こんにちは、物語音楽ユニットのEternal Operettaです。
ここでは、グリム童話より、死神の名づけ親(KHM44)のあらすじと考察、感想をお話していきます。
死神の名づけ親のあらすじ
びんぼうな男が、子供を十二人持っていました。
そこへ十三番目の子が産まれたのですが、一番初めに出くわしたものを名づけ親に頼もうと思って、大通りへ出ました。
最初に出くわしたものは、神様でした。
「かわいそうに!わしが、お前の子どもに洗礼をさずけよう。子供の面倒をみて、幸せにしてあげよう。」
「どなたですか、あなたは。」
「わしは神様だよ。」
「それでは、あなたを名づけ親にするのはやめた。
あなたは、金持ちにはものをやるが、貧乏人には腹が減っても知らん顔だ。」
男は、神様が富と貧乏を、大きな目で見てうまく分配していることを知らないから、こんな口をきいたのです。
それからしばらく歩いていくと、悪魔がやってきて、
「おいらをお前の子どもの名づけ親にすれば、子供に金を貸してやる上に、世の中の快楽を教えてやるんだがなあ。」
「どなたですか、あなたは。」
「おいらは悪魔だよ。」
「それでは、あなたを名づけ親にするのはごめんだよ。あなたは、人間を騙したり、そそのかしたりする。」
それからまた歩いていくと、死神がやってきて、
「私を名づけ親にしなよ。」
「どなたですか、あなたは。」
「私は、誰でも彼でも一様にする死神さ。」
これを聞くと男は、
「あなたなら、大丈夫だ。あなたは、金持ちでも貧乏人でも、差別無しにさらっていきます。あなたを名づけ親にお願いしましょう。」
死神は、
「わしはな、お前の子どもを金持ちにするし、有名な人にもしてあげる。」
そして約束どおりに名付け親の役目を務めました。
この男の子が大きくなってから、死神は森の中に連れて、薬草を教えて、
「私はお前を評判の医者にしてあげる。お前が病人のところへ呼ばれるときには、そのたびに私が姿を見せてあげる。
で、わしが病人の頭の方に立っていたら、この病人をきっと治すと言って、この薬草を飲ませれば、その病人は治る。
だが、わしが病人の足の方に立っていたら、病人はわしのものだよ。
お前は、これは手のつくしようがない、この病人を救うことができる医者は世界に1人もいない、と言うのだよ。
とにかく、この薬草を、わしに背いた使い方をしないように。そんなことをしたら、お前の身にとんでもないことが起こるよ。」
やがてこの若い男は世界中で一番名高い医者になりました。
「あの人は、病人を見るだけで治るとか死ぬとか分かる」と、そこいらじゅうの人がやってきて、お金持ちになりました。
やがて、王様が病気になったことがありました。
この医者が寝台のそばに行くと、死神は病人の足の方に立っていました。
これでは、例の薬草も役に立ちません。
「ちょいと、死神を騙せないものかな。怒るには怒るだろうけど、自分は名付け子だから、死神も目をつぶってくれるだろ。」
それで、お医者は王様を上下逆に置き換えて、死神が病人の頭のほうに立っているようにしました。
そしていつもの薬草を飲ませると、元通りです。
ですが死神は、
「お前はわしを騙したな。お前は名付け子だから今回は大目にみてやるが、もういっぺんやったら、命はないぞ。」
それから間もなく、王様のお姫様が病気になりました。
それで、お姫様の命を救ってくれるものがあったら、お姫様のおむこさんにして、王様の跡継ぎにすることにしました。
お医者がお姫様の寝床に行ったときは、死神は足の方に立っていました。
お医者は死神の警告を思い出したはずなのですが、お姫様が美しくて、うまくいけばお姫様と結婚できると思いました。
死神は鋭い目でにらみつけ、手を振り上げ、握りこぶしでぶつまねをしました。
ですがそんなことは目に入れず、病人を上下さかさまにして、薬草を飲ませて、お姫様を治しました。
死神はこの医者のところに来て、
「お前はもうお陀仏だ。いよいよ順番が回ってきたぞ。」
それから医者を地面の下の、どこかの洞穴に連れて行きました。
そこには、何千という燈火が何列にもなって並んでいて、燈火が大きいのも、中くらいのも、小さいのもありました。
それがいくつか消えたかと思うと、また別のが燃え出したりしています。
「どうだ!これは人間どもの命の燈火だ。大きいのは子供、中くらいのは血気盛んな夫婦のもの、小さいのはじいさんばあさんのだ。
と言っても、子供でもちっぽけなのもあるが。」
「わたしの命の燈火はどれですか?」
すると死神は、今にも消えそうなちっぽけなのを見せて、
「これだよ。」
「こりゃあひどいや。新しいのをつけてくださいよ。ね、そうすりゃあ生きてられるし、王様になって、美しいお姫様と結婚できる。」
「わしの力にはおよばないよ。まず、一つ消えてからでないと、新しいのは燃え出さないのでな。」
「それなら、古いのを新しいやつの上にのっけてくだせえ。それなら、古いのが燃え続けるでしょう。」
お医者は泣きつきました。
死神はそれを聞き届けるふりをして、新しいろうそくに火を移そうとして、わざとしくじりました。
小さなろうそくはひっくり返って消えて、そのとたんに医者はばたっと倒れて、自分が死神の手に入ってしまいました。
死神の名づけ親の考察
それでは、ここからこの童話の考察に入ります。
まず、この主人公の名づけ子の父親というのは、平等さを何よりも重要視していることが分かります。
お金持ちなら不満はないのですが、貧乏人というのは、不公平さを感じているものです。
いつも感じている不公平さから、幸せにしてくれそうな神様ではなく、平等に扱ってくれる死神を選びました。
しかも、「一番先に出くわしたものを名づけ親に頼もう」と思って出たのに、結局自分の戒めに逆らってまで、死神を選びました。
このことから、貧乏経験から、この男にとって平等であることの執着心がとても強いと考えられます。
また、名づけ子は医者になって、普段は死神の言う通りに病気を治したり、治らないと言っていました。
ですが王様やお姫様の時は、死神に逆らって病気を治してしまいました。
もともと、この医者の父親は平等に扱ってくれるから、と死神を名づけ親に頼みました。
王様やお姫様だけを助けるというこの行為は、平等さを大事にしている父親への裏切りでもあります。
この主人公は、貧乏を経験せずに最初から医者になってお金をたくさん持っていたので、
平等であることへの大事さがなかったのだと考えられます。
また、死神が頭の方に立っていたらその病人は助かって、足の方に立っていたら助からないという設定もありましたね。
これはもしかしたら、昔の人は頭さえしっかりしていれば助かりやすいと考えていたのかもしれません。
そして物語の最後では、やっぱり死神は死神だということが分かります。
自分に逆らった医者の願いを聞き届けるふりをして、わざとしくじって小さなろうそくを消してしまう。
そもそも二度も自分のいいつけを破ったのに、死神が許してくれるわけありませんよね。
「この医者も死神の手に入ってしまいました。」という記述から、死神は容赦ないということが強く感じ取られます。
死神の名づけ親の感想
この童話の一番面白いところは、やはり結末でした。
死神との約束を破って王様とお姫様を助けたせいで、代わりに自分が命をとられることになってしまいました。
やはりいざ自分が死ぬときになると、相手が死神でも命乞いをするものなんだな、とか考えながら読んでいました。
1回目に約束を破った後、2回目に約束を破ってお姫様を助けようとしたとき、
死神が睨んだり殴る真似をしておどしたのに、その時点では医者に手を出さなかったというのも、なんだか面白かったです。
死神のくせに、おどすだけで医者の邪魔ができないのかよ、みたいな。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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というわけで、物語音楽ユニットのEternal Operettaのブログでした!
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