童話「ウィッティントンと猫」のあらすじと考察~絶対に甘やかさない主人!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、イギリス民話より、「ウィッティントンと猫」あらすじと考察、感想までお話しています。

 

ウィッティントンと猫のあらすじ

エドワード三世が国王だったころ、両親をなくしたディック・ウィッティントンという少年がいました。

彼はまだ小さくて働けなかったため、とても貧乏でした。

ところでディックは、ロンドンという大きな都の話を聞いていました。

なんでもロンドンでは一日じゅう歌や音楽が聞こえ、町の通りは金が敷き詰めてあるとか。

そこである日、ディックはロンドンへ向かい、たどり着きました。

金で舗装された通りはどこかと、あっちこっち走って探しました。

その金をちょっとはがせば、欲しいだけお金が手に入ると思っていたのです。

あわれなディックは、へとへとに疲れるまで走りましたが、どこへ行っても見つかりませんでした。

そしてあたりが暗くなってきて、金なんて見つからないので、座り込んで泣いているうちに寝てしまいました。

朝になって、ディックはあまりにもお腹がすいていました。

そこで、道行く人に片っ端から声をかけ、飢え死にしそうだから半ペニーください、と頼みましたが、

ただ二、三人が半ペニーくれただけでした。

ディックはふらふらになり、恵んでもらおうとした人の1人は、

「やくざななまけもののところででも、使ってもらえば?」

「はい、雇ってもらえるなら、あなたのところで働きます。」

でもその人は、ディックをののしって行ってしまいました。

やがて紳士が、「働いたらどうだね、きみ?」

そう言って、ディックを干し草畑で働かせてくれました。

ディックは干し草ができるまで働き、楽しく暮らしました。

しかしその後、また食えない日々になってしまいました。

飢え死にしそうになって、お金持ちの商人・フィッツウォレンさんの屋敷の戸口にへたりこんでしまいました。

そこをこの屋敷の料理女に見つかりましたが、これは意地悪な女で、

「こののらくら小僧!乞食だね。とっとと行かないと、お皿を洗ったお湯をぶっかけてやるよ!」

ちょうどその時、ご主人のフィッツウォレン氏が帰って来て、

「どうしてそんなところで寝ているのかね?その歳なら働けるはずだ。働く気がないんじゃないか。」

するとディックは、

「いいえ、そんなことはありません。

一生懸命働きたいんですけど、誰も働かせてくれず、それにお腹が減って倒れそうなんです。」

「それはかわいそうに。立ってごらん。」

ディックは起き上がろうとしましたが、倒れてしまいました。

もう三日も何も口にしていなかったからです。

それを見ると、この人は親切に夕食を食べさせてくれて、ここで料理番の下働きでもしなさい、と言ってくれました。

ディックはこの意地悪な料理女にいじめられました。

「お前はあたしの下で働いているんだからね。タラタラするんじゃないよ。さもないと・・・」

と言っては、ひしゃくを振り回して見せました。

この女は、ほうきででも何でも、ディックの頭や背中をひっぱたくのです。

このいじめは、フィッツウォレン氏のお嬢さんの耳にも入りました。

お嬢さんは料理番に、ディックに優しくしないとお前を追い出すよ、と言いました。

料理女の態度は少しましになりましたが、ディックにはもう一つ悩みがありました。

それは、ディックは屋根裏部屋に住んでいましたが、ネズミが出るということです。

そこでディックは、1ペニーだけ持っていたのでそれで猫を買いました。

この猫を屋根裏部屋で飼うと、ネズミに悩まされることはなくなりました。

それから間もなく、この家の主人は貿易船を立て、召使いたちもそれぞれ何か積んでもらうことになりました。

召使いたちはそれぞれ何かを積みましたが、ディックはお金も何も持っていませんでした。

これを察したアリスお嬢さんは、「自分の財布からディックの分を出す」と言いました。

けれども父親のフィッツウォレン氏は、「出すのは自分のものでなくてはならない」と言いました。

仕方なくディックは、猫を連れてきて、それを船長に渡しました。

かわいそうにディックは、これからまたネズミに悩まされるのです。

みんなディックが猫を出したのを笑いましたが、アリスお嬢さんは、別の猫を買いなさいとお金をくれました。

これ以外にもアリスお嬢さんが親切にしてくれたので、

意地の悪い料理女は面白くなく、ディックをもっとひどく扱うようになりました。

「あの猫が、お前をぶったたく棒が買えるくらいの値になるかね?」

かわいそうにディックは、とうとう耐え切れなくなって朝早く家を出ました。

これからどうしようかと考えていた時、ボウ教会の鐘が鳴り出し、その鐘が、

「すぐ引き返せ、ウィッティントン

三度続けてロンドン市長!」

と言っているように聞こえました。

ディックは、

「おお!大人になったらロンドン市長か、それなら、どんなことだって我慢できるぞ。

あんな料理ばあさんの小言なんか、何でもないぞ。」

ディックは家に帰り、仕事に取り掛かりました。

さて、ここからは猫の後を追ってアフリカ海岸です。

あの貿易船は、ムーア人だけが住むバーバリ海岸へ到着しました。

この土地の人に船に積んであった品を売り、この国の王様には一番上等な品物を贈りました。

王様は船長たちにご馳走をふるまいましたが、食事を始めると間もなく、ネズミたちが出てきて、それを食べてしまいました。

船長はこれを見て、

「このネズミどもは不愉快ではありませんか。」

「ええ、そりゃあもう。

こいつらを退治できたら、財宝の半分を出す、と王さまは言っておられます。

王様の食事を食い荒らし、お部屋のベッドまで襲うのですから、見張りを立てているのです。」

船長は心の中で嬉しく思いました。

ウィッティントンの猫を思い出したからで、

「実はこいつらをたちまち追い払ってしまう生き物を船に積んでいます。」

すると王様は大変喜んでいて、

「その生き物を連れてまいれ。それがいま言ったような働きをするなら、そちらの船いっぱいに金と宝石を積もう。」

商売上手の船長は、ここぞと猫の効果を言って、

「この猫を手放してしまうと私どももネズミによって困るのですが・・・

しかし王様のお望みならば、連れてまいりましょう。」

船長が猫を連れてきた時、ネズミがごちそうにたかっていました。

しかし猫はすぐに船長の腕から飛び出し、ネズミをほとんどやっつけ、残ったネズミは逃げていきました。

王様はたいそう喜び、お妃は猫が気に入りました。

さらに船長は、この猫だけでなく、いずれ生まれてくる子猫が国中にあふれ、この国をネズミから解放してくれるでしょうと言いました。

すると王様は、積み荷を全部買い取り、猫には他の積み荷全部の十倍もの代金を払いました。

船長は王様に別れを告げ、ロンドンへ帰りました。

ある朝早く、フィッツウォレン氏のところに、

「あなたの持ち船のニュートン号のことで、良い知らせです。」

と、船長と副船長がやってきました。

二人は宝石箱と船荷の証明書を持っていて、貿易が成功したことを神様に感謝しました。

それから船長は、王様とお妃が猫の代金としての素晴らしい贈り物を見せると、召使いたちに、

「今すぐディックを呼んでくれ、大成功だったと言ってくれ。

これからはウィッティントンさんと呼ぶんだぞ。」

召使いたちのうち何人かは、そんな宝はディックには多すぎると言っていましたが、フィッツウォレン氏は、

「たとえ一ペニーでも、あの子からは取り上げん。

これは全部ディックのものだ。」

と言いました。

そしてディックを呼びましたが、ディックは今、料理女にこき使われていて、とても汚い身なりでした。

汚い身なりをしていたので、商人のところに行きたがりませんでした。

それでも、商人がどうしても来なさいと命令しました。

ディックが行くと、椅子まで用意されていたので、

「僕をからかうのはよしてください、下の仕事場に行かせてください。」

からかわれていると思い、そう言いました。

すると商人は、

「いや、ウィッティントンさん、みんな大まじめだよ。

船長は君の猫をバーバリの王様に売り、私が持っているのよりももっとたくさんの財宝を持って帰ってきたんだ。

これで幸せに暮らしてくれたまえ。」

そして、宝の箱を見せました。

ディックは嬉しさのあまり、どうしていいか分かりませんでした。

フィッツウォレンさんに、どうぞ好きなだけお取りください、これもご主人のおかげです、と言いましたが、

「いや、これは全部君のものだ。君なら有意義に使えるだろうよ。」

ディックは奥様とアリスお嬢さんに、この財産を一部でも受け取るように勧めましたが、

二人はどうしても受け取らず、あなたの大成功を嬉しく思います、と言うばかり。

心優しいディックは、船長や航海士、この家の召使いたち、そしてあの意地悪な料理ばあさんにまで贈り物をしました。

それが済むと、紳士らしい服をこしらえ、良い場所が見つかるまで、この家にいていいと言われました。

顔を洗い、髪を整え、帽子をかぶり、立派な服を着ると、どんな若者にも負けないほど、ハンサムで上品な若者になりました。

そしてアリスお嬢さんはディックのことが好きになり、この人こそ恋人にふさわしいと思うようになりました。

二人の愛情に気づいたフィッツウォレン氏は、結婚してはどうかと言ってくれ、二人は結婚しました。

その結婚式には、ロンドン市長、州議会の者たち、ロンドン中のお金持ちが多数出席しました。

歴史の伝えるところでは、二人は立派に、幸せに暮らしたとのことです。

子供にも恵まれ、三度ロンドン市長になり、ヘンリー五世から「ナイト」の称号ももらったとのことです。

ディックはリチャード卿となり、その石像は1780年まで、ニューゲイトの牢獄の門の上にありました。

この牢獄も、ウィッティントンが建てたものだからです。

 

ウィッティントンの猫の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

このお話の中で強調されていたテーマは、「労働とその対価」です。

労働によって対価が得られるということが、強く書かれているように感じられます。

主人公のディックは、最初に出てきた時は小さかったので働けず、貧乏でした。

一方、ロンドンは町じゅう金だらけで、簡単にお金が手に入ると思っていました。

ですがもちろんそんなわけはなく、その後物乞いをしてもほとんどお金は得られませんでした。

しかし、ディックは働くことによって、日々の生活をすることができます。

また、ディックに手を貸してくれたフィッツウォレン氏は、労働と、その対価に対して厳しい人でした。

ちゃんと仕事をすればお金を払いますが、ただで手助けするということは決してありません。

その証拠に、初めて会った時に「なぜ働かないのかい?」と言いましたし、

この様子から、一方的にもらうことへの軽蔑が見て取れます。

また、貿易船で一つ商売をするときも、ディックが猫以外何も持っていなかったのに、娘のアリスには手を貸すなと言いました。

それ相応の労働、もしくは手柄がないのに、与えるということを許さなかったのです。

そして最後、ディックの猫が外国で非常に高く売れた時、

フィッツウォレン氏は、このお金は全部ディックのものだと言い張りましたし、

絶対に取り分を取ろうとしませんでした。

これも、手柄に対する対価は、手柄を立てた者が全部もらうのが当たり前、という価値観があります。

ようは、仕事をすれば、その対価は必ず払い、多すぎても少なすぎてもいけない

という一貫した信念が読み取れます。

それから、途中貿易船でバーバリへ行って、船長が王様に会った時、

この船長の商売上手ぶりがよく読み取れます。

まず、ネズミを見た瞬間、猫が売れるだろうという直感がひらめきました。

そしてネズミについて困っているところを話した時、

自分が持っている生き物なら、この問題を解決できる、と自然な形で商品の提案をしています。

さらに、「この猫を手放したら自分たちも困るのだが、王様のためだ」

と、特別感を出しています。

これは全て、現代社会の営業のテクニックで、この船長もそれをよく心得ていたということですね。

あと、ディックは心が優しく、謙虚な少年でした。

その証拠に、大金を手にしたときは自分だけのものではない、と言いました。

しかし一般的には、貧乏な人ほど大金を手にしたとき、全て自分のものにしたがります。

ディックは貧乏だったのに、なぜこうならなかったかというと、

おそらく、ディックの両親は、もともと比較的裕福だったのではないかと予測できます。

そのため、心が豊かなのではないかと推測できます。

幼い頃は良い家の子で、両親が亡くなって貧乏になってしまったのではないかと考えられます。

 

ウィッティントンと猫

この童話を読むと、やっぱり働かないと食事は与えられないもんだなって考えさせられます。

ディックは物乞いをしていましたが、日本では物乞いをしている人はほとんどいませんよね。

あと、ディックは働く気はあるのに、仕事がないってなってた時はかわいそうに思えました。

それからも意地悪な料理女にいじめられたりしていましたが、まさか猫が超高額で売れるとは。

猫のいない国って、想像できないですが、改めて、猫ってネズミを駆除してくれるのでありがたいですよね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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