こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、アンデルセン童話より、「赤いくつ」のあらすじと考察、感想までお話しています。
赤いくつのあらすじ
あるところに、きれいな、可愛らしい女の子がいました。
けれども家が貧しかったので、靴をもらえませんでした。
いなか町の中に、靴屋のおばさんが住んでいました。
このおばさんは親切に、赤い小さい靴を作ってくれました。
この靴は不格好でしたが、女の子のためのものです。
また、この女の子の名前はカーレンといいました。
カーレンのお母さんのお葬式の日に、カーレンはその赤い靴をはきました。
本当はそんなことをしてはいけなかったのですが、はくものはこれしかなかったのです。
そこへ、大きな馬車が通りかかると、お年寄りの奥様が出てきて、
「その子をわたしにください。かわいがってやりますから。」
カーレンは、これは赤い靴のためだと思っていました。
でもお年寄りの奥様は、汚い靴ね、と言うと、靴は焼かれてしまいました。
その代わり、カーレンは綺麗な着物をもらい、読み書きやお裁縫を習いました。
人々はカーレンのことをかわいらしいと言っていましたが、
「かわいいどころか、あなたは本当に美しい」
と、鏡は言いました。
この頃、王女が旅行で来ていましたが、この王女は赤い靴をはいて、人々の前に現れました。
カーレンもそこにいましたが、この靴はあの靴屋のおかみさんが作ってくれたものよりずっと美しかったのです。
カーレンは大きくなって、堅信礼を受けることになりました。
新しい着物ももらい、それからちゃんとした靴屋に行くと、あの王女が履いていた靴そっくりの、美しい赤い靴がありました。
カーレンはその赤い靴を買ってもらいましたが、お年寄りの奥様はそれが赤色だとは知らなかったのです。
なぜなら、目がよく見えなかったからです。
もし赤い靴だと知っていたら、それを履いて堅信礼に出るだなんて、とんでもないと思ったことでしょう。
けれども、カーレンはそうしてしまいました。
人々はみな、カーレンの足元ばかり見ていました。
教会では、牧師さんが神聖な洗礼のことや、神様のことをお話になっていましたが、カーレンは赤い靴のことばかり考えていました。
そのあと、お年寄りの奥様は、みんなからカーレンの靴は赤色だったことを聞きました。
そうすると、カーレンに、これから教会に行くときは、必ず黒い靴を履いていくようにと言いました。
しかしカーレンは、次の日曜日の聖餐式でも、結局赤い靴を履いて行ってしまいました。
すると教会の入り口に、赤い色の長いひげを生やした年とった兵隊が、松葉づえをついて立っていました。
この兵隊は、お年寄りの奥様に、どうかくつのほこりをはらわせてください、と言いました。
カーレンも小さい足を出すと、
「なんときれいなダンス靴じゃ!ダンスをするときは、しっかりくっついてるんだぞ!」
兵隊はそう言って、手で靴の底を叩きました。
教会の中に入ると、みんなカーレンの赤い靴を見ていました。
式が終わって教会から出てくると、お年寄りの奥様は馬車に乗りました。
その時、年寄りの兵隊が、
「なんときれいなダンス靴じゃ!」
するとカーレンは、じっとしていられずにダンスの足取りを少ししました。
ところが、そうすると勝手に足の方が踊り始めてしまいました。
カーレンは踊りながら移動していきましたが、どうすることもできません。
そこで御者がつかまえて、馬車に乗せましたが、足はずっと踊り続けて、優しいお年寄りの奥様の足も、何度もけとばしました。
やっとのことで靴をぬがせると、ようやく足は静かになりました。
その靴はその後、戸棚にしまわれましたが、カーレンはそれが気になっていました。
そのうち、お年寄りの奥様は病気になって、話ではもう助からないとのことでした。
カーレン以外に近しい人はいなく、カーレンは介抱してあげなければいけません。
ところが、この時町に舞踏会があって、カーレンは赤い靴を履いて、そこに出かけました。
そして、踊り始めました。
すると、不思議なことに、カーレンが右に行こうとすると左に、広間へのぼろうとすると、靴は階段を下りていくのでした。
そのままとうとう踊りながら、いえ、踊らなければならず、町の外へ出てしまい、暗い森の中へ入って行きました。
そこで、あの赤いひげを生やした、いつかの年取った兵隊がいました。
そして、
「なんときれいなダンス靴じゃ!」
カーレンはびっくりして、赤い靴をぬごうとしましたが、しっかり足にくっついてしまっていました。
カーレンは踊りながら墓地に来ました。
ここで、お墓に腰を下ろそうとしましたが、休むことはできません。
そこで教会のほうへ行くと、白い衣を着た天使がいました。
その顔は厳しく、手には美しい大きな剣を持っていました。
天使は、
「お前はいつまでも踊り続けるのだ!
お前の皮膚が、がいこつのように縮んでしまうまで。
お前は次々に戸口へ行って、高慢な子供のいる家の戸を叩くのだ。
そういう子供が、お前が来たのを怖がるように。さあ踊っていけ。」
「助けてください!」
カーレンは叫びましたが、靴は踊りながら、カーレンを運んで道を行きました。
ある朝のこと、お年寄りの奥様の家の前を、踊りながら通り過ぎました。
そのとき、家の中から棺が運び出されるのが見え、カーレンはあのお年寄りの奥様が死んだことが分かりました。
カーレンはみんなから見捨てられ、呪いを受けているように感じました。
カーレンは踊り続けなければなりませんでした。
靴は、いばらだろうが切り株だろうがおかまいなしに通るので、手足が血だらけになりました。
そうして荒れ野の、一軒の寂しい家に来ました。
ここは首切り役人の家なのです。
「出てきてください、踊っていなければならなく、私は入れないんです。」
首切り役人は、
「おれは、悪い人間の首を切り落とす役人だ。この斧が、カチカチいってるわい。」
「どうか、首は切らないでください。
罪をざんげすることはできなくなりますもの。その代わり、この赤い靴ごと足を切り落としてください。」
カーレンは、罪を白状しました。
そこで、この役人は、赤い靴ごとカーレンの足を切り落としました。
その靴は、切り落とされた足と一緒に、森の中へ、踊りながら消えていきました。
それから首切り役人は、木の足と松葉杖をやり、罪びとが歌う賛美歌を教えました。
「私、赤い靴のせいで十分苦しんだわ。」
「さあ、教会へ行きましょう。」
それから教会の方へ行くと、自分の前を、赤い靴が踊りながら行くので、びっくりして引き返しました。
それから一週間、カーレンは悲しみました。
そして日曜日になると、
「そうだわ、私も十分苦しんだわ。そろそろ教会の人と同じくらい、良い人間になったんじゃないかしら。」
そして出かけると、墓地のところで、あの赤い靴が踊って出てきました。
カーレンはびっくりして、引き返しました。
そして今度こそ、心の底から罪を後悔しました。
カーレンは牧師館に行って、女中として使ってもらえるよう頼みました。
牧師さんの奥さんはかわいそうに思って、女中に使うことにしました。
カーレンはよく働き、牧師さんが聖書を読むと、じっとそれを聞いていました。
それからみんなが晴れ着や身につける飾りの話をすると、カーレンは頭を横に振るのでした。
次の日曜日に、家の人たちは教会に出かけましたが、カーレンは悲しげに自分の松葉杖を見つめて、自分の小さい部屋にいました。
そこでカーレンは賛美歌の本を読んで、
「おお神さま、どうかわたしをお救いください。」
その時、日の光が明るくなったかと思うと、いつかの天使が立っていました。
けれども、あの時の剣は持っていなく、代わりにバラの花をたくさんつけた緑の枝を持っていました。
それから、天井が高くなり、壁は広がり、オルガンが鳴っているのが見えてきました。
坊さんと坊さんの奥方の像が見え、人々が賛美歌の本を持って歌っていました。
これは、教会がそのままここへ入ってきたか、娘のほうが教会へ行ったのでしょうか。
賛美歌が済むと、人々はカーレンに、
「カーレンや、よく来ましたね。」
するとカーレンは、
「神様のお恵みでございます。」
と言いました。
その時、オルガンが鳴り、子供たちの声がやわらかく、美しく感じられました。
そして日の光が、カーレンのところに流れてきました。
カーレンの心は、お日様の光と、平和と喜びでいっぱいになって、はりさけてしまいました。
そして、カーレンの魂は、神様のところに向かいました。
そこでは、誰も赤い靴についてたずねることはありませんでした。
赤いくつの考察
それでは、この童話の考察を始めていきます。
この童話の主人公のカーレンは、足を失って松葉づえの生活になってしまいましたが、
これは赤い靴に執着していたがために、自業自得の結果と言えます。
ただ、他の童話の悪者に見られるような冷酷さはカーレンにはなく、
赤いくつへの純粋な気持ちゆえの結果なので、同情する読者も多そうです。
カーレンは母親が亡くなった後、養子になりましたが、
この時カーレンは、赤い靴が気に入られたから、お金持ちの奥様に引き取ってもらえたと考えていましたね。
ところが、その靴は汚いと言われて、燃やされてしまいました。
これは、靴屋の老婆の愛情や、子供らしさの象徴である赤い靴と強制的に別れることになり、
いきなり「ちゃんとしていなければならない」という大人の世界に入り込んだことを意味していると考えられます。
それから、鏡が「かわいいどころか、本当に美しい」と言ったのは、カーレンが大人になり始めていることを暗示しています。
さらに、目がよく見えない年寄りの奥様を出し抜いて赤い靴を買ってもらったところがありました。
これは、素直な子供から脱却して、大人の駆け引きをするようになったことを示しています。
実際にその赤い靴をはいて教会に行ってしまうのですが、この時現れたのは年寄りの兵隊でしたね。
この兵隊はまるで父親的な存在でしたが、年寄りでした。
なぜ年寄りなのかというと、長い人生を生きて、赤いくつへの忠告者として、いわば仙人のようで、よりふさわしいからと考えられます。
それから、年寄りの奥様を看病しなければいけないという状況だったのに、禁止されていた赤い靴をはいて舞踏会に行ってしまいました。
そしてその代償は大きく、足を失うことになってしまいました。
ここで、童話ではいつも、禁止されていることを破ったときの代償は大きいものです。
例えば、グリム童話のトルーデおばさんでは、丸太にされて燃やされてしまいますし、マリアの子どもでは天界を追放され声を失います。
首切り役人に足を切られるところでは、自分の罪を認めていました。
ところがその後、自分は良い人間になったんじゃないか、と調子に乗るシーンがありました。
ここで教会に行くときに赤い靴が歩いてくるのですが、これを見て、心から改心しました。
そして牧師さんの女中になる時には、彼女の謙虚さが表れていましたね。
剣を持った天使が出てきてからこの流れの中で、彼女は改心していったことが読み取れます。
そして、最後に彼女の魂が救われたのは、罪を認めて改心する者には、救いの手が差し伸べられる、
ということがこの童話の言いたかったことだと考えられます。
赤いくつの感想
カーレンは赤い靴に執着していましたが、単純にかわいい靴が好きなだけなのかなって思いました。
よく、小さい女の子は人形やかわいいリボンが好きだったりしますが、それと同じような感覚でしょうか。
そうすると、なんとも愛らしい印象を受けました。
ただこの童話ではその度がすぎて、教会でも赤い靴をはいていたのは、神様の前ではまずかったですね。
天使が直接出てきてこらしめましたが、これはよっぽど神様が怒っていたことの証に感じられます。
でも赤い靴を履いたがゆえに足を切り落とさせるなんて、神様は容赦ないなって感じました。
彼女はただ赤い靴が好きなだけなのに。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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