていましたが、王様はまた会えたことを嬉しがりました。
けれども、舞踏が済むと、少女はまた姿を消しました。
その後、王様のスープをこしらえましたが、今度は黄金の糸くり車を入れておきました。
王様はこのスープを空にすると、また千びき皮を呼びましたが、糸くり車のことは聞けず終いでした。
王様が三度目にお祝いの宴会を開くと、また同じことになって、王様はお星さまの衣裳を着たお姫様と踊ります。
王様は舞踏の最中に、少女に知れないように少女の指に黄金の指輪をはめ、舞踏をできるだけ長く続けるよう言いました。
舞踏が終わった時、王様は少女の手をにぎっていました。
しかし少女はその手をふりきり、すばしっこく消えてしまいました。
このお姫様は部屋に戻りましたが、上に長く居すぎて三十分以上たったものです。
今回は時間がなく、お星さまの衣裳を脱げず、その上に毛皮をはおっただけです。
さらに、体も汚くでききれず、指が一本だけ白いままでした。
それから千びき皮は台所に戻ると王様のスープをこしらえ、今度は黄金の糸まきを入れました。
王様はお皿の底の黄金の糸まきを見つけて、千びき皮を呼び出しました。
すると、白い指が見え、舞踏の時にはめた指輪が見えました。
王様が少女の手を握ると、少女は逃げ出そうとしました。
それを振り切って逃げようとしたとき、毛皮の外套が少しはだけて、お星さまの衣裳がキラキラ光っていました。
王様はそれをつかんで脱がせると、黄金色の髪の毛が、ふさふさと現れました。
キラキラしてこの少女の美しいこと、こうなってはもう隠せません。
その後顔と手のすすをふきとると、王様は、
「お前は、わしのかわいい妻。もう決して離れることはないぞ。」
それからすぐにご婚礼のお祝いがあって、二人は死ぬまで楽しく暮らしました。
千匹皮の考察
それでは、ここからこの童話の考察に入ります。
この童話の最初に、お姫様のお父様である王様は、あろうことか娘と結婚しようとします。
これは明らかに、王様は性的な歪みを持っています。
自分の娘以外に、亡くなったお妃が提示した条件に合う人がいなかったから、というのが理由ですが、
こんなことがもっともな理由になるわけがないです。
王様の御相談役が国が滅びるとまで言って必死に止めたにも関わらず、娘と結婚しようとしたのは、
お妃を失った悲しみから、相手は誰であろうとお妃似なら構わないという態度だったと考えられます。
また、お姫様は千びき皮となって、汚いふりをして台所で働いていました。
そしてお祝い事の宴会の時だけ、美しい姫に戻って王様と踊っていましたね。
ですが気になるのは、自分の正体がばれない様にしていたことです。
舞踏が終わるとお姫様は逃げ出しましたが、正体を隠す理由もないように見えます。
様々なことを考えた結果、これはおそらくですが、この時点ではお姫様は王様と結婚したがらなかったためと考えられます。
千びき皮として王様に呼び出された時も、自分のことを「子供」と言っています。
自分はまだ子供だから、まだ結婚したくないとも取れます。
そして、父親から結婚を申し込まれた傷を引きずっていることも考えられます。
結婚に関してトラウマを持っているから、正体がばれると王様から結婚を申し込まれる。
だから、本当の自分を隠していたと考えられます。
千びき皮の感想
父親から結婚を申し込まれる、というのは、かなりインパクトがある話でした。
そんなことをされたら、普通の女の子だったらショックが大きいですよね。
現実世界でも父親から性行為を迫られる家庭もあるようですが、性の歪みって怖いですよね。
またお姫様は、本当の自分を動物の毛皮を使って隠していましたが、
自分の姿をわざわざ汚くして生きなければいけないのは、とても辛そうですよね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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