こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、アンデルセン童話より、「空飛ぶトランク」のあらすじと考察、感想までお話しています。
空飛ぶトランクのあらすじ
昔ある時、一人の商人がいました。
この商人はお金持ちで、1シリングのお金を1ダラーに増やすなど、お金を増やすことが得意でした。
この商人が死ぬと、その息子がお金を受け継ぎました。
ですが、仮装舞踏会に毎晩行ったり、お札で紙ダコを作ったり、海で石の代わりに金貨で水切りをしていました。
そうしているうち、残ったのは4シリングだけになってしまいました。
身につけるものはスリッパ1足と、古い部屋着が一枚だけです。
こうなると、友達は離れていきましたが、一人だけ親切な友達が、
「何かお入れなさい」
と古いトランクをくれました。
ですが何も入れるものがないので、自分がトランクの中に入りました。
ところがこれは不思議なトランクで、その錠前を押すと、空を飛んでいきました。
そしてそのまま、トルコの国に来てしまいました。
男は森の中にトランクを隠して、町へ出ていきました。
トルコでは、みんなこの男のような部屋着とスリッパで歩き回っているのです。
男は小さな子供を連れた乳母に、
「あのお城は何ですか、あんな高いところに窓のある建物ですよ。」
「あれは王様のお姫様のお住まいです。
お姫様は、恋人のために不幸せになるという予言があるのです。
それで、王様とお妃さまが一緒でなければ、お姫様のところへは行けないのです。」
「ありがとう。」
商人の息子は森へと引き換えし、トランクに乗ってお城へ飛んでいき、
窓からお姫様の部屋に忍び込みました。
お姫様はソファーで眠っていました。
見るととても綺麗なので、ついついキスをしてしまいました。
するとお姫様は目を覚まして、びっくりです。
けれども、息子が自分はトルコの神様で、空中を飛んできたと言うと、お姫様は安心しました。
それから息子は、お姫様の目のお話をしましたが、この話は面白い話でした。
それから息子は、結婚してくださいと言うと、お姫様はすぐに「はい」と言いました。
「でも、今度の土曜日にここへいらしてください。
その時、王様とお妃さまが、お茶を飲みにここに来るのよ。
お二人とも、私がトルコの神様と結婚するとお聞きになったら、きっとご自慢なさいますわ。
でもその時は、もっと面白い話をしてくださいね。
両親はお話が好きで、お母様はためになる上品なお話、お父様は、ふき出すような、おかしいお話が好きですの。」
こうして二人は別れ、別れ際に、お姫様からサーベルをもらいました。
このサーベルには金貨がちりばめられていて、それは息子には役に立ちました。
息子は帰って、なんとかお話を作り上げました。
土曜日、お姫様と王様とお妃さま、それから城中のお役人たちの前で、お話を始めました。
それでは、そのお話を聞くことにしましょう。
「昔むかし、一束のマッチ棒がありました。
このマッチ棒は立派な松の木からできたことを自慢していて、
今も棚の上で、火打箱と古い鉄鍋の間に座って、若い時のことを話していました。
『僕たちが緑の枝の上にいたというのは本当ですよ。
僕たちは金持ちで、ほかの木は夏のうちだけしか着物を着ることができないのに、
僕たちの家族は夏も冬も着物を着ることができていたんですからね。
ところがある日、木こりによって、ちりじりになりました。
船のマストになったり、それぞれの地位について、僕たちは、貧しい大衆のために、灯をともす役目になったんです。
僕たち上流の者がここに来たのも、こういったわけからなんです。』
すると鉄鍋は、
『私は、この世に生まれると、磨かれたり、煮られたりしました。
この家でも、私が一番の古参ですよ。』
火打箱が、
『それよりも、今夜はひとつ面白くやろうじゃないか。』
マッチが、
『賛成!この中で誰が一番身分がいいか、話合おうじゃないか。』
土鍋が、
『わたし、自分のことは話したくないですわ。
それよりか、娯楽の夕べということにしたらどうでしょうか。
どなたでも、経験なさったことを話しましょう。』
そう言って、土鍋は話を始めました。
お皿は、
『まあ、素晴らしい出だしね。』
ほうきは、
『君の話はとても面白いね。聞いているだけで話し手が女だって分かるよ。』
手桶は、
『そうだ、誰でもそう思うよ。』
お皿たちは大喜び、ほうきは、土鍋をパセリで飾ってやりました。
『今日、僕が彼女を飾ってやれば、明日は僕を飾ってくれるだろう。』
と、考えたからです。
火ばしは、
『じゃあ、今度はダンスするわ。』
そう言って踊り始め、足を高く上げました。
『あたしも、花環がもらえるの?』
そう言って、飾りをもらいました。
『どれもこれも、しょうもないやつらだ。』
マッチはそう考えました。
今度はお茶沸かしが歌を歌う番です。
ですが、煮立っている時でないと歌えないと断りました。
古いペンは、インキ壺に浸っている以外にとりえはありません。
ところが、このことが自慢だったのです。
ペンは、
『お茶沸かしさんが歌いたくないなら、外の鳥かごに、ナイチンゲールがいますよ。』
湯沸しは、
『仲間でない鳥の歌を聞くなんて、愛国的と言える?買い物かごさんに判断してもらいましょう。』
買い物かごは、
『僕は不愉快だ。これが一晩を愉快に過ごすやり方ですかい?
むしろ、きちんと元の場所に帰るべきですね。』
『そうだ、そうしましょう。』
みんなはわいわい言い出しました。
そのとたん、ドアが開きました。女中さんが入ってきたのです。
みんな、一瞬でしいんとなりました。
けれども、そこにあるものたちは、自分がどんなに上品か、心に思っていないものは一つもありませんでした。
すると、女中はマッチに火をつけ、なんとまあ、マッチは明るく燃え上がりました。
『どうだい、これで分かったろう。
僕たちが一番だ。なんという輝き、明るさだ。』
こうして、マッチ棒は燃えきってしまいましたとさ。」
「面白いお話でした。娘はお前に、あげましょう。」
お妃さまはそう言いました。
「よし、よかろう。では娘は、月曜日にお前にやろう。」
王様は言いました。
婚礼の式が決まり、その前の晩は、イルミネーションで飾られ、パンやお菓子が配られました。
子供たちは大はしゃぎで、大変にぎやかでした。
商人の息子は、
「そうだ、僕も何かやってみよう。」
そして、打ち上げ花火やかんしゃく玉など、花火を買って、トランクに乗って空から花火を披露しました。
こうして、人々は、お姫様のお婿さんはトルコの神様だと思い込みました。
商人の息子は、その後トランクで森の中に降りると、
「一つ町の中に行って、みんながどんなうわさをしているか聞いてみよう。」
人々の話では、商人の息子に対しいろいろな見方がありました。
ですが、素晴らしかったという点は一致していました。
「私はトルコの神様を本当に見たよ。」
「神様は火のマントを着て、飛んでいました。」
「可愛らしい赤ちゃん天使たちが、マントの間にいましたわ。」
嬉しいことばかり耳に入りましたし、しかも明日は、ご婚礼です。
それから商人の息子は、トランクの中で休もうと、森の中に戻ってきました。
おや!トランクがない。それは燃えてしまったのです。
花火の火の粉が一つ降って来て、そこから火がついて、灰になってしまったのです。
これではもう飛べませんし、花嫁のところにも行けません。
お姫様は、一日中屋根の上で待っていました。そして今も待っているのです。
一方、商人の息子は世界中を旅して、お話をしています。
けれどもそのお話は、あのマッチ棒のお話ほど面白くないものでした。
空飛ぶトランクの考察
それでは、ここからこの童話の考察をしていきます。
まず、主人公の父親はお金を増やすのが上手いのに対し、その息子である主人公はお金を減らすのがうまいです。
金貨で水切りをしたりお札でタコを作ったりと、その使い方も異常なほどでしたね。
父と子でこの正反対の性質は、今の時代の道楽息子といえるでしょう。
また、主人公がトランクをもらって、入れるものがないからといって自分がその中に入る、
というのは、よくよく考えてみれば不思議な行動ですよね。
これを掘り下げてみると、トランクという大きなケースは、母親の胎内を示しているようで、
その中に入るということは、胎児への回帰です。
そして、この時はほとんど何も持っていなかったから、母親にすがるような気持ちがあったように感じられます。
それから、トランクに乗ってお姫様に初めて会った時、
自分はどこかの国の王子だというどころか、トルコの神様だと言い出しました。
ここまで気が大きくなったのは、全てはトランクの魔力のはずなのに、自分の力だと過信しているところが見えます。
お父様とお母様に結婚を認めてもらうには、上品な話とおかしな話を一つの話の中に感じさせなければなりませんでした。
ここで、上品な話のほうは、お姫様の人生、おかしな話は、商人の息子のこれまでの人生に置き換えられそうです。
そしてそれを一つの話に結び付けるということは、この二人が結びつくことを暗示します。
だから、このお話が課題だったと考えられます。
また、お姫様からサーベルをもらいましたが、これは強さ、つまり男性の象徴でもあります。
ところが、この童話には息子が花火を買ったという記述があります。
しかし、お金はほとんど持っていなかったはず。
ということは、このサーベルは花火を買うために売ってしまったと予想できます。
ここで、男性の象徴を一つ失いました。
それから、王様とお妃さまに聞かせた話は、台所やマッチ棒の類の話ですね。
これは明らかに、女性をイメージさせる話です。
そんな話しかできなかったから、男性さがなく、最後は結局失敗してしまったのです。
また、お話の中のマッチは、まるでこの息子のようでした。
自分が一番だ、という調子に乗ったところは、自分をトルコの神様だと言ってしまうところに表れています。
そしてマッチが燃えて終わるのは、これからトランクが燃えて灰になって終わるという運命を示しているようでしたね。
お姫様も、商人の息子を結婚相手に選んだせいで、あの予言は当たってしまった事になりました。
空飛ぶトランクの感想
この話では、主人公は完全に自業自得でしたね。
くだらないことに父親の財産を使い果たしてしまったり、お姫様と結婚したいがために自分をトルコの神様と偽ったり。
何の努力もせずにお姫様との結婚権を手に入れて、調子に乗っているような行動をしていたので、
この主人公には同情できませんでした。
まあ、この息子は完全に笑いものでしたね。
むしろ、こんな男を待ち続けるはめになったお姫様がかわいそうに感じました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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