こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、「怪鳥(ばけどり)グライフ」(KHM165)のあらすじと考察、感想までお話しています。
怪鳥グライフのあらすじ
むかし、あるところに王さまがありました。
王さまにはお姫様がありましたが、病気をわずらってばかりいて、どんなお医者さまでも治せません。
ところが、お姫様はリンゴによく似ている木の実を食べるとじょうぶになると予言したものがありました。
そこで王様は、その果物を持ってきたものにはお姫様をお嫁さんにして、王様になれるというおふれを出しました。
このことが息子3人を持つお百姓の耳に入ると、一番上の息子に、
「家にあるみごとなリンゴをかごに入れて持って行きなさい、お前、お姫様をもらって王さまになれるぞ。」
と言って、息子は出かけました。
しばらく歩いていくと、鉄の色をした小さな小人が出てきて、
「そのかごの中には何が入っている?」
と尋ねられると、ユーレ(この男の名前です)は、
「かえるの肢だよ」
と言いました。小人は、
「そうかね、それなら、そんなものになっていなよ」
そう言い捨てて、行ってしまいました。
ユーレは王様のところに着き、いざ王さまの前でかごのふたを開けてみると、これはおどろいた!
かごの中からはりんごではなく、蛙の肢ばかりで、まだぴくんぴくん動いているのです。
王さまは怒って、ユーレを御殿から追い出しました。
今度は、次男のゼーメがリンゴを持って行きました。
やっぱり鉄の色をした小人に出会って、またかごの中には何が入っているか聞かれました。
ゼーメは
「靴刷毛(はけ)だよ。」
「そうかね、それなら、そんなものになっていなよ。」
ゼーメは王様のところに行くと、リンゴを持ってきたと言って、かごのふたを開けました。
ですが中から出てきたのは靴みがきの刷毛で、王様はまた起こって、ゼーメを御殿からたたき出しました。
ゼーメがうちへ帰ってわけを話すと、末っ子のハンスが、自分もリンゴを持って行くと言い出しました。
父親は、
「お前がかい。分別のある兄ちゃんたちでさえどうにもならなかったんだ、お前がうまくいくわけがない。」
そう言って、父親は何度も止めましたが、ハンスは行くと言って聞きません。
父親は「かってにしろ!」と怒って、粘土のかたまりをやりました。
次の日の朝、ハンスが出かけるとすぐ、鉄の色をした小人が、なにかぶつぶつ言いながら出てきて、
「その手提げかごの中には何が入っている?」
ハンスは、リンゴだよ、これを食べるとお姫様がじょうぶになるんだよと返事をしました。
「そうかい、そんなものでいなよ。」
御殿へ行くと、どうしてもハンスを入れてくれません。
今までに来た二人が「リンゴを持ってきた」と言って、違うものだったからです。
ハンスは一生懸命頑張りました。
すると、話の様子がいかにも正直なので、門番はハンスを通しました。
王様の前に来てかごを開けると、黄金色の黄色いリンゴがいくつも出てきました。
王さまは大喜びで、すぐお姫様のところに持って行かせました。
王さまはその効き目がどうだったか知らせが来るのを待ちましたが、少しすると、お姫様が自分で知らせに来ました。
そのリンゴを食べるが早いが、ぴんぴんして寝床から出てきたのです。
王さまは大変喜びました。
ところが王さまは、いざとなるとお姫様をハンスにやるのが嫌になって、
お姫様が欲しければ、陸の上を走る船をこしらえなくてはいけないと言い出します。
ハンスは家に帰ってあったことを話すと、父親はユーレを森にやって、船を作らせることにしました。
ユーレが一生懸命に仕事をしていると、お昼時にちっぽけな鉄の色をした小人が出てきて、
「なにをこしらえているのだ?」
「木の道具だよ」
「そうかい、それなら、そんなものになっていなよ。」
晩になって、船ができたつもりでしたが、できたのは木の道具でした。
次の日はゼーメが森に行きましたが、同じような目にあいました。
三日目はハンスが森に行き、一生懸命に仕事をしていると、お昼時におなじみの小人が出てきて、
「なにをこしらえているのだ?」
「船だよ、水の上とおんなじように、陸の上も走る小船だよ。」
「そうかい、では、そういうものになってなよ。」
夕方、お日様が沈むころ、ハンスは小船をこしらえました。
陸も走るその船で王さまのところに行くと、
今度は朝から晩まで兎100羽の番をしなくてはいけない、もし一羽でもいなくなったら、お姫様はもらえないぞと言いました。
ハンスは次の日、兎の番をしていましたが、一匹も逃げないように気をつけていました。
そこへ御殿の女中がやってきて、兎を一匹分けてくださいと言ってきました。
ハンスは渡しませんでしたが、女中も負けておらず、ケンカになりました。
そこで、お姫様がご自分でいらっしゃったら、兎を渡すと言いました。
これで女中は、御殿に戻って行きました。
そこへ、あの小人がやって来て、ここで何をしてるか聞いてきました。
ハンスはわけを話すと、
「兎が逃げたら、口笛を吹くとちゃんと帰ってくるよ。」
と言いました。
間もなくお姫様がやってきたので、ハンスは兎を一羽渡しました。
その後お姫様が百歩歩いたところでハンスが口笛を吹くと、兎は戻ってきました。
これでこの難題もクリアしましたが、王様は今度は、怪鳥グライフの羽を一枚持ってこないとだめだと言い出しました。
ハンスはすぐ旅立ちしました。
日が暮れるとどこやらのお城で一晩泊めてもらいましたが、怪鳥グライフのところに行くと言うと、
「怪鳥グライフのところへとな、あの鳥は何でも知っていると聞くが、
実は金庫のカギを失くしてしまって。恐縮だが、どこにあるか尋ねてきてくださらんか。」
「お安い御用。」
次の朝、城を出発して、途中また別の城に泊めてもらいました。
そこではお姫様が病気で、どうしたら治るのか怪鳥グライフに聞いてきていただきたいと頼まれました。
それから旅を続けると、川にたどり着きました。
川には渡し船がなく、大きな大きな男が、来た人をおぶって、川を越えています。
男はハンスにどこへ行くかと聞いて、
「怪鳥グライフのところへ」
と言うと、
「なんでおいら一人が、来るやつ来るやつみんな川越しをさせなきゃならんのか、聞いてみてくれや。」
ハンスはそれを聞き入れると、大男はハンスを川の向こう側に渡してくれました。
やっとのことで怪鳥グライフのところに来ましたが、うちにいたのはおかみさんだけで、怪鳥グライフは留守でした。
おかみさんに、ここへ来たわけ、つまり知りたい3つのことと、羽根をもらいに来たことを話しました。
おかみさんは、
「気をつけなよ。耶蘇(やそ)の信者は、ばけどりと直接話はできないよ。誰でも構わず食べちまうからねえ。
ばけどりが帰ってきたら、寝台の下にもぐりなよ。それから夜になってばけどりが寝たら、羽根をひっこぬいたらよかろう。
聞きたいことは、あたしが聞いてあげるからね。」
その夜、ばけどりがいびきをかいて寝た頃、ハンスは手を伸ばして頭の羽根を引っこ抜きました。
ばけどりは急に目を開けて、
「おっかあ、なんだか信者がおいらの頭をかじったような気がする。」
するとおかみさんは、
「お前さん、きっと夢を見たんだよ。今日は信者がいっぴき来たけど、帰って行ったって。
その人間はいろんなことを話してたわ。御殿の金庫のカギはどこにあるんだろうって。」
「なあんだ、そのカギなら、薪小屋の中の、薪の山の下にあるよ。」
「それから、こんなこと言ってた。どこかの御殿で、お姫様が病気なのだけど、どうしたらいいかって。」
「なあんだ、地下室の階段の下に、ヒキガエルが一匹いて、お姫様の髪の毛で巣を作ってる。
その毛を取り戻せば、お姫様はじょうぶになるよ。」
「それからね、こんなことも言ってたよ。
どこかに川があって、男がいて、いつになったら川を渡す役を辞められるのかって。」
「なあんだ、誰か来たら、そいつを川の真ん中に置き去りにするのさ。そうすりゃ、役目は終わりさ。」
次の朝、ばけどりは早くにどこかへ出かけました。
ハンスは寝台の下から出てきて、羽根も持っていますし、ばけどりの話したことはみんな聞いています。
それからハンスはうちに帰ることにしました。
まず、川岸の男のところに来ました。
男はすぐに、ばけどりはなんて言ったか聞いてきましたが、まずは向こう岸に渡してもらいました。
それからこの男に、どうすればいいかを話すと、男は大変喜びました。
次は、お姫様が病気をしているお城に来ました。
ハンスがお姫様を肩車して地下室に連れて行き、ヒキガエルの巣を取ってお姫様に渡すと、お姫様はその瞬間に元気になりました。
お父様もこれを見てお喜びで、小金白銀、欲しいものを何でもお礼にもらいました。
それからその次のお城へ行って、薪小屋からカギを見つけると、殿様のところへ持って行きました。
殿様はお喜びで、お礼に金庫にあった金貨をたくさんやり、牝牛や羊、山羊などいろんなものを持たせました。
ハンスがお宝をたくさん持って帰ってくると、王様はこんなにたくさんのものをどこから持ってきたのか尋ねました。
ハンスは、怪鳥グライフからもらいましたと言いました。
これを聞いて王さまは、自分も取ってこられるだろうと考えて、怪鳥グライフのところに出かけました。
ところが、あの川のところに来ると、ハンスが行ってからはまだ誰も来ず、王さまがハンスの次に来た人だったので、
男は川の真ん中で王様を下ろしてどこかへ行ってしまいました。
それで王様はぶくぶくと、土左衛門になってしまいました。
一方ハンスは、お姫様をお嫁さんにして、自分は王様になりました。
怪鳥グライフの考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず、百姓のところの三人兄弟のユーレ、ゼーメ、ハンスのうち、上手くいったのは末っ子のハンスでしたね。
三人兄弟のうち、上の二人が失敗して三人目で成功するというパターンは、他の童話でも見られます。
しかも、三番目の子が一番出来が悪いけれど、素直だというところでも同じですね。
この童話での助力者は鉄の色をした小人ですが、
兄弟のうち上二人は嘘をつき、
「そうかね、それなら、そんなものになっていなよ。」
と言いました。
それに対し、ハンスが正直に話した時は、
「そうかい、そんなものでいなよ。」
という言い方をしました。
この二つの言い方を比べると、兄2人に対しての言い方のほうが、冷たい感じがします。
小人の、正直者には手を貸すが嘘つき者には災いをもたらす、という考えが、ここでも表れていると考えられます。
また、ハンスが王様のところに持ってきたリンゴは、黄金色をしていました。
これは上の兄弟二人が家から持って出た時のリンゴとは、明らかに別物です。
ということは、やはり鉄の色をした小人という助力者がなければ、これは上手くいかなかったということになります。
上の兄弟二人は、小人に邪魔されなくても結果は同じだったということですね。
怪鳥グライフの感想
この童話の悪役は、意外にも王様でしたね。
あまり悪者の印象がなかったのですが、お姫様と結婚させるという約束をしたのに、いざとなると嫌がりました。
これはかなり図々しいことですが、その図々しさが最後、川を渡るときに真ん中に置き去りにされてしまい、おぼれてしまいました。
こうやって悪者が死んだのを見てる分には、こちらとしては気分がいいものですね。
また、怪鳥グライフのところでは、さすがに何もかも上手くいきすぎだなーって思って読んでいました。
簡単に羽根が手に入るし、聞きたいことも聞けるし。
ハンスはスムーズにことが運んで、さぞ良かったでしょうね。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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