こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、アンデルセン童話より、「世界一美しいバラの花」のあらすじと考察、感想までお話しています。
世界一美しいバラの花のあらすじ
むかし昔、女王様がいました。
そのお庭には一年中、その時々の美しい花や世界中の花が咲いていましたが、女王様の特にお気に入りの花はバラの花でした。
バラの花ならば、緑色のバラから、プロヴァンスの美しいバラまで、あらゆる種類のバラをお持ちでした。
それらの花は、お城の中までのびていました。
ところがある時、女王様が重い病気になって、床についてしまいました。
そしてお医者さまも、もう助からないと言いました。
しかし、お医者たちの中で一番賢い人が、
「女王様が助かる道は一つございます。
それは、女王様に世界一美しいバラの花を差し上げることです。
それは最高に気高く、最高に清らかな愛を表したものでなければなりません。
女王様が目を閉じてしまう前にそのようなバラの花を見せれば、女王様は助かります。」
これを聞いて、いろんな人が、自分たちの庭の一番美しいバラを持ってきました。
けれど、いったいどの花が、最高に気高く、最高に清らかな愛の花でしょうか。
歌人たちはみんな、世界一美しいバラの花を歌い、自分の花こそそれだと言いました。
けれども賢者は、
「まだ誰も、その花を持ってきた者はいない。
それは、ロメオとジュリエットの棺に咲くバラでもないし、ヴァルボルの墓に咲く花でもない。
また、祖国のために死んだ英雄の胸、その彼の血の中から咲いたバラの花でもない。
人が年月を重ねて、若い命を捧げて育てる、あの不思議な花、学問というバラでもない。」
赤ちゃんを抱いた、幸福そうな母親が、女王様の床のそばで、
「私はその花を知っています。
最高に気高く、清らかな愛のバラの花、それはこのかわいい坊やのほおに咲くのでございます。
この子が愛そのもののように、私に笑いかけます時、その花が咲くのでございます。」
「なるほど、そのバラはたしかに美しいが、もっと美しいのがあるはずじゃ。」
すると一人の侍女が、
「はい、もっと美しいのがございます。
それは青白くございました。
女王様は御病気のお子さまを抱いて、一晩中涙を流しながら、お子さまにキスをなさっていました。
そして、母親が悲しみのお祈りをするように、神様にお祈りなさいました。」
「悲しみのバラの花には、たしかに不思議な力がこもっている。
だが、今求めている花はそれではない。」
ここで年取った司教が、
「わしは、世界一美しいバラの花を、聖壇の前で見ましたぞ。
若い娘たちが、主の聖餐台の前で、洗礼の聖約をしました。
その時、娘たちのほおにバラの花が赤く染まり、青ざめました。
その中の1人の娘が、純潔と愛に満ちた心を持って、神を仰いでいました。
これこそ、最高に気高く、清らかな愛でございます。」
賢者は、
「その娘に神の恵みあれ!
だが、そなたたちのうち、まだ誰も世界一美しいバラの花を見せた者はありません。」
その時、女王様の小さな王子が入ってきました。
目には涙があふれ、王子は大きな本を広げて持っていました。
小さい王子は、
「お母さま!ねえ、僕が今読んだ言葉を聞いて!」
こう言って、ベッドのそばに座って、主の書(世の人々を救うために、進んで十字架にかかった人の書)の中の一節を読みました。
「これよりも大きな愛はない!」
その時、女王様のほおに、ばら色の光が差して、目が大きく開かれました。
なぜなら、女王様はそのページの中から、世界一美しいバラの花が浮かび上がってくるのを見たからです。
それは、十字架に流されたキリストの血から咲いた、あのバラの花でした。
女王様は、
「私にはバラの花が見えます!
世界一美しいバラの花を見た者は、死ぬことはありません。」
世界一美しいバラの花の考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず、この話からは、「素晴らしいと思うものは人それぞれ」ってことが教訓としてあります。
世界一美しいバラの花は、
赤ちゃんを持つ母親なら、子供の笑顔。
女王様のそばにいて、女王様が大好きな人なら女王様の涙。
神につかえる司教なら、純潔と愛に満ちた心。
というように、人によって素晴らしいと思うものは全然違いました。
それから、世界一美しいバラの花を持って来いと言っていましたが、実際に持ってきたのは花ではなく、美しいと思う何かでした。
ここで、バラの花ことばの一つに、美しさがあります。
このことから、美しいと思う何かを、バラの花に例えたのだと考えられます。
そして、最後王子が本を持って入って来て、
「これよりも大きな愛はない」と言いました。
これはどういうことかというと、これは「ヨハネによる福音書」から、
「人がその友のために自分の命を捨てること、これよりも大きな愛はない」というのがあります。
つまり、他人のために自分を犠牲にすることが、最大の愛だということです。
そして、この言葉が世界一美しいバラの花となって、女王様を救いました。
ここで、バラの花ことばには、「愛」という意味があります。
世界一美しいバラの花、つまり本の中にあった最大の愛を見せることによって、女王様を救い出せたことになります。
世界一美しいバラの花の感想
この童話は、キリスト教を信仰している人が読んだら、心を強く動かされると思うのですが、
何の宗教も信仰していない僕が読んでも、正直あまり感動しませんでした。
花は好きなので、もっと花に関する話なのかと思いきや、
美しいものは何なのか、みんなで意見を出し合っているだけのように感じてしまいました。
アンデルセン童話は、童話のタイトルに対して、中身が意外な作品もたくさんあります。
そこが童話の面白いところかもしれませんけどね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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