童話「人魚姫」のあらすじと考察~結果には代償がつきまとう

こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。

ここでは、アンデルセン童話より、「人魚姫」あらすじと考察をお話しています。

 

人魚姫のあらすじ

海の底はなにもなく、ただ白い砂地だけだろう、などと思ってはいけませんよ。

そこには木や草が生えていて、あらゆる魚がその間を泳いでいきます。

そしてここには、人魚のお城が建っていました。

人魚の王様はやもめで、お年寄りのお母様と、6人の人魚の姫を持っていました。

このお年寄りのお母様は、賢く素晴らしい方で、尻尾には十二個もかきをつけていました。

他の者は、どんなに身分が良くても、六個しかつけられないのです。

姫はどれもきれいでしたが、中でも末の姫は一番きれいで、一番良い声を持っていました。

この人魚たちは、足がなくて、その代わりに魚のしっぽを持っていました。

姫たちはそれぞれ庭に花壇を持っていて、そこに好きな花を植えていました。

ある姫は花壇をクジラ型に作り、ある姫は人魚の形にしました。

一方、一番末の姫は、お日様のように丸い花壇を作って、赤い花を植えただけでした。

それ以外には、たった一つ、難破した船から沈んできた、美しい少年の大理石の像を飾っていました。

この末の姫は、物静かで、ちょっと変わっていたのです。

姫たちにとって、海の上の人間の世界の話を聞くのは大好きでした。

そしておばあさまからは、十五歳になったら、海の上に出るのを許してもらえることになっていました。

お姉さんたちが順番に海の上に行き、やがて年月が経ち、末の姫も十五歳になりました。

おばあさまは、

「さあ、お前もいよいよ、一人前になるのですよ。

お姉さんたちと同じように、化粧をしてあげましょう。」

こう言って、白ユリの花の冠を頭に乗せ、八つのカキで、末の姫のしっぽをはさませました。

この時姫は、自分の花壇に咲いている赤い花を身につけたいと思っていました。

けれどもどうしようもないので、姫はそれで海の上へ出ました。

姫が海の上に出た時は、お日様が沈んだところでした。

薄桃色の空には宵の明星が輝き、空気は穏やかで、海は静かでした。

向こうを見ると、大きな船が浮かんでいました。

やがて、音楽と歌が聞こえてきて、あたりが暗くなると、色とりどりのちょうちんに明かりが灯りました。

末の姫は船の中を見ると、大勢の人の中に、一人目立って美しい、若い王子がいました。

年は十六より上ではなく、この日は王子の誕生日で、そのお祝いをしているのでした。

王子はどんなにきれいだったでしょう!

王子は人々と握手をして、微笑んでいました。

人々はダンスを楽しみ、花火を打ち上げ、やがて夜もふけて静かになりました。

けれども姫は、船と美しい王子から目を離すことができませんでした。

その時、波が高くうねり始め、大きな黒雲が押し寄せてきて、稲妻が光り、嵐になりました。

船はきしんでメリメリという音が出て、大波が船にぶつかった時、水が流れ込んできました。

マストが真っ二つに折れて、船が横倒しになってしまいました。

姫はこの時初めて、これはただごとではないと気づいて、王子を探しました。

しかし見つかったとたんに船は真っ二つに割れて、沈んでしまいました。

この時姫は、人間は水の中では生きられないことを思い出して、王子のところに泳ぎ着きました。

王子はこの時腕も脚もぐったりしていて、美しい目はかたく閉じていました。

もし人魚姫が来ていなければ、死んでしまっていたでしょう。

明け方になって、嵐はやみました。

姫は、王子の美しい額にキスをして、ぬれた髪をかきあげてあげました。

この王子は、姫の花壇にある大理石像に似ているように思えました。

そして建物が一つ建っている陸地が見えたので、姫は王子を抱いてそこまで泳いでいき、王子を砂の上に寝かせました。

その時、建物の中から大勢の若い娘が出てきたので、人魚姫は岩の陰に隠れました。

そこへ、一人の若い娘がやってきました。

この時王子は目を覚まして、その若い娘に微笑みかけました。

けれども、人魚姫のほうには微笑みかけてくれませんでした。

それもそのはず、人魚姫が助けたとは、夢にも思わなかったからです。

姫は悲しくなり、泣く泣くお父様のお城へ帰って行きました。

それからというもの、この姫は王子を見るため、幾夜も王子の住んでいる御殿の近くまで来ました。

そして身をひそめて、海から王子を見上げるのですが、王子はそんなことは夢にも思わず、月の光を浴びているのでした。

姫はまた、美しい王子を救ったのは自分だと思うと、嬉しくてたまりませんでした。

そして、海の上の王子を自分が支え、どんな想いでキスをしたのかを思い出すのでした。

けれども、王子はそんなことは少しも知りませんでした。

次第に姫は人間を愛しく思い、人間の世界に入りたくなりました。

そこで末の姫は、おばあ様に、

「おばあさま、人間というのは、私たちのように、死ぬことがないんでしょうか。」

「いいえ、人間は死ななければならず、私たちよりずっと短い一生なのです。

私たちは三百年も生きてられますが、その代わり、一生が終わると、私たちは水の泡になってしまうのです。

ところが人間には魂というものがあって、肉体が死んでも、生きていられるのです。

人間は死んだら、魂となって、未知の美しい世界へ行くのです。」

「私たちには、不死の魂をさずかれないのでしょうか?

人間になれるなら、授かった三百年の命だって、捨てても惜しくありません。」

「そんなものありませんよ。

けど、人間のうち誰かが、お前を心から愛して、いつまでも変わらない愛を誓ったら、

お前も不死の魂をあずかれるんだよ。

けれどそんなことは起こらない。

なぜなら、この海の底では美しいとされている、その魚のしっぽだって、陸の上では、みにくいとされてるんだからねえ。」

人魚姫はため息をついて、自分の魚のしっぽを見ました。

けれども人魚姫はあきらめられません。

そこで、恐ろしいけど知恵のある、海の魔女のところに行くことにしました。

そこへ行くには、何もかも砕いてしまう渦と、捕まったら引きずり込まれるヒドラの森を通らなければいけなかったですが、

ここを通り抜けて海の魔女の家にたどり着きました。

海の魔女は、

「私には、お前さんが何で来たか、分かってるよ。

ばかなことしなさんな。

お前さんは、魚のしっぽを捨てて、人間の二本のつっかい棒が欲しいんだろ。

つまりあの王子を惚れさせて、王子と不死の魂を手に入れようということだね。

でも、飲み薬を作ってあげよう。それを持って岸に上がって、その薬をお飲み。

そしたら、人間になっているよ。

お前さんを見た人は誰でも、こんなきれいな人は見たことないと言うだろうよ。

けれども二本足で歩く痛さときたら、一歩歩くごとに、鋭いナイフを踏むような思いだろうよ。

それでもいいなら、手を貸してもいいがね。」

人魚姫は、

「はい、構いません。」

魔女は、

「だが言っておくが、いったん人間になったら、もう人魚には戻れないんだよ。

そして王子と結婚できなければ、不死の魂は授からない。

もし王子が、他の女と結婚したら、お前さんは海の泡になってしまうんだよ。」

人魚姫は、

「それでも、構いません。」

すると魔女は、

「あと、私もお礼をもらわないとね。

お前さん、この海の中で、誰よりもいい声を持っているね。

私だっていいものをあげるんだから、お前さんも、一番いいものをくれなきゃだめだよ。」

こうして、魔女は人魚姫の舌を切り取りました。

これでもう、歌も歌えず、ものも言えなくなってしまいました。

そして、人魚姫は魔女の薬をもらい、さっそく陸の上へあがって行くと、そこで強い薬を飲みました。

すると、人魚姫は気が遠くなってしまい、倒れてしまいました。

しばらくして目を覚ますと、目の前に、あの王子様が立っているではありませんか。

もっと驚いたのは、魚のしっぽが消えて、人間の足になっていたことです。

王子は、あなたは誰か、なぜここにいるのか、と尋ねました。

けれども姫は、青い目で悲しそうに王子を見つめるだけでした。

王子は姫の手を取って、御殿の中へ連れて行きました。

けれども魔女の言った通り、鋭いナイフの上を歩いているような痛みを感じました。

姫は、御殿で美しい着物をいただき、姫ほどきれいな人はいませんでした。

おしなので歌うことができませんでしたが、踊り出すと、その振る舞いは美しいばかりでした。

特に王子は姫が気に入って、「可愛い拾いっ子さん」と呼び、いつまでもここにいていいと言いました。

王子と姫は一緒にいて、王子は日に日に、姫が好きになりました。

といっても、かわいい子供をかわいがるようにしていたので、お妃にしようとは、少しも思っていなかったのです。

けれども姫は、王子にお嫁にもらってもらわなければなりません。

王子はある時、姫が、「王子様は私のことが一番好きでないの?」と言っているような気がしました。

すると王子は、姫に、

「ああ、お前が一番好きだよ。

お前は誰よりも心が素直で、僕につかえてくれるもの。

それにお前は、いつか僕のことを助けてくれた若い娘さんに似ているからさ。

その娘さんに会うことはきっとないだろうけど、その人は、浜辺に倒れている僕を見つけて、助けてくれたんだよ。

僕が一番愛しく思うのは、その娘さんだけだ。

けれど、その娘さんはお寺に一生をささげた人なんだ。

それで神様が、お前を僕のところによこしたんだ。

だから僕たち二人は、ずっと一緒にいようね。」

人魚姫は、

「ああ、王子様は、私が助けたことを知らないんだわ。

王子様を砂浜に乗せて、私が隠れた時に来た、一人のきれいな娘さんのことだわ。」

心の中でそう思って、ため息をつきました。

「でも、その娘さんはお寺に一生をささげたということは、もう出てこないわね。

私はいつも王子様のそばにいられる。私は王子様をお世話して、お慕いして、この命を喜んでささげよう。」

ところが王子は、お隣の国の美しい姫君と結婚する話が出ました。

といっても、人魚姫は、王子の本当の心の中を知っていて、王子は姫に、

「僕は王女に会ってこなければならない。

でも父上と母上は、ぜひその人をお嫁に連れてくるようにとは、おっしゃらない。

僕がその人を愛するなんてことはないよ。

だってその人があの娘さんに似ていることはないもの。

僕がいつかお嫁さんを選ぶとしたら、僕はお前を選ぶよ!」

そして王子は人魚姫にキスをし、姫の髪をなでながら、胸に顔を押し当てました。

この時姫は、最高の幸福を感じていました。

そして王子は、人魚姫と一緒に船に乗って、隣の国へと向かいました。

この船の上で、王子は人魚姫に、

嵐のこと、海の中にいる魚のこと、水の中にある珍しいもののことなど話して聞かせました。

姫は、それを聞きながらにっこりしました。

なぜなら、海の中のことなら姫は誰よりもよく知っていたからです。

やがてその国に着くと、王子の前に、この国の姫君が現れました。

ところが王子は、

「おお、あなたです!僕が海岸で倒れていた時に助けてくれたのは!」

こう言って、その姫を腕に抱きました。そして人魚姫に、

「ああ、僕はなんて幸せなんだろう。あきらめていた願いが叶ったんだもの。

お前も、僕の幸せを祝福してくれるね。僕のことを一番思ってくれているお前だもの。」

人魚姫は王子の手にキスをしましたが、胸が張り裂けそうでした。

王子のご婚礼の次の朝は、海の泡となる運命ですもの。

王子と花嫁はお互い手を取って、婚礼の式を挙げ、祝福を受けました。

そしてこの日のうちに、王子と花嫁は船に乗り、この船の上でお祝いが始まりました。

ダンスが始まり、人魚姫もぐるぐる踊りました。

足がナイフに突き刺さるような痛みを感じましたが、心の痛みの方がずっとこたえました。

王子を見るのも、今夜限りです。

王子と結婚するために、姫は家族を捨て、故郷を捨て、美しい声まで捨てて、毎日の苦しみに耐えてきたのです。

でも、王子はこのことを知りません。

望みを失った人魚姫を待っているのは、考えることも、夢を見ることもない、永遠の闇です。

姫は死を覚悟しながら、顔に微笑みを浮かべて踊りました。

王子は美しい花嫁にキスをし、花嫁は王子の黒髪をなでました。

そして二人は、素晴らしい天幕の中へ入り、眠りました。

やがて船がひっそりとなって、ふと、お姉さんたちが海に浮いているのが見えました。

見ると、長い美しい髪は、根元から切り落とされていました。

「私たちは、髪の毛を魔女にやってしまったのよ。

その代わり、あなたが助かるようにこのナイフを渡してくれたの。

お日様が昇らないうちに、あなたは王子の心臓を、これで刺すの。

王子の血があなたの足にかかると、あなたは元の人魚に戻れるのよ。

そしたらまた、私たちと一緒に暮らせるわ。

さあ、早く!日が昇ってしまえば、あなたが死ななければいけないのよ!」

こう言うと、お姉さんたちは、海の中に入って行きました。

人魚姫は、ナイフを持って、眠っている王子と花嫁のところに行きました。

人魚姫は、王子の額にキスをしました。

空はだんだん明るくなってきます。

姫はナイフを持ったまま、王子を見ていました。

ところが姫は、ナイフを海の中へ投げ捨てました。

そして最後に王子のほうに目を向けると、自分も海に飛び込みました。

すると、自分の体が泡になっていくのが感じられました。

その時、お日様が昇りました。

そして人魚姫は、体が軽くなって、だんだん上の方へ上って行きました。

人魚姫は、

「私はどこへ行くのでしょう?」

すると声が聞こえてきて、

「空気の娘たちのところですよ。

人魚には、不死の魂はありません。

私たち空気の娘も、同じように不死の魂は持っていないのです。

ですが良い行いを三百年すると、人間と同じように不死の魂を授かるのです。

人魚姫さん、あなたも、真心を尽くして、おつとめになりましたのね。

そしてずいぶん苦しみ、耐えて、この空気の精霊の世界へ来たのですよ。

これから三百年、よい行いをすれば、不死の魂がさずかりますよ。」

人魚姫は船のほうを見ると、王子と花嫁が人魚姫を探していました。

そして人魚姫が海に身を投げたのを知っているかのように、波の上の泡を悲しげに見ていました。

人魚姫は王子に微笑むと、空高く上って行きました。

空気の精の1人が、

「私たちは人の知らないところで、子供のいる家に入るのです。

そこでよい子を見つけると、試みの時が一日、短くなるのです。

そして私たちが嬉しさから微笑みかけると、三百年から一年減らされるのです。

しかし、いけない子供を見て、私たちが悲しくて泣きだすと、試みの時が一日増えるのです。」

 

人魚姫の考察

それではここから、この童話の考察に入ります。

この童話全体の教訓として、恋愛への忠告がされているように感じられます。

「恋愛をするには見返りを求めない気持ちが重要」

「愛には代償が伴う」

こういったことが示されています。

現代社会の恋愛でも、どちらか、もしくは両方がパートナーを理解してあげられないがために、

恋愛がうまくいかない場合が多いですよね。

人魚姫では、まさに王子が人魚姫の本当のことを知らなかったがために、二人は結ばれなかったです。

人魚姫が理解されなかったのは、しょせん生きる世界が違うということでしょう。

でも、人魚姫が声を失わなければ、恋が実った可能性は非常に高いと考えられます。

人魚姫が声を失ったのは、人間になることの代償でしたが、

人間の世界でも、恋をすることで声を失う人は多いです。

例えば、玉の輿になった人で夫に強く言えない人はいます。

恋人に嫌われたくないがために、言いたいことを言えなかったり。

そして人魚姫が人間になるのと引き換えに声を失うことを受け入れたのは、

それだけ覚悟が大きかったからです。

また、おばあ様は外見や身分を重視する人だったと考えられます。

なぜなら、他の人はせいぜい六枚なのに、自分に十二枚のカキをつけていたからです。

そして人魚姫が上の世界へ行くときも、恥ずかしくないようにと、八枚もカキをつけさせました。

あと、人魚姫は最後、海の泡になるという運命を受け入れたようにも思えますが、

これは人魚姫がナイフを捨てることによって、生きる道より、善の道を選んだということです。

そして、自分が助かる道が、お姉さんたち5人の髪の毛と、王子の命を犠牲にしなければならなかったので、

やはり結果には代償がつきものだということが読み取れます。

そしてその後、王子と花嫁が結ばれるのを微笑んで祝福できたので、

人魚姫は天使になったといえます。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!

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