こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、「三人の職人」(KHM120)のあらすじと考察、感想までお話しています。
三人の職人のあらすじ
むかし昔、職人が三人いました。
三人は、修行をしている間は一緒のところで働くことにしていました。
ところが、ひところ親方のところで給料がもらえなくなってしまいます。
そこで三人は、次の場所を探すことにして、歩いていきました。
すると、立派な服装をした人がやってきて、お前さんがたはどういう人だと尋ねてきました。
「私たちは手仕事の職人で、職を探しているところです。」
「そんなことするにはあたらない。
わしの言うことを実行してくれれば、お金や仕事に見放されないようにしてあげるよ。
そればかりか、みんな大旦那にしてやろう。」
そうすると職人の1人が、
「わたしたちの魂が天国に行って、神様のお恵みをいただくのにさわりないことなら、お目にかけますがね。」
「大丈夫だよ、お前さんがたからは、何にも貰わない。」
しかし、相手は馬と人間の足が片っぽずつでしたので、乗り気になりません。
すると悪魔は、
「安心しなさい。他の男の魂を狙っているのさ。
こいつ、半分はもうこっちのものになっているが、やっこさんの升がいっぱいにならないと、都合が悪いのさ。」
(これは、その男は悪いことがし足りず、魂をさらうだけの資格がまだないということです)
こう言われると、三人は承知しました。
悪魔は、やるべきことを言い出しました。
三人のうち一人は、何を聞かれても「わたしたち三人とも」と返答する。
二人目は「お金と引き換えに」
三人目は「そのとおり」と返答しなければならない。それから、いつもこれを順番どおりに言うということです。
他の言葉は何一つ口に出してはならず、それを破れば、持っているお金は消えてしまう。
ですが、この言いつけを守っている間は、ポケットの中にお金をざくざく入れてやる、ということでした。
悪魔は持っているお金を三人に渡すと、この宿に行くよう言いつけました。
職人たちは宿に入ると、亭主が
「お前さんがた、なにか食べるかの?」
「わたしたち三人とも」
「ようがす。」
「お金と引き換えに!」
「当たり前でさ」
「そのとおり」
「そうだな、そのとおり」
それから三人は食事をし、亭主が勘定の書かれた紙をさしだすと、
「わたしたち三人とも」
「お金と引き換えに」
「そのとおり」
と、順番に言います。
亭主は、
「まったくそのとおり。」
そう言ってお金を受け取りました。
この様子を他のお客さんが見物していて、
「あの連中はおかしい奴らだな」
これで亭主も、
「そうですとも、そのとおり。あんまり頭の回るやつじゃないですが」
こうして、三人の職人はしばらくこの宿に泊まっていましたが、この間も三人は例の言葉しか言いませんでした。
あるとき、大きな商人がたくさんのお金を持ってこの宿に来ました。
「ご亭主、私の荷物を預かっておくれ。バカみたいな職人がいるようですが、あの連中が盗むかもしれませんので。」
亭主は言われた通りにしましたが、袋がずっしりと重く、これは大量の金貨だと気づきました。
亭主は職人三人を下に寝かせ、商人を二階の特別室に入れました。
真夜中になって、みんなが寝静まった頃、亭主は薪わりを持って部屋に入り、商人をぶち殺しました。
それが済むと、戻って横になって朝まで寝ました。
朝になると、宿屋は大騒ぎになっていました。
商人は寝床の中で死んでいて、泊り客が集まってきました。
すると亭主が、
「こいつはあの気ちがいの三人の職人のしわざにちがいねえ。」
お客たちも、
「あいつらでなかったら、誰がこんなことできるものか。」
亭主は三人を呼び出して、
「お前たちが、この商人を殺したのか?」
「わたしたち三人とも」
と一人目が言うと、二人目、三人目は、
「お金と引き換えに」
「そのとおり」
と言いました。
「どうです、みなさん。自分で白状しましたぜ。」
三人の職人は牢屋に入れられ、処刑されることになりました。
ことが大変になってきたので、三人も、さすがに心配になりました。
夜になって悪魔がやって来て、
「もう一日だけ辛抱してくれ。馬鹿な真似して、無駄にするなよ。
お前たちの髪の毛一本曲げさせるようなこともしないからな。」
次の日の朝、三人は裁判所に連れてかれて、
「お前たちが、人殺しの下手人か。」
と尋ねられると、
「わたしたち三人とも」
「どういうわけで、お前たちはあの商人を殺したのか」
「お金と引き換えに」
「お前たちは悪人だな。お前たちは、罪をおそれないのか」
「そのとおり」
「この者どもは、白状しおった上に、剛情なやつら。すぐに引きずり出して、死刑にいたせ。」
三人は処刑台に連れ出されました。
この時、宿の亭主は聴衆の輪の中に入りました。
いよいよ三人が小役人に捕まえられて、首切り役が刀を持っているところに連れていかれたその時、
血のように赤い栗毛の4頭の馬が引く馬車が一台、こちらに向かってきて、窓から白い布を出して合図しました。
これを見ると首切り役は、
「御赦免(ごしゃめん)のおつかいだ!」
と言いました。
それから例の悪魔が、身分の高い方になりすまして出てきて、
「お前たち三人に罪はない。もう口をきいてよろしい。
お前たちの見たこと、聞いたことをありのままに申してみなさい。」
すると一番年上の職人が、
「わたしたちがあの商人を殺したのではありません。下手人は、この聴衆の中にいます。」
と言って、宿屋の亭主を指さしました。
「その証拠に、こやつの宿の地下室には、こやつが命を取ったものがごろごろいます。」
それで、小役人たちは宿屋へ行きました。
行ってみると、その通りでした。
それが分かると、宿屋の亭主は首を切り落とされました。
これを見て、悪魔は三人の職人に、
「これで、わしの欲しかった魂が手に入った。
お前たちは、一生お金に困らせないよ」
と言いました。
三人の職人の考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず、三人の職人は悪魔に出会いました。
この悪魔はどちらかというと、一般の人が想像する悪魔のイメージと違う気がします。
悪魔というと、角を生やしていて、背中に黒い羽を生やして、獣のような足をしているイメージです。
ですがここに出てくる悪魔は、片方の足が馬の足をしているだけにとどまっています。
角も羽も生やさず、足が馬の足になっている。
そしてその足も片方だけが悪魔の足になっていると考えると、この悪魔は完全ではなく、悪魔として未熟な存在であると考えられます。
さらに、悪事が足りないと魂を奪えないってことからも、この悪魔の未熟さがうかがえます。
また宿屋の亭主は、商人を二階に寝かせ、この三人の職人を下に寝かせました。
しかしこの童話の最後で分かるように、地下室にはこの亭主が殺した人間がたくさんいたはずです。
それにも関わらず、三人の職人を下で寝かせたのは、この三人が何があっても他のことをしゃべれないと余裕だったからでしょう。
しかしそれが最後になって、自分の首を切られることになりましたね。
それともう一つ、そもそも悪魔がなぜ、三人にこんな契約をもちかけたのか。
それはわざと三人に、一言しかしゃべれない規則を作って、宿屋の亭主を躍らせて、これ以上の悪事を働かせるためだと考えられます。
都合の良い、罪をなすりつけやすい三人の職人がいることによって、亭主がさらなる悪事を働く。
そしてギリギリのところで三人に本当のことを言わせて、亭主を処刑させる。
悪魔は、この流れを作りたかったのだと考えられます。
そしてギリギリのところで悪魔が偉い人になりすまして出てきて、三人を救いました。
三人を救ったのが、まさかの悪魔と言うのは、誰が正義なのか分かりづらくて面白いものです。
三人の職人の感想
この童話の面白いところは、悪魔から三人の職人に言いつけられたことが、その後の会話で噛み合っているところでした。
「私たち三人とも」「お金と引き換えに」「そのとおり」という三語が、この物語のどんな場面でも当てはまってしまいましたね。
きっとこの童話を作った時に、この三語は何度も修正されたんだろうなって感じます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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