こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、アンデルセン童話より、「青銅のイノシシ」のあらすじと考察、感想までお話しています。
青銅のイノシシのあらすじ
イタリアのフィレンツェの市場の前に、見事な作りの青銅のイノシシがあって、その口からは澄んだ水が流れています。
このイノシシは長年のせいで黒ずんだ緑色になってしまっていますが、子供が水を飲んでいるのは、一枚の絵であります。
ある冬の夕暮れ、ぼろを着た一人の小さな少年が、この青銅のイノシシのところへやってきました。
この少年は、イタリアの絵によく見るように、美しい顔をして、微笑みを浮かべ、どこか悲しみを帯びていました。
少年はイノシシから水を飲み、すぐそばに転がっているチシャの葉を2、3枚と、いくつかのクリを食べました。
これが少年の夕食です。
そして少年は青銅のイノシシに乗ると、眠り込んでしまいました。
真夜中になって、急に青銅のイノシシが動き出しました。
「ねえ坊ちゃん、しっかりつかまってて。走り出しますからね。」
こう言って、イノシシは少年を乗せたまま走り出しました。
まず、グランドゥーカ広場に来ました。
ここでは、大公を乗せた馬の銅像がいななき、ペルセウスとサビナ婦女の略奪の群像の、死の叫びが響いていました。
「さあ、今度は階段を上りますよ。」
少年は、恐ろしく思いながらも、幸福な気持ちを感じていました。
イノシシは長い画廊に入りました。
ここは前にも来たことがあったので、よく知っていました。
壁にはいろいろな絵がかけてあり、立像や胸像が立っています。
ところが、ここは真昼のようにどこも光っていて、特に一つの部屋はとても美しいものでした。
そこには、一人の美しい女の人が、裸で立っていました。
世間ではこの像を、メディチのビーナスと呼んでいます。
この女の人は、手足を動かし、足元のイルカははねました。
そして女の人の目からは、不滅の光が出ていました。
少年は、あまりの輝かしさに感動しました。
全ての壁が、華やかな色に光って、あらゆるものが生命を持って動いていました。
そこには、見れば見るほど不思議な、美しい女がいました。
その美しい体はのびのびと横たわり、頭が動くたびに、ふさふさの髪が肩にかかりました。
しかしどの絵も、どの像も、その場所から出ようとはしませんでした。
なんと輝かしく、美しい光景が、ここに満ち溢れていたでしょう。
特に、その中でも、いかにも幸福そうな子供たちが描かれていた絵は、少年の心にしっかり結び付けられました。
この絵の子どもは、天国へ行けると信じている顔をしていましたが、少年もイノシシも、この絵を長く見ていました。
それからイノシシは少年を乗せたまま、その場を離れ、ロビーを通り抜けました。
少年は、
「親切なイノシシさん、ありがとう。君に幸せがありますように。」
青銅のイノシシは、
「ありがとう、あなたも幸せに。
私は、無邪気な子供が私の背に乗った時だけ、走ることができるんです。
ただ、聖堂の中だけは、入れないのです。
けれど、坊ちゃんがいれば、開いている入口から、中をのぞくことができるのです。
どうか、私の背中から降りないでください。さもないと、私は死んでいなくてはならないのです。」
少年は、
「いつまでも一緒にいるよ!」
それからイノシシは、サンタ・クローチェ聖堂の前の広場に来ました。
すると、聖堂の正面の扉が開いて、祭壇の明かりが広場に差し込んできました。
左側の廊下の、ガリレイのお墓から、不思議な光が出てきました。
右側の廊下の彫像は、みな生命が吹き込まれているようでした。
これらは、ミケランジェロやダンテなど、イタリアの偉人たちでした。
この時、これらの偉大な人物の像が、歌と音楽のうちに、光り輝く祭壇の方を向きました。
そこには、白い衣を着た男の子たちが、金の香炉をふっていました。
そのまばゆい光のほうへ少年が手をのばした時、突然イノシシが走り出しました。
そして気づくと、もう朝になっていました。
少年は青銅のイノシシの上に落ちそうになって乗っていて、このイノシシは通りに立っていました。
少年は、普段お母さんと呼んでいる人のことを思い出すと、恐ろしさと不安でいっぱいになりました。
昨日、このお母さんにお金をもらって来いと、家を出されたのです。
ところが、一文ももらっておらず、お腹もペコペコです。
それでも家に帰ると、若くない、太った女が出てきて、
「何を持ってきたんだい?」
女は少年にそう聞くと、少年は、
「ごめんなさい。なんにももらえなかったの。」
二人は部屋に入りました。
この部屋の中のことを書くのは、やめましょう。
少年は泣き、女は足でけりました。
「だまれ!だまらないと、その顔をぶち割ってやる!」
こう言って、女は手に持っていた火壺を振り上げました。
けれども少年は、なんとか戸口から飛び出し、走って逃げました。
そして、サンタ・クローチェの聖堂のところに来ると、中へ入りました。
人々はここにいましたが、ミサが始まると、誰も少年に気づく者はありませんでした。
ただ、町の老人が一度立ち止まって、少年をじっと見て、また行ってしまいました。
夕方ごろ、この老人がまた少年の前に立っていました。
「病気か?家はどこかな?ずっとここにいたのかね?」
老人は、少年をとある一軒の家に連れて行きました。
ここは、手袋を作る仕事場で、おかみさんと犬もいました。
少年は、この親切な人たちのところで食べ物や飲み物をもらい、今夜はここに泊まることにしました。
みすぼらしいベッドを案内されましたが、時には固い石の上で寝なければならない少年にとっては、十分すぎました。
ここで少年は、たくさんの絵や、青銅のイノシシの夢を見ました。
次の朝、このおじさんは、この少年をお母さんのところに連れて行こうとしました。
おじさんはおかみさんと様々な話をしていましたが、
「この子はいい子ですよ。
きっと、あなたのように、立派な手袋職人になれますよ。
きっとマリア様が、この子を手袋職人にしたんですよ。」
こうして、少年はこの家にとどまることになりました。
おかみさんは少年に手袋のぬいかたを教え、少年はよく食べて、元気になりました。
そして、子犬のベッリッシマをからかいました。
それを見ておかみさんが叱ると、少年は自分の部屋にこもりました。
次の朝、おかみさんが、
「先生の絵の具道具を持ってあげて!」
お隣の若い絵描きさんが、荷物をたくさん持って重たそうにしていたので、少年は手伝って、あの画廊に入りました。
少年が、青銅のイノシシに乗ってやってきたあの画廊です。
ここで絵描きさんは絵を描き始めましたが、少年は絵を描くところを見ていました。
しばらくして、絵描きさんが、
「さあ、もうお帰り!」
こうして、少年は家に帰りました。
そして家では、手袋を作ることをならいました。
けれども画廊のことが気になって、集中できていませんでした。
この夜、少年はそっと外へ出て、青銅のイノシシのところに来ました。
そしてその背中に乗って、
「ねえ、イノシシさん。僕、会いたかったよ。今夜も乗せてってね。」
このイノシシはじっとしていました。
その時、犬のベッリッシマがここについてきていたことに気づきました。
実はこの犬は、いつもは着物を着て外を歩いているのですが、ここでは着物を着ないで来てしまったのです。
この冬の寒い中、着物を着ないで来てしまったことがおかみさんに分かったら、どうなることでしょう。
少年は寒さに震えているこの犬を抱いて、急いで駆け出しました。
「おいこら、何を持っているんだ?
その美しい犬を、どこから盗んできたんだ?」
道には憲兵がいて、少年から犬を取り上げてしまいました。
「ああ、僕に返してよ!」
少年は言いましたが、
「もし盗んだのでなければ、家に帰って、詰所に取に来るようにいいな!」
そして、ベッリッシマを連れて行ってしまいました。
本当に困ったことになってしまいました。
こうなったら、みんなは自分をぶち殺すだろうと思いました。
けれども、殺されれば、イエス様やマリア様のところに行ける、と考えました。
家に帰って戸を叩くと、
「僕です。ベッリッシマがいなくなってしまったんです。ここを開けて、僕を殺してください!」
そして、大変な騒ぎになりました。
「ベッリッシマが詰所!?このろくでなし、なんで外へ出したんだい?
凍えてしまうじゃないか。あんなに華奢なのに、兵隊のところに捕まってるだなんて。」
おじさんは仕方なく出かけました。
おかみさんはわめくし、少年は泣きました。
絵描きさんは少年をなぐさめてくれ、おかみさんに謝ってくれました。
やがて犬が帰ってくると、みんなは喜び、絵描きさんは少年に、絵を何枚もくれました。
その絵は、すばらしい絵ばかりで、あの青銅のイノシシまでありました。
「なんて上手に描けているんだろう、こんなにうまかったら、世界中の人を惹きつけられるよなあ。」
次の日、少年は青銅のイノシシの絵を鉛筆でうつしてみました。
すると思いのほかうまくいって、描いているうちにどんどんうまくなりました。
一方、手袋を作る方は、全然上手になりませんでした。
少年は、どんな絵でも紙の上に写せることが分かり、トリニタ広場の、正義の女神の像も紙の上に写しました。
こうしてどんどん絵を描いていましたが、みんな無生物の絵ばかりでした。
そこである日、ベッリッシマに、
「じっとしててね。そしたら、お前を僕が絵にかいてあげるよ。」
けれどもベッリッシマは、じっとしていません。
そこで、まずはしっぽをひもでしばりました。
すると、犬は吠え出し、そこにおかみさんが出てきて、
「まあ、この子はとんでもない!可哀想に!」
おかみさんはそう言って、少年を突き飛ばし、出ていけ!と少年に言いました。
そこへちょうど、絵描きさんがやってきました。
ここからこのお話は変わるのです。
1834年に、フィレンツェの美術院にある展覧会がありました。
その絵の中の、並べられている二つの絵に、特に人が集まりました。
小さいほうの絵は、可愛らしい少年が絵を描いている絵ですが、少年がモデルにしている子犬は、ひもでしばってありました。
こちらは生命と真実さがある絵でした。
人の話では、この絵を描いた画家は、子供の時に拾われ、年寄りの手袋職人に育てられたそうです。
そしてある時、おかみさんの可愛がっている子犬をしばってモデルにしたので、家を追い出されそうになったところを、
今では有名な画家が、その少年の才能を発見したとのことです。
あの少年は、すごい画家になったのです。
もう一枚の大きい絵は、ぼろを着た可愛い少年が、青銅のイノシシによりかかって眠っている絵でした。
そして、聖母の像のあかりが、子供の美しい顔を照らしていました。
本当にこれは素晴らしい絵でした。
その絵は金色の額縁にはめられ、その額縁のすみに、月桂冠がかけられていました。
しかし、黒いリボンが編まれていて、長い紗の紋章がついていました。
この若い芸術家は、ついこの前、死んだのでした。
青銅のイノシシの考察
それではここから、この童話の考察に入ります。
まず、この童話の主人公の少年は、性格的な記述はあまりなかったですが、外見的な記述はありました。
それは、容姿がかわいく美しく、ぼろの着物を着ているということです。
この外見は、童話の中では、普通なら女主人公に見られる特徴です。
(シンデレラや赤い靴など)
ところがこの童話では、少年でした。
少年なのに、かわいくて美しいのは、この子が芸術的センスを持っていたことと関係がありそうです。
この少年は絵の才能があるとはっきりと書かれていて、芸術的センスは、女性に多くみられる傾向です。
この少年は、さらに最初のまま母や、手袋屋のおかみさんからもいいようにあつかわれていなかったです。
これは、童話で女の子が意地悪な継母にいじめられるのと同じような境遇です。
なので、この少年はキャラ的には女性で、男だったらどうなるか、というのがこの童話に書かれたと考えられます。
それから、この童話には宗教的な記述が多々ありました。
聖堂もそうですし、ヴィーナスが出てきたり、死んだら天国に行ける、なども宗教的な記述です。
この物語の舞台は1800年代頃でしたが、この童話は童話の中でも、この時代背景が表れたものだと考えられます。
あと、少年は老人に拾われて育てられましたが、ここのおかみさんは、主人公の少年よりも犬の方をずっと大事にしていましたね。
少年はぼろの着物を着ていたのに、犬にはしっかりした着物を着せていました。
やはり、よそ者はよそ者、という考えが強かったと考えられます。
しかも、少年はぼろの着物を着ていて、貧乏人なんか相手にしないよ、という気持ちがあったのでしょう。
これは現代社会でもそうで、金持ちは貧乏人なんか相手にしないのと同じです。
そして最後、この少年は若くして亡くなりました。
この少年の描いた絵は、
小さいほうの絵が犬をしばって絵を描いているところ、
大きいほうの絵が、青銅のイノシシのところで眠っているところ
でした。
なぜ絵の大きさが違うかというと、これは少年から見て、出来事の重大さの違いを示していると考えられます。
小さいほうの絵は、言ってみればこの少年が画家になるきっかけの出来事でした。
この出来事がなければ、絵の修行をして有名な画家になることはなかったと考えられます。
一方、大きいほうの絵は、青銅のイノシシに見せてもらった夢のことが描かれていました。
こちらは、一夜限りの出来事でしたね。
ところが、絵が大きかったのは、人生に影響を及ぼした出来事ではなく、一夜の夢でした。
このことから、少年にとって、青銅のイノシシとの一夜だけの思い出が、画家としての人生すべてよりも価値が上だったことが考えられます。
青銅のイノシシの感想
この童話の中で一番気になったのは、最後、主人公が何歳で死んだかということです。
若くして亡くなったということと、1834年に亡くなったということは書かれていましたが、年齢は分かりませんでした。
なので、画家としてどれくらいの年月を過ごしたのかは分かりませんでしたが、すごく気になるところでした。
あと、青銅のイノシシに乗って、画廊を走り回ったシーンがありましたが、
これは結局夢だったのか、現実に起きたことなのか、なんとも判断が難しかったです。
これは人によって意見が分かれそうですね。
僕は、現実に起こったと思いたいですが、夢だったというのに一票です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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