童話「マレーン姫」のあらすじと考察~グリム童話で最強の女主人公

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「マレーン姫」(KHM198)のあらすじと考察、感想までお話しています。

 

マレーン姫のあらすじ

むかし昔、あるところに王様がありました。

王様には一人の王子があって、ある王様のお姫様、マレーン姫に結婚を申し込みました。

マレーン姫は、それはそれは美しいかたでした。

お姫様のお父様は、他の人と結婚させようと思っていたので、マレーン姫は王子にあげられないと断りました。

ですが王子と王女は心から愛し合っている仲で、マレーン姫はお父様に

「わたくしは、他の方は嫌でございます。」

と言うと、お父様は腹を立てて、日の光も月の光も差し込まない真っ暗な塔を立てて、七年間この塔に閉じ込めることにしました。

塔の中にはマレーン姫とお腰元が連れ込まれ、七年分の食べ物が入れられました。

王子はよく、塔のまわりをぐるぐる回ってマレーン姫に呼びかけましたが、石の厚い壁にはばまれて声は届きません。

しかも中は真っ暗で、いつお昼でいつ夜なのかも分からないのです。

時が経って、食べ物の減り具合から七年の月日が終わりに近いことが分かりました。

ですが、誰も塔から連れ出しに来ません。まるで、王様が二人のことを忘れてしまったかのようでした。

いよいよ食べ物も底をつきそうになって、お姫様が塔の壁に穴を開けることを提案します。

そしてパン切り包丁を使って、石のつなぎ目のところをガリガリ掘って、お腰元と交代しながら、やっと石を一つ引き出します。

それから二つ目三つ目と抜き取って、ようやく塔の中から抜け出せるようになりました。

外へ出ましたが、周りの様子のなさけないこと、王様のお城は跡形もなく壊され、材木や石が散らばっているばかり。

村は焼き払われ、畑は踏みにじられ、荒れ果てて人影は全くありません。

敵は国中を焼き尽くし、王様を追い払い、住民をみな殺してしまったのです。

二人はとぼとぼとさすらいの旅をしましたが、

どこにも雨風を凌ぐところはなく、パン一切れ恵んでくれる人はおらず、二人はいらくさを食べて飢えを凌ぐほど、ひどいものでした。

旅の果てによその国にたどり着き、料理人が、灰だらけごみだらけになって立ち働く一番下等のはしためで良ければ、台所にいていいと言ってくれました。

ところが、この二人の女のいる国の王子は、マレーン姫の許嫁の夫でありました。

お父様は王子に別の花嫁を迎えることにしていましたが、それは性格がまことに悪く、顔も醜いのでした。

ご婚礼の日は決まっているのですが、この花嫁は顔がみっともないので、誰にも姿を見せませんでした。

花嫁は自分の顔がみっともないのを恥ずかしく思って、往来で人に見られたら、みなにバカにされ、笑われはしないかと思いました。

そこでマレーン姫に、

「お前、運が向いてきたのよ。私、足のすじを踏み違えて、上手く歩けないの。

それでね、お前が、私のお嫁入りの衣裳を着て、私の代わりをするのよ。

これより名誉なことは、お前なんかにあるものではない。」

ですがマレーン姫は、

「わたくしは自分の柄に合わないことはしたくありません。」

と言いました。花嫁は金貨をあげると言ってもダメで、とうとう

「お前、私の言いつけを聞かないと、お前の命にかかわるよ。」

そう言われると、マレーン姫も承知しました。

マレーン姫はきらびやかな衣裳と飾りの品々を身につけ、王城の広間を通りました。

そこに居たものたちは、姫の美しさに肝をつぶしました。

王子様は、

「この女は、マレーン姫と瓜二つだぞ。これがマレーン姫その人だと思いたいくらいだ。

だが、あれはもう長いこと塔の中にとらわれの身になっている。あるいは、もう死んだかもしれないからなあ。」

王子はお姫様の手を取って、会堂へ行きました。

途中、いらくさを見ると、お姫様が、

「いらくさや、小さな株のいらくさや、ひとりなのはどうしたの?

もとは、あたしとふたり、煮もしないし、焼きもしない、あたしはお前を食べたね」

と言いました。

王子は「なにを言っているの?」と聞くと、

お姫様は「わたくし、マレーン姫のことを考えましたばかり。」

王子は、マレーン姫のことを知っているのを不思議に思いましたが、黙っていました。

それから、墓地の前の狭い橋のところに来ると、お姫様が、

「お寺の小橋や、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

と言いました。王子はこのことを尋ねると、

「わたくし、マレーン姫のことを考えましたばかり。」

「あなた、マレーン姫を知ってるの?」

「いいえ。お噂をうかがいましたばかり。」

二人が教会堂の戸口に来ると、お姫様は

「お寺の戸、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

王子はどういうことかを聞くと、

「なんでもございませんわ。わたくし、マレーン姫のことを考えましたばかり。」

それを聞くと、王子は金細工の貴重な首飾りを取り出して、お姫様の首にかけました。

それから会堂へ入って、二人は夫婦になりました。

王様の城へ帰ると、お姫様はきらびやかな衣装と飾りの品を外し、汚い服に着替えましたが、

王子からいただいた首飾りだけは、そのまま自分のにしておきました。

夜になると、花嫁は王子と部屋に入りましたが、自分がだましたことを気づかれないように顔に布をかけました。

王子は花嫁に、

「あなた、道端のいらくさに、何て言ったのか教えてね。」

と言うと、花嫁は

「どのいらくさに?わたくし、いらくさなんかと口をききませんでしたわ。」

「それでは、お前は本当のお嫁さんではないね」

すると花嫁はマレーン姫のところに行ってくってかかって、

「これ、下の女、お前、いらくさになにを申した?」

マレーン姫がそこで言ったことを伝えると、花嫁はお部屋に戻って、今聞いたことを王子に伝えました。

王子は今度は、お寺の前のせまい橋を渡った時に何と言ったか聞きました。

「お寺の橋に?わたくし、お寺の橋なんぞと口をききませんでしたわ。」

「してみると、やっぱりあなたは本当のお嫁さんではないのだね。」

花嫁はまたマレーン姫のところへ行って食ってかかりました。

マレーン姫が

「お寺の小橋や、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

と言ったことを話すと、

「そんなことを言うとお前の命にかかわるよ。」

と言って、花嫁は部屋に戻りました。

花嫁は聞いてきたことをしゃべると、王子は

「だが、あなたはお寺の戸になんと言ったの?」

「お寺の戸に?わたくし、お寺の戸なんかと口をきいていませんわ。」

「そんなら、やっぱりあなたは本当のお嫁さんではないのだね。」

花嫁はまた部屋を出て、マレーン姫に食ってかかりました。

マレーン姫が、

「お寺の戸、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

と言ったことを話すと、

「そんなことを言うと、首の骨をおっぺしょるよ。」

花嫁は恐ろしく腹を立てて、急いでお部屋へ戻ると、今聞いた言葉を王子にお話しました。

「だが、わたしがあなたにあげた首飾りは、どこにあるの?」

「どんな首飾りですの?あなた、わたくしに首飾りなんぞ、くださりはしませんわ。」

「わたしが、あなたの首へかけてあげたのだよ。それを知らないなら、あなたは本当のお嫁さんではないのだ。」

王子は花嫁の顔から布を取ると、その醜い顔を見ました。王子はぎょっとして、

「どこをどうして、ここへ来た?お前は何者か?」

「私はあなたの許嫁の妻でございますが、皆のものが私を外で見ましたら、私をあざ笑うことを懸念いたしまして、

灰かぶりのはしために命じて、私の代わりに会堂へつかわしたのです。」

「そのはしためを、ここへ連れてきなさい。」

花嫁は外へ出ると、あの灰かぶりのはしためは詐欺をした、中庭へ引きずり出して首をはねよと言いました。

召使たちははしためをひきずって行こうとしましたが、はしためは大声を上げて助けを呼びました。

そこへ王子がやってきて、すぐに許してやれと言いました。

この女の首に王子があげた金の首飾りが見えると、

「お前が本当の嫁だ。私と一緒に会堂へ行った人だ。さ、一緒に私の部屋へおいで。」

二人きりになると、王子は

「お前がね、教会堂へ行く途中、マレーン姫という名前を口に出したのだが、それは、せんに結婚の約束をしたお姫さんなのだ。

そんなこともあるとは思えないが、なんだか、目の前にマレーン姫が立っている気がしてならない。

お前と来たら、何から何までマレーン姫と瓜二つなのだから。」

するとマレーン姫は、

「わたくしが、そのマレーン姫でございます。王子様のために七年の間、まっくら闇の中にとらわれの身になっていました。

また、ただ今までまことに貧しく難儀でしたが、今日という今日は、昔のようにお日様が照らしてくれています。

わたくしこそ、王子様の正しいつれあいでございます。」

二人はキスをして、一生幸せに暮らしました。

偽の花嫁は、悪いことをした罰として、首をはねられてしまいました。

それからマレーン姫の入っていた塔はそのまま残っていて、子供たちがそこを通る時はこんな歌を歌います。

「からん、ころん、後光がさした、この塔の中には誰がおる?

中にいるのは、おひめさま、おひめさまでも見られない。

かべが、どうやっても壊れない、石が、どうやってもはずれない。

五色のきもののハンスこぞう、こっちに来て、あとからついておいで。」

 

マレーン姫の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

まず、マレーン姫は7年もの間、塔に閉じ込められていました。

閉じ込められている間は中は暗いし、悲しいし、外の音も聞こえない状態でしたが、

いざ七年経って外へ出てみると、逆にこの塔によってマレーン姫の命は守られていました。

マレーン姫とお腰元以外の人は全て殺されて、この塔によって逆に守られていたのは、

父親が娘を守る様子を表しているようにも見えます。

結婚相手に口出ししてくるうるさい父親ですが、いざという時は娘の命を全力で守るのが父親ですよね。

そうすると、この塔は父親そのものな感じもします。

その後マレーン姫ははしためとして雇われた後、偽の花嫁の代わりに王子と会堂へ行きましたが、

途中、

「お寺の小橋や、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

 

「お寺の戸、壊れるな。あたしは、ほんとのお嫁じゃない。」

というセリフがありました。

なぜ小橋や戸が壊れるなと言ったか、ちょっと考えさせられました。

これらのものは、いわば教会堂、つまり結婚への道ですよね。

それが壊れるなと言っているということと考えると、

今ここにいるのは自分で、自分こそが王子と結婚したいと思っているから、

結婚への道が壊れるな、つまり王子と結婚したいという願望の表れだと考えられます。

そして「あたしは本当のお嫁じゃない」というセリフ。

これは、自分は身代わりをさせられているのだ、というそのままの取り方もあります。

ですが、マレーン姫の心情を考えると、

自分は王子と結婚したいけど、今の自分は偽の花嫁の身代わり。

そして王子と結婚するのにふさわしいのはマレーン姫だけ。

今の自分は、たしかにマレーン姫だけど、あの花嫁との約束で自分を偽っているから、

「私は本当のお嫁じゃない」と言ったと考えられます。

そして最後、偽の花嫁の手によって殺されそうになったとき、マレーン姫は必死に大声を上げて抵抗しました。

でも実は、グリム童話の中で裁判にかけられたときに抵抗した女性は、マレーン姫だけなんです。

ここで、スカンディナヴィア地方の民話では、行動的で自主性のある女主人公の話がたくさんあります。

この童話は、その話の流れを取り入れたものだから、マレーン姫は抵抗したと考えられます。

 

マレーン姫の感想

それでは最後に、この童話の感想です。

やっぱりこの話からは、マレーン姫の強さを感じられましたね。

七年間も塔に閉じ込められて、塔から出たら国が滅ぼされていて、貧しい思いをして、はしためとして働くしかない人生。

そして王子と出会えたと思ったら、別の女と結婚することになっていて、最後は首をはねられそうになりました。

ここまで波乱続きの中を生き抜いたのですから、最後王子と結ばれてすごいハッピーエンドに感じられましたね。

そして強くて美しいマレーン姫は、女性からも憧れですよね。

生まれ変わったら、マレーン姫みたいな強くて美しい女になりたいですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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