童話「糸くり三人女」のあらすじと考察~不細工な格好は少女を救う!?

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、グリム童話より「糸くり三人女」(KHM14)のあらすじと考察、感想をお話していきます。

 

糸くり三人女のあらすじ

むかし、あるところに女の子がいましたが、怠け者で、糸をつむぐことを嫌がりました。

お母さんは女の子が言うことを聞かないので、ついに腹が立って、娘を殴りつけました。

すると、娘は声をはって泣きました。

そこへ王様のお妃が通りかかり、女の子がなぜ泣いているのか、尋ねてきました。

すると母親は、娘が怠け者なのを恥ずかしく思って、

「娘に糸くりをやめさせられませんので。娘は糸くりをいつまでもしていたいと言いますが、うちは貧乏で麻がないんです。」

するとお妃は、

「私は糸くりの音が好きだし、糸車の回っているのも楽しみ。娘さんを今すぐ御殿へおよこし。嫌と言うほど糸くりをさせてあげよう。」

お妃は女の子を連れて御殿に着くと、みごとな麻がぎっしりつまったお部屋へ連れて行きました。

こういうお部屋は3つあります。そして、

「さあ、この麻をつむいでおくれ。これを残らずつむいだら、私の一番目の息子をおむこさんにしてあげるよ。

お前は貧乏だけど、精を出してくれれば、それで立派なお嫁入り支度なのよ。」

女の子は途方にくれました。自分が三百くらいのおばあさんになったとしても、毎日朝から晩まで糸くり車にへばりついても、

これだけの麻はつむげないと思ったからです。

女の子は泣きだし、三日の間、そこに座ったまま手も動かさず泣いていました。

三日目にお妃が来て、まだちっともつむがれてないのを見て不思議に思いましたが、

「明日はお仕事を始めなければいけないよ」

と言いました。

女の子はどうしたらいいか分からなくなって、窓の外の濡れ縁に出てみました。

すると、女が3人そろって来るのが見えました。

一人は片方の足がまるで団扇(うちわ)のようで、歩くとぺちゃりぺちゃり音がしました。

二人目は下唇がとても大きくて、だらりとあごまで伸びていました。

三人目はおやゆびが一本、おそろしく幅が広いのでした。

この3人の女は窓の外まで来ると、どうしたのですかと女の子に尋ねました。

女の子が自分が困っていることを言うと、

「お前さんがね、あたしたちを結婚式に呼んでくれて、これはわたしのおばさんたちですと言って、

おぜんへ座らせてくれるなら、三人で麻をかたずけて見せるがのう。」

「まあ、嬉しいこと。なんでもいいから、すぐお仕事を始めてね。」

それから三人の女を最初の部屋に入れると、女たちは座り込んで、

一人が糸すじを引き出して車の輪をふみ、二人目は糸すじを湿らせ、三人目はくるくるとよって、指で承盤(うけばん)を叩きます。

そうするたびに麻糸が束になって出来上がりますが、これが見事な仕上がりでした。

女の子は、お妃が来るたびにこの三人の女を隠していました。お妃は女の子を褒めました。

それから2番目の部屋に行って、3番目の部屋も糸を紡ぎ終わりました。

「お前さん、あたしたちに約束したことをお忘れでないでよ。お前さん、運が良くなるよ。」

と、女の子に言いました。

それからご婚礼のしたくが始まりました。花むこ様は、こんなに稼ぐお嫁さんをもらうのを嬉しく思いました。

女の子は、

「わたくしには、おばが三人ございます。そのおばたちは私に親切にしてくれましたので、

おばたちを婚礼に呼んで、一緒のごぜんについてもらいたいのですが、いかがでございましょうか。」

「そのこと、異存はありません。」

お妃も、おむこさまもそうおっしゃいました。

いよいよごちそうが始まると、例の三人の女が、何とも言えない奇妙なかっこうをして入ってきました。

「これはこれは、おばさまがた。ようこそいらっしゃいました。」

「まぁ、いやらしい者と知り合いなんだねぇ。」

むこさまはこう言いながら、

「どうしてあなたは、そんな幅広い足をしていらっしゃるのですか?」

「踏むからさ、踏むからさ。」

「どうしてだらりと下がった唇をしているのですか?」

「なめるからさ、なめるからさ。」

「どうして、そんなにひらべったいおやゆびをしているのですか?」

「糸すじをよるからさ、糸すじをよるからさ。」

それを聞くと王子はびっくりして、

「それなら、私の美しいよめには、もう糸くり車には触らせないようにする。」

女の子はこれで、嫌でたまらない糸つむぎをしなくて済むようになりました。

 

三人の糸くり女の考察

それでは、ここからこの童話の考察に入りますね。

この物語の主人公は糸つむぎが嫌いでしたが、最終的には王子と結婚できましたし、嫌いな糸つむぎもやらずに済むようになりましたね。

そもそも王子と結婚できたのは、三人の女が糸をつむいだおかげです。

グリム童話では、労働の成果として幸せになるタイプはあまりなく、たいてい、困っている主人公を誰かが助けてくれたり、運が良くて幸せをつかむパターンが多いです。

この童話も、紡げるわけのない量の糸の前に困っている女の子を、助力者が救ってくれましたね。

そして王子は最初、この女の子と結婚できることを嬉しがりましたが、その理由は女の子が美しいからではなく、

こんなに糸を紡いでくれて、稼いでくれるからです。

普通は男の登場人物なら、綺麗な女の子と結婚したがるものですが、この王子は経済力を重視していたってことです。

ですがその後、この王子は経済力だけではなく、女の子の美しさを見る記述がありました。

糸つむぎをし続けた結果がへんてこな三人の女だと知った時、

「私の美しい嫁には、もう二度と糸を紡がせるもんか。」

というように、女の子の美しさと経済力を天秤にかけた結果、美しさを求めています。

王子には、女の子が糸を紡ぎあげたときから結婚の時までの間に、心境の変化があったということでしょう。

 

三人の糸くり女の感想

この童話では、へんてこな格好をした女3人が出てきました。

足が大きかったり、あごが垂れ下がっていたり、指が異常に太かったり。

最初は、へんな奴らが来たんだなくらいにしか思ってませんでした。

そして糸つむぎを代わりにやってくれたところまでは、普通の物語の展開です。

ところが、王子との婚礼の時にご一緒させてほしいと言ってきて、このタイミングでなぜこんなに変な格好をしているかが分かりましたね。

登場した時点では分からないことでも、後になってその理由が分かるのは、なかなか面白いものですね。

そして、王子と結婚できるだけではなく、嫌いな糸つむぎを一生やらなくてよくなったのは、2重のハッピーエンドですね。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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